消費者心理とマーケティング -衝動買いNo2 Part2- | 消費者心理学とマーケティング - 消費者心理学・消費者行動論の研究より -

消費者心理とマーケティング -衝動買いNo2 Part2-

消費者心理とマーケティング -衝動買いNo2 Part2-して、モノの所有と個性(self-identity) No.1を取り上げます。これによって、なぜレトロなものを年配の男性が、ジュエリーを若い女性が衝動買いするかも分かってくると思います

1. モノの所有の意味

モノも所有の意味に、「所有物=広い意味での自分」と言う考え (Belk, 1988) があります。一般の会話でも、「所有物は個性・自分を表す」との表現がありますが、モノを所有することで、自分がこのように人に見られたいという欲求を満たせます

以下の例は、コメント として頂いたものですが、非常に分かりやすいので引用させて頂きます。

車というのはSUVならアウトドア志向ファミリーワゴンなら家族志向と各個人の個性を色濃く反映する商品ですが、プリウス(ハイブリッド)は「私は環境への配慮まで考える人間です」という理想印象づくりに見事に成功しましたね。

2. アイデンティティを表現するためにモノを所有するようになってきた理由

現実の社会では自分の意思でコントロールできることは非常に限られていています(理想と現実のギャップ)。そのため、自分の意思でコントロールできるモノの所有によって、厳しい現実から逃避したいという欲求が生まれます (Goldberg, & Lewis, 1978, sited in Belk, 1988)。特に自尊心が低くなるケースでは、自分でコントロールできるモノの所有を代わりにすることで、低くなった自尊心の補完ができます(Gollwitzer, 1982, sited in Belk, 1988)

例としては、アイドルになりたかったがなれない女性が徹底して理想のアイドルの真似をすることがあげられます。真似する事で、周囲から「似ているね!!」などと声をかけられると、実際にはアイドルになれないという現実から逃避できるのでしょう。

3.年代別特徴

a. 思春期

アイデンティティがまだ定まらず・模索する時期で、一部の子供は物質的なモノの所有によって自己を表現しようとします (Erikson, 1959, sited in Belk, 1988)

ただし、他の子供は自分の得意なスキル(サッカー・ピアノなど)によって自己を表現しようとします (Csikszentmihalyi, & Rochberg-halton, 1981, sited in Belk, 1988)

例えば、多くの学生が部活動での活動などによって自分のアイデンティティを表現していますが、自分を表現できる得意なものを持てない子供は、一部、物質的な所有で補完しているのではないでしょうか

b. 20-30

「未来・将来」に関連するアイデンティティが強くなります (Olson, 1981, 1985, sited in Belk, 1988)

恐らく、新しいエレクトロニクス製品などをこの世代が好んで使用するのも、彼らの未来・将来のイメージを好む性質から来ているのかもしれません。

c. 子供ができた若い夫婦

自己に関するアイデンティティではなく、子供へ焦点が移ります (Cameron, 1977, sited in Belk, 1988)

自分というよりは、家族としてのアイデンティティが強くなると思います。例えば、子供ができてから家庭人として自己表現が強くなる芸能人・有名人は良く見られます。

4. 衝動買いとの関係

年齢及びライフサイクルのステージ(学生、働いているシングル、退職など)によって衝動買いに反応する商品が明らかに異なります

以下、皆様の実際の事例を引用させて頂きながら、年代・ステージ別のモノの所有意識と衝動買いの関係を見て行きたいです。

a. 思春期

部活動していない学生がターゲットになると思います。

b. 20-30代(子供なし)

未来・将来がキーワードだと思います。

以下のコメントをえみこ様 から頂きました。

PARCO等のバーゲンセールだと、ついつい衝動買いをしてしまいます。百貨店のセール時期も重なるので、ハジコ状態です。今しかない、迷う余裕はないと思うと、思わず買ってしまいますね

今後の**(例、出会い、友人との外出)のために買う必要があるというのは若い世代の特徴だと思います。子供ができると親は我慢する傾向があります。また、次回扱う内容ですが、消費者は自分への理由付けがある場合の方が衝動買いをよくします。この例では、バーゲンで安いからはしご状態で今しかないが、衝動がしてもいいという言い訳です。


Part3へ続く