消費者心理学とマーケティング - 消費者心理学・消費者行動論の研究より - -5ページ目

消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索No6(エグゼクティブ・サマリー)-

消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索(Information searchNo6(エグゼクティブ・サマリー)-として個人的特徴と情報探索の関係を取り上げます。消費者は商品を購買する際に情報の探索を行うことで購買意図を形成します。情報探索の程度は個人差があります。

忙しい方用に、エグゼクティブ・サマリー(参照文献などは本編に載せます)を別途記述しています。そして、本編に関しては記述が終わり次第更新します。

《エグゼクティブ・サマリー》

1.購買前(Pre-purchase)の情報の探索(Information search

消費者は商品を購買する際に情報の探索を行うことで購買意図を形成します

2.情報探索の種類

(1)内部探索(Internal search

・過去の消費経験など記憶からの情報の探索

(2)外部探索(External search

・マスメディアや口コミなど記憶以外の情報源からの情報の探索

3.順序

初めに(1)内部探索(Internal search)、不十分な場合は、(2)外部探索(External search

4.外部探索(External search)の頻度

外部探索(External search)を行うことは消費者の時間や労力などを消費しますので、内部探索(Internal search)で充分なときは内部探索で済ます傾向にあります

5.情報探索の程度と個人差

(1)情報探索に対する態度

情報探索することが得意で好きなタイプと好きでないタイプがいます。情報探索が得意で好きになればなるほど情報探索の程度は増えます

(2)教育程度

教育レベルが上がると情報探索の程度が高くなるという研究が多いです。恐らく(1)の情報探索に対する態度と教育の程度が関係あるのかと思われます。

(3)年齢

シニアはその他のグループ(若者)と比べて情報探索の程度は減少します。原因としては情報処理能力(working memoryなど)の減退があげられると思います。

消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索(Information search)No5

消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索(Information searchNo5-として過去の(商品)知識・経験と情報探索の関係を取り上げます。消費者は商品を購買する際に情報の探索を行うことで購買意図を形成します。情報探索の程度は消費者の過去の(商品)知識・経験と関係があります。

1.購買前(Pre-purchase)の情報の探索(Information search

消費者は商品を購買する際に情報の探索を行うことで購買意図を形成します

2.情報探索の種類

(1)内部探索(Internal search

・過去の消費経験など記憶からの情報の探索

(2)外部探索(External search

・マスメディアや口コミなど記憶以外の情報源からの情報の探索

3.順序

初めに(1)内部探索(Internal search)、不十分な場合は、(2)外部探索(External search

4.外部探索(External search)の頻度

外部探索(External search)を行うことは消費者の時間や労力などを消費しますので、内部探索(Internal search)で充分なときは内部探索で済ます傾向にあります

5.過去の(商品)知識・経験(prior knowledge)と情報探索の程度

過去の(商品)知識・経験と情報探索の程度は多くのケースでU字型を取りますBettman & Park, 1980; Johnson & Russo, 1984)。つまり知識・経験の乏しい顧客(初心者など)は情報検索をあまりせず、顧客の知識・経験量が上がるに連れて情報探索が増えます。しかし、中程度の知識・経験量から知識・経験量の多い(上級)顧客に移るに連れて情報探索は減ります。

6.理由

人間は記憶の中に既存の知識体系knowledge structure)を構築しており、物事の判断を行う際は既存の知識の体系の中から関連情報を取り出して、新しい情報を加味して判断を行います。過去の知識・経験の乏しい顧客は既存の知識の体系があまり構築されておらず、一方過去の知識・経験の豊富な顧客には充分な既存の知識の体系が構築されていると思われます。

(1)過去の知識・経験の乏しい顧客(初心者)

既存の知識の体系があまり構築されていないので、入手できる情報を(効率的に)処理できないため情報探索の程度は少なくなると思われます(Bettman & Park, 1980)。

(2)過去の知識・経験が中程度の顧客(中級者)

過去の知識・経験が中程度の顧客はある程度入手する情報を処理できる反面、上級顧客ほど洗練された情報処理ができないため、情報探索の程度が一番大きくなると思われます。

(3)過去の知識・経験の豊富な顧客(上級者)

既存の知識の体系が非常に構築されているので、①具体的な(既存)商品間の違いを既に知っている、②仮に新しい商品等の情報でも既存知識を使って効率的に情報処理できる、③必要性の高い情報のみに焦点を当てて、不必要な情報を考慮対象から省くことができるなどの効率的に情報処理できる利点があります。そのため情報探索の程度は少なくなると思われます(Johnson & Russo, 1984)

