消費者心理学とマーケティング - 消費者心理学・消費者行動論の研究より - -6ページ目

消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索No3-

消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索(Information searchNo3-として消費者の知覚リスク(perceived risk)と情報探索の関係を取り上げます。消費者は商品を購買する際に情報の探索を行うことで購買意図を形成します。知覚リスクの程度は情報探索の程度とも関係があります。

今回はサマリー版を省略します。

1.購買前(Pre-purchase)の情報の探索(Information search

消費者は商品を購買する際に情報の探索を行うことで購買意図を形成します

2.情報探索の種類

(1)内部探索(Internal search

・過去の消費経験など記憶からの情報の探索

(2)外部探索(External search

・マスメディアや口コミなど記憶以外の情報源からの情報の探索

3.順序

初めに(1)内部探索(Internal search)、不十分な場合は、(2)外部探索(External search

4.外部探索(External search)の頻度

外部探索(External search)を行うことは消費者の時間や労力などを消費しますので、内部探索(Internal search)で充分なときは内部探索で済ます傾向にあります

5.知覚リスク(perceived risk

知覚リスクとは購買に伴って生じうるロスのこと(Peter & Ryan, 1976)。例えば薬を購入した際に副作用を確かめずに購入した場合の(健康上の)ロスは大きいと言えます。

7.知覚リスクの区分(Solomon, Bamossy & Askegaard, 1999)

(1)金銭的リスクmonetary risk

金銭に関わるリスク(例、値段の高い商品)(詳細は前回の記事参照

(2)機能的リスクfunctional risk

機能的意味に関わるリスク(例、ハイテクで複雑な商品)

(3)物理的なリスクphysical risk

健康等に関わるリスク(例、薬、医療)

(4)社会的リスクsocial risk

自尊心に関わるリスク(例、服、宝飾品、車、家)

(5)心理的リスクpsychological risk

帰属・ステータスに関わるリスク(例、高価な贅沢品)

8.知覚リスクの程度と情報探索の程度

基本的には知覚リスクの程度が上がると情報探索の程度が上がります。つまり予想されるロス(例、金銭的、健康的、自尊心的ロス)が大きいほどより事前に多くの情報を消費者は集めます。

9.マーケティングへの応用

(1)区分

自社製品・サービスが知覚リスクの高いか低いかを判断することが重要です。

(2)知覚リスクが高い商品

重視すべきマーケティング情報はそれぞれのリスクのタイプによって異なると思われます。例えば、機能的リスクが高い商品に関しては情報量が多いため雑誌広告などの方が好ましいと思われます。一方、社会的・心理的リスクの大きい商品に関しては商品イメージが重要なのでテレビ広告の方が向いていると思われます。

更新は、心理学のお勉強(態度:Attitude No5)を明日に行う予定、消費者心理学(情報の探索No4)を明後日に行う予定 (多忙なため更新の頻度はいずれかの記事を毎日更新することに変更しています)

情報の探索(Information searchNo4紹介

消費者の購買前の情報探索について取り上げます。No4では過去の使用による満足度が情報検索の程度に与える程度について取り上げます。

心理学のお勉強(態度:Attitude No5)の紹介

精緻化見込みモデル(Elaboration likelihood modelELMを取り上げます。私見では、このモデルを理解しない限り消費者行動の理解はできないと思えるほど重要なモデルです。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

主な参考論文

Peter,J.P., & Ryan,M.J. (1976). An investigation of perceived risk at the brand level. Journal of Marketing Research, 13, 184-188.

Solomon,M., Bamossy,G., & Askegaard,S. (1999). Consumer behaviour a European perspective. Essex: Person Education Limited.

やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No21:態度No4

やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No21:態度No

今回は態度:Attitudesの第4回目です。自己知覚理論Self-perception theory)を取り上げます。自己知覚理論によって説得の有名な理論のフット・イン・ドア・テクニックのメカニズムを説明できます。

なお、今回から名前を「やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)に変えます。

1.自己知覚理論(Self-perception theory

(1)概念

人間は、外部の観察者のように、自分の行動やその外的状況を観察することで自分の内的要因(態度など)を推論しているという理論(Bem, 1965, 1972, sited in Bohner, 2001)。実は、前回取り扱った認知的不協和の理論(記事はこちら )を不協和という概念を使わずに同様の現象を説明できるということで脚光を浴びた理論です。例えば、どうでも良い商品(特に強い好き・嫌いという態度のない商品)を買ってしまった時、人間は自分の行動を自分で観察します。もし好きでないのならば何で買ってしまったのだろう?買ったのだから好きだろう!! 

(2)ポイント(Solomon, Bamossy & Askegaard, 1999

・人間は(習慣から)買った商品に対して買った後からポジティブな態度を持つと考えられている

関与の低い商品に成り立しやすい理論:関与の高く(興味が強く)好き・嫌いな態度がはっきりしている商品に対しては成り立ちにくい

(3)フット・イン・ドア・テクニック

初めに大きな依頼をするよりも、初めに小さな依頼を受託させた方がその後の大きな依頼を受け入れさせやすいというテクニックFreedman & Fraser, 1966, sited in Solomon, Bamossy & Askegaard, 1999)。例えば、Aさんは友人に自分の子供の面倒を半日見て欲しい時に初めから「半日面倒を見て」と行ったら断られる可能性も高いと思います。しかし、初めは「1時間だけ」と言って受託してもらい、その後に「事情が変わって半日に延長して」と言うと受け入れてもらえる可能性は高まると思います。

(4)自己知覚理論とフット・イン・ドア・テクニック

自己知覚理論を使うとフット・イン・ドア・テクニックの効果的な理由が分かりますSolomon, Bamossy & Askegaard, 1999)。一度、友人が受託すると、その友人は自分の行為を観察して、「自分はAさんの手助けを本当はしたいいのだ」と思い、その後の半日というお願いも受託してしまうのだと思われます。

《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!

