やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No34:Noise (音・騒音)
1.定義
望まれていない音(unwanted sound)をここではNoiseとしています。
2.影響(Bell, Greene, Fisher, & Baum, 2001)
(1)いらいらさせること(Annoyance)。
以下の場合はよりいらいらする程度が高まります。
(A)ボリュームが大きい
(B)予期できない
(C)コントロールできない
(D)必要性のない音
(E)他者のことを考慮していない
(F)健康に影響があると聞いた人が思い込む
(G)騒音を恐怖と聞いた人が思う
(H)騒音を聞いた人が騒音以外の環境についても不満を持っている
(2)聴覚の問題
(3)ストレス・病気の発生
騒音はArousal
(覚醒)
の程度が上昇してストレスに結びつくこともあります。そしてひどい時は病気にも結びつくことあります。
(4)パフォーマンスとの関係
タスクの内容、ストレスへの耐性、個々のパーソナリティ、年齢(子供はNoiseに強い)、性別(女性は弱い)などによって異なった結果となります。
(5)登校への影響
騒音の多い地域に住んでいる子供は学校をサボる傾向があるとのリサーチがあります(Damon, 1977, sited in Bell et al. 2001)。
(6)仕事への影響
50%以上が仕事に影響があると報告したリサーチがあります(Sundstrom et al, 1994, sited in Bell et al. 2001)。
3.理論
(1)マスク(Mask)
ノイズは会話を覆い隠すからパフォーマンスは悪化する(e.g., Poulton, 1977, sited in Bell et al. 2001)。
(2)記憶・理解
ノイズは記憶や思い出しの能力を減退させる(Gomes, Martinho-Primenta & Castelo, 1999, sited in Bell et al. 2001)。
ノイズは考えることを減らし簡便な(ヒューリスティクな
)意思決定を増やす(Broadbent, sited in Bell et al. 2001)。
(3)適応理論
(Adaptation level theory)
適応理論を当てはめると、個々の人の経験やスキルなどによってノイズの影響が異なることが想定されます(Bell et al. 2001)。
The Yerkes-Dodson lawを当てはめると、ノイズはArousal(覚醒)の程度が高まることを通して、簡単なタスクのパフォーマンスはむしろ高め、複雑なタスクのパフォーマンスは減退させると想定されます。また極めて高いレベルのArousal(覚醒)が生じるようなノイズは簡単なタスクのパフォーマンスも減退させることが想定されます(Bell et al. 2001)。
(5)Environmental load
(環境的負荷)
Environmental load (環境的負荷)理論を当てはめると、予期できないノイズは予期できるノイズに比べて(より多くの注意が払われるため)パフォーマンスの悪化を招くと想定されます(Bell et al. 2001)。
(6)Behaviour constrain perspective
(行為の制限という観点)
Behaviour constrain perspective (行為の制限という観点) を当てはめると、コントロールが奪われたケースの方がコントロールの残っているケースよりも(より多くの労力をコントロールの回復に注がれるため)パフォーマンスの悪化を招くと想定されます(Bell et al. 2001)。
《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!
(1)周囲がうるさい中で女性に会った男性は女性のどこに注意が行くのでしょうか?
実生活でも周囲がうるさい中で女性と男性が出会うケースはあると思います。イギリスではパブ・ナイトクラブでの出会いなどはその例です。Environmental load (環境的負荷)理論を当てはめると、騒音の中では(騒音に注意が行くため)、静かなところでよりも、より少ない特徴的な点に焦点を当てて異性を見ると思われます(Bell et al. 2001)。よって静かな環境で会ってみると「当初の印象とは違うな」と思うこともあるのだと思います。
(2)周囲の騒音で困っている人を助ける行為は影響を受けますか?
周囲がうるさい環境下では、人助けの行為が減ることが報告されています(Mathews & Canon, 1975, sited in Bell et al. 2001)。Environmental load (環境的負荷)理論を当てはめてみると、騒音によって、注意が騒音の方に行っているのが原因だと想定できます(Bell et al. 2001)。
(3)なんでパチンコ店はうるさいのですか?
パチンコ店は非常にうるさい程大きな音楽を流しています。これはEnvironmental load (環境的負荷)理論を当てはめると、騒音に注意を持って行かせることでプレイヤーに冷静な判断をさせない効果があることが分かります。バーゲンは(行ったことがないので)良く分かりませんが、大きな音楽を流せばバーゲンでも同じような効果を期待できると思います。
(4)衝動買いを誘うために大きな音楽は効果があるか?
確かに大きな音楽は冷静な判断を奪うと思います。ただし、本文でも述べた様に、大きな音楽は不快な感情に結びつきます。よってバーゲンのような特殊な状況を除いて、大きな音楽を小売店が流すのは薦められません。
(5)騒音の中でAとBという商品の選択をする際は共通点の比較・相違点の比較のどちらに重点を置くと思いますか?
