【東洋医学臨床論】
問題115 次の文で示す患者の病証に対する治療で、原絡配穴法(主証、客証を踏まえて原穴と絡穴を配穴する法)の原則として適切な治療穴の組合せはどれか。
「38歳の女性。2週間前に右側の顔面神経麻痺を発症。ほぼ同時期に同側の大腿前外側から下腿前面に痛みがある。最近、右足の第1指から下腿内側の痛みが加わった。」
1. 太白(たいはく) ― 豊隆(ほうりゅう)
2. 衝陽(しょうよう) ― 公孫(こうそん)
3. 太白(たいはく) ― 公孫(こうそん)
4. 衝陽(しょうよう) ― 豊隆(ほうりゅう)
答え: 2
原絡配穴法は、主客配穴法ともいう。 主証となる経脈の原穴と、客証となる表裏関係にある経脈の絡穴を使用する。 症例は、顔面神経麻痺と大腿前外側から下腿前面の痛みが主証であり、胃経の病証で、足の第1指から下腿内側の痛みが客証であり、脾経の病証となる。 したがって、主証に胃経の原穴、客証に脾経の絡穴を配穴する。 衝陽が胃経の原穴、公孫が脾経の絡穴なので、2の組み合わせが正しい。
1. 太白は脾経の原穴、豊隆は胃経の絡穴。
3. 太白は脾経の原穴、公孫は脾経の絡穴。
4. 衝陽は胃経の原穴、豊隆は胃経の絡穴。
問題116 変形性膝関節症の患者に対するSOAP方式による経過記録で、Pに相当するのはどれか。
1. 階段昇降時の膝の痛み
2. 膝関節の屈曲拘縮
3. 内側広筋の萎縮
4. 大腿四頭筋訓練
答え: 4
SOAPはSubjective Objective Assessment Planの略で、Sは主観的な情報(患者の愁訴や病歴)、Oは客観的な情報(身体診察や検査の結果)、Aは入手した情報の分析と評価(診断)、Pは計画(治療方針)である。 大腿四頭筋の筋力低下が変形性膝関節症の原因のひとつであり、大腿四頭筋訓練がPに相当する。 したがって、4が正解。
1. 階段昇降時の膝の痛みはS。
2. 膝関節の屈曲拘縮はO。
3. 内側広筋の萎縮はA。
問題117 四診法で得られた所見で予後が最も悪いのはどれか。
1. 仮神(かしん)
2. 少気(しょうき)
3. 畏寒(いかん)
4. 濇脈(しょくみゃく)
答え: 1
仮神は、無神であるのに突如病状が好転したような状態になるもので、臨終の兆しであり、予後不良である。 したがって、1が正解。
2. 少気は、呼吸が浅く微弱で、音声に力がないもので、慢性的な虚証にみられる。
3. 畏寒は、いわゆる寒がりのことで、さむけを感じても衣服や布団などで暖を取れば、次第に寛解するもの。 陽虚による虚寒証にみられる。
4. 濇(しょく)脈は、脈の往来が渋っているもので、瘀血(おけつ)によって気血の運行が滞ったときにみられる。
問題118 機能性月経困難症の患者の治療でデルマトームを考慮して選穴する場合、適切でないのはどれか。
1. 関元(かんげん)
2. 脾兪(ひゆ)
3. 三焦兪(さんしょうゆ)
4. 大腸兪(だいちょうゆ)
答え: 4
機能性月経困難症は、月経血を排出するために子宮の収縮を促す物質(プロスタグランジン)の過剰分泌が主な原因となるもので、子宮や卵巣が未成熟な場合や、冷えやストレスが強い場合などによくみられる。
子宮の知覚神経はT10~L2であり、この領域にあるのは1の関元、2の脾兪と3の三焦兪である。 4の大腸兪はL2~L4領域であり、4が適切でない。
問題119 異常歩行とその原因となる筋に対する局所治療穴との組合せで正しいのはどれか。
1. 鶏歩 ― 三陰交(さんいんこう)