7.マーケティングへの応用

(1)初級者

情報探索の程度は少なくなるため、①以前買ったことがあるから買う、②パッケージが可愛いから買う、③CMなどで知っているから買うなど価格・機能などの情報を徹底した比較するというよりはヒューリスティック 簡便的な(短絡的な)意思決定をする傾向があると思われます。よって前提となる消費者モデルはThe experiential hierarchy になることが多いと思われます。つまり対象物に対するフィーリング購買対象物への信念・考え態度という流れの態度形成になると思われます。よって販売側は詳細な商品情報を提供するよりもパッケージや広告に力を入れることでポジティブな商品イメージを作り込む戦略の方が重要だと思います。

(2)中級者

情報探索の程度は高いが明確な商品イメージがまだ構築されていない段階なため、戦略によっては説得できる可能性の高い顧客層だと思われます。中級者は①記憶内の自分の過去の購買経験(満足度)、②テレビCM、③雑誌情報、③口コミなど幅広い情報を考慮して購買の意思決定を行います。また詳細な細かい上級者用の情報は処理できるほどの知識体系が出来上がっていないと思われます。よって前提となる消費者モデルはAIDMA などで有名なThe standard learning hierarchy になることが多いと思われます。つまり対象物への信念・考え対象物に対するフィーリング購買意図態度という流れの態度形成になると思われます。よって販売側は複雑すぎない情報を幅広い媒体(例、ディラーを使って購買満足度上げる、テレビCM、雑誌情報、口コミ)を使って提供する必要があると思います。

(3)上級者

明確な商品イメージが既に構築されていて情報探索の程度は低い段階です。この段階の消費者は自分の必要とする専門的情報に限って情報を求め、その他の態度形成は過去の消費経験を重視する傾向にあると思われます。よって前提となる消費者モデルはThe low-involvement hierarchy になることが多いと思われます。つまり対象物への信念・考え購買対象物に対するフィーリング態度という流れの態度形成になると思われます。ただし専門的情報に限って探索するので、上記の基本モデルに購買前に専門的情報探索と加えた方が妥当かもしれません。販売側は消費後のアフターサービスなどに力を入れてより良い消費経験を提供すると共に雑誌広告などを通じて上級者の求める専門情報を提供すべきだと思われます。テレビCM・口コミの効果は高くないと思われます

主な参考論文

Bettman,J.R., & Park,C.W. (1980). Effects of prior knowledge and experience and phase of the choice process on consumer decision process on consumer decision processes: A protocol analysis. Journal of Consumer Research, 7- 234-248.

Johnson,E.J., & Russo,J.E. (1984). Product familiarity and learning new information. Journal of Consumer Research, 11- 542-550.

消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索No5(エグゼクティブ・サマリー)-

消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索(Information searchNo5(エグゼクティブ・サマリー)-として商品知識と情報探索の関係を取り上げます。消費者は商品を購買する際に情報の探索を行うことで購買意図を形成します。情報探索の程度は消費者の商品知識と関係があります。

忙しい方用に、エグゼクティブ・サマリー(参照文献などは本編に載せます)を別途記述しています。そして、本編に関しては記述が終わり次第更新します。

《エグゼクティブ・サマリー》

1.購買前(Pre-purchase)の情報の探索(Information search

消費者は商品を購買する際に情報の探索を行うことで購買意図を形成します

2.情報探索の種類

(1)内部探索(Internal search

・過去の消費経験など記憶からの情報の探索

(2)外部探索(External search

・マスメディアや口コミなど記憶以外の情報源からの情報の探索

3.順序

初めに(1)内部探索(Internal search)、不十分な場合は、(2)外部探索(External search

4.外部探索(External search)の頻度

外部探索(External search)を行うことは消費者の時間や労力などを消費しますので、内部探索(Internal search)で充分なときは内部探索で済ます傾向にあります

5.商品知識と情報探索の程度

U字型を取ることが多いと言われています。つまり商品知識が乏しい顧客(初心者)と商品知識が非常にある顧客はそれぞれ別の理由で情報探索の量が少なく、中程度の知識の顧客の情報探索の量が多いケースが多いです。

より詳細な説明は本編(詳細版)で行います。



やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No26:同調No1

やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No26:同調No

今回は同調:Conformityの第1回目です。人間には多数派に同調しやすい傾向があります。有名な実験結果を基にその心理的な背景とマーケティング・一般への応用を考えます。