時間の切迫した際の意思決定の議論を思えていますか?下記の議論をしました。
例えば、レストランを選ぶ際も、共通点となる入店には長時間並びという特徴と共にA店では全般的に味が美味しくてメニューも豊富、B店ではデザートが美味しくて駐車場も広いなど異なる特徴を吟味します。ところが、時間的な余裕がない場合、消費者は(時間がある時と比べ)共通点の吟味は少なくし、異なる特徴の吟味に力を入れます。上記の例では、A店、B店のどちらが今現在並ぶかはあまり考えずに、A店の全般的な料理の美味しさを取るか、B店のデザートと駐車場を取るかの選択をする傾向が高まるということです。Environmental load (環境的負荷)理論を当てはめると、上記の議論と同じことが、騒音の中での意思決定でも生じると私は仮説を持っています。つまり、騒音によって充分な脳力を考慮に避けないため、共通点の考慮は充分に行わずに、相違点に焦点を絞った考慮をするのではないかと私は思います。このことは店内がうるさい産業(居酒屋、家電量販店など)に当てはまるのではないでしょうか。
《お願い》
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参考文献
やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No33:環境から来るストレスという観点
やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No33:Environmental stress perspective (環境から来るストレスという観点)
しばらくの間、環境心理学の基礎理論を取り上げます。重要な基礎理論を取り上げた後、様々な論点(ノイズ、パーソナルスペース、混雑)などマーケティングやその他に深く関わるものを取り上げます。
1.Environmental stress perspective (環境から来るストレスという観点)
(1)全体像(Bell, Greene, Fisher, & Baum, 2001)。
(A)環境からの刺激
自然災害などの大変異による刺激、病気・仕事などから来る個人的な原因による刺激、騒音などバックグラウンドの原因による刺激などが挙げられます。
(B)脅威としてストレスの(認知的)評価(Cognitive appraisal)
ストレスとなる前提として環境からの刺激が評価される必要があります。同じ刺激でも人や状況が異なることでストレスと成る場合とならない場合とがあります。考慮されるべき要因としては、状況的要因、個人的差異(知性、過去の経験、モチベーション、社会的なサポートなど)、知覚されたコントロール(Perceived control)などです。
(C)警告的反応(Alarm reaction)
心拍数の増加など自動的に生じる反応です。
(D)抵抗ステージ
a. 自動的な反応
ストレスに対抗するために生じる自動的な反応です。具体的には極端に寒いときに生じる体の震えなどです。
b. 対抗策
ストレスに対抗するための能動的な対応です。直接問題の解決を図る方法(例、ストレスの要因を探求する)とストレスを緩和することに焦点を当てる方法(例、薬を飲む)があります。
(E)疲弊のステージ
抵抗ステージにおいて改善できない場合は疲弊のサインが見え始めます。具体的にはストレスによる病気の兆候などです。
(F)適応(Adaptation)
全てのケースで疲弊する訳ではありません。多くのケースでストレスの対応するようになります。つまり同じ刺激に対する反応が弱くなります。具体的には当初はあまりの寒さにこごえていたのが慣れてくることなどです。
(2)ストレスとパフォーマンスの関係
ストレスはパフォーマンスを向上させることがあります(過度でない場合など)。理由としてはストレスによってArousal(覚醒)
の程度が上がりパフォーマンスを向上させると思われます(Bell, Greene, Fisher, & Baum, 2001)。
逆に対処できる以上のストレスの場合は、パフォーマンスを低下させるだけでなく、身体的、心理的な問題も発生することがあります(Bell, Greene, Fisher, & Baum, 2001)。
《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!
(1)営業の強い会社と弱い会社の違いは?
営業の弱い会社から強い会社に移ると一日に回る会社の数の違いにびっくりするという話は良く聞きます。そのようなケースでも、当初は非常に戸惑ってストレスを非常に感じても多くのケースで次第に慣れてきて他の社員と同様にこなせるようになります。ただしストレスの対処ができない人は体調が悪くなったりして退職する人もいるかもしれません。
(2)海外に英語を勉強しに行った人の心理状態は?
