やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No21:態度No4 | 消費者心理学とマーケティング - 消費者心理学・消費者行動論の研究より -

やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No21:態度No4

やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No21:態度No

今回は態度:Attitudesの第4回目です。自己知覚理論Self-perception theory)を取り上げます。自己知覚理論によって説得の有名な理論のフット・イン・ドア・テクニックのメカニズムを説明できます。

なお、今回から名前を「やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)に変えます。

1.自己知覚理論(Self-perception theory

(1)概念

人間は、外部の観察者のように、自分の行動やその外的状況を観察することで自分の内的要因(態度など)を推論しているという理論(Bem, 1965, 1972, sited in Bohner, 2001)。実は、前回取り扱った認知的不協和の理論(記事はこちら )を不協和という概念を使わずに同様の現象を説明できるということで脚光を浴びた理論です。例えば、どうでも良い商品(特に強い好き・嫌いという態度のない商品)を買ってしまった時、人間は自分の行動を自分で観察します。もし好きでないのならば何で買ってしまったのだろう?買ったのだから好きだろう!! 

(2)ポイント(Solomon, Bamossy & Askegaard, 1999

・人間は(習慣から)買った商品に対して買った後からポジティブな態度を持つと考えられている

関与の低い商品に成り立しやすい理論:関与の高く(興味が強く)好き・嫌いな態度がはっきりしている商品に対しては成り立ちにくい

(3)フット・イン・ドア・テクニック

初めに大きな依頼をするよりも、初めに小さな依頼を受託させた方がその後の大きな依頼を受け入れさせやすいというテクニックFreedman & Fraser, 1966, sited in Solomon, Bamossy & Askegaard, 1999)。例えば、Aさんは友人に自分の子供の面倒を半日見て欲しい時に初めから「半日面倒を見て」と行ったら断られる可能性も高いと思います。しかし、初めは「1時間だけ」と言って受託してもらい、その後に「事情が変わって半日に延長して」と言うと受け入れてもらえる可能性は高まると思います。

(4)自己知覚理論とフット・イン・ドア・テクニック

自己知覚理論を使うとフット・イン・ドア・テクニックの効果的な理由が分かりますSolomon, Bamossy & Askegaard, 1999)。一度、友人が受託すると、その友人は自分の行為を観察して、「自分はAさんの手助けを本当はしたいいのだ」と思い、その後の半日というお願いも受託してしまうのだと思われます。

《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!

(1)販売員に薦められるまま服を買ってしまった服を購買後に好きになることもあります。なぜですか?

これは前回の認知的不協和の記事 で取り上げたのと同じ内容ですが、その時と別の解釈をします。販売員に言われるがまま買ってしまっても、買ったという行為を通じて「自分は**というタイプの服が好き」という自己知覚が出来上がってしまい、後になってその服を気に入るのだと思います。前回の認知的不協和の説明と比較してください。

(2)上司に自分の構想した新規投資案(1億円)を実施させたいです。どのような手順で行うべきですか?

初めから1億円の投資案件を持って行っても上司は慎重に構えてしまいます(会社規模などにもよりますが、この事例ではそのように仮定します)。その際はフット・イン・ドア・テクニックを使うべきです。例えば、「市場調査をしたいので調査会社やコンサルティング会社と100万円程度(非常に小規模)のプロジェクトをさせてください」と切り出すのは如何でしょう?自社のみでプロジェクトを実施するのではなく、外部を雇って小額だけどお金を使わせるのがポイントだと思います。できればオブザーバーとしてその上司もプロジェクトに形だけでも関わらせましょう。そしてその調査の結果として1億円の新規投資案を持っていった方が、自社や自分だけの調査報告を基にするよりも効果的だと思います。初めは上司が警戒しない程度に足を踏み込ませ、その後、徐々に新規投資案に引きずり込むのがコツです

更新は、やさしい心理学とその実践的応用(態度:Attitude No5)を明日の午前中に行う予定。本編(情報の探索No3)の更新は明日の夕方に行います。

やさしい心理学とその実践的応用(態度:Attitude No5)

No5として説得(精緻化見込みモデル:ELMについて取り上げます。1980年代以降の説得の研究の流れを作った理論です。マーケターには必須の理論(私見では最も重要な理論)です。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

参考文献

Bohner,G. (2001). Attitudes, in Introduction to social psychology: A European Perspective Third edition, (ed) Hewstone,M. & Stroebe,W. Oxford, Blackwell Publishing.

Solomon,M., Bamossy,G., & Askegaard,S. (1999). Consumer behaviour a European perspective. Essex: Person Education Limited.