消費者心理学とマーケティング - 消費者心理学・消費者行動論の研究より - -7ページ目

心理学のお勉強(社会心理学)No16 :帰属過程のバイアスNo3

心理学のお勉強(社会心理学)No16 :帰属過程のバイアスNo

今回は帰属過程:Attribution theoryの第4回目です。人間は日常の出来事に対して、なぜ起こったかという原因の究明(帰属)を行います。その原因究明(帰属)の仕方に関する理論が帰属過程の理論(Attribution theory)です。しかし、原因の帰属にはバイアスがかかりやすいことが知られています。帰属過程のバイアスNo3では利己的帰属Self-serving bias)というバイアスを取り上げます。

1.利己的帰属(Self-serving bias

(1)概要

人間には成功の原因を内的要因(例、ハードワーク、自分の能力)に帰属させ、失敗の原因を外的要因(例、競合の調子が良かった、資金が足りなかった)に帰属させる傾向があります(Scherer, 2001)。ここには2つのバイアスがあると言われます。(1)自己の持ち上げる(Self-enhancing)バイアスと(2)自己を守る(Self-protecting)バイアスです。具体的には、失敗したケースに自分の努力(内的要因)は充分だったが、競合の会社が値下げした(外的要因)ので受注できなかったという主張するようなことです。

(2)理由

(a)認知的要因

自己の持ち上げる(Self-enhancing)バイアスに関しては、人間は成功を期待して努力をしているため(失敗の期待はしていない)、成功と内的要因(努力)の関係をより受け入れやすいと思われます(Miller, Ross, 1975, sited in Scherer, 2001)。

(b)モチベーション

人間は自尊心を満たす・守るために、成功は内的要因に失敗は外的要因に帰属させやすくなると思われます(Zuckerman, 1979, sited in Scherer, 2001)。

(3)自己ハンディキャップ(Self-handicapping

利己的帰属(Self-serving bias)に関連する行為として、自己ハンディキャップ(Self-handicappingがあげられます。自己ハンディキャップ(Self-handicapping)とは、失敗が事前に予想される場合に、パフォーマンスの評価を曖昧にするために課題遂行の障害を自ら作り出す行為です(Scherer, 2001)。その場合、失敗したケースでは障害があったためと言い訳もできるし、予想に反して成功したケースでは障害があったのに成功できたと主張できます。A(ハイリスク・ハイリターン)とB(適度なリスク・適度なリターン)という選択肢がある中、わざわざ困難なAを選択するようなケースはこの例です。

《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!

(1)私の上司はいつも成功を独り占めにし、失敗は部下の責任にします。彼は本当に性格が悪いのですか?

本人はこのような傾向があることに気が付いていない可能性があります。本当に成功した場合は自分の能力・努力のおかげで、失敗した場合は(自分の能力・努力は充分だが)周りのサポート・能力不足と感じているのでしょう。部下を持っている方は胸に手を当ててこのようなバイアスのかかった評価をしていないか考えてみた方がよいと思います。自分で思っている以上に部下はこのように感じるものです。

(2)プロ野球の巨人は、今期の成績の悪い理由として主力(小久保、高橋など)の相次ぐ故障を原因に挙げ、挙句の果てに東京ドーム(球場)の人工芝は疲労が溜まり怪我をしやすいと言っています。この心理は?

利己的帰属Self-serving bias)だと思います。原監督や球団首脳部は自尊心を維持したいために(無意識に)選手補強の失敗・采配のまずさがという内的要因が原因ではなく、人工芝と主力の怪我という外的な要因に原因を求めていると思います(中には責任回避のために意識的にしている人もいると思います)。ほとんどの球場が人工芝を使っている現状を考えると、巨人に主力の怪我が重なるのは人工芝だけの問題ではないと思います。フリーエージェントで年齢の高い選手を補強する施策、キャンプの練習量が少ないと言われる練習方法など内部的要因にも問題があると思います。


(3)プロスポーツの試合に前に体調が悪い・悪かったことを選手の方から記者に言ってくることがあります。この心理は?

自己ハンディキャップ(Self-handicapping)だと思います。つまり、あまり自信がない(体調が悪いからかもしれないが)ので、事前にパフォーマンスが悪い場合に対する予防線を張っています。仮に体調が悪くても自信があれば、わざわざ試合前に対戦相手にアドバンテージを与えるような情報を漏らしません。


(4)部下に新規事業の開発を任せたところ、ハイリスク・ハイリターンの事業を提案して来ました。部下の心理をどのように解釈したら良いですか?

基本的に新規事業を成功させるのは困難なことです。よって失敗する可能性もそれなりにあります。ただし、あまりに困難な理由を挙げてハイリスク・ハイリターンの事業をわざわざ選択した場合は、自己ハンディキャップ(Self-handicappingに陥っている可能性があります。つまり、ハイリスク・ハイリターンの事業は失敗して当たり前なので失敗しても自分の責任には成りにくく、成功したら大手柄になります。

更新は、心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theory No5)を明日の午前中に行う予定、本編(時間の切迫下での消費行動N03)を明日の夕方に行う予定

時間的切迫感がある状況下での消費行動No3の紹介

時間的制約と選択の繰り延べ(Choice deferral)の関係を取り上げます。選択の繰り延べ(Choice deferral)とは商品を(買うかどうか悩んで)買わないで帰る事です。

心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theory No5)の紹介

帰属過程のバイアスNo4を取り上げます。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

参考文献

Scherer.K.R. (2001). Emotion, in Introduction to social psychology: A European Perspective Third edition, (ed) Hewstone,M. & Stroebe,W. Oxford, Blackwell Publishing.