1.Aschの実験(Asch, 1951, 1952, 1956, sited in Avermaet, 2001

実験の内容を簡単に述べると、標準とされる線を実験参加者に見せて3本の中から標準とされる線と同じ長さの線を選ぶと言うものです。通常のケースでは0.7%の誤答率しかない非常に簡単な問題です。Aschの実験のポイントは7人一組のグループの中に6人のサクラを混ぜたことです。つまり本当に考えて答えるのは7人中1人という状況です。サクラは仕掛けのある12回の問題(critical trial)の中で異口同音に誤った回答を答えました。すると他人の答えに引きずられた結果として通常は0.7%の誤答率しかない非常に簡単な問題に対して37%の誤答率となってしまいました。実験から分かることは、明らかに回答が分かっている問題さえ人間の判断は他人の判断の影響を受けるということです

2.同調しやすい理由(Deutsch & Gerard, 1955, sited in Avermaet, 2001

(1)情報的影響(Informational influence

多数派の意見を正解の証拠として尊重した影響

(2)規範的影響(Normative influence

多数派に嫌われるのを避けることを尊重した影響

3.文化的影響(Bond & Smith, 1996, sited in Avermaet, 2001

個人と集団の強調を重視する文化(アジアなど)の方が同調しやすい傾向にあります。日本人は同調しやすい傾向にあると思います。

4.同調性を高める要因

(1)(多数派の他人との比較による)自信を持っていない(Mausner, 1954, sited in Avermaet, 2001

(2)問題が難しい(Baron, Vandello & Brunsman, 1996, sited in Avermaet, 2001

(3)多数派の人数が多いAsch, 1951, sited in Avermaet, 2001

(4)多数派の意見がそれぞれの自立した意見を思われる(Avermaet, 2001

(5)後の方の回答の際は、それ以前の多数派の回答率が高い(Di Vesta, 1959 sited in Avermaet, 2001

《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!

(1)トップシェアのブランドの強さについて考えて下さい?

トップシェアのブランドの強みは同調性からも説明できます。つまり皆が持っているものを人間は欲しくなる傾向があります。例えばiPodを考えて下さい。町中でiPodを使っているのを見ると同種の競合製品よりもiPodが良く見えてしまうものです(一種の宣伝効果)。

(2)テレビCM効果や口コミ効果について考えて下さい?

同調性の高い人はブランド選択等においてもテレビCMや口コミを参考にしやすいと思われます。私の調査では日本人の方がイギリス人よりもテレビCMや口コミを参考にした店舗選択をしているという結果がでています。

(3)衝動買いとの関連は?

友人等を同伴しての買い物は計画外購買の傾向が高まると言われています。友人に薦められたブランドは情報的影響・規範的影響を考慮すると断れない傾向があります(Solomon, Bamossy & Askegaard, 1999)。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

参考文献

Avermaet,E.V. (2001). Social influence in small groups, in Introduction to social psychology: A European Perspective Third edition, (ed) Hewstone,M. & Stroebe,W. Oxford, Blackwell Publishing.

Solomon,M., Bamossy,G., & Askegaard,S. (1999). Consumer behaviour a European perspective. Essex: Person Education Limited.

やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No25:態度No9

やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No25:態度No

今回は態度:Attitudesの第9回目です。消費者行動に焦点を当てて見ます。消費者行動のモデルにはAIDMA以外にも様々なタイプがあります。

1.態度(attitudes)の構成要素

(1)3要素

態度は(a)対象物に対するフィーリングaffect)(b購買意図behaviour)(c対象物への信念・考えcognition)の3つの要素で構成されるのはコンセンサスとなっています(Solomon, Bamossy & Askegaard, 1999)。分かりやすく言うとa)は感じる、(b)は行動する、(c)考えるではないでしょうか。

2.消費者モデル

(1)The standard learning hierarchy Solomon et al. 1999

c)対象物への信念・考えa)対象物に対するフィーリングb)購買意図態度

日本の実務で頻繁に引用される消費者モデルであるAIDAAIDMAはこのタイプのモデルです。初めに対象ブランドの情報を取得し、記憶内の知識と絡めて考えて、そのブランドに対する信念・考えを形成する(c)。次に考え・信念を評価することでそのブランドに対する感情・気持ちを形成する(a)。最後に購買意図が形成されるAIDMAは注意(Attention興味(Interest欲求(Desire記憶(Memory行動(Action)で、注意と興味が(c)に、欲求と記憶が(a)に、行動が(b)に該当します。

