心理学のお勉強(社会心理学)No12 :気分の適合:Mood congruency
心理学のお勉強(社会心理学)No12 :気分の適合:Mood congruency
今回は気分の適合(Mood congruency)です。気分が良いか悪いかによって人間のその後の行動は変わってきます。心理学の研究では一定の傾向が発見されています。気分が良いとき悪いときにどのような行動をとる傾向があるかを紹介したいと思います。
1.気分の適合 (Mood congruency)
人間は気分が良いときはポジティブな情報を知覚、記憶(符号化)、記憶からの取り出しをより効率的に行い、気分が悪いときはネガティブな情報を知覚、記憶(符号化)、記憶からの取り出しをより効率的に行う傾向があります(Bower, 1981, sited in Fiedler, & Bless, 2001; Isen, 1984, sited in Fiedler, & Bless, 2001)。
2.理由
簡略に述べると、気分が良いときはポジティブな記憶の箇所が、気分が悪いときはネガティブな記憶の箇所が活性化されているからだと思われます(Fiedler, & Bless, 2001)。
3.永遠の継続
ロジカルに考えると、気分が良いときはより気分が高揚する状況が続き、気分が悪いときはより気分が落ち込む状況が続くことが予想されます(Fiedler, & Bless, 2001)。例えば、落ち込んでいる時はネガティブな発想ばかりが浮かんできます。そのため好ましくない行為(友人の行為を袖にするなど)をしがちになり、それが更なる良くない出来事につながりがちで更なる落ち込みにつながるかもしれません。一方、気分が良いときは頼まれごとを積極的な引き受ける傾向があります。
4.永遠の継続の修正
(1)外部要因(external attribution of the mood effect)の判明
外的な原因によって現在の気分の悪い状態になっていることが明確になると気分の適合 (Mood congruency)の連鎖が消滅します(Schwarz, & Clore, 1988 ,sited in Fiedler, & Bless, 2001)。他人のせい、環境のせいと思えれば気分が解消する経験があると思います。
(2)気分転換(mood repair)
気分が悪い人は、ネガティブな考えを避けたり、楽しいことに集中したりして気分を転換させる傾向があります(Fiedler, & Bless, 2001)。
(3)採用する情報処理方法の違い
気分は悪い場合はより情報処理(内容はこちら
)を入念に行う傾向があります(Isen, Means, Patrick, & Nowicki, 1082, sited in Fiedler, & Bless, 2001)。一方、気分が良い場合は、正確な情報処理よりも、創造的に意思決定する傾向があります(Isen, Daubman & Nowicki, 1087, sited in Fiedler, & Bless, 2001)。よって気分が悪い場合は作業に没頭し気分が変わることもありますし、より入念に意思決定するので成功することで気分が転換する可能性もあります。
《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!
(1)気分はなぜマーケティングに重要なのですか?
消費者の気分の状態は、消費者の商品などに対する期待、実際の評価にも影響を与えるということです。良い気分の際は、悪い気分の際に比べて、同じ商品に対しても、より良い評価を下す傾向があることが言われています(Gardner, 1985)。
(2)衝動買いとの関係は?
気分が良いときは正確な情報処理を行う程度が減ります。つまり衝動的に買い物をする可能性があります。一方、気分が悪いときは気分転換をするために衝動買いを行うことが多いです(Ronald, & Christenson, 1996)。
(3)マンション投資の営業をしています。お客様の気分の状況と成果は関係ありますか?
気分が良いときの方が、お客様のリスク許容度が高まります(Kacen, 1994)。よってお客様の良い気分の時を狙うか作り出してからの営業のときの方が成果は高くなると思います。
(4)なぜ運が悪いときは運が悪いことが重なるのか?
運が悪い→ネガティブな気分になる→ネガティブなことばかり考えに浮かぶ→好ましくない行為を取る(友人からの外出の誘いを断る)→後で後悔してよりネガティブな気分になるなどの関係だと思います。
なお、気分と消費者行動を扱った詳細な記事は既に私のブログ内にありますのでご参考にして下さい(記事はこちら
)
他にも応用例や身近な事例を思いついたら、お気軽にコメント下さい!!
更新は、心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theory No1)を明日の午前中に行う予定、本編(時間の切迫下での意思決定N02)を明日の夕方に行う予定
時間的切迫感がある状況下での意思決定の紹介
No1の内容を発展させます。
心理学のお勉強(帰属過程:Attribution theory)の紹介
人間は日常の出来事に対して、なぜ起こったかという原因の究明を行います。その原因究明の仕方に関する理論が帰属過程の理論(Attribution theory)です。第1回目は基礎となる研究の紹介です。
《お願い》
皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。
参考文献
Fiedler,K., & Bless,B. (2001). Construction of social world, in Social cognition, in Introduction to social psychology: A European Perspective Third edition, (ed) Hewstone,M. & Stroebe,W.
Kacen,J.J. (1994). Phenomenological insights in mood and mood related consumer behaviors. Advances in Consumer Research, 21, 519-525.
Ronald,J.F., & Christenson,G.A. (1996). In the mood to buy: Differences in the mood states experienced by compulsive buyers and other consumers. Psychology and Marketing, 13, 803-819.