消費者心理とマーケティング -時間の制約下での消費者の選択No3 | 消費者心理学とマーケティング - 消費者心理学・消費者行動論の研究より -

消費者心理とマーケティング -時間の制約下での消費者の選択No3

消費者心理とマーケティング -時間の制約(Time constraints)下での消費者の選択No3 -として、時間的制約と選択の繰り延べ(商品を買わないで帰る事)の関係を取り上げます。

今回は時間的制約と選択の繰り延べ(Choice deferral)の関係を取り上げます。選択の繰り延べ(Choice deferral)とは商品を(買うかどうか悩んで)買わないで帰る事です。

1.前々回の簡単な復習記事はこちら(Dhar, & Nowlis, 1999)

(1)時間的余裕があるケース

他の商品との共通点・相違点の両方を考慮します。

(2)時間的な余裕がないケース

他の商品・サービスと共通の特徴を吟味するのではなく、他の商品・サービスとの相違点に重点を置いてチョイスをする。

例えば、時間的余裕がある際に(ほかほか弁当かオリジンで)お弁当を買う場合は、共通点である待ち時間などを比較すると共に、相違点であるボリューム(ほかほか弁当)とヘルシーさ(オリジン)を比較します。しかし、時間がないときは、共通点の比較の重要性は薄れ、もっぱら相違点であるボリュームとヘルシーさのどちらを選択するかの勝負になります。

2.選択の繰り延べ(Choice deferral

明らかに一方が優れているケースよりも、それぞれの商品・サービスに優越つけ難いケースの方が、選択の繰り延べ(Choice deferral)をする傾向が高まります(e.g., Dhar, 1997)

3.時間的制約(Time constraints)と選択の繰り延べ(Choice deferral)の関係(Dhar, & Nowlis, 1999)

(1)両方とも魅力的で甲乙つけ難い時

(a)時間的制約なし

決断を先延ばしにする(買わずに帰る)可能性が高い

(b)時間的制約あり

買って帰る可能性が高まる

(時間がある場合に比べて、相違点に絞って比較するため結論に至りやすい)

(2)一方の魅力度が高い時

(a)時間的制約なし

魅力的な方を買って帰る可能性が高い

(b)時間的制約あり

魅力的な方を買って帰る可能性が高い(時間的制約によって消費行動は変わらない)

(3)(A)共通点が良い内容で相違点が悪いケースと(B)共通点が悪い内容で相違点が良いケース

(A)共通点が良い内容で相違点が悪いケースとは、AB商品(お菓子)とも味が良いがAは高い、Bは持って帰るのにかさばるというケースです。(B)共通点が悪い内容で相違点が良いケースとは、ABとも持って帰るのにかさばるが、Aは味が良く、Bは安いというケースです。

(A)共通点が良い内容で相違点が悪いケース

(a)時間的制約なし

決断を先延ばしにする(買わずに帰る)可能性が高い

(b)時間的制約あり

決断を先延ばしにする(買わずに帰る)可能性が高い

(B)共通点が悪い内容で相違点が良いケース

(a)時間的制約なし

決断を先延ばしにする(買わずに帰る)可能性が高い

(b)時間的制約あり

買って帰る可能性が高まる

4.まとめ

(1)時間的な制約があることで消費行動が変わるのは、いずれの商品・サービスとも魅力的で甲乙つけ難い場合。

(2)時間的余裕がないケースは、相違点を中心に比較するため、(B)の共通点が悪い内容で相違点が良いケースの方が、消費者が商品を買って帰る可能性は高まる。(相違点に焦点があるため)

5.マーケティングへの応用

(1)時間的切迫感

絶対的な時間の切迫感ではなく、消費者の知覚する時間の切迫感です。消費者の店舗滞在時間などは流す音楽によって変えることができます(e.g., Milliman, 1982)。あくまでも私の仮説ですが、流す音楽によって消費者の知覚する時間的切迫感を変えることができるかもしれません。

(2)時間的制約の演出

時間的制約はマーケター側でも演出できる概念です。例えば、セール(誰かに買われると無くなる為)や時間制限のキャンペーンによる時間的切迫感の演出は可能です。また、(1)の音楽によっても時間の切迫感は変わるかもしれません。

(3)販売方法への応用

セールストークには2種類あると思います。(A)シャープとソニーの液晶テレビは画像の鮮明さは甲乙つけがたいレベルですが、シャープは**で、ソニーは**という点が問題点(高い・耐久性など)です。(B)サムソンとLGの液晶テレビは**という共通の問題点がありますが、サムソンは画質、LGは値段がポイントです。(あくまでも説明用であって事実を反映している訳ではありません)

(a)急いでいる顧客

複数の内、1つの最も良いと思われる商品をダイレクトに顧客に薦める方法もあります。ただし顧客が自分で比較して選択したがっている場合は、複数の甲乙のつけがたい商品を紹介しても買って帰る可能性は高いと思います。しかし、ポイントは(B)のサムソンとLGの例のように共通点はネガティブなポイントに相違点をポジティブなポイントにして販売することです。(顧客は相違点に焦点を当てるため)

(b)急いでいない顧客

複数の内、1つの最も良いと思われる商品をダイレクトに顧客に薦める方が良いと思います。複数を紹介する場合でもしっかりと販売員の方が自分の意見を述べた方が良いと思います。複数の甲乙のつけがたい商品を紹介し顧客が自分で判断する状況になると顧客は迷って後で考えてから買うと決断する可能性が高いです。

皆さんのご経験を募集しています。

次回は時間の制約と消費者の選択No3を扱います。時間の切迫と(今回は)買わないという意思決定の関係を扱います。

本編(時間の制約と消費者の選択No3)は明日の夜に更新します。心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theory No3)の更新は明日の午前中の更新予定です。 

心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theoryNo3)の紹介

人間は日常の出来事に対して、なぜ起こったかという原因の究明を行います。その原因究明の仕方に関する理論が帰属過程の理論(Attribution theory)です。第3回目はバイアスNo2です。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

主な参考論文

Dhar,R. (1997). Consumer preference for a no-choice option. Journal of Consumer Research, 24, 215-231.

Dhar,R., & Nowlis,S.M. (1999). The effect of time pressure on consumer choice deferral. Journal of Consumer Research, 25, 369-384.

Milliman,R.E. (1982). Using background music to affect the behavior of supermarket shoppers. Journal of marketing, 46, 86-91.