中村うさぎさんのホスト小説。


ホストの世界には、掛け飛びという言葉があって、掛け(ツケ)を飛ばす、つまりツケを払わずに客が逃げるという意味らしい。これをされたホストは、自分で弁償するか、必至で逃げた客を追いかけなければいけないという。


ある掛け飛び事件にまつわる、三者三様に病んだ人物の視点で語られる長編小説。私は第一章の『海にいるのは』がいちばん面白かった。


病んだソープ嬢で多重人格者のミカが、ホストに入れあげたり、それを止めようとしたり、自己防衛のために嘘をついたり、もっと凶悪な人格になると殺人までチョチョイのチョイ!どのように別の性格が形成され、いつどうやって切り替わるのか、このあたりは狂人に造詣の深い中村さんの面目躍如!


第二章はホストの視点で、掛け飛び事件の真相に迫る。


そして第三章は、その掛け飛び事件の解決に協力して大活躍した探偵事務所の女社長。彼女もかつて入れあげたホストの亡霊を探してホストクラブに通っていた…。


ホストにも人の心がある、ただ自分の罪悪感につぶされないために、心にカーテンを引いて遮断しているのだと力説し、最後の一抹の希望のような恋愛も、第三者の視点で「恋愛とは、合法的なストーキングである」と冷静なツッコミを忘れない。


でもやっぱり、中村さんの視点はいつでも狂人側、平凡に生きていくことができなくてもがいてもがいて苦しんでる人のそれなので、上から目線な感じが一切しなくて品がある。


文体はライトノベルっぽいので、300ページ超えでもすらすら読めて、面白かった〜!


 

 






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