心理学のお勉強(社会心理学)No20 :態度No3
心理学のお勉強(社会心理学)No20 :態度No3
今回は態度:Attitudesの第3回目です。物事に対して好き・嫌いなどの比較的持続する態度を形成し、その態度がその後の社会行動(消費行動など)に影響を及ぼします。今回はどのように態度が変容するかを説明する有力な理論である認知的不協和の理論(cognitive dissonance theory)を紹介します。
1.認知的不協和の理論(cognitive dissonance theory)
(1)概念
人間は自分の期待(認知)していたこと(態度)と実際が異なる場合はその状態を不快に感じ、不協和を解消する方向で態度の変化が起き易いという理論(Festinger, 1957, 1968, sited in Bohner, 2001)。不協和解消の手段としては、(a)不協和な認知要素の一方を過大評価させて、(b)不協和な認知要素の一方を過小評価させて、(c)新しい協和関係を追加することで協和関係にするなどが挙げられます。
有名な実験例(Festinger & Carlsmith, 1959, sited in Bohner, 2001)は下記の通りです。実際は非常に退屈な実験に学生を参加させ、片方のグループには20ドル、もう一方のグループには1ドルの実験参加料が支払われました。学生の課題は実験終了後に他の順番を待っている生徒に面白い実験だったと伝えることです。実験後の調査によると20ドルの報酬を貰った学生より1ドルの報酬の学生の方が(実際にはつまらない)実験を面白かったと考えていることが分かりました。つまり、実際にはつまらなかった実験と他の生徒に面白い実験だったと伝えたこととの不協和が生じ、報酬を20ドル貰った生徒はお金を貰ったからうそをついたと思えるが、1ドルしか貰っていない生徒は実際につまらなかった実験を面白かったと思い込むことで不協和を解消したと思われます。
《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!
(1)先日のボクシングの亀田興毅選手に対するバッシングが起きたのでしょうか?
試合前と試合後のマスコミや世間の態度の豹変の一因は認知的不協和の理論(cognitive dissonance theory)で説明できると思います(詳細な記事はこちら
)。つまり当初のファンの態度は「亀田選手は非常に強いボクサーだった」と思います。しかし実際の試合のパフォーマンスは期待されたほどではなかった。よって当初の態度と実際の試合内容の間に不協和が生じました。そこで取られる可能性のある不協和の解消は(a)亀田選手の実力を当初よりも低いものと置き換える、(b)亀田選手が本来の実力を試合で出し切れなかったと考える、(c)相手のラムエダ選手の調子が非常によかったなどだと思います。ジム関係者の見解は(b)で、亀田選手は初めての世界戦であったことと、階級を下げるための減量のため本来の実力がでなかったと考えているようです。一方、マスコミ・ファンなどの見解は(a)で、亀田選手がいままで勝ち続けたのは(弱い相手とのみ試合を組んだ)マッチメークの御陰などを述べて、亀田選手の実力を当初よりも低いものと置き換えています。
(2)マーケティングへの応用は?
認知的不協和の理論は購買後の満足・態度の変化を説明するのに重要な理論です(e.g, Solomon, Bamossy & Askegaard, 1999)。例えばA子さんが販売員に薦められるまま服を買ってしまったとします。家に帰る途中は失敗したと後悔していたとしても、テレビCMを見ると宣伝されていたり、友人に似合うねなどと言われたりすると「やっぱり買って良かった」と態度が変化することは多いと思います。別にCMや友人から褒められなくても、鏡で見るなどして態度の変化が生じることも多いです。このように消費者は購買時点では後悔していても一旦買ってしまうとその後に好意的な態度に変わることが頻繁に観察されています。マーケターに重要なのは消費者の態度の変化を後押しするような戦略(テレビCMなど)を打つことです。また、消費者の関与(involvement)の程度によって態度の変容の程度が異なります。つまり消費者がより意識している商品・サービスの場合の方が態度の変化は生じやすいです(e.g, Solomon, Bamossy & Askegaard, 1999)。
(3)先日、イギリスに旅行するためにチケットを買おうとしたところ、ロンドンへの直行便は取れずにオランダ経由のKLMしか予約できませんでした。直行便でないので当初は落胆しましたが、よくよく考えると一度の旅行でイギリスとオランダも楽しめるので逆によかったのではと思えるようになりました。どのような心理的な変化があったのですか?
認知的不協和の理論で説明できます。直行便が好ましいという当初の態度はKLMしか予約できなかった時点で不協和が生じ、落胆につながりました。しかし、オランダ経由便も楽しそうというように態度が変化したことで、不協和が解消され、満足感が出てきたと思われます。
更新は、心理学のお勉強(態度:Attitude No3)を明日の午前中に行う予定。本編(情報の探索No2)の更新は本日お休みさせて下さい。更新は明日の夕方に行います。
情報の探索(Information search)No2紹介
消費者の購買前の情報探索について取り上げます。No2では値段と情報検索の程度の関係について詳細に取り上げます。
心理学のお勉強(態度:Attitude No3)の紹介
No3として態度の変化について取り上げます。マーケターにとって消費者の態度を変化させることは重要な概念です。
《お願い》
皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。
参考文献
Bohner,G. (2001). Attitudes, in Introduction to social psychology: A European Perspective Third edition, (ed) Hewstone,M. & Stroebe,W.
Solomon,M., Bamossy,G., & Askegaard,S. (1999). Consumer behaviour a European perspective.