おはようございます
『養生訓』の「小児への灸」 に出てきた驚風(きょうふう)、からだがけいれんを起こして意識を失う、いわゆる「ひきつけ」のことですが、先週は突発的に急に激しくひきつける急驚風 についてお届けしました。で、今回は、ひきつけはさほど激しくないけれど、たびたび繰り返す慢驚風について。
慢驚風を起こす内風 には、脾 、肝 、腎 の状態が関わります。脾胃が弱ったことで肝が強くなりすぎたり、熱を出す病気で腎陰や肝陰が傷められたり、急驚風が慢性化したり、先天的に陽気が不足していたりすると、慢驚風となることがあります。
脾虚肝旺による慢驚風
脾が弱っていると、脾を制御する立場の肝が相対的に強くなり過ぎることがあります。この状態を「脾虚肝旺(ひきょかんおう)」と言います。脾虚 があるからといって、必ずしも肝旺になるとは限りませんが、肝旺になった場合には、内風 を生じやすくなります。肝 と風 は同じ五行 の木(もく) に分類されますしね。
脾虚肝旺の原因は、
① 先天的な脾胃虚弱
② 多量の嘔吐や下痢
③ 急驚風が完治せずに、ひきつけを繰り返す
症状は、
① 弱いけいれんをときどき起こす
② 精神的な衰弱がみられる、嗜睡 、目を開けて眠る
③ 顔色が黄色っぽくてつやがない、食欲不振、便がゆるい、手足が冷たい
手当てのツボは、
足三里 、太衝 、章門(第11肋骨の先端)、気海 (ヘソと関元 との中間)
肝腎陰虚による慢驚風
肝陰虚 と腎陰虚 は、どちらが先に起こっても、他方を引き寄せることがあります。血と津液 の体内の陰分が不足して、肝を滋養できなくなると、肝血による筋脈への栄養も不足して、けいれんを起こすことになるのです。これは、激しいスポーツの後のけいれんも、同じメカニズムです。
肝腎陰虚の原因は、
① 急驚風の慢性化
② 熱性疾患の長期化
症状は、
① 筋肉のひきつりや強直、ときどきけいれんする
② 顔色が紅潮する、便秘 、消そう、精神的な疲労感
③ 胸のモヤモヤ感、からだが熱っぽい、手足の熱感
手当てのツボは、
太渓 、太衝 、曲泉 (ひざの内側で、ひざを曲げたときに凹むところ)
脾腎陽虚による慢驚風
脾陽虚 と腎陽虚 がともに生じると、脾腎陽虚となります。脾が弱ったために消化吸収がうまくいかず、陽気をつくることができなかったり、先天的に腎陽が不足していたりして、体内全体の陽気不足が深刻になると、「慢脾風」という状態に陥ります。
脾腎陽虚の原因は、
① 先天的な腎陽の不足
② 内寒 による慢性的な下痢や嘔吐
③ 脾陽虚 の長期化、急驚風の慢性化
症状は、
① 手足がぴくぴく動く
② 精神的な衰弱がみられる、嗜睡 、目を開けて眠る
③ 顔色が白くてつやがない、手足が冷たい、額から冷たい汗が出る
手当てのツボは、
急驚風
と比べると、症状は一見軽そうですが、からだの状態としては、慢驚風のほうがずっと深刻です。生命エネルギーである元気(正気)
が減っている虚証
ですから。脾胃の負担とならないように、甘いものやあぶらっこいものは控え、少量ずつでもよく噛んで食べるようにさせて、栄養補給することが大事です。
一天一笑、今日もいい1日にしましょう。
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