あまり英語をしゃべれない状態で海外に英語などを勉強しに行った人は、たいていの場合初めの1ヶ月程度は非常にストレスがかかり生活を楽しめません。私の昔、海外に英語の勉強に行った時、初めの1週間で本当に日本に帰ろうと思いました。ただし1ヶ月程度経つ頃からしゃべれない状況に慣れてきて生活がだんだんと楽しくなってくる傾向があります。今思うと1ヶ月程度では英語力が付くとも思えないのでやはりストレスに対する適応が生じたのだと思います。
《お願い》
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参考文献
やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No32:行為の制限という観点
やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No32:Behaviour constrain perspective (行為の制限という観点)
新しい環境でのリサーチが始まり研究室で自分のPC・インターネットが使えるようになったので再開します(自宅ではまだインターネットは使えませんが)。
しばらくの間、環境心理学の基礎理論を取り上げます。重要な基礎理論を取り上げた後、様々な論点(ノイズ、パーソナルスペース、混雑)などマーケティングやその他に深く関わるものを取り上げます。
1.Behaviour constrain perspective (行為の制限という観点)
(1)概略
過度もしくは好ましくない環境的刺激に接した時、人間には下記の反応が順に現れます(Bell, Greene, Fisher, & Baum, 2001)。
(A)知覚された統制(コントロール)の喪失(Loss of perceived control)
その状況を自分ではコントロールできないと感じる。具体的には、通勤時にあまりの混雑さに自分ではどのようにもできない(改善できない)状況が生じることなどです。
(B)心理的抵抗(Psychological Reactance)
人間は自由を奪われた時もしくは奪われると予想した時、不快・不安(Discomfort)、ネガティブな感情(Negative affect)が発生します。そして再び自由を得ようと抵抗をします。具体的には、通勤時の混雑のケースではドア付近から場所を少し変えてみるなど混雑から逃れようと試みます。
(C)無力の学習(Learned helplessness)
人間は上記の心理的抵抗が無力と分かった時は、自分が無力であることを学習します。
(2)コントロールできる場合
一方、コントロールできると知覚した場合はパフォーマンスや心理的見通しが高まります(Bell et al. 2001)。例えば、(老人)私設療養所(Nursing home)においてあるグループの老人(コントロールの程度の低いグループ)はスタッフが入居者のケアの責任を持つと言われ、もう一方のグループの老人(コントロールの程度の高いグループ)は自分たちで健康の責任を持つようにと言われました。すると3週間後、コントロールの程度の高いグループの老人の方がより健康で幸福度の高い(Well-being)状態で気分も良い状況でした(Bell et al. 2001)。
(3)無力の学習(Learned helplessness)
無力の学習の程度は帰属理論(
Attribution theory)
と関係しています。無力の学習が高いのは下記の場合です(Bell et al. 2001)。
(A)不変的な要因(Stable factor)による場合
一時的な要因による知覚された統制(コントロール)の喪失(Loss of perceived control)の方が不変的な要因によるモノよりも無力とは感じません。例えば公害が発生しているケースで、春だけ発生するケースの方が一年中発生しているケースよりも無力さは感じません。
(B)一般的な要因(General factor) による場合
特定の要因(Specific factor) による知覚された統制(コントロール)の喪失(Loss of perceived control)の方が一般的な要因によるモノよりも無力とは感じません。例えば公害が発生しているケースで、一部の産業で発生しているケースの方が、全ての産業で発生しているケースよりも無力さは感じません。
(C)自分に帰属させる場合
他人に原因を帰属させる場合の知覚された統制(コントロール)の喪失(Loss of perceived control)の方が自分に原因を帰属させる場合によるモノよりも無力とは感じません。例えば公害が発生しているケースで、他人の会社で発生しているケースの方が、自分の会社で発生しているケースよりも無力さは感じません。
《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!
(1)ある会社で経営陣が営業のノルマを設定したところ営業マンの士気が下がって業績が逆に上がりました。その理由は?
知覚された統制(コントロール)の喪失(Loss of perceived control)だと思います。人間は他人にコントロールされたくないという本質的な欲求があると思います。経営陣が営業マンのノルマを決定したことを営業マンは自分で営業の方法をコントロールできなくなったと感じたのでしょう。営業マンにはそれぞれ彼らなりの戦略があると思います。具体的には第一四半期には種まきをしてその後に受注に結びつけるなどです。そのような個々の営業マンの思いを無視して上からノルマを押し付けると営業マンは無力さを感じて士気が下がると思われます。
(2)上記の例で営業マンの士気を上げるには?
営業マンが自分でコントロールできる形にすべきです。営業マンがノルマを自己申告制のような形で設定する方が士気は上がります。
(3)真夏に店舗のクーラーが故障してお客さんが不快になっています?どのようにしてお客さんの不快指数を下げますか?