消費者心理とマーケティング-時間の制約下での消費者の選択No3 (エグゼクティブ・サマリー)-

消費者心理とマーケティング -時間の制約(Time constraints)下での消費者の選択No3 (エグゼクティブ・サマリー) -として、時間的制約と選択の繰り延べ(商品を買わないで帰る事)の関係を取り上げます。

忙しい方用に、エグゼクティブ・サマリー(参照文献などは本編に載せます)を別途記述しています。そして、本編に関しては記述が終わり次第更新します。

《エグゼクティブ・サマリー》

今回は時間的制約と選択の繰り延べ(Choice deferral)の関係を取り上げます。選択の繰り延べ(Choice deferral)とは商品を(買うかどうか悩んで)買わないで帰る事です。

1.前々回の簡単な復習記事はこちら(Dhar, & Nowlis, 1999)

(1)時間的余裕があるケース

他の商品との共通点・相違点の両方を考慮します。

(2)時間的な余裕がないケース

他の商品・サービスと共通の特徴を吟味するのではなく、他の商品・サービスとの相違点に焦点を置いてチョイスをする。

2.選択の繰り延べ(Choice deferral

明らかに一方が優れているケースよりも、それぞれの商品・サービスに優越つけ難いケースの方が、選択の繰り延べ(Choice deferral)をする傾向が高まります(e.g., Dhar, 1997)

3.時間的制約(Time constraints)と選択の繰り延べ(Choice deferral)の関係(Dhar, & Nowlis, 1999)

(1)両方とも魅力的で甲乙つけ難い時

(a)時間的制約なし

決断を先延ばしにする(買わずに帰る)可能性が高い

(b)時間的制約あり

買って帰る可能性が高まる

(時間がある場合に比べて、相違点に絞って比較するため結論に至りやすい)

(2)一方の魅力度が高い時

(a)時間的制約なし

魅力的な方を買って帰る可能性が高い

(b)時間的制約あり

魅力的な方を買って帰る可能性が高い(時間的制約によって消費行動は変わらない

皆さんのご経験を募集しています。

詳細は次回の本編で扱います。

詳細は明日の夜に更新します。心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theoryNo4)の更新は明日の午前中の更新予定です。

心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theoryNo4)の紹介

人間は日常の出来事に対して、なぜ起こったかという原因の究明を行います。その原因究明の仕方に関する理論が帰属過程の理論(Attribution theory)です。第4回目はバイアスのかかった帰属No3です。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

心理学のお勉強(社会心理学)No15 :帰属過程のバイアスNo2

心理学のお勉強(社会心理学)No15 :帰属過程のバイアスNo

今回は帰属過程:Attribution theoryの第三回目です。人間は日常の出来事に対して、なぜ起こったかという原因の究明(帰属)を行います。その原因究明(帰属)の仕方に関する理論が帰属過程の理論(Attribution theory)です。しかし、原因の帰属にはバイアスがかかりやすいことが知られています。帰属過程のバイアスNo2では行為者と観察者の帰属の違いActor-observer differences)というバイアスを取り上げます。

1.行為者と観察者の帰属の違い(Actor-observer differences

(1)概要

行為者は状況的な要因、観察者は行為者の個人的な要因に原因帰属する傾向がありますJone, & Nisbett, 1972, sited in Scherer, 2001)。例えば、学生(行為者)は遅刻した理由を電車やバスが遅れたこと(状況的要因)を原因にしがちだが、先生(観察者)はその生徒が怠惰(個人的要因)だから遅刻したとしがちです。

(2)理由

(a)情報の違い

行為者の方がその時の状況や自分の過去の行為(どのように振舞ってきたか)を良く知っているため状況に焦点が行くが、観察者はそのような情報をあまり持っていないので行為者に原因を帰属させがちになる(Nisbett, Ritchie, Legant, & Maracek, 1973, sited in Scherer, 2001)。

(b)視点(attention)の違い

行為者は自己の行為を客観的に観察できないが、観察者はできる。よって行為者は状況的な要因に観察者は個人的な要因に原因を帰属させがちになる(Scherer, 2001)。

《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!

(1)なぜ子供の喧嘩では**ちゃんに先にぶたれたから喧嘩になったとお互い言うのか?

行為者は状況的要因に原因の帰属をさせる傾向にあるからだと思います。ここでの状況要因は友達の**ちゃんに先にぶたれたということです。

(2)商品が約束の日に届かないなどの理由でクレームを付けると、いつも販売員は言い訳(製造の問題で・混みあっているなど)をしているように感じます?なぜ?

販売員の人たちにはもっともな状況的な理由があり、顧客は個人的な要因に原因帰属をさせるので、互いの言い分が食い違ってフラストレーションが溜まるのでしょう。 

(3)企業で予算の未達成の際になぜ意見が食い違うのか?

担当者(行為者)は未達の原因を市場環境などの状況的要因に帰属させる傾向があるが、監督者である上司などは担当者の個人的な要因(例、努力不足)に原因を帰属させる傾向があります。よって両者の見解がいつも噛み合わないのです。

(4)企業経営者です。アドバイスは?

上記(3)の事例にあるように担当者と監督者の見解(役員同士の議論も含む)は食い違うことが非常に多いです。ここで大切なのは両者がそれぞれのバイアスを理解し、どこまでが市場環境など状況的要因でどこからが個人的な要因なのかをしっかりと議論し、互いに納得することです。その議論の中から初めて本当の市場環境が経営者層まで上がってくると思います。しかし、多くの企業ではこのような議論はせずに、互いの政治力などによってどこまで相手に飲ませるかの駆け引きをしています。そのためいつまでも市場環境の変化に気が付かないのです。

更新は、心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theory No4)を明日の午前中に行う予定、本編(時間の切迫下での消費行動N03)を明日の夕方に行う予定

時間的切迫感がある状況下での消費行動No3の紹介

時間的制約と選択の繰り延べ(Choice deferral)の関係を取り上げます。選択の繰り延べ(Choice deferral)とは商品を(買うかどうか悩んで)買わないで帰る事です。


心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theory No4)の紹介

帰属過程のバイアスNo3を取り上げます。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

参考文献

Scherer.K.R. (2001). Emotion, in Introduction to social psychology: A European Perspective Third edition, (ed) Hewstone,M. & Stroebe,W. Oxford, Blackwell Publishing.