(1)販売員に薦められるまま服を買ってしまった服を購買後に好きになることもあります。なぜですか?

これは前回の認知的不協和の記事 で取り上げたのと同じ内容ですが、その時と別の解釈をします。販売員に言われるがまま買ってしまっても、買ったという行為を通じて「自分は**というタイプの服が好き」という自己知覚が出来上がってしまい、後になってその服を気に入るのだと思います。前回の認知的不協和の説明と比較してください。

(2)上司に自分の構想した新規投資案(1億円)を実施させたいです。どのような手順で行うべきですか?

初めから1億円の投資案件を持って行っても上司は慎重に構えてしまいます(会社規模などにもよりますが、この事例ではそのように仮定します)。その際はフット・イン・ドア・テクニックを使うべきです。例えば、「市場調査をしたいので調査会社やコンサルティング会社と100万円程度(非常に小規模)のプロジェクトをさせてください」と切り出すのは如何でしょう?自社のみでプロジェクトを実施するのではなく、外部を雇って小額だけどお金を使わせるのがポイントだと思います。できればオブザーバーとしてその上司もプロジェクトに形だけでも関わらせましょう。そしてその調査の結果として1億円の新規投資案を持っていった方が、自社や自分だけの調査報告を基にするよりも効果的だと思います。初めは上司が警戒しない程度に足を踏み込ませ、その後、徐々に新規投資案に引きずり込むのがコツです

更新は、やさしい心理学とその実践的応用(態度:Attitude No5)を明日の午前中に行う予定。本編(情報の探索No3)の更新は明日の夕方に行います。

やさしい心理学とその実践的応用(態度:Attitude No5)

No5として説得(精緻化見込みモデル:ELMについて取り上げます。1980年代以降の説得の研究の流れを作った理論です。マーケターには必須の理論(私見では最も重要な理論)です。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

参考文献

Bohner,G. (2001). Attitudes, in Introduction to social psychology: A European Perspective Third edition, (ed) Hewstone,M. & Stroebe,W. Oxford, Blackwell Publishing.

Solomon,M., Bamossy,G., & Askegaard,S. (1999). Consumer behaviour a European perspective. Essex: Person Education Limited.

消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索No2-

消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索(Information searchNo2-として商品の値段と情報探索の関係を取り上げます。消費者は商品を購買する際に情報の探索を行うことで購買意図を形成します。情報探索の程度は商品の値段とも関係があります。

1.購買前(Pre-purchase)の情報の探索(Information search

消費者は商品を購買する際に情報の探索を行うことで購買意図を形成します

2.情報探索の種類

(1)内部探索(Internal search

・過去の消費経験など記憶からの情報の探索

(2)外部探索(External search

・マスメディアや口コミなど記憶以外の情報源からの情報の探索

3.順序

初めに(1)内部探索(Internal search)、不十分な場合は、(2)外部探索(External search

4.外部探索(External search)の頻度

外部探索(External search)を行うことは消費者の時間や労力などを消費しますので、内部探索(Internal search)で充分なときは内部探索で済ます傾向にあります

5.商品・サービスの価格と情報探索の程度

基本的には商品・サービスの値段が上がると情報探索の程度が上がります

6.具体例

(1)車(Kiel & Layton, 1981

・値段が上がると情報探索を行う時間が増える

・予想される下取り価格(trade-in valuation)が高くなると、探索するディーラー数・メディア探索数・友人への探索数が増える

(2)家具(Claxton & Fry & Portis, 1974

・値段が上がると情報探索の程度が増える

(3)小型(200ドルまで:ただし1966年の調査)の家電(Udell, 1966

・値段が上がると情報探索の程度が増える

・最も有益な情報源として、33%は過去の経験(内部探索)、19%は友人との議論(外部探索)を挙げた

(4)食料品以外(Non-food)(Bucklin, 1966

・値段が上がると情報探索の程度が増える

15ドル以下(1966年時点)の買い物は、1つの店舗のみは61%、複数店舗の探索は39%

100ドル以上の買い物では、1つの店舗のみは37%、複数店舗の探索は64%

《注意》

全ての消費者において値段が上がると情報探索の程度が増える訳ではありません。あるぶらんどの過去の使用経験の長い消費者は新しいモノを買う際に少数の探索しないこともリサーチされています(e.g., Newman & Staelin, 1972)。

(5)食料・雑貨品(grocery shopping

通常、複数店舗の比較をする人は22%、たいてい1店舗のみが78%(内、常に1店舗は29%

店舗内で商品間の価格の比較を最低で1ヶ月に1度するのは42%、あまり比較しないのは21%、決して比較しないのは36% Urbany, Dickson, & Sawyer, 2000)。

7.まとめ

(1)基本的には値段が上がると情報探索の程度が上がると思われます。ただし、この傾向には消費者の過去の使用経験など様々な要素が絡み合います。

(2)食料品など繰り返し購入され、それぞれの値段が高くない商品の場合は、外部探索はあまり重視されずに、過去の使用経験である内部探索が中心です。つまり消費者は過去の使用満足などに基づいて日頃購入する商品を数種類決めており、それらを持ち回りで購入しているに過ぎないと思われます(Ehrenberg. 1974, 1990)。(詳しくはこちら

主な参考論文

Bucklin,L.P. (1966). Testing Propensities to Shop, Journal of Marketing, 30, 22-27.

Claxton,J.D., & Fry,J.N., & Portis,B. (1974). A Taxonomy of Prepurchase Information Gathering Patterns, The Journal of Consumer Research, 3, 35-42.

Ehrenberg.A, (1974), Repetitive advertising and the consumer, Journal of Advertising Research, 14, 25-34.

