「町田くんの世界」　★★★～ピュアは世界を救う

※※※　注意　※※※

　「シネマ報告書」には、映画の内容や核心・結末に触れる、いわゆる“ネタバレ”が多分に含まれております。

　これから観ようと思っている方は、本報告書の内容についてご理解のうえ十分注意してお読みください。

「『シネマ報告書2019』の掲載にあたって」

ピュアは世界を救う ★★★

（2019年／日本／120分） 【　監督　】 石井裕也【　原作　】安藤ゆき

町田くんの世界 1 (マーガレットコミックス)

484円

Amazon

【　出演　】細田佳央太

関水渚

岩田剛典
高畑充希
前田敦子
太賀
池松壮亮
戸田恵梨香
佐藤浩市
北村有起哉
松嶋菜々子

【あらすじ】

　勉強も運動も苦手な高校生の町田一は、分け隔てなく人を愛し困っている人を放っておけない性格で、周りからも慕われていた。

　ある日、授業中にケガをして保健室に行くが、そこで授業をサボっていた猪原奈々と出会う。街だと正反対で人が嫌いな猪原だったが、次第に町田に心惹かれていく。

　しかし、誰でも愛する町田にとって女性を好きになるという感情が分からない。しかし、心の奥底で猪原に“わからない感情”が芽生え始めていく―

【コメント】

　さて、今回行きつけのTSUTAYAで手に取ったのは、石井裕也監督待望の最新作である本作。お得意の青春映画ですな。

　劇場公開時はもちろん認識しており、劇場で観ようかどうか迷っていたものの、正直それほど魅力を感じず結局スルー。今般めでたくレンタル開始ということで、さっそく鑑賞してみた次第です。

　うむ、なるほど。爽やかでユーモラスな青春ラブコメ映画、一点の曇りもないピュアな心を持つ町田くんが周りを困惑させつつも、次第に人間たちを改心させていく、そして自らもまた一歩成長していく。まさにピュアは世界を救うといった趣の作品でしたね。

　主人公の町田くんと猪原さんに無名の新人を起用し、脇に芸達者な若手俳優たちを配置するという思い切った配役も面白いところですが、主人公の二人がとにかく輝いていてとても良い。個人的には猪原さん役の関水渚がとても魅力的に感じましたね。今後の活躍が期待できます。あと、前田の敦ちゃんが意外といい味出していて良い仕事していたと思います。

　「この世界は悪意に満ちている」というセリフがあるとおり、とかく自身の利益だけを追い求め、それが一人前の大人であるかのような認識をしてしまいがち。人と人とのコミュニケーション、助け合い、そして純粋に相手を思う恋愛感情、世知辛い現代だからこそもっとそれらを大事にしようじゃないか、と町田くんという存在が周りに布教している。決して意識的な優しさや見返りを期待したものではなく、自然に手を差し伸べてあげる人間こそが人として本当のあるべき姿勢なのだ、と訴えているのではないかなと感じました。考え過ぎかもですが。