消費者心理とマーケティング -時間の制約(time constraints)下での消費者の選択N

消費者心理とマーケティング -時間の制約(time constraints)下での消費者の選択No2 -として、時間の制約と消費者の選択No2を取り上げます。

前回の記事 で時間的な制約がある場合は、消費者は(1)情報検索の程度が減少(Beatty, & Smith, 1987)、(2)ヒューリスティック な判断を行う傾向が強くなる(Petty, Cacioppo, & Schumann, 1983)、(3)商品・サービスのユニークな特徴のみに頼った意思決定をしやすくなる(Dhar, & Nowlis, 1999)という特徴を扱いました。

今回は(1)ヒューリスティックな判断のひとつである価格による製品品質の推定、(2)消費者の関与の程度という現象と時間の制約の関係を取り上げます。

1.基本概念

(1)価格によるヒューリスティック

消費者は良く知らないブランドを見た時に価格が高い商品を品質が良いと判断する傾向があります。ただし前提条件としては、消費者が情報処理 (熟慮)を一生懸命しないことです(Suri, & Monroe, 2003)。

(2)消費者の関与の程度

消費者の関与の程度が高い場合は情報処理 (熟慮)を一生懸命すると思われます(Petty, Cacioppo, & Schumann, 1983)。関与とはその商品に対する意識の程度と考えて下さい。関与が低いと情報処理(熟慮)するモチベーションが下がります。情報処理(熟慮)するモチベーションが低いケースではヒューリスティックな判断が行われる傾向が高くなります。 

 

(3)時間の制約(time constraints

時間の制約がある時は、全ての情報を処理するのではなく、重要ではない情報の処理は行わない傾向があります。つまり意思決定に重要な商品・サービスのユニークな特徴のみに頼った意思決定をします(Dhar, & Nowlis, 1999)

2.Suri Monroeの研究 (2003)

(1)消費者の情報処理(熟慮)に対するモチベーションが低いケース

a)時間的制約が低いケース

ヒューリスティックな判断が行われやすくなる(値段によって品質を推定)

b)時間的制約が適当なケース

(意思決定に余分な情報が省かれるので)よりシステマティクな情報処理(熟慮)が行われやすくなる(値段に惑わされない正確な判断)

c)時間的制約が高いケース

ヒューリスティックな判断が行われやすくなる(値段によって品質を推定)

(2)消費者の情報処理(熟慮)に対するモチベーションが高いケース

a)時間的制約が低いケース

システマティクな情報処理(熟慮)が行われやすくなる(値段に惑わされない正確な判断)

b)時間的制約が適当なケース

        -

c)時間的制約が高いケース

ヒューリスティックな判断が行われやすくなる(値段によって品質を推定)

(3)まとめ

Suri Monroeの研究 (2003)商品への関与(意識)の程度が低いケースを取り込んだことが特徴だと思います。前回のDhar Nowlis の研究(1999)は関与(意識)の程度が高いケースを扱っていたと理解できます。

関与の(意識)の低い(例、値段が安い、興味があまりない)商品のケースでは、関与が高い場合に比べて、時間的制約がなくてもヒューリスティックな判断(価格による品質の推定)がなされやすくなります。

(4)マーケティングへの応用

(a) A)消費者の関与(意識)の程度と(B)消費者の情報処理の能力的余裕を考慮する

消費者が情報処理をしっかりする(熟慮する)か、ヒューリスティックな判断を使うかは、(A)消費者の関与(意識)の程度と(B)情報処理をしっかりする(熟慮する)する余裕があるか(例、時間的制約など)によって決定されますPetty, Cacioppo, & Schumann, 1983)参考記事はこちら

AIDMAを初めとする消費者モデルとして頻繁に引用されるモデルは情報処理をしっかりする(熟慮する)するケースしか扱っていないことが多いので注意が必要です。

(b) ヒューリスティックな判断は価格と品質だけではない

今回取り上げたのは、価格と品質の関係ですが、ヒューリスティックな判断の例はこれ以上にたくさんあります詳細はこちらNo1 No2 )。

具体例は下記の通り

・価格と品質・機能、・ブランド名と品質・機能、・シェアと品質・機能、・広告と品質・機能、・メーカー希望価格と値下げ、いつも行く店、近くの店、友人が紹介した店・商品など(もっとあります。具体例を思いついたらコメント下さい!!)

(c)男女・シニア・若者によるヒューリスティックな判断を使う傾向が異なります

前回もコメントしましたが、ヒューリスティックな判断な判断のしやすさには年齢(子供・若者・シニア)・男女による差もあります。簡単に述べると男性・シニア・子供の方が女性・若者よりもヒューリスティックな判断をする傾向があります内容はこちら

次回は時間の制約と消費者の選択No3を扱います。時間の切迫と(今回は)買わないという意思決定の関係を扱います。

本編(時間の制約と消費者の選択No3)は明日の夜に更新します。心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theory No3)の更新は明日の午前中の更新予定です。 

心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theoryNo3)の紹介

人間は日常の出来事に対して、なぜ起こったかという原因の究明を行います。その原因究明の仕方に関する理論が帰属過程の理論(Attribution theory)です。第3回目はバイアスNo2です。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

主な参考論文

Beatty,S.E., & Smith,S.M. (1987). External search effort: An investigation across several product categories. Journal of Consumer Research, 14, 83-91.

Dhar,R., & Nowlis,S.M. (1999). The effect of time pressure on consumer choice deferral. Journal of Consumer Research, 25, 369-384.

Petty,R.E., Cacioppo,J.T., & Schumann,D. (1983). Central and peripheral routes to advertising effectiveness: The moderating role of involvement. Journal of consumer research, 10, 135-146.

Suri,R., & Monroe,K.B. (2003). The effects of time constraints on consumer’ judgements of prices and products. Journal of consumer research, 30, 91-104.