2. はさみ脚歩行 ― 陽陵泉(ようりょうせん)
3. 分回し歩行 ― 足三里(あしさんり)
4. トレンデレンブルグ歩行 ― 居髎(きょりょう)
答え: 4
トレンデレンブルグ歩行は、アヒル歩行または動揺性歩行ともいう。 中殿筋の筋力低下によって、一歩ごとに骨盤が傾くため、上半身を左右に振って歩く。 局所治療穴は、居髎(きょりょう)や秩辺(ちっぺん)など。 したがって、4の組み合わせが正しい。
1. 鶏歩は、足関節の背屈力低下(下垂足)による異常歩行。 腓骨神経麻痺による前脛骨筋麻痺が原因となる。 局所治療穴は、足三里。 三陰交は、シンスプリントや深後方コンパートメント症候群などに使われる。
2. はさみ脚歩行は、内反尖足によって両膝が重なり合うように歩く異常歩行。 両側性錐体路障害による痙性対麻痺歩行であり、筋に原因があるのではない。 麻痺そのものに対しての治療ではなく、筋緊張や関節拘縮の緩和に陽陵泉を使うことは有り得るが、設問の主旨とは異なるため、正解とはならない。
3. 分回し歩行は、股関節を中心に、伸展した下肢で半円を描くように歩く異常歩行。 片側性錐体路障害による痙性片麻痺歩行であり、筋に原因があるのではない。 脳卒中後遺症の治療として、筋緊張・関節拘縮の緩和や促通を目的に、理学療法と併用して鍼治療が行われることがあり、その場合、八風(はっぷう)、委中(いちゅう)、伏兎(ふくと)、風市(ふうし)、環跳(かんちょう)、陽陵泉(ようりょうせん)、足三里などが使われるが、設問の主旨とは異なるため、正解とはならない。
問題120 末梢神経麻痺と罹患筋への低周波鍼通電療法で用いる経穴との組合せで正しいのはどれか。
1. 筋皮神経麻痺 ― 外関(がいかん)・陽池(ようち)
2. 橈骨神経麻痺 ― 曲池(きょくち)・合谷(ごうこく)
3. 正中神経麻痺 ― 支正(しせい)・小海(しょうかい)
4. 尺骨神経麻痺 ― 郄門(げきもん)・内関(ないかん)
答え: 2
橈骨神経は上腕・前腕の伸筋群に分布する。 曲池と合谷は橈骨神経領域にあるため、2の組み合わせが正しい。
1. 筋皮神経は上腕二頭筋・烏口腕筋・上腕筋に分布する。 外関と陽池は橈骨神経領域にある。
3. 正中神経は円回内筋・橈側手根屈筋・長掌筋などに分布する。 支正と小海は尺骨神経領域にある。 4. 尺骨神経は尺側手根屈筋や深指屈筋尺側頭などに分布する。 郄門と内関は正中神経領域にある。
問題121 胃痛に対して行う低周波鍼通電療法で、デルマトームを応用した経穴の組合せとして正しいのはどれか。
1. 三焦兪(さんしょうゆ) ― 腎兪(じんゆ)
2. 膈兪(かくゆ) ― 肝兪(かんゆ)
3. 玉枕(ぎょくちん) ― 天柱(てんちゅう)
4. 大杼(だいじょ) ― 肺兪(はいゆ)
答え: 2
胃に対してデルマトームを応用する場合はT7~9である。 膈兪はT7、肝兪はT9なので、2の組み合わせが正しい。
1. 三焦兪はL1、腎兪はL2。
3. 玉枕と天柱は大後頭神経。
4. 大杼はT1、肺兪はT3。
問題122 次の文で示す患者の東洋医学的病態で適切なのはどれか。
「65歳の男性。 主訴は排尿痛。 3年前から自覚するようになった。 飲食の不摂生から便がすっきり出ないときに痛みが強くなり、下腹部の不快感を伴う。 尿は色が濃くて量が少ない。 舌質は紅、舌苔は黄膩。 脈は滑数。」
1. 下焦の湿熱
2. 命門の火衰
3. 粛降の失調
4. 運化の低下
答え: 1