Ehrenberg.A, (1990), Double Jeopardy Revisited, Journal of Marketing, 54, 82-91.

Kiel,G.C., & Layton,R.A. (1981). Dimensions of consumer information seeking behavior. Journal of Marketing Research, 233-239.

Newman,J.W,.& Staelin,R. (1972). Prepurchase Information Seeking for New Cars and Major Household Appliances, Journal of Marketing Research, 9, 249-257.

Udell,J.G. (1966). Prepurchase Behavior of Buyers of Small Electrical Appliances, Journal of Marketing, 30, 50-52.

Urbany,J.E., Dickson,P.R., & Sawyer,A.G. (2000). Insights into cross- and within- store price search: Retailer estimates vs. consumer self-reports. Journal of Retailing, 76, 243-258.

心理学のお勉強(社会心理学)No20 :態度No3

心理学のお勉強(社会心理学)No20 :態度No

今回は態度:Attitudesの第3回目です。物事に対して好き・嫌いなどの比較的持続する態度を形成し、その態度がその後の社会行動(消費行動など)に影響を及ぼします。今回はどのように態度が変容するかを説明する有力な理論である認知的不協和の理論cognitive dissonance theory)を紹介します

1.認知的不協和の理論(cognitive dissonance theory

(1)概念

人間は自分の期待(認知)していたこと(態度)と実際が異なる場合はその状態を不快に感じ、不協和を解消する方向で態度の変化が起き易いという理論(Festinger, 1957, 1968, sited in Bohner, 2001)。不協和解消の手段としては、(a)不協和な認知要素の一方を過大評価させて、(b)不協和な認知要素の一方を過小評価させて、(c新しい協和関係を追加することで協和関係にするなどが挙げられます。

有名な実験例(Festinger & Carlsmith, 1959, sited in Bohner, 2001)は下記の通りです。実際は非常に退屈な実験に学生を参加させ、片方のグループには20ドル、もう一方のグループには1ドルの実験参加料が支払われました。学生の課題は実験終了後に他の順番を待っている生徒に面白い実験だったと伝えることです。実験後の調査によると20ドルの報酬を貰った学生より1ドルの報酬の学生の方が(実際にはつまらない)実験を面白かったと考えていることが分かりました。つまり、実際にはつまらなかった実験と他の生徒に面白い実験だったと伝えたこととの不協和が生じ、報酬を20ドル貰った生徒はお金を貰ったからうそをついたと思えるが、1ドルしか貰っていない生徒は実際につまらなかった実験を面白かったと思い込むことで不協和を解消したと思われます。

《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!

(1)先日のボクシングの亀田興毅選手に対するバッシングが起きたのでしょうか?

試合前と試合後のマスコミや世間の態度の豹変の一因は認知的不協和の理論cognitive dissonance theory)で説明できると思います(詳細な記事はこちら )。つまり当初のファンの態度は「亀田選手は非常に強いボクサーだった」と思います。しかし実際の試合のパフォーマンスは期待されたほどではなかった。よって当初の態度と実際の試合内容の間に不協和が生じました。そこで取られる可能性のある不協和の解消は(a)亀田選手の実力を当初よりも低いものと置き換える、(b)亀田選手が本来の実力を試合で出し切れなかったと考える、(c)相手のラムエダ選手の調子が非常によかったなどだと思います。ジム関係者の見解は(b)で、亀田選手は初めての世界戦であったことと、階級を下げるための減量のため本来の実力がでなかったと考えているようです。一方、マスコミ・ファンなどの見解は(a)で、亀田選手がいままで勝ち続けたのは(弱い相手とのみ試合を組んだ)マッチメークの御陰などを述べて、亀田選手の実力を当初よりも低いものと置き換えています。

(2)マーケティングへの応用は? 

認知的不協和の理論は購買後の満足・態度の変化を説明するのに重要な理論ですe.g, Solomon, Bamossy & Askegaard, 1999)。例えばA子さんが販売員に薦められるまま服を買ってしまったとします。家に帰る途中は失敗したと後悔していたとしても、テレビCMを見ると宣伝されていたり、友人に似合うねなどと言われたりすると「やっぱり買って良かった」と態度が変化することは多いと思います。別にCMや友人から褒められなくても、鏡で見るなどして態度の変化が生じることも多いです。このように消費者は購買時点では後悔していても一旦買ってしまうとその後に好意的な態度に変わることが頻繁に観察されていますマーケターに重要なのは消費者の態度の変化を後押しするような戦略(テレビCMなど)を打つことです。また、消費者の関与involvement)の程度によって態度の変容の程度が異なります。つまり消費者がより意識している商品・サービスの場合の方が態度の変化は生じやすいですe.g, Solomon, Bamossy & Askegaard, 1999)。

(3)先日、イギリスに旅行するためにチケットを買おうとしたところ、ロンドンへの直行便は取れずにオランダ経由のKLMしか予約できませんでした。直行便でないので当初は落胆しましたが、よくよく考えると一度の旅行でイギリスとオランダも楽しめるので逆によかったのではと思えるようになりました。どのような心理的な変化があったのですか?

認知的不協和の理論で説明できます。直行便が好ましいという当初の態度はKLMしか予約できなかった時点で不協和が生じ、落胆につながりました。しかし、オランダ経由便も楽しそうというように態度が変化したことで、不協和が解消され、満足感が出てきたと思われます。

更新は、心理学のお勉強(態度:Attitude No3)を明日の午前中に行う予定。本編(情報の探索No2)の更新は本日お休みさせて下さい。更新は明日の夕方に行います。

情報の探索(Information searchNo2紹介

消費者の購買前の情報探索について取り上げます。No2では値段と情報検索の程度の関係について詳細に取り上げます。

心理学のお勉強(態度:Attitude No3)の紹介

No3として態度の変化について取り上げます。マーケターにとって消費者の態度を変化させることは重要な概念です。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

参考文献

Bohner,G. (2001). Attitudes, in Introduction to social psychology: A European Perspective Third edition, (ed) Hewstone,M. & Stroebe,W. Oxford, Blackwell Publishing.