心理学のお勉強(社会心理学)No14 :帰属過程のバイアスNo1

心理学のお勉強(社会心理学)No14 :帰属過程のバイアスNo1

今回は帰属過程:Attribution theoryの第二回目です。人間は日常の出来事に対して、なぜ起こったかという原因の究明(帰属)を行います。その原因究明(帰属)の仕方に関する理論が帰属過程の理論(Attribution theory)です。しかし、原因の帰属にはバイアスがかかりやすいことが知られています。帰属過程のバイアスNo1では基本的な帰属の誤り(Fundamental attribution error)というバイアスを取り上げます。

1.基本的な帰属の誤り(Fundamental attribution error

(1)概要

観察者は行為者の個人的な要因を過大評価し、状況的な要因を過小評価する傾向がありますJone, & Harris, 1967, sited in Scherer, 2001)。例えば、雨の日、日本代表のサッカーを見ていて、中村俊輔選手が本来のプレーをできなくて日本が負けたとします。中村選手は巧みな技術が持ち味の選手なので雨でぬかるんだグランドでは本来の持ち味が発揮できないと思います。状況的な要因がプレーに影響を大きく与えたと思われます。しかし、観察者である観客は雨のぬかるんだグランドという状況要因よりも中村選手のパフォーマンスという個人的要因を高く評価しがちです。つまり、雨は関係なく、中村選手が良いプレーをしなかったせいで負けたと。

(2)理由

(a)動機的説明 (Motivational explanation)

人間は他人の行為を実際よりもコントロール可能なものと見る傾向があるため(Miller, Norman, & Wright, 1978, sited in Scherer, 2001)。人間には、自分には不幸な事故などが起こらないだろうという考えを維持したいがため、不幸な事故などの被害者をおとしめる(例、その人にも責任があると考える)傾向がありますScherer, 2001)。例えば、海外に女性が一人旅行をしていて被害にあった場合、そんな危険な海外に一人で無用心に行く方が悪いなどという報道も未だにされます。

(b)認知的説明(Cognitive explanation

行為者の行為は状況的な要因よりも目立つため(Scherer, 2001)。

(c)逐次的な説明

初めに個人的な要因に原因の可能性を持って行き、次に状況的要因に移る傾向があるQuattrone, 1982, sited in Scherer, 2001)。例えば、日本代表が中村選手の調子が良くなくて負けたとき、初めに中村選手のパフォーマンスのせいにして、次第に雨の影響があったかもしれないと推論が移ることです。この際には係留効果( Anchoring effect( Tversky, & Kahneman, 1974, sited in Fiedler, & Bless, 2001)というヒューリスティックな判断(Judgement heuristics)の影響を受けると思われます(Scherer, 2001)。つまり、初めに中村選手の個人的要因に原因の可能性も持っていくことで個人的な要因の方向にバイアスのかかった判断をするのだと思います。

(3)欧米とアジアの違い

基本的な帰属の誤り(Fundamental attribution error)の発生の仕方には文化的違いがあると言われています(Scherer, 2001)。具体的にはアメリカ・イギリスのような個人主義(Individualist)の国の方が、日本などのような集産主義(Collectivist)の国よりも個人的な要因へのバイアスがかかりやすいということです。

(4)環境要因との関係

(a)個人的要因に焦点が行きやすいケース

・事前の期待と一致しなかった時(Kulik, 1983, sited in Scherer, 2001

(b)状況的要因に焦点が行きやすいケース

・ネガティブな気分の時(Forgas, 1998, sited in Scherer, 2001

・より動機付けられている時(Webster, 1993, sited in Scherer, 2001

・行為者の動機に不信な時(Hilton, Fein, & Miller, 1993, sited in Scherer, 2001

・状況要因に興味がある時(Krull, & Erickson, 1995, sited in Scherer, 2001

《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!

(1)先日の関東の大停電で東京電力にも批判が行ったようです。東京電力は停電の原因とは直接的な関係はないのにも関わらずなぜ?

基本的な帰属の誤り(Fundamental attribution error)によるバイアスだと思います。本来、東京電力よりも状況的要因(クレーン船会社の三国屋建設)に責任があるはずなのに、東京電力に対して批判の矛先(例、以前も事故があったのに処置を取らなかった、復旧が遅い)を向けた方々が多かったと思います。東京電力の責任にするのは酷だと思います。全ての事故を防ぐように送電線等の配置換えをしたらいくらコストかけても足りません(関電工は大喜びでしょうが)。電力の自由化の中で競争が激化している(株式公開しているため利益の拡大を求められる)電力会社には無理な話だと思います。しかし、停電の際、多くの消費者の方は状況的な要因ではなく、東京電力に責任の原因付けをしています。

(2)サッカーワールドカップでオーストラリア・クロアチア戦では負けた・引き分けた後に戦犯探しが始まったけど、ブラジル戦後には戦犯探しが行われなかった理由は?

事前の期待感の違いだと思います。オーストラリア・クロアチア戦は勝つ可能性もそれなりにあると思っていたので、期待に沿わずに負けたため個人的要因に焦点が行ったと思います。一方、ブラジル戦は負けると一般的に思われていたので、事前の予想通りに負けても個人的な要因探しはあまり生じませんでした。

(3)コールセンター担当の社員です。アドバイスを?

様々な状況要因によって顧客様に不満足を与えることはあります。仕入先の納入が遅れたため在庫が切れたり、コールセンターに電話が殺到しすぎたため電話がかかりにくいなどです。その際に企業側としては自分達のせいではなく状況的な要因と説明したくなります。例えば、回線が混み合っているため電話がつながりにくくなっていますとコールセンターの自動録音が回答することが多いです。しかし、大事なことは、消費者は状況的な要因によってしかたがないとは思わず、会社の責任だと思いがちです。例えば、回線が混み合ってコールセンターへの電話が30分も待たされた場合、企業側の回線がコールに対応できないのが悪いと考えがちです。ここに顧客の不満足の原因があると思います。

(4)企業経営者です。アドバイスを?

