「私とは何者なのか」、平たく言えば自分探し?これ一生のテーマですよね。

私の場合は、それを探すよりも、「私は何者なのか」「私は何がしたいのか」「私はどうなりたいのか」「私はどこに行きたいのか」とかいうことを考えたがる「私」という存在から目をそらしまくり、徹底的に離れるように努力してきました。だってそのほうがたぶんラクだから。それで「私」をなくしたところに平穏な隠居生活があった~、これが今の「私」かも~、と思ってました。

ところが「私」というものをつかむために、直視追求型の人もいるわけで。

この本には、ライトノベル作家としてデビューしてから、買い物依存症、ホスト狂い、整形、デリヘル、とまるで何かの強迫観念に突き動かされるようにやり散らかしてきた中村うさぎさんの一生がものすごい熱量で書かれています。
その時々で興味の矛先が一貫していないように見えるけれど、これを読むと実は「私とは何者なのか」を知りたい、という一本の槍で貫かれていたことがよくわかる。

だからその能動的な姿勢なんか私と全然違うわこの人、と思って読み始めたのに、うさぎさんがたどり着いたところと私がたどり着きたいところがまったく同じでびっくらこいた。「私」から離れても、「私」に迫っても、最終的に行きつく先はうさぎさん言うところの「超自我的存在」「名前のない神(私)」「背骨、魂のようなもの」だとしたら(スピった意味ではなく)。

生きてきた時間も密度も私のほうがぜんぜん少ないのに一緒にして恐縮ですけど、けっきょく私もうさぎさんも、「私」というものにものすごく拘泥して生きてきた、ということなんだと思う。アプローチが違うだけで。そもそもこだわりなかったら、「私」を追うことも、「私」から逃げることもしないじゃん。

極端に真逆なのに同じ、「自分教」の本が、同じ時期に出ているという、、、私っていったい何なんだ!?と思ってる方、この際、自分探しのお供に読みくらべてみるとおもしろいかもしれません。しかしすごいもん読んだなあ。

あとは死ぬだけ/中村うさぎ

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