Solomon,M., Bamossy,G., & Askegaard,S. (1999). Consumer behaviour a European perspective. Essex: Person Education Limited.

心理学のお勉強(社会心理学)No19 :態度No2

心理学のお勉強(社会心理学)No19 :態度No

今回は態度:Attitudesの第2回目です。物事に対して好き・嫌いなどの比較的持続する態度を形成し、その態度がその後の社会行動(消費行動など)に影響を及ぼします。今回はどのように態度が変容するかを説明する有力な理論であるバランス理論balance theory)を紹介します

1.バランス理論(balance theory

(1)概念

人間にはバランスの整った状態を好む傾向があり、バランスが崩れた場合はバランスを修正する力が働くという理論(Heider, 1946, 1968, sited in Bohner, 2001)。例えば、パティがエリックを気に入っていて山登りに休暇を取って一緒に行くことを夢見ているとします。ここでパティ、エリック、パティのエリックの山登りへの態度(好き・嫌い)の予想の3者のバランスが取れる必要があります。エリック山登りが嫌いと想定する場合は3者のバランスが崩れます。その際は以下の手段がパティに考えられます。(a)パティも山登りが嫌いになる、(b)エリックに対する好意が薄れる、(c)パティはエリックが山登りを好きになるように説得する(Bohner, 2001)。

《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!

(1)なぜ広告に有名人を使うのですか?

バランス理論は広告の有名人効果を説明する理論として知られていますe.g, Solomon, Bamossy & Askegaard, 1999)。資生堂の新製品TUBAKIにまるで興味のなかったA子さんを考えて下さい。A子さんは広末涼子さんに憧れているとします。憧れの広末涼子さんがTUBAKICMに出て宣伝しています。すると、A子さん、広末さん、TUBAKIの3者のバランスが崩れています。人間の性質としてバランスを改善させたいA子さんは(a)広末さんへの憧れが薄れる、(bTUBAKIが好きになる、(c)広末さんがTUBAKICMへの出演を止めるという3つの方法によって気分が晴れます。この中で(c)の選択はA子さんのコントロール不能なことなので、通常は(a)広末さんへの憧れが薄れるか、(bTUBAKIが好きになるかのどちらかの選択となります。それならばTUBAKIを好きになる傾向が強いと思われます。

(2)なぜ人は有名ブランドが欲しくなるのですか?

バランス理論は人が有名ブランドを欲しくなることを説明することもできますe.g, Solomon, Bamossy & Askegaard, 1999)。Aさんはブランドにあまり興味がありません。大学生になって多くの友人ができました。大学生活にも慣れ始めた頃、友人の多くは有名ブランドのバッグを持ち歩き始めました。ここに3者のバランスが崩れています。Aさんにできるのは、a)友人との関係を切る、(b)自分もブランドが好きになる、(c)友人がブランド嫌いになるという3つの方法です。

更新は、心理学のお勉強(態度:Attitude No3)を明日の午前中に行う予定。本編(情報の探索No2)の更新は本日お休みさせて下さい。更新は明日の夕方に行います。

情報の探索(Information searchNo2紹介

消費者の購買前の情報探索について取り上げます。No2では値段と情報検索の程度の関係について詳細に取り上げます。

心理学のお勉強(態度:Attitude No3)の紹介

No3として態度の変化について取り上げます。マーケターにとって消費者の態度を変化させることは重要な概念です。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

参考文献

Bohner,G. (2001). Attitudes, in Introduction to social psychology: A European Perspective Third edition, (ed) Hewstone,M. & Stroebe,W. Oxford, Blackwell Publishing.

Solomon,M., Bamossy,G., & Askegaard,S. (1999). Consumer behaviour a European perspective. Essex: Person Education Limited.

消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索No2(エグゼクティブ・サマリー)-

消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索(Information searchNo2(エグゼクティブ・サマリー)-として商品の値段と情報探索の関係を取り上げます。消費者は商品を購買する際に情報の探索を行うことで購買意図を形成します。情報探索の程度は商品の値段とも関係があります。

忙しい方用に、エグゼクティブ・サマリー(参照文献などは本編に載せます)を別途記述しています。そして、本編に関しては記述が終わり次第更新します。

《エグゼクティブ・サマリー》

1.購買前(Pre-purchase)の情報の探索(Information search

消費者は商品を購買する際に情報の探索を行うことで購買意図を形成します

2.情報探索の種類

(1)内部探索(Internal search

・過去の消費経験など記憶からの情報の探索

(2)外部探索(External search

・マスメディアや口コミなど記憶以外の情報源からの情報の探索

3.順序

初めに(1)内部探索(Internal search)、不十分な場合は、(2)外部探索(External search

4.外部探索(External search)の頻度

外部探索(External search)を行うことは消費者の時間や労力などを消費しますので、内部探索(Internal search)で充分なときは内部探索で済ます傾向にあります

5.商品・サービスの価格と情報探索の程度

基本的には商品・サービスの値段が上がると情報探索の程度が上がります。例えば、値段の安い消しゴムに関してはテレビCM・雑誌広告・友人からの口コミなどは参考にせずに過去の使用した際の経験(使いやすさなど)を基に購買意図を形成すると思われます。一方、値段の高い新車を購入する際はテレビCM・雑誌広告・友人からの口コミを過去の経験に合わせて考えることで購買意図を形成すると思われます。