企業の舵取りにとって基本的な帰属の誤り(Fundamental attribution error)によるバイアスを理解することは非常に重要です。予算を達成できない時、担当者の責任にして「頑張ります!」という言質を取って満足していませんか?状況的要因に問題がある時(例、景気サイクルの悪化)は担当者の責任にすると市況の変化という重要な変化を読みそこないます。経営会議で重要なことは誰かの責任に予算の未達をするのではなく、その原因を見極め・適切な対策を取ることだと思います。ITバブル崩壊時に在庫が山積みになった原因の一端はここにあります。

更新は、心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theory No3)を明日の午前中に行う予定、本編(時間の切迫下での消費行動N02)を明日の夕方に行う予定

時間的切迫感がある状況下での消費行動No2の紹介

時間的切迫感と商品への関与(意識)の度合いが価格によるフューリスティック(価格が高いと品質が高いと思う傾向)に与える影響を取り上げます。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

参考文献

Scherer.K.R. (2001). Emotion, in Introduction to social psychology: A European Perspective Third edition, (ed) Hewstone,M. & Stroebe,W. Oxford, Blackwell Publishing.

消費者心理とマーケティング - 時間の制約下での消費者の選択No2 (エグゼクティブ・サマリー)

先程更新した記事の誤記があったので差し換えます


消費者心理とマーケティング -時間の制約(time constraints)下での消費者の選択No2 (エグゼクティブ・サマリー) -として、時間の制約と消費者の選択No2を取り上げます。

忙しい方用に、エグゼクティブ・サマリー(参照文献などは本編に載せます)を別途記述しています。そして、本編に関しては記述が終わり次第更新します。

《エグゼクティブ・サマリー》

前回の記事 で時間的な制約がある場合は、消費者は(1)情報検索の程度が減少、(2)ヒューリスティック な判断を行う傾向が強くなる、(3)商品・サービスのユニークな特徴のみに頼った意思決定をしやすくなるという特徴を扱いました。

今回は(1)ヒューリスティックな判断のひとつである価格による製品品質の推定、(2)消費者の関与の程度という現象と時間の制約の関係を取り上げます。

1.基本概念

(1)価格によるヒューリスティック

消費者は良く知らないブランドを見た時に価格が高い商品を品質が良いと判断する傾向があります。ただし前提条件としては、消費者が情報処理 (熟慮)を一生懸命しないことです。

(2)消費者の関与の程度

消費者の関与の程度が高い場合は情報処理 (熟慮)を一生懸命すると思われます。関与とはその商品に対する意識の程度と考えて下さい。関与が低いと情報処理(熟慮)するモチベーションが下がります。情報処理(熟慮)するモチベーションが低いケースではヒューリスティックな判断が行われる傾向が高くなります。

(3)時間の制約(time constraints

時間の制約がある時は、全ての情報を処理するのではなく、重要ではない情報の処理は行わない傾向があります。つまり意思決定に重要な商品・サービスのユニークな特徴のみに頼った意思決定をします。

2.Suri Monroeの研究 (2003)

(1)消費者の情報処理(熟慮)に対するモチベーションが低いケース

a)時間的制約が低いケース

ヒューリスティックな判断が行われやすくなる(値段によって品質を推定)

b)時間的制約が適当なケース

(意思決定に余分な情報が省かれるので)よりシステマティクな情報処理(熟慮)が行われやすくなる(値段に惑わされない正確な判断)

c)時間的制約が高いケース

ヒューリスティックな判断が行われやすくなる(値段によって品質を推定)

(2)消費者の情報処理(熟慮)に対するモチベーションが高いケース

a)時間的制約が低いケース

システマティクな情報処理(熟慮)が行われやすくなる(値段に惑わされない正確な判断)

b)時間的制約が適当なケース

        -

c)時間的制約が高いケース

ヒューリスティックな判断が行われやすくなる(値段によって品質を推定)

皆さんは時間がなくて急いでいる際、どのような基準(値段、ブランド名など)で買う・買わないという意思決定をしていますか?コメントを下さい!!

詳細は次回の本編で扱います。

詳細は明日の夜に更新します。心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theoryNo2)の更新は明日の午前中の更新予定です。

心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theoryNo2)の紹介

人間は日常の出来事に対して、なぜ起こったかという原因の究明を行います。その原因究明の仕方に関する理論が帰属過程の理論(Attribution theory)です。第2回目はバイアスのかかった帰属です。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

消費者心理とマーケティング-時間の制約下での消費者の選択No2 (エグゼクティブ・サマリー)-

消費者心理とマーケティング -時間の制約(time constraints)下での消費者の選択No2 (エグゼクティブ・サマリー) -として、時間の制約と消費者の選択No2を取り上げます。

忙しい方用に、エグゼクティブ・サマリー(参照文献などは本編に載せます)を別途記述しています。そして、本編に関しては記述が終わり次第更新します。

《エグゼクティブ・サマリー》

前回の記事 で時間的な制約がある場合は、消費者は(1)情報検索の程度が減少、(2)ヒューリスティックな判断 を行う傾向が強くなる、(3)商品・サービスのユニークな特徴のみに頼った意思決定をしやすくなるという特徴を扱いました。

今回は(1)ヒューリスティックな判断のひとつである価格による製品品質の推定、(2)消費者の関与の程度という現象と時間の制約の関係を取り上げます。

1.基本概念

(1)価格によるヒューリスティック

消費者は良く知らないブランドを見た時に価格が高い商品を品質が良いと判断する傾向があります。ただし前提条件としては、消費者が情報処理 (熟慮)を一生懸命しないことです。

(2)消費者の関与の程度

消費者の関与の程度が高い場合は情報処理 (熟慮)を一生懸命すると思われます。関与とはその商品に対する意識の程度と考えて下さい。関与が低いと情報処理(熟慮)するモチベーションが下がります。情報処理(熟慮)するモチベーションが低いケースではヒューリスティックな判断が行われる傾向が高くなります。

(3)時間の制約(time constraints

時間の制約がある時は、全ての情報を処理するのではなく、重要ではない情報の処理は行わない傾向があります。つまり意思決定に重要な商品・サービスのユニークな特徴のみに頼った意思決定をします。