便が出すっきり出ないときに痛みが強くなり、舌苔膩、脈滑なので痰湿証。 尿の色が濃くて量が少なく、舌質紅、舌苔黄、脈数なので熱証。 排尿痛と下腹部の不快感は下焦の症状。 したがって、下焦の湿熱が適切であり、1が正解。
2. 命門の火衰は陽虚で、虚寒証である。
3. 粛降の失調は、肺の病証にみられる。
4. 運化の低下は、脾の病証にみられる。
次の文で示す症例について、問題123、問題124の問いに答えよ。
「74歳の男性。 農業に従事。 主訴は頻尿と会陰部の不快感。 10年前から尿が出始めるまでに時間がかかるようになった。 就寝後、排尿のため2回は覚醒する。 PSA値は正常範囲内である。 会陰部の不快感が増強している。 血尿、尿混濁は認めず、排尿痛はない。」
問題123 本症例の疾患で最も適切なのはどれか。
1. 膀胱炎
2. 膀胱結石
3. 前立腺肥大症
4. 前立腺癌の進行期
答え: 3
頻尿は膀胱が物理的に圧迫されていて尿が溜まりにくく、尿が出始めるまでに時間がかかる遷延性排尿は尿道が狭くなっていて尿がでにくくなっているためと考えられる。 また、PSA(前立腺特異抗原:前立腺の腫瘍マーカー)値が正常範囲なので、腫瘍ではなく、前立腺肥大症が最も適切となる。 したがって、3が正解。
血尿・尿混濁・排尿痛がなく、遷延性排尿があり、PSA値が正常範囲なので、膀胱炎や膀胱結石ではなく、前立腺癌の進行期とも考えにくい。
問題124 会陰部の症状緩和を目的に陰部神経への鍼施術を行う場合、刺鍼部位の目安となる体表点で最も適切なのはどれか。
1. 上後腸骨棘と坐骨結節下端内側を結ぶ線上の中点
2. 大転子と上後腸骨棘を結ぶ線の中点から直角下方3cmの点
3. 大転子と坐骨結節を結ぶ線上の内側3分の1の点
4. 大転子と仙尾関節を結ぶ線上の外側3分の1の点
答え: 1
上後腸骨棘と坐骨結節下端内側を結ぶ線上の中点は、S2領域である。 陰部神経として、会陰部の皮膚を支配するのは、S2~4の枝である。 したがって、1が正解。
2. 大転子と上後腸骨棘を結ぶ線の中点から直角下方3cmの点は、L5領域。
3. 大転子と坐骨結節を結ぶ線上の内側3分の1の点は、S1領域。
4. 大転子と仙尾関節を結ぶ線上の外側3分の1の点は、L5領域。
問題125 肩関節周囲炎の内旋制限に対し、拘縮している筋への施術で適切な経穴はどれか。
1. 肩井(けんせい)
2. 曲垣(きょくえん)
3. 天宗(てんそう)
4. 中府(ちゅうふ)
答え: 3
肩関節の内旋制限は、棘下筋の拘縮で起こる。 天宗は棘下筋に位置するため、3が正解。
1. 肩井は僧帽筋。
2. 曲垣は棘上筋。
4. 中府は大胸筋と小胸筋。
次の文で示す症例について、問題126、問題127の問いに答えよ。
「38歳の女性。 1か月前から家事動作で右手首の橈側が痛むようになり、近医にてドケルバン病と診断された。 湿布を続けたが、徐々に痛みが増強したため来院。」
問題126 病態を確認する目的で行うアイヒホッフテストの方法で正しいのはどれか。
1. 母指を中に入れて握った手の尺屈を指示する。
2. 母指を外にして握った手の尺屈を指示する。
3. 母指を中に入れて握った手の橈屈を指示する。
4. 母指を外にして握った手の橈屈を指示する。
答え: 1
ドケルバン病は、長母指外転筋と短母指伸筋の腱鞘部の狭窄性腱鞘炎で、母指を動かすと橈骨茎状突起部に痛みが起こり、アイヒホッフテストやフィンケルスタインテストで陽性となる。 アイヒホッフテストは、「母指を中に入れて握った手の尺屈を指示する」ものであり、1が正解。