《注意》

値段と情報探索の程度の関係は多くの関係の中の一つの関係です。他の関係は今後扱って行きます。よって値段が安くても情報探索をより行われる傾向のある商品(薬・化粧品など)もあります。

実際に過去に調査された商品(車・家電など)を挙げての説明は本編(詳細版)で行います。

更新は、心理学のお勉強(態度:Attitude No2)を明日の午前中に行う予定、本編(詳細版)を明日の夕方に行う予定

情報の探索(Information searchNo2紹介

消費者の購買前の情報探索について取り上げます。No2では知覚されるリスクが情報検索の程度に与える程度について取り上げます。例えば薬は使用によるリスクが高いので事前によく情報を調べるなどです。

心理学のお勉強(態度:Attitude No2)の紹介

No2として態度の変化について取り上げます。マーケターにとって消費者の態度を変化させることは重要な概念です。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

心理学のお勉強(社会心理学)No18 :態度No1

心理学のお勉強(社会心理学)No18 :態度No

今回は態度:Attitudesの第1回目です。物事に対して好き・嫌いなどの比較的持続する態度を形成し、その態度がその後の社会行動(消費行動など)に影響を及ぼします。今回以降、どのようにして態度が形成され、態度が変化するのかについて取り上げていきます。消費者行動を考える上では態度(Attitudesは欠くことのできない重要な概念です。

1.態度(Attitudes

(1)概念

対象物に対する好き・嫌いの程度である心理的な評価(Bohner, 2001)。

(2)態度の3成分モデルA three-component model

Rosenberg Havland (1960, sited in Bohner, 2001) によると、態度は(A)認知(cognition)、(B)感情(affection)、(C)行動(behaviour)の3要素で構成されます。

A)認知(cognition

対象物に対する信条beliefs)によって構成されています。

B)感情(affection

対象物による感情emotion)と気持ちfeeling)によって構成されています。

C)行動(behaviour

対象物に対する行動意図によって構成されています。

例えば、トヨタのプリウスに対して、Aさんはプリウスに乗るという事は地球環境の保護に役立つという信条を持ち、プリウスに対してプジティブな感情を抱いています。そして次回の車の購入ではプリウスを買おうという購買意図を持っています。

(3)明示的態度(explicit attitudes)と非明示的態度(implicit attitudes

態度は対象物を見た時や対象物を考えた時に記憶の中から取り出されるものですが、意識的に取り出されるケース(明示的態度)と無意識に取り出されるケース(非明示的態度)があります(Bohner, 2001)。 

《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!

(1)なぜマーケティングで態度という概念が重要なのですか?

消費行動に関連すると思われているからです。100%の頻度ではないですが、皆さんも好きだと日頃感じているブランドを店頭で買う傾向があると思います。よって、どのような態度を消費者が自社やブランドに抱いているかを知ることや、その態度をポジティブな方向に変える事が重要となります。

(2)広告宣伝の目的は?

一番の目的は消費者の宣伝する商品・サービスに対する態度(attitudes)を変える事です。

(3)ユニクロの服と競合のA社の服が同じ品質で同じ価格帯だとします。しかし、Bさんは常にユニクロの服を買います。なぜですか?

今回の枠組みだけで考えると、Bさんのユニクロと競合のA社の認知的な側面は同等だと仮定されます。よって感情的な側面からBさんはユニクロが好きだと思います。皆さんも価格・品質などが同じでもなぜかある商品が好きだということは良くあると思います。

(4)女性を食事に誘ったら断られました。なぜですか?

3成分モデルの枠組みで考えて見ます。まず、(A認知的影響を考えます。もしかしたら年齢・年収・ナショナリティなどの点で彼女の基準に合わない点があってあなたに興味がないのかもしれません。次に(B感情的影響を考えます。もしかしたら(A)の認知的影響には問題がなくても、フィーリング的に彼女は貴方にポジティブな気持ちがないのかもしれません。最後に(C行動意図を考えます。(A)、(B)に問題がないけど単に都合が悪いので誘いを断ったかもしれません。

(5)非明示的態度(implicit attitudes)の調査はなぜ重要なのですか?

第一に質問表など明示的態度(explicit attitudes)を測定することが目的の手法では消費者が明示したくない態度(人種問題、タバコなど)を測定できないことが上げられます。頻繁に引用される例がアメリカにおける人種問題です。ネガティブな印象を他の人種に持っている人でも質問表に回答する際、自分の本当の態度を開示することに躊躇することもよくあります。よって質問表で調査をするとアメリカの人種主義の程度は和らいでおり、白人向けの商品の広告に黒人のスポーツマンを使用しても問題がないと出ることがあります。しかし、実際に非明示的態度を表層化させる調査を行うと未だに(地域・個人等によっては)人種問題が残っていることが判明することもあります。

第二に無意識な非明示的な(本人も認識していない)態度もその後の社会的な行動に影響を与えることが上げられます。自分は愛国主義などには関係のないリベラルな人間と自分では思っている人が、韓国製品(液晶テレビなど)と日本製品を比べた際に、無意識のレベルの愛国主義が表層化して日本製品を(価格・品質とは別の基準で)選択することもあると思います。アメリカでハーレーダビットソンに乗る人にはアメリカに対する愛国主義が意識的・無意識的に存在するということも言われます。

 

なお、現在、社会心理学を中心に、非明示的な態度の測定法として潜在的連想法テスト(IAT: The implicit association test(Greenwald, McGhee & Schwarts, 1998)という方法が脚光を浴びています。日本語でパソコンを使ったデモを体験できるホームページがありますので興味がある方は試してください(こちらをクリック )。マーケティングへの応用は私の知る限り一部の学者が行っているのみのようです。

なお、今回の内容は抽象的だったと思います。次回以降はより具体的な内容に入っていきますので期待してください。

更新は、心理学のお勉強(態度:Attitude No2)を明日の午前中に行う予定、本編(情報の探索No2)を明日の夕方に行う予定

情報の探索(Information searchNo2紹介

消費者の購買前の情報探索について取り上げます。No2では知覚されるリスクが情報検索の程度に与える程度について取り上げます。例えば薬は使用によるリスクが高いので事前によく情報を調べるなどです。

心理学のお勉強(態度:Attitude No2)の紹介

No2として態度の変化について取り上げます。マーケターにとって消費者の態度を変化させることは重要な概念です。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

参考文献

Bohner,G. (2001). Attitudes, in Introduction to social psychology: A European Perspective Third edition, (ed) Hewstone,M. & Stroebe,W. Oxford, Blackwell Publishing.