2.Suri Monroeの研究 (2003)

(1)消費者の情報処理(熟慮)に対するモチベーションが低いケース

a)時間的制約が低いケース

ヒューリスティックな判断が行われやすくなる(値段によって品質を推定)

b)時間的制約が適当なケース

(意思決定に余分な情報が省かれるので)よりシステマティクな情報処理(熟慮)が行われやすくなる(値段に惑わされない正確な判断)

c)時間的制約が低いケース

ヒューリスティックな判断が行われやすくなる(値段によって品質を推定)

(2)消費者の情報処理(熟慮)に対するモチベーションが高いケース

a)時間的制約が低いケース

システマティクな情報処理(熟慮)が行われやすくなる(値段に惑わされない正確な判断)

b)時間的制約が適当なケース

        -

c)時間的制約が低いケース

ヒューリスティックな判断が行われやすくなる(値段によって品質を推定)

皆さんは時間がなくて急いでいる際、どのような基準(値段、ブランド名など)で買う・買わないという意思決定をしていますか?コメントを下さい!!

詳細は次回の本編で扱います。

詳細は明日の夜に更新します。心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theoryNo2)の更新は明日の午前中の更新予定です。

心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theoryNo2)の紹介

人間は日常の出来事に対して、なぜ起こったかという原因の究明を行います。その原因究明の仕方に関する理論が帰属過程の理論(Attribution theory)です。第2回目はバイアスのかかった帰属です。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

心理学のお勉強(社会心理学)No13 :帰属過程:Attribution theory

心理学のお勉強(社会心理学)No13 :帰属過程:Attribution theory

今回は帰属過程:Attribution theoryです。人間は日常の出来事に対して、なぜ起こったかという原因の究明(帰属)を行います。その原因究明(帰属)の仕方に関する理論が帰属過程の理論(Attribution theory)です。第1回目は基礎となる研究の紹介です。

1.Kellyのモデル

(1)ANOVAモデルKelly, 1967, sited in Scherer, 2001

原因と結果の共変(covariation変数間の関連パターンに基づいて帰属をするモデル前提は充分な時間とモチベーションがあることScherer, 2001)。例えば、ネールさんはブラウン教授の授業で居眠りをしました。考えられる原因は、(1)ネールさんの問題、(2)ブラウン教授の問題(つまらない授業など)、(3)状況(部屋が暑かったなど)、(4)これらのコンビネーションが考えられます(McArthur, 1972, sited in Scherer, 2001)。これらの状況を分析するために人は下記のような分析を行うと想定されます。(1)のネールさんの問題に関しては他の授業でも寝るか否か。(2)ブラウン教授の問題に関しては他の生徒の様子。(3)状況に関しては継続的な上記の状況が生じているか。

(2)批判

ANOVAモデルにはいくつかの批判があります(Scherer, 2001)。簡単にいくつかを紹介します。

a)人間は統計ソフトのように分析できない。ANOVAモデルは統計でいうANOVA(分散分析)を頭の中でするようなものですが、本当にそれは可能だろうか?

(b)複数回の観察によって十分なデータがないと上記の傾向を分析できない。

(3)因果・スキーマ(causal schemata)モデル(Kelly, 1973, sited in Scherer, 2001

上記の批判に答えたKellyによる新たなモデルです。不十分なデータしか手に入らない場合は、因果・スキーマcausal schemata)を用いて原因帰属を行うとしました。因果・スキーマ(causal schemata)とは既に自分の過去の経験から築かれている原因と結果に対する信念・理論のことです。例えば歩道に(事故で)乗り上げている車を見た際は、雨で滑ったのだろうと過去の因果・スキーマを使用して推定します。

(4)まとめ

ANOVAモデルはデータに基づく原因帰属であって、因果・スキーマ(causal schemata)モデルは信念・理論に基づく原因帰属です。議論は色々ありますが、実際の帰属はデータベースと信念・理論ベースの帰属が混ざり合って行われていると思われますAlloy, & Tabachnik, 1984, sited in Scherer, 2001)。

《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!

(1)皆さんはANOVAモデルの前提のようにデータに基づいて原因の帰属をしていますか?

ANOVAモデルの前提は合理的な人間像です。経済学では妥当かもしれませんが、(一般的に)心理学・消費者心理学・経済心理学では人間を合理的な存在とは捉えていません。よって様々なバイアスのある原因帰属をしていると考えられます。次回、バイアスについては取り上げます。

(2)消費者行動の分野とはどのようにして関係がありますか?

顧客不満足に関する要因分析には応用できます(今回用いたのとは別のモデルを使った研究はあります)。なぜ顧客がクレームをつけているかは顧客の原因帰属の方法を調査するとより明確になると思います。また消費行動を分析する際も消費者の思考を分析することは重要です。例えばある商品を値下げした際に消費者は値下げされている原因を考えるはずです。その際の思考パターンが分かればより柔軟な対応を取れます。その点、どのようなバイアスがかかりやすいかは非常に重要な論点なので次回取り上げます。

(3)会社員です。部下の指導にはどのように役立ちますか?

企業の活動は基本的にはPDCAplan, do, check, action)のサイクルで回っています。その中で部下のパフォーマンスをチェックして軌道修正をすることは非常に重要です。企業活動でよく問題になるのが、失敗の原因を正確に把握せずに「頑張ります」とだけ部下に言わせてステージに移ることです。また、過去の経験から簡略的な原因を(適当に)当てはめて本当の原因を見逃すことです。証券アナリスト時代に非常に多くの例を見てきました。どのようなに原因帰属のバイアスがかかりやすいかを把握し、バイアスのない正確な現状分析は必須だと思います。

今回の内容は抽象的で分かりにくかったと思います。実務的には帰属のバイアスのかかり方の方が重要だと思います(今回の内容は次回への準備)。次回に取り上げますので期待してください!!