フィンケルスタインテストは、被検者の指を伸ばした状態で母指を示指に沿わせ、検者の母指で被検者の母指を押さえるように、被検者の手を軽く握って被検者の手関節を尺屈させる。
問題127 罹患筋に対する鍼施術で適切な経穴はどれか。
1. 孔最(こうさい)
2. 支溝(しこう)
3. 遍歴(へんれき)
4. 手三里(てさんり)
答え: 3
ドケルバン病の患部は長母指外転筋と短母指伸筋の腱鞘部。 ここにあるのは遍歴であり、3が正解。
1. 孔最は腕橈骨筋。
2. 支溝は総指伸筋腱と小指伸筋腱。
4. 手三里は長・短橈側手根伸筋。
問題128 月経痛を訴える患者で鍼灸治療が最も適するのはどれか。
1. 16歳、月経周期は不定、月経1日目に強い疼痛がある。
2. 27歳、月経のたびに胸痛を伴う。
3. 42歳、過多月経で貧血もある。
4. 50歳、月経周期は不定、帯下があり不正性器出血がある。
答え: 1
16歳で、月経周期は不定でも、月経1日目の疼痛のみで、随伴症状がないのは、月経血を排出するために子宮の収縮を促す物質(プロスタグランジン)の過剰分泌による機能性月経困難症と考えられる。 したがって、1が鍼灸治療に適する。
2. 27歳で、月経のたびに胸痛があるのは、月経随伴性気胸の疑いがあり、子宮内膜症を併発している可能性がある。
3. 42歳で、過多月経と貧血は、子宮筋腫や子宮筋腺症などの可能性がある。
4. 50歳で、帯下と不正性器出血は、子宮癌の可能性がある。
2~4いずれも、医師の診断が必要となる。
問題129 次の文で示す患者の仙骨部に施灸する場合、最も適切なのはどれか。
「5歳の男児。 夜間の遺尿が続いている。 鍼灸治療は初めて。」
1. 焦灼灸
2. 打膿灸
3. 知熱灸
4. 透熱灸
答え: 3
5歳児であり、しかも鍼灸治療が初めてなので、最も刺激の少ない知熱灸を選択する。 したがって、3が正解。
問題130 高齢者の運動器の機能評価に用いるのはどれか。
1. PGCモラールスケール
2. MMSE
3. バーセルインデックス
4. ロコモ度テスト
答え: 4
ロコモ度テストは、下肢筋力、歩幅、身体状態・生活状況を計測するもので、運動器の機能評価に用いられる。 したがって、4が正解。
1. PGCモラールスケール(Philadelphia Geriatric Center Morale Scale)は、社会老年学におけるモラールの測定尺度。 17の質問事項に答え、結果を数値化する。 モラールは「幸福な老い」をあらわす概念で、「基本的な満足感をもっている」「自分の居場所があるという感じをもっている」「努力しても動かせない事実は事実として受容できている」とき、モラールが高いと判断される。
2. MMSEはMini Mental State Examinationの略で、認知症の疑いがある被験者のために開発された検査方法。 口頭による質問に答え、30点満点で判定する。
3. バーセルインデックスは、日常生活動作の機能を評価する検査方法。 食事、移乗、整容、トイレ動作、入浴、移動、階段昇降、更衣,排便自制、排尿自制の10項目を、それぞれ自立、部分介助など数段階の自立度で評価するもの。 完全に自立している場合は100点となる。
問題131 承山(しょうざん)への刺鍼が最も有効なスポーツ外傷で、陽性となる徒手検査はどれか。
1. ラックマンテスト
2. トンプソンテスト
3. コーゼンテスト
4. グラスピングテスト