この経路を辿った態度の形成は基本的に長期間持続し、ロイヤルティに結びつきやすいです。

このモデルが有効なのは消費者が熟慮する場合です。すなわち先日紹介した EL Mでいう中心ルートを使用した場合です。関与(意識)が低い商品や消費者に時間的余裕がないケースにはあまり有効な理論ではありません(e.g., Barry & Howard, 1990)。

(2)The low-involvement hierarchy Solomon et al. 1999

c)対象物への信念・考えb)購買(意図)a)対象物に対するフィーリング態度

(ほとんど知られていないでしょうが)Ehrenberg ATR モデルEhrenberg, 1974などがこのタイプのモデルです。初めにそのブランドに対する信念・考えを形成する(c)点は共通です。しかしその後、感情を持つ前に購買します(b)。そして使用した結果として満足・不満足と言うフィーリングが生じます(a)。心理学の理論ではオペラント条件付けが関連しています(関連記事はこちら )。

消費者のブランドへの関与(意識)が低いケースに有効な概念です。そのような場合は購買前にわざわざそのブランドへの感情などは発生しません。むしろ購買後に満足・不満足と言うフィーリングが生じます。皆さん、消しゴムを買うのに購買前に感情が発生しますか?Ehrenbergの研究では繰り返し購入を繰り返すコモディティ商品の例が多いです。

(3)The experiential hierarchy Solomon et al. 1999

a)対象物に対するフィーリングb)購買(意図)c)対象物への信念・考え態度

快楽的な(Hedonic)モチベーションによって態度が形成されるというモデルです。初めに無形の商品特徴(パッケージが可愛い、CMで宣伝していた、友達が持っているなど)を評価することでそのブランドに対する感情・気持ちを形成する(a)、次に購買する、最後に対象ブランドの情報を取得し、記憶内の知識と絡めて考えて、そのブランドに対する信念・考えを形成する(c

ポイントは、従来前提とされていた認知(Cognition感情(Affect)という順番ではなく、感情が認知の先に来ることもあるとした点です(Solomon et al. 1999)。具体的には従来はそのブランドの情報を広告などで提供して初めて消費者はブランドに対してフィーリングを持つとされていましたが、このモデルは、消費者は情報を入手することなく別個にブランドに対するフィーリングを持ちえるとしました。

以前紹介したCMに対する態度(Aad)がブランドに対する態度(Ab)に結びつくというモデル(記事はこちら )もこの類のモデルと思われます。

《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!

(1)新車を買う若者とシニア向けのマーケティング戦略の違いを考えて下さい。

若者は(a)車の購入経験が浅い、(b)車に関する関与(興味)が高い、(c)(アイデンティティを模索する時期なので)所有するもので自分のアイデンティティを表現したがる(関連記事はこちら )傾向があると思います。一方、シニアは(a)車の購入経験が長い、(b)車に関する関与(興味)が相対的に低い、(c)過去・ヒストリーに関するアイデンティティが強くなる(関連記事はこちら )、(d)情報処理の能力が低下する傾向があると思います。

若者にはAIDMAなど(1)のThe standard learning hierarchyモデル及び(3)のThe experiential hierarchyが適合すると思います。つまり、雑誌広告によって車の詳細な情報を提供すると共にテレビCMによって若者に「この車に乗ったら理想の自分に近づける」などと思わせるべきだと思います。

一方、シニアは過去の使用経験が長いので以前乗っていたブランド・メーカーに満足していたか・満足していなかったかが出発点になります。基本的にシニアは車に対する関与の程度は若者よりも低いと思われるで(1)のThe standard learning hierarchyモデルは有効でないと思います。むしろ(2)The low-involvement hierarchyの方が有効だと思います。情報処理能力(具体的には作動記憶など)に低下が見られるので、シニアは車の選択する際、メーカー・ディーラー間の比較の程度は若者よりも少なく、既知のメーカー・ディーラーで再購入する傾向がありますe.g., Lambert-Pandraud, Laurent & Lapersonne, 2005)。よってCM・雑誌広告に資金を投入するよりも徹底したディーラーを巻き込んだアフターサービスの方が重要だと思います。ただし過去・ヒストリーに関するアイデンティティが強くなるので、昔流行っていた・乗っていた車の復刻版や思い出させるようなCMの効果はあると思います。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

参考文献

Barry.T & Howard.D, (1990), A review and critique of the hierarchy of effects in advertising, Journal of Advertising, 9, 121-135.