Greenwald,A.G., McGhee,D.E., & Schwarts,J.L.K. (1998). Measuring individual differences in implicit cognition: The implicit association test, Journal of Personality and Social Psychology, 74, 1464-1480.

消費者心理とマーケティング -購買前の情報の探索(Information search)N01-

消費者心理とマーケティング -購買前の情報の探索(Information searchN01-として概略を行います。消費者は商品を購買する際に情報の探索を行うことで購買意図を形成します。具体的には過去の消費経験など記憶からの情報の探索とマスメディアや口コミなど記憶以外の情報源からの情報の探索があります。

(今回は購買前の情報の探索のイントロダクションなのでエグゼクティブサマリーは省略します)

1.購買前(Pre-purchase)の情報の探索(Information search

消費者は商品を購買する際に情報の探索を行うことで購買意図を形成します。例えば、新車を購買する際は、以前乗っていたメーカーの車に関する記憶(燃費、メンテナンスなど)からの情報とテレビCMによる新車の情報、カー雑誌による情報や車に詳しい友人からの情報を基にして、どのメーカーのどのブランドを買うかを決めます。

2.情報探索の種類

(1)内部探索(Internal search

・過去の消費経験など記憶からの情報の探索

(2)外部探索(External search

・マスメディアや口コミなど記憶以外の情報源からの情報の探索

3.順序

初めに(1)内部探索(Internal search)を行い、不十分な場合は、(2)外部探索(External search)を行います。

4.外部探索(External search)の頻度

外部探索(External search)を行うことは消費者の時間や労力を消費しますので、内部探索(Internal search)で充分なときは内部探索で済ます傾向にあります

具体的には、商品の重要性(値段など)や消費者の置かれている状況(例、時間的余裕の程度)なども影響を与えます。値段が高いモノ(家など)を買う際は、消費者は慎重に集められるだけの情報を集めるであろうし、値段の安いモノ(例、消しゴム)を買う際はわざわざ友人に評判を聞かないと思います。また、時間がある時はできるだけ情報を集めるかもしれませんが、時間がない際は情報探索を省略する傾向にあります。

5.マーケティングへの重要性

(1)マーケティング戦略が異なる

情報探索の方法の違いによって重視すべきマーケティング戦略が異なります。外部探索を重視するタイプの商品はテレビCMや口コミなどの重要性も高いですが、内部探索を重視するタイプの商品に対してはそれ程効果的ではありません。むしろ内部探索を重視するタイプの商品に対しては商品のロケーション、値段、アフターサービスなどの方が重要になります。

6.今後の進め方

重要だと私が思う概念を基本的に毎回1つずつ取り上げて検討しようと思います。皆さんの具体的な体験談があると分かりやすくなりますのでコメントを下さい

(1)初回

値段:値段が高い商品と安い商品では情報探索の方法が異なります

(2)2回目

知覚されるリスク:薬など適当なものを買うことで失敗のリスクが高い商品とリスクが高くない商品では情報探索の方法が異なります

更新は、心理学のお勉強(態度:Attitude No1)を明日の午前中に行う予定、本編(情報の探索N02)を明日の夕方に行う予定

情報の探索(Information searchN02紹介

消費者の購買前の情報探索について取り上げます。消費者は様々な要因によって外部情報(マスメディア、口コミなど)まで情報を求めるか、内部情報(自分の記憶)を基に購買の意思決定を行うかが変わってきます。2回目として知覚されるリスクを取り上げます。

心理学のお勉強(態度:Attitude No1)の紹介

次回からは態度の形成について取り上げます。消費者行動への関連は消費者は広告などの刺激を受けるとそのブランドに対する態度(好き、嫌いなど)を形成し、その後の購買へ結びつきます。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

心理学のお勉強(社会心理学)No17 :帰属過程のバイアスNo4

心理学のお勉強(社会心理学)No17 :帰属過程のバイアスNo

今回は帰属過程:Attribution theoryの第5回目です。人間は日常の出来事に対して、なぜ起こったかという原因の究明(帰属)を行います。その原因究明(帰属)の仕方に関する理論が帰属過程の理論(Attribution theory)です。しかし、原因の帰属にはバイアスがかかりやすいことが知られています。帰属過程のバイアスNo4では集団的帰属(Group-serving bias)というバイアスを取り上げます。

1.集団的帰属(Group-serving bias

(1)概要

人間には集団内のメンバー(仲間)に対する原因帰属と集団外のメンバーに対する原因帰属には異なった説明を与える傾向がありますScherer, 2001)。具体的には集団内のメンバーのポジティブな結果に対しては内的要因(優秀さ、努力など)に原因を帰属させ、ネガティブな結果に対しては外的な要因(市場環境、資金が足りない、運など)に原因を帰属させる傾向があります。集団外のメンバーに関してはポジティブな結果に対しては外的な要因(市場環境、資金が足りないなど)に原因を帰属させ、ネガティブな結果に対しては内的要因(優秀さ、努力など)に原因を帰属させる傾向があります。