答え: 2
承山、承筋(しょうきん)、飛揚(ひよう)などが治療穴となるのは、後方コンパートメント(ヒラメ筋と腓腹筋)の障害である。 トンプソンテストがコンパートメント症候群の徒手検査であり、2が正解。
1. ラックマンテストは膝前十字靭帯損傷の徒手検査。
3. コーゼンテストは上腕骨外側上顆炎(バックハンドテニス肘)の徒手検査。
4. グラスピングテストは腸脛靭帯炎(ランナー膝)の徒手検査。
問題132 次の文で示す患者の病証に対し、循経取穴で瀉法を行う経穴はどれか。
「36歳の男性。 1か月前に右足の内がえし捻挫を起こした。 現在、腫脹は取れたが、前距腓靭帯部の熱感と動作時の疼痛が残っている。 下腿外側部の自発痛を伴う。 ストレスが増すと痛みは強くなり口苦を自覚する。 舌質は紅、舌辺の舌苔は剥落。 脈は滑。」
1. 内庭(ないてい)
2. 侠渓(きょうけい)
3. 行間(こうかん)
4. 然谷(ねんこく)
答え: 2
前距腓靭帯部と下腿外側部に痛みがあり、口苦を随伴しているので、胆経の病証である。 侠渓は足少陽胆経の榮水穴であり、循経取穴となるので、2が正解。
1. 内庭は足陽明胃経の榮水穴。
3. 行間は足厥陰肝経の榮火穴。
4. 然谷は足少陰腎経の榮火穴。
問題133 素問、霊枢、難経の「治未病」に関して誤っているのはどれか。
1. 病気になる前に予防する。
2. 病の兆候を早期に発見して早期に治療する。
3. 治療すべきタイミングが重要である。
4. 1つの臓を病めば治未病の概念からはずれる。
答え: 4
「治未病」は、陰陽の法則、五行の相生・相克や五臓の特性などを考え、予兆をとらえて病の発生を予防すること、発病したときは早いうちに治療すること、病が他の臓器へ波及しないように手当てすることである。 一つの臓が病んだからと言って、治未病の概念からはずれることはない。 したがって、4が誤りである。
1. 『素問』四気調神大論篇に「聖人は已病を治さず、未病を治す。」とあり、病気になる前に予防することの重要性を説いている。
2. 『難経』七十七難に「治未病とは、たとえば肝の病をみて脾の手当を先に行うように、根本原因を知って、症状が軽いうちに適切な治療を行うことであり、それができるのが上工(すぐれた医者)である。」とあり、病の兆候を早期に発見して早期に治療することを説いている。
3. 『霊枢』逆順篇第五十五に「すぐれた医者は、まだ病が発生していないときに刺す。 それに次ぐ医者は、邪気がまだ盛んでないときに刺す。 それに次ぐ医者は、邪気がすでに衰えて、少気が回復しようとするときに刺す。 下級の医者は、邪気が盛んなときに刺したり、健康そうに見えても虚している人を刺したり、病状と脈象が一致しない病証に刺したりする。 邪気が盛んなときには、鍼を刺してはならない。 もし、その邪の鋭気を迎えて刺すと、元気が損なわれる。 邪気が衰え始めたときに鍼を刺せば、すぐれた効果が得られる。」とあり、治療すべきタイミングの重要性を説いている。
問題134 頸椎の間欠牽引療法を座位で施行する場合、頸椎の牽引角度で最も適切なのはどれか。
1. 屈曲15度
2. 0度
3. 伸展15度
4. 伸展30度
答え: 1
頸椎の牽引療法では、上位か中位か下位か、対象となる頸椎の位置に合わせて、屈曲15~45度で行う。 したがって、1~4の中で最も適切なのは、1の屈曲15度である。
次の文で示す症例について、問題135、問題136の問いに答えよ。
「63歳の男性。 手のふるえ、歩行困難、歯車様の筋強剛がみられる。」