Ehrenberg.A, (1974), Repetitive advertising and the consumer, Journal of Advertising Research, 14, 25-34.

Lambert-Pandraud,R., Laurent,G., & Lapersonne,E. (2005). Repeat purchasing of new automobiles by older consumers: Empirical evidence and interpretations, Journal of Marketing, 69, 97-113.

Solomon,M., Bamossy,G., & Askegaard,S. (1999). Consumer behaviour a European perspective. Essex: Person Education Limited.

やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No25:態度No8

やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No25:態度No

今回は態度:Attitudesの第8回目です。態度と実際の行動の相関関係②を取り上げます。態度によって実際の行動を予測することは可能でしょうか?

1.合理的行為理論Theory of reasoned action

(1)概念

態度(attitudes)と主観的規範subjective norm)が行為の意図を形成し、行為の意図が実際の行動に結びつくとした理論Fishbein & Ajzen, 1975, sited in Bohner, 2001)。ここで態度=期待(主観的確率) x 価値とされます。例えば会社に行く際にバスを使うとお金を節約できるが遅刻になると言うケースでは + の想定される結果(お金の節約)と - の想定される結果(遅刻)を総合的に考慮して態度は形成されます。主観的規範とは重要な他人(家族など)がどの程度その行為を期待しているかという概念です(Bohner, 2001)。

(2)態度と実際の行動の相関関係

消費者行動を含む多くの分野で、実際の行動を予測することができたBohner, 2001)。

2.計画的行動理論Theory of planned behaviour

(1)概念

合理的行為理論の概念に加えて、行動統制感perceived behavioural control)が行為の意図を形成する要素に加えられた概念(Ajzen, 1991, sited in Bohner, 2001)。行動統制感とは期待される意図する行為の実行の容易さですBohner, 2001)。

(2)態度と実際の行動の相関関係

実行することが困難な行動については計画的行動理論の行為予測可能性の方が合理的行為理論よりも高いが、安易な行動については計画的行動理論の行為予測可能性の方が高いわけではない(Kelly & Breinlinger, 1995, sited in Bohner, 2001)。

3.批判

上記の2つの概念は意識的な熟慮した行動の予測力はあるが、無意識な熟慮しない行動に関しては予測力が足りないという批判があります(e.g., Fazio, 1990, sited in Bohner, 2001)。

4.MODEモデル

上記の2つの概念はその人にそのモチベーション機会opportunity)がある時は詳細な検討をするが(ELMの中心ルートに相当)、これらが欠けた場合はアクセス可能性の高い態度(例、実際の体験、直近の出来事による態度)が自動的に活性化されるというモデル(Fazio, 1990, sited in Bohner, 2001)。例えば費用対効果を考えてアマゾンドットコムでDVD(イギリスは値段が路面店より安いものが多い)を買うAさんが、時間がない時にたまたまHMVの前を通って、前回HMVで買ったDVDもアマゾンとあまり値段が変わらなかったことを思い出してHMVDVDを買うケースもあると思われます。

《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!

(1)結婚前からスポーツカーが好きなAさん(30歳)に子供が生まれました。車を買う際にもAさんは未だにスポーツカーに憧れているとします。Aさんは憧れのスポーツカー(700万円)を買う可能性は高いと思いますか?

計画的行動理論を前提に考えると、購買意図に影響を与える要因は、態度、主観的規範と行動統制感です。態度は明らかにそのスポーツカーに憧れています。ただし主観的規範を考慮すると、奥さんは子供がいるのでファミリーカーを希望すると思います。また行動統制感を考慮すると、30歳のAさんには700万円の車は高すぎるかもしれません。よってAさんが買う可能性はあまり高くないと思われます。