(2)注意

上記の結果は多数派のマジョリティの原因帰属に対しては当てはまりますが、少数派であるマイノリティは集団的帰属(Group-serving bias)のバイアスはあまり観察されていません(Hewstone & Ward, 1985, sited in Scherer, 2001;Islam & Hewstone, 1993, sited in Scherer, 2001)。バングラデッシュで行われた研究(Islam & Hewstone, 1993, sited in Scherer, 2001)では、多数派のモスラムの人たちは上記のバイアスを見せたが、少数派のヒンズーの人たちは大きなバイアスを見せませんでした。

(3)理由

(a)認知的要因

人間には集団内のメンバーは良い結果を残し、集団外のメンバーは良くない結果を残すことを期待する傾向があるため、集団内のメンバーに良い結果が生じた場合は成功と内的要因(努力など)の関係をより受け入れやすく、集団外のメンバーに良い結果が生じた場合は成功と外的要因(運など)の関係をより受け入れやすいと思われます(Scherer, 2001)。

(b)モチベーション

人間には自分の属している集団の自尊心・アイデンティティを高め・維持したいという欲求がありますScherer, 2001)。その観点からすると、集団内のメンバーに良い結果が生じた場合は成功と内的要因(努力など)の関係をより受け入れたくなり、集団外のメンバーに良い結果が生じた場合は成功と外的要因(運など)の関係をより受け入れたくなると思われます。

《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!

(1)日韓サッカーワールドカップの日本(ベスト16)と韓国(ベスト4)の結果の差にトルシエ・ヒディング監督の差を上げることが多いですが、その心理的なからくりは?

日韓のサッカーワールドカップの結果は明らかに韓国の方が上でした。その結果を日本人は監督の差であって選手の能力の差ではないと考えているようです。私はこの傾向は集団的帰属(Group-serving bias)のバイアスだと思います。つまり、ネガティブな日本の結果には外的要因(トルシエ監督が優秀でない)に原因を帰属させ、ポジティブな韓国の結果にも外的要因(ヒディング監督が優秀)に原因を帰属させています。では互いに監督を変えたドイツWCで結果は逆転したでしょうか?私には明らかに(予選敗退したけどフランスなどを苦しめた)韓国の方が良い試合をしたように見えました。

(2)株の個人投資家です。現在の日本の株価への見方へのアドバイスを下さい?

現在の日経平均等の株価の見方のポイントは、アメリカ経済の減速が懸念される中、(a)日本経済もアメリカ経済に引っ張られて同時に減速するか、(b)日本経済はアメリカ経済の動きから離れて、成長を継続するかという点だと思います。日銀の見解は(b)の日本経済成長路線だと思います。日本経済は過重債務問題が解決し、設備投資の拡大が引き続き継続するため、今後も成長が見込まれるというロジックです。確かに直近の機械受注(設備投資の先行指標と言われている)の数値などを見ているとこの見解が妥当かもしれません。しかし、日本人は日本に関しては集団的帰属(Group-serving bias)のバイアスにかかりやすいことも忘れない方が良いと思います。つまり、日本人は(外国人投資家に比べて)日本経済が自立的成長過程に戻ったと思いたい傾向が強いということです。私はエコノミストではないので今後どうなるかは分かりません。ここでできるアドバイスはより冷静な判断をしていると思われる外国人投資家の動向も合わせてチェックをすることで集団的帰属バイアスを避けた方が良いということです。この点、最近は外国人投資家が日本株を買い始めているようなのでポジティブなニュースかもしれません。

(3)企業経営者です。新市場に進出して今のところ好調です。何か気を付けることはありますか?

証券アナリスト時代に思ったのが、新市場に進出して初めにうまく行っている会社は自社の能力(内的要因)を過大評価する傾向があるということです。例えばあるアパレルメーカーが実際の路面店を数店舗出店してうまく行っているとします。取材時に成功の要因と今後の計画を聞くと、メーカーとしての実力(内的要因)があるので成功した。数年内に100店舗の出店を目指すなどと言います。一方、路面店の競合に取材に行ってその会社のことを聞くと、今は数店舗しかないので無視しているが、店舗数が増えたら適切な対策(競合店を近くに出店して相手を潰すなど)を取ると言っていました。つまり、そのメーカーの路面店の成功の一端には競合に無視されているという幸運な外部要因もあるのですが、その会社は自社のメーカーとしての実力(内的要因)が成功要因と考え、出店数を加速しても現在の成功が維持されると考えていました

更新は、心理学のお勉強(態度:Attitude No1)を明日の午前中に行う予定、本編(情報の探索N01)を明日の夕方に行う予定

情報の探索(Information searchN01紹介

消費者の購買前の情報探索について取り上げます。消費者は様々な要因によって外部情報(マスメディア、口コミなど)まで情報を求めるか、内部情報(自分の記憶)を基に購買の意思決定を行うかが変わってきます。

心理学のお勉強(態度:Attitude No1)の紹介

次回からは態度の形成について取り上げます。消費者行動への関連は消費者は広告などの刺激を受けるとそのブランドに対する態度(好き、嫌いなど)を形成し、その後の購買へ結びつきます。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

参考文献

Scherer.K.R. (2001). Emotion, in Introduction to social psychology: A European Perspective Third edition, (ed) Hewstone,M. & Stroebe,W. Oxford, Blackwell Publishing.