問題135 本患者の特徴的な手のふるえはどれか。
1. コップをつかもうとするときのふるえ
2. ゆっくりと踊るようなふるえ
3. 丸薬を丸めるような手指のふるえ
4. 細かい指先のふるえ
答え: 3
手のふるえと歩行困難に、歯車様の筋強剛がみられるので、パーキンソン病を疑う。 「丸薬を丸めるような手指のふるえ」は丸薬丸め様運動と呼ばれる静止時振戦であり、パーキンソン病でみられる。 したがって、3が正解。
1. 「コップをつかもうとするときのふるえ」は企図振戦であり、小脳疾患でみられる。
2. 「ゆっくりと踊るようなふるえ」はアテトーゼであり、脳性麻痺などによる錐体外路障害でみられる。
4. 「細かい指先のふるえ」は、ストレス、不安、疲労、薬剤の副作用、アルコール依存症の禁断症状、甲状腺機能亢進症などでみられる。
問題136 本患者の臓腑病証に基づいて、九刺による鍼治療を行う場合の組合せで適切なのはどれか。
1. 肺兪(はいゆ) ― 太淵(たいえん)
2. 肝兪(かんゆ) ― 太衝(たいしょう)
3. 脾兪(ひゆ) ― 太白(たいはく)
4. 心兪(しんゆ) ― 神門(しんもん)
答え: 2
本症例は手のふるえ、歩行困難、筋強剛といずれも筋の症状であり、肝病と判断する。 肝兪(かんゆ)と太衝(たいしょう)は、肝の病証に対する兪原配穴(背部兪穴と原穴)であり、2の組み合わせが適切である。
次の文で示す症例について、問題137、問題138の問いに答えよ。
「42歳の男性。 腹痛、腹部膨満感、食欲不振、軟便が2か月続いている。 近医の診察で機能性胃腸症と言われた。 ストレスが多い仕事に就いている。 強いストレスがかかると症状が増悪する。 舌苔は白膩。 脈は弦。」
問題137 最も適切な病証はどれか。
1. 脾胃の病証
2. 脾腎の病証
3. 肝胃の病証
4. 肝脾の病証
答え: 4
腹痛、腹部膨満感、食欲不振、軟便は脾の症状。 ストレスで症状が増悪し、脈弦なので肝も関係している。 したがって、肝脾の病証であり、4が正解。
問題138 本患者の腹痛の性質はどれか。
1. 隠痛
2. 脹痛
3. 刺痛
4. 酸痛
答え: 2
本症例は肝脾の病証であり、ストレスによる肝鬱気滞から、肝気が横逆して肝脾不和となったものと考えられる。 したがって、腹痛の性質は気滞による脹痛であり、2が正解。
隠痛は虚証、刺痛は血瘀(けつお)証、酸痛は気血不足や湿邪による痛みである。
次の文で示す症例について、問題139、問題140の問いに答えよ。
「28歳の女性。 第一子を出産したが、乳房の張り感はなく、母乳の出が悪い。 産後の疲労感はある。 なお、出産時には出血量が多かった。 顔色はくすんだ黄色、舌質は淡白。 脈は虚細。」
問題139 本症例で最も考えられる病証はどれか。
1. 陽虚
2. 痰飲
3. 血瘀
4. 気血両虚
答え: 4
乳房の張り感がなく、産後の疲労感があり、顔色がくすんだ黄色で、脈虚なので気虚。 出産時の出血量が多く、舌質淡白、脈細なので血虚もある。 したがって、気血両虚であり、4が正解。
問題140 本症例の乳汁分泌を促すために頻用されている経穴はどれか。
1. 地機(ちき)
2. 至陰(しいん)
3. 膻中(だんちゅう)
4. 関衝(かんしょう)
答え: 3
乳汁分泌には、気のめぐりの良い状態が必要である。 気会の膻中(だんちゅう)は、気機の調節や補気にすぐれており、母乳の出が悪いときの特効穴となる。 したがって、3が正解。