(2)甲子園で優勝した早稲田実業の斉藤投手。彼が今後どのような進路を取るか(日本のプロ野球・(米)メジャーリーグ・早稲田大学)を予測してください。

計画的行動理論を前提に考えると、行動意図に影響を与える要因は、態度、主観的規範と行動統制感です。本人の態度についての予想は難しいですね。甲子園・日米野球で活躍したことから考えてプロ野球に進みたいという希望の方が膨らんでいるのではないでしょうか?主観的規範に関しては誰が進路決定に関しての重要人物でしょうか?恐らく、両親と早稲田実業の監督だと思います。両親の希望は100%近くの可能性で早稲田大学に進学できる状況を考えると大学に進学してから4年後にプロに行くなり・就職するなりを考えて欲しいと思っているのではないでしょうか?高卒でプロに入って怪我をしたりするリスクを考えると大学進学が親の意見だと思います。早稲田実業の監督も早稲田大学の系列高校の監督であることを考えると本音は大学進学を薦めたいのではないでしょうか?行動統制感に関してはプロ野球へ進む希望を出したら(日・米)プロ球団での争奪戦になるのは見えています。プロに進んで成功する可能性は日本のプロ野球に進んだ場合の方がアメリカよりも高いと思います。ここでは成功の確率を(怪我のリスクもあるので)50%30%とそれぞれします。結論として、プロ野球(特にメジャーリーグ)に進みたい本人の気持ちの大きさと、周囲の人物の大学進学という希望及びプロでの失敗のリスクの大きさを天秤にかけて決定すると思います。(本人の希望も甲子園で活躍するまでは大学進学であったこともあり)本人のプロに進みたいと言う気持ちは周囲の意見や失敗リスクを打ち消す程の大きさではないと思います。よって私の予想は大学進学です。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

参考文献

Bohner,G. (2001). Attitudes, in Introduction to social psychology: A European Perspective Third edition, (ed) Hewstone,M. & Stroebe,W. Oxford, Blackwell Publishing.

やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No23:態度No7

やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No23:態度No

今回は態度:Attitudesの第7回目です。態度と実際の行動の相関関係①を取り上げます。態度によって実際の行動を予測することは可能でしょうか?

1.古典的研究

古典的研究においては態度と実際の行動の相関関係はあまり高くないとされました(Bohner, 2001)。

1930年代のアメリカ(アジア人に対する偏見が今よりも激しい時代)でLapiereは若い中国人のカップルと一緒に旅行をしてホテルで宿泊を断られたことはなかった(251箇所中1箇所のみ)にも関わらず、6ヵ月後の調査で中国人に宿泊をさせるかを尋ねたところ92%のホテルで宿泊を拒否すると答えました(Lapiere, 1934, sited in Bohner, 2001)。

2.態度と行動の不一致の原因

不一致の原因の一つとして、両者の測定が一致していないことが挙げられます(Bohner, 2001)。つまり宗教一般の態度の測定から次週に特定の宗教的催しに参加するか否かと言う特定の行動は正確には予想できないということです(Ajzen & Fishbein, 1977, Bohner, 2001)。

3.一致原則(Correspondence principle

態度と行動の相関関係は具体的な態度を調査してそれに一致した具体的な行動を予測するケースに高まると考えられます(Ajzen & Fishbein, 1977, Bohner, 2001)。先の中国人のカップルの件も中国人一般に対する態度ではなく、白人に伴われた中国人のカップルとして態度測定を行えば、実際の行動と一致する結果が得られたかもしれません。

4.集団の原則(Aggregation principle

態度と行動の相関関係は一般的な態度を調査してそれに一致した一般的な行動を予測するケースに高まると考えられます(Weigel & Newman, 1976, Bohner, 2001)。

《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!

(1)消費者行動に関する文献(本など)の消費者の態度に関する記述を基にマーケティング戦略を打ちましたが想定通りの行動を消費者はしませんでした。なぜだと思いますか?

過去の調査結果はあくまでも仮説を構築するため用のものと考えるべきです。一般的な態度の記述は個別企業のそれぞれの状況には対応しません。必要なことは理論を基に仮説を立てたらより実証のリサーチ(個別の実情に適合したアンケート調査・テストマーケティングなど)を実施することです。


(2)なぜ態度と実行が一致しないのですか?

今回取り上げた内容以外に考えられるのが、(a態度にはそれぞれ強弱があるということ、(b態度以外にも行動に影響を与える要因があること、(c正直に回答者が態度を表明するかは分からないことなどが挙げられます。(a)に関しては次回取り上げます。(b)に関してはその次に取り上げます。(c)に関してですが以前取り上げたように アンケート回答者が正直に自分の態度を表明したくないケース(例、人種問題・偏見などに絡む態度)や本当の態度が自分にも明確になっていないケースがあります。そのような暗黙な(implicit)な態度の測定には特別な方法が心理学では用いられることが多いです(例、IAT、プライミング)。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

参考文献

Bohner,G. (2001). Attitudes, in Introduction to social psychology: A European Perspective Third edition, (ed) Hewstone,M. & Stroebe,W. Oxford, Blackwell Publishing.