一時的な要因によって店舗の温度が上がりすぎていることを説明すればよいと思います。つまり一時的な要因による問題と説明すべきです。具体的にはクーラーが故障しているが、現在修理をしていて1時間後には復旧する見通しであるなどをアナウンスすべきです。
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参考文献
やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No31:適応レベル理論
やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No31:Adaptation level theory (適応レベル理論)
しばらくの間、環境心理学の基礎理論を取り上げます。重要な基礎理論を取り上げた後、様々な論点(ノイズ、パーソナルスペース、混雑)などマーケティングやその他に深く関わるものを取り上げます。
1.Adaptation level theory (適応レベル理論)
(1)概略
前回までのArousal
(覚醒)とInformation overload
(情報過多)の議論で、過度もしくは過少の環境からの刺激は望ましくないことを扱いました。つまり適度の刺激が好ましいこととなります。これがAdaptation level theory (適応レベル理論)の考え方です。そのため人間は過度な混雑やあまりに周囲との接触のない孤立などを嫌います(Wohwill, 1974, ,sited in Bell, Greene, Fisher, & Baum, 2001)。
(2)観点(Bell et al. 2001)。
(a) 度合い(Intensity)
具体例としては、過度な混雑、過少な周囲の人、過度な騒音(音楽)、全く音のない環境など
(b)相違・多様性(Diversity)
具体例としては、多様すぎる(ちかちかしすぎる)ネオン、画一的過ぎる町並みなど
(c)(構造・不確実性)パターン
まったく構造のないパターンのネオン、複雑すぎるパターン構造物など
(3)理想的な刺激レベル
それぞれの人間が各自、過去の自身の経験に基づいて理想的な刺激レベルを持っています。また人間は時間の経過(慣れる事)によって理想的な刺激レベルは変化します(Bell et al. 2001)。つまり東京出身の人は多少の混雑もストレスには感じないが、地方出身の人は(慣れるまでは)少しの混雑でもストレスに感じます。しかし、地方出身の人も時間の経過によって混雑に慣れることで東京出身者と同様に多少の混雑もストレスには感じないようになります。
《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!
(1)周囲の交通量の多い住宅の住民はうるさいと感じているのか?
昔、家の前に非常に交通量の多い道路がある家に住んでいました。引っ越した当初、窓を開けるとあまりにうるさくて直ぐにでも引っ越したくなったことを覚えています。ただししばらくするとあまり車の騒音が気にならなくなりました。このことはAdaptation level theoryにて説明できます。つまり、引っ越した当初は周囲の騒音レベルが私の許容できるレベルを超えていたため不快に感じていたが、時間の経過と共に私の許容できる刺激レベルが上昇したため、途中からは不快にも感じなくなったのだと思われます。よって長期に渡って周囲の交通量の多い住宅に住んでいる住民はうるさいと感じていないと思います。
(2)レストランでメニューの写真を見てサラダと注文する時、どちらのサラダを選びますか?
(A)レタス+キューリ+ブロッコリー(緑のもの)
(B)レタス+キューリ+ブロッコリー(白のもの)
恐らく(B)を選ぶ方が多いと思います。(A)は全ての野菜の色彩が緑のため単調(多様性がない)で退屈に感じますが、緑のブロッコリーを白のものに変えるだけで色彩のコントラストがつくためより魅力的に見えます。
(3)なぜヨーロッパの古い町並みは日本の町並みよりも美しいのか?
イギリスに住んでいるのでイギリスと日本(一部の奈良・京都などを除く)を対比します。(私が今まで住んでいた地域の)イギリスの町並みは非常に外壁の色(例、私の住んでいた地域は赤茶、バースは白金色)や構造が整っていて構造性・統一感があるように感じられます。特に観光地で有名なコッツウォールズなどは住宅の改築にもシティーカウンセルの許可が必要なほど町並みの保全に力を入れています。一方、日本に帰国して気づいたのは日本の町並みは建てた不動産業者などによって建物の外壁や形がばらばらであることです。ある適度のルールに従った色の違いならよいのですが統一感のないばらばらなのです。そのためイギリスの家並みに比べて日本の家並みは美しく見えないのでしょう。
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参考文献
やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No30:低刺激
やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No30:Understimulation (低刺激)
しばらくの間、環境心理学の基礎理論を取り上げます。重要な基礎理論を取り上げた後、様々な論点(ノイズ、パーソナルスペース、混雑)などマーケティングやその他に深く関わるものを取り上げます。
1.Understimulation perspective (低刺激という観点)
(1)問題点
前回のInformation overload
(情報過多)では刺激が多すぎると様々な問題が生じることを取り上げました。しかし、刺激が少なすぎる状況においても様々な問題(例、不安感の高まり、退屈感)が生じます(Bell, Greene, Fisher, & Baum, 2001)。
(2)利点
一方、刺激が少なすぎる状況において下記のような利点も生じます(Bell et. al. 2001)。
・異常過敏及び自閉症の子供の症状の改善
・過度の緊張症の改善
・禁煙の手助け
《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!
(1)機械的に開発された(同じ建物・風景が並んでいる)住宅街はなぜ退屈と感じるのか?
あまりに単調で刺激が少ないからだと思います。つまり風景の変化がない町並みは機械的に感じて退屈感が生じることが今回の理論で説明できます。
(2)抑揚の少ないプレゼンテーションはなぜ眠くなるのですか?