消費者心理とマーケティング -時間の制約下での消費者の選択No3

消費者心理とマーケティング -時間の制約(Time constraints)下での消費者の選択No3 -として、時間的制約と選択の繰り延べ(商品を買わないで帰る事)の関係を取り上げます。

今回は時間的制約と選択の繰り延べ(Choice deferral)の関係を取り上げます。選択の繰り延べ(Choice deferral)とは商品を(買うかどうか悩んで)買わないで帰る事です。

1.前々回の簡単な復習記事はこちら(Dhar, & Nowlis, 1999)

(1)時間的余裕があるケース

他の商品との共通点・相違点の両方を考慮します。

(2)時間的な余裕がないケース

他の商品・サービスと共通の特徴を吟味するのではなく、他の商品・サービスとの相違点に重点を置いてチョイスをする。

例えば、時間的余裕がある際に(ほかほか弁当かオリジンで)お弁当を買う場合は、共通点である待ち時間などを比較すると共に、相違点であるボリューム(ほかほか弁当)とヘルシーさ(オリジン)を比較します。しかし、時間がないときは、共通点の比較の重要性は薄れ、もっぱら相違点であるボリュームとヘルシーさのどちらを選択するかの勝負になります。

2.選択の繰り延べ(Choice deferral

明らかに一方が優れているケースよりも、それぞれの商品・サービスに優越つけ難いケースの方が、選択の繰り延べ(Choice deferral)をする傾向が高まります(e.g., Dhar, 1997)

3.時間的制約(Time constraints)と選択の繰り延べ(Choice deferral)の関係(Dhar, & Nowlis, 1999)

(1)両方とも魅力的で甲乙つけ難い時

(a)時間的制約なし

決断を先延ばしにする(買わずに帰る)可能性が高い

(b)時間的制約あり

買って帰る可能性が高まる

(時間がある場合に比べて、相違点に絞って比較するため結論に至りやすい)

(2)一方の魅力度が高い時

(a)時間的制約なし

魅力的な方を買って帰る可能性が高い

(b)時間的制約あり

魅力的な方を買って帰る可能性が高い(時間的制約によって消費行動は変わらない)

(3)(A)共通点が良い内容で相違点が悪いケースと(B)共通点が悪い内容で相違点が良いケース

(A)共通点が良い内容で相違点が悪いケースとは、AB商品(お菓子)とも味が良いがAは高い、Bは持って帰るのにかさばるというケースです。(B)共通点が悪い内容で相違点が良いケースとは、ABとも持って帰るのにかさばるが、Aは味が良く、Bは安いというケースです。

(A)共通点が良い内容で相違点が悪いケース

(a)時間的制約なし

決断を先延ばしにする(買わずに帰る)可能性が高い

(b)時間的制約あり

決断を先延ばしにする(買わずに帰る)可能性が高い

(B)共通点が悪い内容で相違点が良いケース

(a)時間的制約なし

決断を先延ばしにする(買わずに帰る)可能性が高い

(b)時間的制約あり

買って帰る可能性が高まる

4.まとめ

(1)時間的な制約があることで消費行動が変わるのは、いずれの商品・サービスとも魅力的で甲乙つけ難い場合。

(2)時間的余裕がないケースは、相違点を中心に比較するため、(B)の共通点が悪い内容で相違点が良いケースの方が、消費者が商品を買って帰る可能性は高まる。(相違点に焦点があるため)

5.マーケティングへの応用

(1)時間的切迫感

絶対的な時間の切迫感ではなく、消費者の知覚する時間の切迫感です。消費者の店舗滞在時間などは流す音楽によって変えることができます(e.g., Milliman, 1982)。あくまでも私の仮説ですが、流す音楽によって消費者の知覚する時間的切迫感を変えることができるかもしれません。

(2)時間的制約の演出

時間的制約はマーケター側でも演出できる概念です。例えば、セール(誰かに買われると無くなる為)や時間制限のキャンペーンによる時間的切迫感の演出は可能です。また、(1)の音楽によっても時間の切迫感は変わるかもしれません。

(3)販売方法への応用

セールストークには2種類あると思います。(A)シャープとソニーの液晶テレビは画像の鮮明さは甲乙つけがたいレベルですが、シャープは**で、ソニーは**という点が問題点(高い・耐久性など)です。(B)サムソンとLGの液晶テレビは**という共通の問題点がありますが、サムソンは画質、LGは値段がポイントです。(あくまでも説明用であって事実を反映している訳ではありません)

(a)急いでいる顧客

複数の内、1つの最も良いと思われる商品をダイレクトに顧客に薦める方法もあります。ただし顧客が自分で比較して選択したがっている場合は、複数の甲乙のつけがたい商品を紹介しても買って帰る可能性は高いと思います。しかし、ポイントは(B)のサムソンとLGの例のように共通点はネガティブなポイントに相違点をポジティブなポイントにして販売することです。(顧客は相違点に焦点を当てるため)

(b)急いでいない顧客

複数の内、1つの最も良いと思われる商品をダイレクトに顧客に薦める方が良いと思います。複数を紹介する場合でもしっかりと販売員の方が自分の意見を述べた方が良いと思います。複数の甲乙のつけがたい商品を紹介し顧客が自分で判断する状況になると顧客は迷って後で考えてから買うと決断する可能性が高いです。

皆さんのご経験を募集しています。

次回は時間の制約と消費者の選択No3を扱います。時間の切迫と(今回は)買わないという意思決定の関係を扱います。

本編(時間の制約と消費者の選択No3)は明日の夜に更新します。心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theory No3)の更新は明日の午前中の更新予定です。 

心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theoryNo3)の紹介

人間は日常の出来事に対して、なぜ起こったかという原因の究明を行います。その原因究明の仕方に関する理論が帰属過程の理論(Attribution theory)です。第3回目はバイアスNo2です。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

主な参考論文

Dhar,R. (1997). Consumer preference for a no-choice option. Journal of Consumer Research, 24, 215-231.

Dhar,R., & Nowlis,S.M. (1999). The effect of time pressure on consumer choice deferral. Journal of Consumer Research, 25, 369-384.

Milliman,R.E. (1982). Using background music to affect the behavior of supermarket shoppers. Journal of marketing, 46, 86-91.