やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No28 :Arousal(覚醒)
しばらく引越し、帰国、あいさつ回りなどが重なってお休みをさせて頂きました。時間的余裕ができてきたので再開させて頂きます。今回からしばらく環境心理学の基礎的な理論を取り扱います。今回はArousal(覚醒) です。
1.Arousal(覚醒)
Arousal(覚醒)とは心理学で測定される概念で、高まると心臓の鼓動、血圧、呼吸が高まり、アドレナリンが多く放出されます。Arousal(覚醒)は脳の活性化と関連していると考えられています(Bell, Greene, Fisher, & Baum, 2001)。
2.Arousal(覚醒)と行為
(1)情報
Arousal(覚醒)が高まると、人間は自分の内的状況に関する情報(原因)をより求めるようになる。つまり、なぜ心臓が鼓動しているのだろうなどと原因の帰属をするようになる
(Bell et. al. 2001)。
(2)他人の意見
Arousal(覚醒)が高まると、人間は他人の意見を求めるようになる(Bell, Greene, Fisher, & Baum, 2001)。具体的には他人と比較することで、適切なことを行っているか、他人と比べて恵まれているか否かなど(e.g., Festinger, 1954, sited in Bell et. al. 2001)
3.The Yerkes-Dodson law
様々な行為のパフォーマンスは適度なArousalの程度において最高になり、その程度より低く・高くなるにつれてパフォーマンスは低下する。
難易度の低いタスクの方が難易度の高いタスクよりも上記のArousalの適度の程度が低くなる。
つまりArousalの適度な程度は、難易度が低い→中位の難易度→難易度が高い、の順となる。
全般的に難易度の低いタスクの方が、難易度が高いタスクよりも、パフォーマンスは良い(Bell et. al. 2001)。
4.Arousalモデルの環境心理学での応用範囲
混雑、ノイズ、公害などに対する人間の対応(これらは今度扱います)
《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!
(1)スポーツの世界では適度な緊張感は良い結果を生むと解説されます。なぜでしょうか?
Arousal(覚醒)のレベルとパフォーマンスの関係と関連していると思われます。つまり適度なArousal(覚醒)のレベルは最高のパフォーマンスを生み出すからです。
(2)通勤時の電車の混在時の乗客の心理を解説して下さい?
混雑の場合、人間のArousal(覚醒)の程度が高まることが多々あります。その際は心臓の鼓動等の原因の帰属をします。具体的にはラッシュアワーだから、雨が降っているからなど混雑の原因を帰属させます。以前取り上げたように
、行為者は状況的な要因に原因帰属する傾向があるので、自分が疲れているなどの個人的な要因に帰属するよりも、ラッシュアワー・雨などの状況的要因に帰属させるのではないでしょうか。
(3)バーゲンではなぜ費用対効果を良く考えないで買物をしてしまうのですか?
パーソナルスペースへ人が入り込むと人間にはストレスがかかります。つまりArousal(覚醒)の程度が高まります。単純なタスク(例、サイズのチェックなど)ではパフォーマンスの低下は見られませんが、複雑なタスク(例、他店や他商品との値段の比較、必要性の確認)の場合は過度なArousal(覚醒)の上昇はパフォーマンスの低下が観察されます。よってバーゲンでは買い物客のパーソナルスペースが脅かされて、買い物客はストレスを感じ、その結果として合理的な考慮をせずに買物をするという流れになっている可能性があると思われます。
《お願い》
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参考文献