同様に単調で刺激が少ないからだと思います。効果的にプレゼンテーションは適度な刺激を与えることだと思います。具体例としては抑揚をつける、ボディーランゲージを使う、音や動画を使うなど適度な刺激を与えれば退屈感は減少するでしょう。ただし内容が最重要ですが。
(3)店舗の内装・外装の改装を適時行うべきか?
店舗の内装・外装を長期間まったく変えないと(内装・外装が提示する刺激に対する)慣れが発生します。その場合、消費者には単調で刺激が少ないと感じられ、退屈に感じられます。一方、改装を行うと新しい刺激となって新鮮さを消費者に与えます。これが小売業等で改装を行うと既存店の売上が改善する理由です。テレビCMや商品パッケージについても同様です。(ただしあまりに頻繁に変更するのはブランドの観点から薦められません)
《お願い》
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参考文献
やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No29:環境的負荷
しばらく引越し、帰国、あいさつ回りなどが重なってお休みをさせて頂きました。時間的余裕ができてきたので昨日から再開させて頂いています。
1.Environmental load (環境的負荷)
人間は環境からの刺激(騒音など)に対して限定された範囲でしか処理できません(Bell, Greene, Fisher, & Baum, 2001)。
2.Information overload (情報過多)
(1)概略
個人の能力を超える情報が与えられるとInformation overload (情報過多)という状況になります。その場合、人間は手元のタスクに関連性が低い情報(刺激)に向ける注意を削減して、より手元のタスクに関連性の高い情報(刺激)に注意を向けます(Bell et. al. 2001)。コーヒーショップで商談をしている時、急にお昼時で騒がしくなったケースを考えて下さい。周りの声は聞こえずに商談の相手の方の声に神経が集中されると思います。
(2)コントロール
より激しい又は予期のできない又はコントロールできない環境刺激(情報)の場合はより多くの注意がその刺激に払われます(Bell et. al. 2001)。子供は突然奇声をあげることがあります。このような予期のできない声が急に聞こえると注意はその声に行ってしまうことがあります。
(3)長期の刺激
長期の刺激が与えられると個人の情報(刺激)処理能力は一時的に減退します。その場合はより小さい刺激でも処理できなくなります。ただし一時的に減退した能力も回復させることのできる環境(例、自然、公園)に触れると回復します(Bell et. al. 2001)。あまりにも騒がしい所で本を長期間読んでいると疲れ、会話に集中できなくなると思います。しかし公園を一周してみると疲れは改善します。
《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!
(1)CMでなぜメッセージを絞れと言われるのですか?
人間は同時に多くの情報を処理できません。よっていくら情報をふんだんに盛り込んでも関連性の強いところしか覚えていません。また処理できる以上の情報を提供すると情報処理能力が一時的に減退して重要な情報も聞き逃す可能もあります。また情報処理能力を超える刺激は視聴者にストレスを与え、不快感ももたらすこともあります。
(2)バーゲンではなぜ費用対効果を良く考えないで買物をしてしまうのですか?
前回はArousal(覚醒)の概念を用いて説明しましたが今回はInformation overload (情報過多)を使って説明します。バーゲンでは一度に多くの商品を見て瞬間的に意思決定をしていると思います。そのためInformation overload (情報過多)が生じて情報(刺激)処理能力は一時的に減退するのではないでしょうか。その結果として合理的な考慮をせずに買物をするという流れになっている可能性があると思われます。
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参考文献
やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No28 :Arousal(覚醒)
しばらく引越し、帰国、あいさつ回りなどが重なってお休みをさせて頂きました。時間的余裕ができてきたので再開させて頂きます。今回からしばらく環境心理学の基礎的な理論を取り扱います。今回はArousal(覚醒) です。
1.Arousal(覚醒)
Arousal(覚醒)とは心理学で測定される概念で、高まると心臓の鼓動、血圧、呼吸が高まり、アドレナリンが多く放出されます。Arousal(覚醒)は脳の活性化と関連していると考えられています(Bell, Greene, Fisher, & Baum, 2001)。
2.Arousal(覚醒)と行為
(1)情報
Arousal(覚醒)が高まると、人間は自分の内的状況に関する情報(原因)をより求めるようになる。つまり、なぜ心臓が鼓動しているのだろうなどと原因の帰属をするようになる
(Bell et. al. 2001)。
(2)他人の意見
Arousal(覚醒)が高まると、人間は他人の意見を求めるようになる(Bell, Greene, Fisher, & Baum, 2001)。具体的には他人と比較することで、適切なことを行っているか、他人と比べて恵まれているか否かなど(e.g., Festinger, 1954, sited in Bell et. al. 2001)
3.The Yerkes-Dodson law
様々な行為のパフォーマンスは適度なArousalの程度において最高になり、その程度より低く・高くなるにつれてパフォーマンスは低下する。
難易度の低いタスクの方が難易度の高いタスクよりも上記のArousalの適度の程度が低くなる。
つまりArousalの適度な程度は、難易度が低い→中位の難易度→難易度が高い、の順となる。
全般的に難易度の低いタスクの方が、難易度が高いタスクよりも、パフォーマンスは良い(Bell et. al. 2001)。
4.Arousalモデルの環境心理学での応用範囲
混雑、ノイズ、公害などに対する人間の対応(これらは今度扱います)
《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!