消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索No4-

消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索(Information searchNo4-として過去の使用による満足度と情報探索の関係を取り上げます。消費者は商品を購買する際に情報の探索を行うことで購買意図を形成します。過去の使用による満足度の程度は情報探索の程度とも関係があります。

今回はサマリー版を省略します。

1.購買前(Pre-purchase)の情報の探索(Information search

消費者は商品を購買する際に情報の探索を行うことで購買意図を形成する

2.情報探索の種類

(1)内部探索(Internal search

・過去の消費経験など記憶からの情報の探索

(2)外部探索(External search

・マスメディアや口コミなど記憶以外の情報源からの情報の探索

3.順序

初めに(1)内部探索(Internal search)、不十分な場合は、(2)外部探索(External search

4.外部探索(External search)の頻度

外部探索(External search)を行うことは消費者の時間や労力などを消費しますので、内部探索(Internal search)で充分なときは内部探索で済ます傾向にある

5.過去の使用による満足度の程度と情報探索の程度

過去の使用によって満足度が高い場合は次回以降の同一カテゴリーの商品の購買の際の情報探索の程度は減少する傾向にある(Guo, 2001)

6.具体例

車の購買に当たって、過去の購買による満足度が高いケースではディーラー探索、メディア(CMなど)探索の程度が減少した(Kiel & Layton, 1981)。

7.マーケティングへの応用

(1)顧客満足度を高めることが如何にリピートオーダーにつながりやすいかが分かります。通常消費者が購買する際の考慮対象は34社(ブランド)(consideration sets)と言われています。顧客満足度が高いと更に考慮対象が減少することになります。一方、満足しなかった顧客はより多くの競合を考慮対象にします。すると、顧客満足度が高いケースでは23社(ブランド)が考慮対象になり、顧客満足度が低いケースでは56社(ブランド)が考慮対象になることもありえます。

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主な参考論文

Kiel,G.C., & Layton,R.A. (1981). Dimensions of consumer information seeking behavior. Journal of Marketing Research, 233-239.

Guo,C. (2001). A review of consumer external search: Amount and determinants. Journal of business and psychology, 15, 505-519.

やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No23:態度No6

やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No23:態度No

今回は態度:Attitudesの第6回目です。態度と情報処理の関係を取り上げます。人間は態度に適合する情報を知覚・記憶・思い出しやすい傾向があります。

1.態度による選別(Attitudinal selectivity

(1)概念

人間は自分の態度に適合する情報を情報処理関連記事はこちら しやすい傾向があります。つまり、自分の態度に適合する情報を知覚・記憶・思い出しやすい等の傾向がありますBohner, 2001)。

(2)選択的露出(Selective exposure

人間は自分の態度に適合する情報を選択的に探索する傾向があります。一方、自分の態度に対立する情報に関しては探索することを避ける傾向がありますBohner, 2001)。例えば、サッカーの日本代表を熱狂的に応援している人は日本代表に肯定的な記事に関しては必死に読むが、否定的な記事に関しては無視して読まないことが挙げられます。

(3)選択的知覚・判断(Selective perception and judgement

実際の日常生活では上記のように気に入らない情報を避け続けることはできません。そこで強制的に態度に適合・適合しない情報を与えられた人間は、適合する情報に関してはより正確に、適合しない情報に関しては歪曲して知覚する傾向があります(Festinger, 1957, sited in Bohner, 2001)。つまり日本代表のファンは、日本代表に肯定的な記事は詳細にそのまま知覚しますが、否定的な記事に関しては自分の都合の良い方に解釈して知覚・理解する傾向にあります。

(4)選択的記憶(Selective elaboration and memory

想起(recall:思い出すこと)は態度によって選択な傾向があります(Bartlett, 1995, sited in Bohner, 2001)。ただし最近の研究によると、この効果はそれ程大きくなく、態度に対立する情報の方が肯定的な情報よりも思い出されやすいようです(Cacioppo & Petty, 1979, sited in Bohner, 2001)。

《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!

(1)私の夫はヘビースモーカーでタバコをいつまでも止めません。止めるように言うと「タバコを吸い続けても長い生きする人はいる」など都合の良い理屈をつけます。なぜ?

選択的露出もしくは選択的知覚・判断による影響によって都合の良い情報タバコを吸い続けても長い生きする人はいる)だけを選択的に読んだり、知覚しているのでしょう。



(2)なぜマーケターにとって消費者の態度を理解することや広告などに態度を変容させることが重要なのですか?

