消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索No2- | 消費者心理学とマーケティング - 消費者心理学・消費者行動論の研究より -

消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索No2-

消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索(Information searchNo2-として商品の値段と情報探索の関係を取り上げます。消費者は商品を購買する際に情報の探索を行うことで購買意図を形成します。情報探索の程度は商品の値段とも関係があります。

1.購買前(Pre-purchase)の情報の探索(Information search

消費者は商品を購買する際に情報の探索を行うことで購買意図を形成します

2.情報探索の種類

(1)内部探索(Internal search

・過去の消費経験など記憶からの情報の探索

(2)外部探索(External search

・マスメディアや口コミなど記憶以外の情報源からの情報の探索

3.順序

初めに(1)内部探索(Internal search)、不十分な場合は、(2)外部探索(External search

4.外部探索(External search)の頻度

外部探索(External search)を行うことは消費者の時間や労力などを消費しますので、内部探索(Internal search)で充分なときは内部探索で済ます傾向にあります

5.商品・サービスの価格と情報探索の程度

基本的には商品・サービスの値段が上がると情報探索の程度が上がります

6.具体例

(1)車(Kiel & Layton, 1981

・値段が上がると情報探索を行う時間が増える

・予想される下取り価格(trade-in valuation)が高くなると、探索するディーラー数・メディア探索数・友人への探索数が増える

(2)家具(Claxton & Fry & Portis, 1974

・値段が上がると情報探索の程度が増える

(3)小型(200ドルまで:ただし1966年の調査)の家電(Udell, 1966

・値段が上がると情報探索の程度が増える

・最も有益な情報源として、33%は過去の経験(内部探索)、19%は友人との議論(外部探索)を挙げた

(4)食料品以外(Non-food)(Bucklin, 1966

・値段が上がると情報探索の程度が増える

15ドル以下(1966年時点)の買い物は、1つの店舗のみは61%、複数店舗の探索は39%

100ドル以上の買い物では、1つの店舗のみは37%、複数店舗の探索は64%

《注意》

全ての消費者において値段が上がると情報探索の程度が増える訳ではありません。あるぶらんどの過去の使用経験の長い消費者は新しいモノを買う際に少数の探索しないこともリサーチされています(e.g., Newman & Staelin, 1972)。

(5)食料・雑貨品(grocery shopping

通常、複数店舗の比較をする人は22%、たいてい1店舗のみが78%(内、常に1店舗は29%

店舗内で商品間の価格の比較を最低で1ヶ月に1度するのは42%、あまり比較しないのは21%、決して比較しないのは36% Urbany, Dickson, & Sawyer, 2000)。

7.まとめ

(1)基本的には値段が上がると情報探索の程度が上がると思われます。ただし、この傾向には消費者の過去の使用経験など様々な要素が絡み合います。

(2)食料品など繰り返し購入され、それぞれの値段が高くない商品の場合は、外部探索はあまり重視されずに、過去の使用経験である内部探索が中心です。つまり消費者は過去の使用満足などに基づいて日頃購入する商品を数種類決めており、それらを持ち回りで購入しているに過ぎないと思われます(Ehrenberg. 1974, 1990)。(詳しくはこちら

主な参考論文

Bucklin,L.P. (1966). Testing Propensities to Shop, Journal of Marketing, 30, 22-27.

Claxton,J.D., & Fry,J.N., & Portis,B. (1974). A Taxonomy of Prepurchase Information Gathering Patterns, The Journal of Consumer Research, 3, 35-42.

Ehrenberg.A, (1974), Repetitive advertising and the consumer, Journal of Advertising Research, 14, 25-34.

Ehrenberg.A, (1990), Double Jeopardy Revisited, Journal of Marketing, 54, 82-91.

Kiel,G.C., & Layton,R.A. (1981). Dimensions of consumer information seeking behavior. Journal of Marketing Research, 233-239.

Newman,J.W,.& Staelin,R. (1972). Prepurchase Information Seeking for New Cars and Major Household Appliances, Journal of Marketing Research, 9, 249-257.

Udell,J.G. (1966). Prepurchase Behavior of Buyers of Small Electrical Appliances, Journal of Marketing, 30, 50-52.

Urbany,J.E., Dickson,P.R., & Sawyer,A.G. (2000). Insights into cross- and within- store price search: Retailer estimates vs. consumer self-reports. Journal of Retailing, 76, 243-258.