(1)スポーツの世界では適度な緊張感は良い結果を生むと解説されます。なぜでしょうか?
Arousal(覚醒)のレベルとパフォーマンスの関係と関連していると思われます。つまり適度なArousal(覚醒)のレベルは最高のパフォーマンスを生み出すからです。
(2)通勤時の電車の混在時の乗客の心理を解説して下さい?
混雑の場合、人間のArousal(覚醒)の程度が高まることが多々あります。その際は心臓の鼓動等の原因の帰属をします。具体的にはラッシュアワーだから、雨が降っているからなど混雑の原因を帰属させます。以前取り上げたように
、行為者は状況的な要因に原因帰属する傾向があるので、自分が疲れているなどの個人的な要因に帰属するよりも、ラッシュアワー・雨などの状況的要因に帰属させるのではないでしょうか。
(3)バーゲンではなぜ費用対効果を良く考えないで買物をしてしまうのですか?
パーソナルスペースへ人が入り込むと人間にはストレスがかかります。つまりArousal(覚醒)の程度が高まります。単純なタスク(例、サイズのチェックなど)ではパフォーマンスの低下は見られませんが、複雑なタスク(例、他店や他商品との値段の比較、必要性の確認)の場合は過度なArousal(覚醒)の上昇はパフォーマンスの低下が観察されます。よってバーゲンでは買い物客のパーソナルスペースが脅かされて、買い物客はストレスを感じ、その結果として合理的な考慮をせずに買物をするという流れになっている可能性があると思われます。
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参考文献
消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索(Information search)No8-
消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索(Information search)No8-として情報探索のまとめを行います。
1.購買前(Pre-purchase)の情報の探索(Information search)
消費者は商品を購買する際に情報の探索を行うことで購買意図を形成します。
2.情報探索の種類
(1)内部探索(Internal search)
・過去の消費経験など記憶からの情報の探索
(2)外部探索(External search)
・マスメディアや口コミなど記憶以外の情報源からの情報の探索
3.順序
初めに(1)内部探索(Internal search)、不十分な場合は、(2)外部探索(External search)
4.外部探索(External search)の頻度
外部探索(External search)を行うことは消費者の時間や労力などを消費しますので、内部探索(Internal search)で充分なときは内部探索で済ます傾向にあります。
5.全体像
(1)知覚リスク
(perceived risk)
知覚リスクとは購買に伴って生じうるロスのこと(Peter & Ryan, 1976)。
知覚リスクが高まると情報探索の程度が上昇します。
・区分(Solomon, Bamossy & Askegaard, 1999)
(1)金銭的リスク(monetary risk)
金銭に関わるリスク(例、値段の高い商品)
(2)機能的リスク(functional risk)
機能的意味に関わるリスク(例、ハイテクで複雑な商品)
(3)物理的なリスク(physical risk)
健康等に関わるリスク(例、薬、医療)
(4)社会的リスク(social risk)
自尊心に関わるリスク(例、服、宝飾品、車、家)
(5)心理的リスク(psychological risk)
帰属・ステータスに関わるリスク(例、高価な贅沢品)
(2)(過去の使用による)満足度
過去の使用によって満足度が高い場合は次回以降の同一カテゴリーの商品の購買の際の情報探索の程度は減少する傾向にあります(Guo, 2001)。
(3)過去の(商品)知識・経験
(prior knowledge)
過去の(商品)知識・経験と情報探索の程度は多くのケースで逆U字型を取ります(Bettman & Park, 1980; Johnson & Russo, 1984)。つまり知識・経験の乏しい顧客(初心者など)は情報検索をあまりせず、顧客の知識・経験量が上がるに連れて情報探索が増えます。しかし、中程度の知識・経験量から知識・経験量の多い(上級)顧客に移るに連れて情報探索は減ります。
(4)時間的余裕
時間的な余裕がない場合は情報探索の程度が少なく内部探索に頼りがちだが、時間的余裕が増えるに連れて情報探索の程度が増えることを多くの研究が示しています(e.g., Betty, & Smith, 1987)。
(5)個人差
(A)情報探索に対する態度(Positive attitudes toward search, Need for cognition)
情報探索することが得意で好きなタイプと好きでないタイプがいます。情報探索が得意で好きになればなるほど情報探索の程度は増えます(Inman, McAlister & Hoyer, 1990, sited in Guo, 2001; Kiel & Layton, 1981)。
(B)教育程度
教育レベルが上がると情報探索の程度が高くなるという研究が多いです(e.g., Kiel & Layton, 1981)。恐らく(1)の情報探索に対する態度と教育の程度が関係あるのかと思われます。
(C)年齢
シニアはその他のグループ(若者)と比べて情報探索の程度は減少します(e.g., Lambert-Pandraud Laurent & Lapersonne 2005)。原因としては情報処理能力(working memoryなど)の減退(e.g., Phillips & Sternthal, 1977)があげられると思います。
主な参考論文
Bettman,J.R., & Park,C.W. (1980). Effects of prior knowledge and experience and phase of the choice process on consumer decision process on consumer decision processes: A protocol analysis. Journal of Consumer Research, 7- 234-248.
