消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索(Information search)No5 | 消費者心理学とマーケティング - 消費者心理学・消費者行動論の研究より -

消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索(Information search)No5

消費者心理とマーケティング-購買前の情報の探索(Information searchNo5-として過去の(商品)知識・経験と情報探索の関係を取り上げます。消費者は商品を購買する際に情報の探索を行うことで購買意図を形成します。情報探索の程度は消費者の過去の(商品)知識・経験と関係があります。

1.購買前(Pre-purchase)の情報の探索(Information search

消費者は商品を購買する際に情報の探索を行うことで購買意図を形成します

2.情報探索の種類

(1)内部探索(Internal search

・過去の消費経験など記憶からの情報の探索

(2)外部探索(External search

・マスメディアや口コミなど記憶以外の情報源からの情報の探索

3.順序

初めに(1)内部探索(Internal search)、不十分な場合は、(2)外部探索(External search

4.外部探索(External search)の頻度

外部探索(External search)を行うことは消費者の時間や労力などを消費しますので、内部探索(Internal search)で充分なときは内部探索で済ます傾向にあります

5.過去の(商品)知識・経験(prior knowledge)と情報探索の程度

過去の(商品)知識・経験と情報探索の程度は多くのケースでU字型を取りますBettman & Park, 1980; Johnson & Russo, 1984)。つまり知識・経験の乏しい顧客(初心者など)は情報検索をあまりせず、顧客の知識・経験量が上がるに連れて情報探索が増えます。しかし、中程度の知識・経験量から知識・経験量の多い(上級)顧客に移るに連れて情報探索は減ります。

6.理由

人間は記憶の中に既存の知識体系knowledge structure)を構築しており、物事の判断を行う際は既存の知識の体系の中から関連情報を取り出して、新しい情報を加味して判断を行います。過去の知識・経験の乏しい顧客は既存の知識の体系があまり構築されておらず、一方過去の知識・経験の豊富な顧客には充分な既存の知識の体系が構築されていると思われます。

(1)過去の知識・経験の乏しい顧客(初心者)

既存の知識の体系があまり構築されていないので、入手できる情報を(効率的に)処理できないため情報探索の程度は少なくなると思われます(Bettman & Park, 1980)。

(2)過去の知識・経験が中程度の顧客(中級者)

過去の知識・経験が中程度の顧客はある程度入手する情報を処理できる反面、上級顧客ほど洗練された情報処理ができないため、情報探索の程度が一番大きくなると思われます。

(3)過去の知識・経験の豊富な顧客(上級者)

既存の知識の体系が非常に構築されているので、①具体的な(既存)商品間の違いを既に知っている、②仮に新しい商品等の情報でも既存知識を使って効率的に情報処理できる、③必要性の高い情報のみに焦点を当てて、不必要な情報を考慮対象から省くことができるなどの効率的に情報処理できる利点があります。そのため情報探索の程度は少なくなると思われます(Johnson & Russo, 1984)

7.マーケティングへの応用

(1)初級者

情報探索の程度は少なくなるため、①以前買ったことがあるから買う、②パッケージが可愛いから買う、③CMなどで知っているから買うなど価格・機能などの情報を徹底した比較するというよりはヒューリスティック 簡便的な(短絡的な)意思決定をする傾向があると思われます。よって前提となる消費者モデルはThe experiential hierarchy になることが多いと思われます。つまり対象物に対するフィーリング購買対象物への信念・考え態度という流れの態度形成になると思われます。よって販売側は詳細な商品情報を提供するよりもパッケージや広告に力を入れることでポジティブな商品イメージを作り込む戦略の方が重要だと思います。

(2)中級者

情報探索の程度は高いが明確な商品イメージがまだ構築されていない段階なため、戦略によっては説得できる可能性の高い顧客層だと思われます。中級者は①記憶内の自分の過去の購買経験(満足度)、②テレビCM、③雑誌情報、③口コミなど幅広い情報を考慮して購買の意思決定を行います。また詳細な細かい上級者用の情報は処理できるほどの知識体系が出来上がっていないと思われます。よって前提となる消費者モデルはAIDMA などで有名なThe standard learning hierarchy になることが多いと思われます。つまり対象物への信念・考え対象物に対するフィーリング購買意図態度という流れの態度形成になると思われます。よって販売側は複雑すぎない情報を幅広い媒体(例、ディラーを使って購買満足度上げる、テレビCM、雑誌情報、口コミ)を使って提供する必要があると思います。

(3)上級者

明確な商品イメージが既に構築されていて情報探索の程度は低い段階です。この段階の消費者は自分の必要とする専門的情報に限って情報を求め、その他の態度形成は過去の消費経験を重視する傾向にあると思われます。よって前提となる消費者モデルはThe low-involvement hierarchy になることが多いと思われます。つまり対象物への信念・考え購買対象物に対するフィーリング態度という流れの態度形成になると思われます。ただし専門的情報に限って探索するので、上記の基本モデルに購買前に専門的情報探索と加えた方が妥当かもしれません。販売側は消費後のアフターサービスなどに力を入れてより良い消費経験を提供すると共に雑誌広告などを通じて上級者の求める専門情報を提供すべきだと思われます。テレビCM・口コミの効果は高くないと思われます

主な参考論文

Bettman,J.R., & Park,C.W. (1980). Effects of prior knowledge and experience and phase of the choice process on consumer decision process on consumer decision processes: A protocol analysis. Journal of Consumer Research, 7- 234-248.

Johnson,E.J., & Russo,J.E. (1984). Product familiarity and learning new information. Journal of Consumer Research, 11- 542-550.