更新は、心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theory No2)を明日の午前中に行う予定、本編(時間の切迫下での消費行動N02)を明日の夕方に行う予定

時間的切迫感がある状況下での消費行動No2の紹介

時間的切迫感と商品への関与(意識)の度合いが価格によるフューリスティック(価格が高いと品質が高いと思う傾向)に与える影響を取り上げます。

心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theoryNo2)の紹介

人間は日常の出来事に対して、なぜ起こったかという原因の究明を行います。その原因究明の仕方に関する理論が帰属過程の理論(Attribution theory)です。第2回目はバイアスのかかった帰属です。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

参考文献

Scherer.K.R. (2001). Emotion, in Introduction to social psychology: A European Perspective Third edition, (ed) Hewstone,M. & Stroebe,W. Oxford, Blackwell Publishing.

消費者心理とマーケティング -時間の制約下での消費行動No1-

消費者心理とマーケティング -時間の制約(time constraints)下での消費行動No1-として、時間の制約と消費者の選択No1を取り上げます。

時間的な余裕がない時、消費者は全体的な考慮をせずに、商品・サービスのユニークな特徴のみに頼って購買の意思決定をしています(Dhar, & Nowlis, 1999)。具体的には、他の商品・サービスと共通の特徴を吟味するのではなく、他の商品・サービスとの違いに重点を置いてチョイスをしています。

1.情報の検索

一般論として、時間的な余裕がない時は情報検索の程度が減少します(Beatty, & Smith, 1987)。つまり、(商品によって異なりますが)時間的余裕がある場合は、広告・友人からの評判をチェックして、店内ではパッケージ・POPをよく読んで、店員からも情報収集して、購入する商品・サービスを決定することもありますが、時間的な余裕がない時はこれらの情報収集活動の程度を減らします。

2.ヒューリスティックな判断(Judgement heuristics内容はこちら

消費者は情報処理内容はこちらする能力的余裕がない場合は、簡便的なヒューリスティックな判断を行う傾向がありますPetty, Cacioppo, & Schumann, 1983)。よって、時間的な余裕がない場合はヒューリスティックな判断が行われる傾向があります。具体的には、(1)ブランドネームによって品質を推定する(Nowlis, 1995, sited in Suri, & Monroe, 2003)、(2)値段によって品質を推定する(Suri, & Monroe, 2003)などです。

3.商品・サービスのユニークな特徴の検索 (Dhar, & Nowlis, 1999)

時間的余裕がある場合、消費者は比較対象となる商品・サービスと共通的な特徴と共に異なる特徴を比較する傾向があります。例えば、レストランを選ぶ際も、共通点となる入店には長時間並びという特徴と共にA店では全般的に味が美味しくてメニューも豊富、B店ではデザートが美味しくて駐車場も広いなど異なる特徴を吟味します。

ところが、時間的な余裕がない場合、消費者は(時間がある時と比べ)共通点の吟味は少なくし、異なる特徴の吟味に力を入れます。上記の例では、A店、B店のどちらが今現在並ぶかはあまり考えずに、A店の全般的な料理の美味しさを取るか、B店のデザートと駐車場を取るかの選択をする傾向が高まるということです。

4.マーケティングへの応用

(1)理解を高める

時間がない消費者はヒューリスティックな判断な判断をしやすいということを理解し適切な戦略を立てる必要があります。例えば、ヒューリスティックな判断な判断のしやすさには年齢(子供・若者・シニア)・男女による差もあります。簡単に述べると男性・シニア・子供の方が女性・若者よりもヒューリスティックな判断をする傾向があります内容はこちら

また、ヒューリスティックな判断には様々なタイプがあります。これらの事例を理解し、マーケターとしてできる戦略を打つ必要があります。例えば、広告を打つことでその商品を実際よりも売れている商品に見せることもできますし、効果の明示することでその商品を欲しいと思わせることもできます。詳細はこちらの記事No1 No2 に書いてありますのでご参考にして下さい。

(2)自社のターゲット顧客について

自社のターゲットとする顧客層は、時間をかけて買いものに来るタイプか、時間がないケースに買い物に来るタイプかを判断する必要があります。時間がないケースによく利用される店舗・サービスにはヒューリスティックな意思決定を前提とした戦略の効果は高いと思います。(時間がないケースでもショッピングモールまで時間をかけて買いものに行く消費者も増えていますので、短絡的に考えないことが重要だと思います。このケースはこのテーマ内で扱います)

(3)競合との共通点と違い

顧客が時間のないケースに買い物に来るタイプに店舗・サービスの場合は、競合との違いを如何に出すかで勝負すべきであり、顧客が時間のあるケースに買い物に来るタイプに店舗・サービスの場合は、全ての面での勝負になると思われます。

具体的には「ほかほか亭」に対抗する「オリジン」は「ほかほか亭」の強みであるボリューム感のある弁当では勝負すべきではなく、まったく別の強みを作るべきということになります。実際、「オリジン」はボリューム感ではまったく「ほかほか亭」には勝てないが、ヘルシーさなどの特徴を打ち出して成功していました。相手の強みであるボリューム感で勝負する必要はまったくありません

一方、消費者が熟慮した上で店舗選択するような商品のケースでは特徴だけでは勝てません。例えば家電の量販店にヤマダ電気とエディオン(名古屋:エイデン、広島:デオデオ)という会社があります。ヤマダ電気は値段の安さが最大の武器で、エディオンの武器はサービスです。ただし、エディオンがヤマダと勝負するには、サービス水準だけでなく、相手の強みである価格でもある程度は勝負する必要があるということです。ただ、急に**という商品が必要になった場合などは(両方が駅前にある場合などは)安い(イメージのある)ヤマダにするのか、サービスの良い(イメージのある)エディオンにするのかの選択で、どちらの店舗を選ぶかが決まると思われます。

次回は時間の制約下での意思決定No2を扱います。今回の議論を発展させます。

本編(時間の制約下での意思決定No2)は明日の夜に更新します。心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theory No1)の更新は明日の午前中の更新予定です。 

心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theory)の紹介

人間は日常の出来事に対して、なぜ起こったかという原因の究明を行います。その原因究明の仕方に関する理論が帰属過程の理論(Attribution theory)です。第1回目は基礎となる研究の紹介です。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

主な参考論文

Beatty,S.E., & Smith,S.M. (1987). External search effort: An investigation across several product categories. Journal of Consumer Research, 14, 83-91.

