心理学のお勉強(社会心理学)No15 :帰属過程のバイアスNo2
心理学のお勉強(社会心理学)No15 :帰属過程のバイアスNo2
今回は帰属過程:Attribution theoryの第三回目です。人間は日常の出来事に対して、なぜ起こったかという原因の究明(帰属)を行います。その原因究明(帰属)の仕方に関する理論が帰属過程の理論(Attribution theory)です。しかし、原因の帰属にはバイアスがかかりやすいことが知られています。帰属過程のバイアスNo2では行為者と観察者の帰属の違い(Actor-observer differences)というバイアスを取り上げます。
1.行為者と観察者の帰属の違い(Actor-observer differences)
(1)概要
行為者は状況的な要因、観察者は行為者の個人的な要因に原因帰属する傾向があります(Jone, & Nisbett, 1972, sited in Scherer, 2001)。例えば、学生(行為者)は遅刻した理由を電車やバスが遅れたこと(状況的要因)を原因にしがちだが、先生(観察者)はその生徒が怠惰(個人的要因)だから遅刻したとしがちです。
(2)理由
(a)情報の違い
行為者の方がその時の状況や自分の過去の行為(どのように振舞ってきたか)を良く知っているため状況に焦点が行くが、観察者はそのような情報をあまり持っていないので行為者に原因を帰属させがちになる(Nisbett, Ritchie, Legant, & Maracek, 1973, sited in Scherer, 2001)。
(b)視点(attention)の違い
行為者は自己の行為を客観的に観察できないが、観察者はできる。よって行為者は状況的な要因に観察者は個人的な要因に原因を帰属させがちになる(Scherer, 2001)。
《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!
(1)なぜ子供の喧嘩では**ちゃんに先にぶたれたから喧嘩になったとお互い言うのか?
行為者は状況的要因に原因の帰属をさせる傾向にあるからだと思います。ここでの状況要因は友達の**ちゃんに先にぶたれたということです。
(2)商品が約束の日に届かないなどの理由でクレームを付けると、いつも販売員は言い訳(製造の問題で・混みあっているなど)をしているように感じます?なぜ?
販売員の人たちにはもっともな状況的な理由があり、顧客は個人的な要因に原因帰属をさせるので、互いの言い分が食い違ってフラストレーションが溜まるのでしょう。
(3)企業で予算の未達成の際になぜ意見が食い違うのか?
担当者(行為者)は未達の原因を市場環境などの状況的要因に帰属させる傾向があるが、監督者である上司などは担当者の個人的な要因(例、努力不足)に原因を帰属させる傾向があります。よって両者の見解がいつも噛み合わないのです。
(4)企業経営者です。アドバイスは?
上記(3)の事例にあるように担当者と監督者の見解(役員同士の議論も含む)は食い違うことが非常に多いです。ここで大切なのは両者がそれぞれのバイアスを理解し、どこまでが市場環境など状況的要因でどこからが個人的な要因なのかをしっかりと議論し、互いに納得することです。その議論の中から初めて本当の市場環境が経営者層まで上がってくると思います。しかし、多くの企業ではこのような議論はせずに、互いの政治力などによってどこまで相手に飲ませるかの駆け引きをしています。そのためいつまでも市場環境の変化に気が付かないのです。
更新は、心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theory No4)を明日の午前中に行う予定、本編(時間の切迫下での消費行動N03)を明日の夕方に行う予定
時間的切迫感がある状況下での消費行動No3の紹介
時間的制約と選択の繰り延べ(Choice deferral)の関係を取り上げます。選択の繰り延べ(Choice deferral)とは商品を(買うかどうか悩んで)買わないで帰る事です。
心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theory No4)の紹介
帰属過程のバイアスNo3を取り上げます。
《お願い》
皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。
参考文献
Scherer.K.R. (2001). Emotion, in Introduction to social psychology: A European Perspective Third edition, (ed) Hewstone,M. & Stroebe,W.