Deshpande,R., & Krishnan,S. (1982). Correlates of deficient consumer information environment. Advances in Consumer Research, 9, 515-519.
Guo,C. (2001). A review of consumer external search: Amount and determinants. Journal of business and psychology, 15, 505-519.
Johnson,E.J., & Russo,J.E. (1984). Product familiarity and learning new information. Journal of Consumer Research, 11- 542-550.
Lambert-Pandraud,R., Laurent,G., & Lapersonne,E. (2005). Repeat purchasing of new automobiles by older consumers: Empirical evidence and interpretations, Journal of Marketing, 69, 97-113.
Peter,J.P., & Ryan,M.J. (1976). An investigation of perceived risk at the brand level. Journal of Marketing Research, 13, 184-188.
Phillips,L.W., & Sternthal,B. (1977). Age differences in information processing: A perspective on aged consumer, Journal of Marketing Research, 55-63.
Solomon,M., Bamossy,G., & Askegaard,S. (1999). Consumer behaviour a European perspective.
消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索(Information search)No7-
消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索(Information search)No7-として時間的余裕と情報探索の関係を取り上げます。消費者は商品を購買する際に情報の探索を行うことで購買意図を形成します。
1.購買前(Pre-purchase)の情報の探索(Information search)
消費者は商品を購買する際に情報の探索を行うことで購買意図を形成します。
2.情報探索の種類
(1)内部探索(Internal search)
・過去の消費経験など記憶からの情報の探索
(2)外部探索(External search)
・マスメディアや口コミなど記憶以外の情報源からの情報の探索
3.順序
初めに(1)内部探索(Internal search)、不十分な場合は、(2)外部探索(External search)
4.外部探索(External search)の頻度
外部探索(External search)を行うことは消費者の時間や労力などを消費しますので、内部探索(Internal search)で充分なときは内部探索で済ます傾向にあります。
5.情報探索の程度と時間的余裕
時間的な余裕がない場合は情報探索の程度が少なく内部探索に頼りがちだが、時間的余裕が増えるに連れて情報探索の程度が増えることを多くの研究が示しています(e.g., Betty, & Smith, 1987)。
6.他の研究との関係
(1)衝動買いとの関係
衝動買いは必要性・品質・値段などを経済合理性で判断しない消費行為とも言えます。つまり入手できる限りの情報を分析することなく(衝動的に)買い物をする行為です。この点、多くの衝動買いは内部探索に頼った意思決定が原因となっていると思われます。
(2)ヒューリスティックな判断との関係
以前紹介したように
、消費者は時間的余裕がない場合は簡便的なヒューリスティックな判断を行う傾向があります(Petty, Cacioppo, & Schumann, 1983)。具体的には、(1)ブランドネームによって品質を推定する(Nowlis, 1995, sited in Suri, & Monroe, 2003)、(2)値段によって品質を推定する(Suri, & Monroe, 2003)などです。
この関係も内部探索に頼った意思決定の結果だと思われます。つまり記憶内に「ブランド・値段が高い=高品質」という関係が刻み込まれているためです。
7.マーケティングへの応用
(1)時間的余裕がない消費者を対象にマーケティング戦略を構築する際のポイントは、如何に消費者の記憶内に自社・自社ブランドへのポジティブなイメージ・態度を構築するかだと思われます(外部探索は重視されないため)。
(2)記憶の構築に関して重要な観点は下記通り
(A)記憶
・記憶されやすい情報は(1)既存の知識(スキーマ)に一致する情報と(2)既存の知識(スキーマ)に一致しない情報(詳細はこちら
)。
・態度の形成は、(最近得られた情報よりも)初期に得た情報を基に行われる傾向が高い(第一印象は変わりにくい)(詳細はこちら
)。
(B)記憶の取り出し
・既存知識(スキーマ)は、それが直前に作動された場合に、より作動され(思い出され)やすくなる(プライミング効果)(詳細はこちら
)。
・不安定(不正確)な判断であってもバイアスのかかった簡便な意思決定(Judgement heuristics)をする傾向がある(詳細はこちら1
・2
)。
(C)まとめ
時間的余裕のない消費者は記憶内の情報を使って意思決定する傾向があります。そのため販売側は如何に良いトータルの消費経験を消費者に提供するかが重要になります。そのため既存顧客に如何に真摯な態度で接するかが当然のごとく重要となるでしょう。
ただし人間に記憶にはバイアスが掛かりやすい傾向があります。そのためどのようなバイアスが掛かりやすいかと理解し、より自社・自社ブランドにポジティブな記憶が構築され・思い出されやすくするかが決定的に重要です。ポイントは(1)第一印象が非常に重要あること、(2)頭の中の記憶から取り出しやすいように刺激を与え続ける(CMだけが手段ではありません)ことだと思います。
主な参考論文
Betty,S.E., & Smith,S. (1987). External search effort: A instigation across several product categories. Journal of Consumer Research, 14, 83-95.