自社商品・サービスに肯定的な態度を持つ消費者は様々な情報処理の段階(知覚・記憶・想起など)で自社(ブランド)に都合よく情報を処理してくれるからです。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

参考文献

Bohner,G. (2001). Attitudes, in Introduction to social psychology: A European Perspective Third edition, (ed) Hewstone,M. & Stroebe,W. Oxford, Blackwell Publishing.

やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No22:態度No5

やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No22:態度No

今回は態度:Attitudesの第5回目です。精緻化見込みモデルElaboration likelihood modelELMを取り上げます。私見では、このモデルを理解しない限り消費者行動の理解はできないと思えるほど重要なモデルです。

1.精緻化見込みモデル(Elaboration likelihood modelELM

(1)概念

説得(広告など)による態度の変化には2通りの情報処理内容はこちら )が行われることを提示したモデル(Petty, Cacioppo & Schumann, 1983)であり、1980年代以降の研究の流れを方向付けたモデルBohner, 2001)。

(2)ポイント

中心ルート(central route)と周辺ルート(peripheral route) に分けて、消費者の情報処理を仮定したこと。

(2-1)中心ルート

メッセージのより詳細な検討が行われるルート。つまり情報処理モデルの仮定通り、広告などのメッセージ関連情報に注意を払い、記憶内の既存知識と関連付けて自分の態度を形成するルートです。一度形成された態度はより持続的。

(2-2)周辺ルート

中心ルートが使用されない場合、人間は詳細な検討を行わずに、簡略的な検討((古典的、オペラント)条件付け、ヒューリスティックなどの利用)によって態度が形成されます。具体的には好きなパッケージ、メッセージの響きが良い、以前使った、有名人が宣伝しているなどの手がかりを基にして態度が形成されます。

2.中心ルート・周辺ルートの使用される条件

(1)中心ルート

下記の一定の条件を満たした場合。

(1) 消費者がしっかりと考えるというモチベーション (motivation) がある場合。

(2) 消費者が情報処理する能力的余裕(例、情報量が多すぎない、忙しすぎない、理解可能など)がある場合。

(2)周辺ルート

中心ルートが使用されない場合

3.論拠の強いメッセージの必要性

(1)中心ルート

詳細な検討が行われるため論拠の強いメッセージによって如何に説得するかが重要となる。そのため論拠の強いメッセージの方が弱いメッセージよりも効果的

(2)周辺ルート

メッセージに関して詳細な検討が行われないため、論拠の強弱による説得効果の差はない

《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!

(1)家を買う際は中心ルートと周辺ルートのどちらが一般的に使われると思いますか

消費者のモチベーションは値段によっても左右されます(関連する消費者行動の記事はこちら)。よって一般的には中心ルートを使って、入手できる限りの情報(雑誌、インターネット、友人の口コミなど)と自分の記憶にある知識(エリア、相場など)を基に判断すると思われます。

(2)資生堂のTUBAKICMを見てTUBAKIを買いました。中心ルートと周辺ルートのどちらが使われていると思いますか?

微妙な判断です。有名人が出ているので普段よりもしっかりとCMを見て詳細な商品の効用などの検討を行って購入した消費者は中心ルートを使っていると思います。一方、CMに出ている女優に憧れてこのようになりたいと思ってTUBAKIを購入した消費者は周辺ルートを使用していると思います。

(3)このモデル(ELM)はどのような観点でマーケティングの発展に貢献したのですか?

これ以前の消費者モデル(AIDAAIDMAなど)は中心ルートのみを前提としていました。周辺ルートの存在・重要性を提案した点がこのモデルの功績だと思います。その為、1980年以降は周辺ルートの消費行動の影響の研究が非常に盛んに行われ、理論的な発展が見られました。皆さんも中心ルートを使って(詳細に情報を集めて)購買の意思決定をするケースはどれほどありますか?人間はそれほど詳細に情報の検討を多くのケースではしません。それよりもパッケージが気に入ったから、友人が持っているから、CMでしていたからなどの非合理的な判断の占める割合の方が多いと思います。(関連記事はこちら 自社の商品特性や顧客層によっては中心ルートを前提とするモデルで考えると顧客が見えなくなります。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

参考文献

Bohner,G. (2001). Attitudes, in Introduction to social psychology: A European Perspective Third edition, (ed) Hewstone,M. & Stroebe,W. Oxford, Blackwell Publishing.

Petty,R.E., Cacioppo,J.T., & Schumann,D. (1983). Central and peripheral routes to advertising effectiveness: The moderating role of involvement. Journal of consumer research, 10, 135-146.