Dhar,R., & Nowlis,S.M. (1999). The effect of time pressure on consumer choice deferral. Journal of Consumer Research, 25, 369-384.

Petty,R.E., Cacioppo,J.T., & Schumann,D. (1983). Central and peripheral routes to advertising effectiveness: The moderating role of involvement. Journal of consumer research, 10, 135-146.

Suri,R., & Monroe,K.B. (2003). The effects of time constraints on consumer’ judgements of prices and products. Journal of consumer research, 30, 91-104.

心理学のお勉強(社会心理学)No12 :気分の適合:Mood congruency

心理学のお勉強(社会心理学)No12 :気分の適合:Mood congruency

今回は気分の適合(Mood congruencyです。気分が良いか悪いかによって人間のその後の行動は変わってきます。心理学の研究では一定の傾向が発見されています。気分が良いとき悪いときにどのような行動をとる傾向があるかを紹介したいと思います。

1.気分の適合 (Mood congruency)

人間は気分が良いときはポジティブな情報を知覚、記憶(符号化)、記憶からの取り出しをより効率的に行い、気分が悪いときはネガティブな情報を知覚、記憶(符号化)、記憶からの取り出しをより効率的に行う傾向があります(Bower, 1981, sited in Fiedler, & Bless, 2001; Isen, 1984, sited in Fiedler, & Bless, 2001)。

2.理由

簡略に述べると、気分が良いときはポジティブな記憶の箇所が、気分が悪いときはネガティブな記憶の箇所が活性化されているからだと思われます(Fiedler, & Bless, 2001)。

3.永遠の継続

ロジカルに考えると、気分が良いときはより気分が高揚する状況が続き、気分が悪いときはより気分が落ち込む状況が続くことが予想されますFiedler, & Bless, 2001)。例えば、落ち込んでいる時はネガティブな発想ばかりが浮かんできます。そのため好ましくない行為(友人の行為を袖にするなど)をしがちになり、それが更なる良くない出来事につながりがちで更なる落ち込みにつながるかもしれません。一方、気分が良いときは頼まれごとを積極的な引き受ける傾向があります。

4.永遠の継続の修正

(1)外部要因(external attribution of the mood effect)の判明

外的な原因によって現在の気分の悪い状態になっていることが明確になると気分の適合 (Mood congruency)の連鎖が消滅します(Schwarz, & Clore, 1988 ,sited in Fiedler, & Bless, 2001)。他人のせい、環境のせいと思えれば気分が解消する経験があると思います。

(2)気分転換(mood repair

気分が悪い人は、ネガティブな考えを避けたり、楽しいことに集中したりして気分を転換させる傾向があります(Fiedler, & Bless, 2001)。

(3)採用する情報処理方法の違い

気分は悪い場合はより情報処理(内容はこちら )を入念に行う傾向がありますIsen, Means, Patrick, & Nowicki, 1082, sited in Fiedler, & Bless, 2001)。一方、気分が良い場合は、正確な情報処理よりも、創造的に意思決定する傾向がありますIsen, Daubman & Nowicki, 1087, sited in Fiedler, & Bless, 2001)。よって気分が悪い場合は作業に没頭し気分が変わることもありますし、より入念に意思決定するので成功することで気分が転換する可能性もあります。

《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!

(1)気分はなぜマーケティングに重要なのですか?

消費者の気分の状態は、消費者の商品などに対する期待、実際の評価にも影響を与えるということです。良い気分の際は、悪い気分の際に比べて、同じ商品に対しても、より良い評価を下す傾向があることが言われています(Gardner, 1985)

(2)衝動買いとの関係は?

気分が良いときは正確な情報処理を行う程度が減ります。つまり衝動的に買い物をする可能性があります。一方、気分が悪いときは気分転換をするために衝動買いを行うことが多いです(Ronald, & Christenson, 1996)

(3)マンション投資の営業をしています。お客様の気分の状況と成果は関係ありますか?

気分が良いときの方が、お客様のリスク許容度が高まります(Kacen, 1994)。よってお客様の良い気分の時を狙うか作り出してからの営業のときの方が成果は高くなると思います。

(4)なぜ運が悪いときは運が悪いことが重なるのか?

運が悪いネガティブな気分になるネガティブなことばかり考えに浮かぶ好ましくない行為を取る(友人からの外出の誘いを断る)後で後悔してよりネガティブな気分になるなどの関係だと思います。

なお、気分と消費者行動を扱った詳細な記事は既に私のブログ内にありますのでご参考にして下さい記事はこちら

他にも応用例や身近な事例を思いついたら、お気軽にコメント下さい!!

更新は、心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theory No1)を明日の午前中に行う予定、本編(時間の切迫下での意思決定N02)を明日の夕方に行う予定

時間的切迫感がある状況下での意思決定の紹介

No1の内容を発展させます。

心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theory)の紹介

人間は日常の出来事に対して、なぜ起こったかという原因の究明を行います。その原因究明の仕方に関する理論が帰属過程の理論(Attribution theory)です。第1回目は基礎となる研究の紹介です。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

参考文献

Fiedler,K., & Bless,B. (2001). Construction of social world, in Social cognition, in Introduction to social psychology: A European Perspective Third edition, (ed) Hewstone,M. & Stroebe,W. Oxford, Blackwell Publishing.

Gardner,M.P. (1985). Mood states and consumer behavior: A critical review. Journal of Consumer Research, 12, 281-300.

Kacen,J.J. (1994). Phenomenological insights in mood and mood related consumer behaviors. Advances in Consumer Research, 21, 519-525.

Ronald,J.F., & Christenson,G.A. (1996). In the mood to buy: Differences in the mood states experienced by compulsive buyers and other consumers. Psychology and Marketing, 13, 803-819.