Petty,R.E., Cacioppo,J.T., & Schumann,D. (1983). Central and peripheral routes to advertising effectiveness: The moderating role of involvement. Journal of consumer research, 10, 135-146.
Suri,R., & Monroe,K.B. (2003). The effects of time constraints on consumer’ judgements of prices and products. Journal of consumer research, 30, 91-104.
消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索(Information search)No6-
消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索(Information search)No6-として個人的特徴と情報探索の関係を取り上げます。消費者は商品を購買する際に情報の探索を行うことで購買意図を形成します。情報探索の程度は個人差があります。
1.購買前(Pre-purchase)の情報の探索(Information search)
消費者は商品を購買する際に情報の探索を行うことで購買意図を形成します。
2.情報探索の種類
(1)内部探索(Internal search)
・過去の消費経験など記憶からの情報の探索
(2)外部探索(External search)
・マスメディアや口コミなど記憶以外の情報源からの情報の探索
3.順序
初めに(1)内部探索(Internal search)、不十分な場合は、(2)外部探索(External search)
4.外部探索(External search)の頻度
外部探索(External search)を行うことは消費者の時間や労力などを消費しますので、内部探索(Internal search)で充分なときは内部探索で済ます傾向にあります。
5.情報探索の程度と個人差
(1)情報探索に対する態度(Positive attitudes toward search, Need for cognition)
情報探索することが得意で好きなタイプと好きでないタイプがいます。情報探索が得意で好きになればなるほど情報探索の程度は増えます(Inman, McAlister & Hoyer, 1990, sited in Guo, 2001; Kiel & Layton, 1981)。
(2)教育程度
教育レベルが上がると情報探索の程度が高くなるという研究が多いです(e.g., Kiel & Layton, 1981)。恐らく(1)の情報探索に対する態度と教育の程度が関係あるのかと思われます。
(3)年齢
シニアはその他のグループ(若者)と比べて情報探索の程度は減少します(e.g., Lambert-Pandraud Laurent & Lapersonne 2005)。原因としては情報処理能力(working memoryなど)の減退(e.g., Phillips & Sternthal, 1977)があげられると思います。
6.マーケティングへの応用
(1)消費者の情報処理への態度(好き・嫌い)や情報処理能力によって情報探索の程度が異なることに留意すべきです。例えば、高学歴の若者と学歴の高くないシニアではまるで情報探索の量・広さが異なると思います。高学歴の若者は幅広い情報を様々な媒体から収集して製品間の比較することを好むのに対して、学歴の高くないシニアは過去に買っている(数少ない)商品の中からの選択する傾向があると思われます。よって当然、対象顧客によってマーケティング戦略は異なります。
(2)シニアマーケティングへの示唆
若者と比べて限定された範囲の選択項からの商品選択をする傾向があります。例えば車の購買に関しては過去乗っていたメーカー・(ブランド力のある)国内メーカーから選択する傾向が強く(e.g., Lambert-Pandraud Laurent & Lapersonne 2005)、食料品・日用雑貨の購買に関しても若者に比べて商品比較の程度が減ります(e.g., Deshpande & Krishnan, 1982)。
主な参考論文
Deshpande,R., & Krishnan,S. (1982). Correlates of deficient consumer information environment. Advances in Consumer Research, 9, 515-519.
Guo,C. (2001). A review of consumer external search: Amount and determinants. Journal of business and psychology, 15, 505-519.
Lambert-Pandraud,R., Laurent,G., & Lapersonne,E. (2005). Repeat purchasing of new automobiles by older consumers: Empirical evidence and interpretations, Journal of Marketing, 69, 97-113.
Phillips,L.W., & Sternthal,B. (1977). Age differences in information processing: A perspective on aged consumer, Journal of Marketing Research, 55-63.