やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No25:態度No8 | 消費者心理学とマーケティング - 消費者心理学・消費者行動論の研究より -

やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No25:態度No8

やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No25:態度No

今回は態度:Attitudesの第8回目です。態度と実際の行動の相関関係②を取り上げます。態度によって実際の行動を予測することは可能でしょうか?

1.合理的行為理論Theory of reasoned action

(1)概念

態度(attitudes)と主観的規範subjective norm)が行為の意図を形成し、行為の意図が実際の行動に結びつくとした理論Fishbein & Ajzen, 1975, sited in Bohner, 2001)。ここで態度=期待(主観的確率) x 価値とされます。例えば会社に行く際にバスを使うとお金を節約できるが遅刻になると言うケースでは + の想定される結果(お金の節約)と - の想定される結果(遅刻)を総合的に考慮して態度は形成されます。主観的規範とは重要な他人(家族など)がどの程度その行為を期待しているかという概念です(Bohner, 2001)。

(2)態度と実際の行動の相関関係

消費者行動を含む多くの分野で、実際の行動を予測することができたBohner, 2001)。

2.計画的行動理論Theory of planned behaviour

(1)概念

合理的行為理論の概念に加えて、行動統制感perceived behavioural control)が行為の意図を形成する要素に加えられた概念(Ajzen, 1991, sited in Bohner, 2001)。行動統制感とは期待される意図する行為の実行の容易さですBohner, 2001)。

(2)態度と実際の行動の相関関係

実行することが困難な行動については計画的行動理論の行為予測可能性の方が合理的行為理論よりも高いが、安易な行動については計画的行動理論の行為予測可能性の方が高いわけではない(Kelly & Breinlinger, 1995, sited in Bohner, 2001)。

3.批判

上記の2つの概念は意識的な熟慮した行動の予測力はあるが、無意識な熟慮しない行動に関しては予測力が足りないという批判があります(e.g., Fazio, 1990, sited in Bohner, 2001)。

4.MODEモデル

上記の2つの概念はその人にそのモチベーション機会opportunity)がある時は詳細な検討をするが(ELMの中心ルートに相当)、これらが欠けた場合はアクセス可能性の高い態度(例、実際の体験、直近の出来事による態度)が自動的に活性化されるというモデル(Fazio, 1990, sited in Bohner, 2001)。例えば費用対効果を考えてアマゾンドットコムでDVD(イギリスは値段が路面店より安いものが多い)を買うAさんが、時間がない時にたまたまHMVの前を通って、前回HMVで買ったDVDもアマゾンとあまり値段が変わらなかったことを思い出してHMVDVDを買うケースもあると思われます。

《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!

(1)結婚前からスポーツカーが好きなAさん(30歳)に子供が生まれました。車を買う際にもAさんは未だにスポーツカーに憧れているとします。Aさんは憧れのスポーツカー(700万円)を買う可能性は高いと思いますか?

計画的行動理論を前提に考えると、購買意図に影響を与える要因は、態度、主観的規範と行動統制感です。態度は明らかにそのスポーツカーに憧れています。ただし主観的規範を考慮すると、奥さんは子供がいるのでファミリーカーを希望すると思います。また行動統制感を考慮すると、30歳のAさんには700万円の車は高すぎるかもしれません。よってAさんが買う可能性はあまり高くないと思われます。

(2)甲子園で優勝した早稲田実業の斉藤投手。彼が今後どのような進路を取るか(日本のプロ野球・(米)メジャーリーグ・早稲田大学)を予測してください。

計画的行動理論を前提に考えると、行動意図に影響を与える要因は、態度、主観的規範と行動統制感です。本人の態度についての予想は難しいですね。甲子園・日米野球で活躍したことから考えてプロ野球に進みたいという希望の方が膨らんでいるのではないでしょうか?主観的規範に関しては誰が進路決定に関しての重要人物でしょうか?恐らく、両親と早稲田実業の監督だと思います。両親の希望は100%近くの可能性で早稲田大学に進学できる状況を考えると大学に進学してから4年後にプロに行くなり・就職するなりを考えて欲しいと思っているのではないでしょうか?高卒でプロに入って怪我をしたりするリスクを考えると大学進学が親の意見だと思います。早稲田実業の監督も早稲田大学の系列高校の監督であることを考えると本音は大学進学を薦めたいのではないでしょうか?行動統制感に関してはプロ野球へ進む希望を出したら(日・米)プロ球団での争奪戦になるのは見えています。プロに進んで成功する可能性は日本のプロ野球に進んだ場合の方がアメリカよりも高いと思います。ここでは成功の確率を(怪我のリスクもあるので)50%30%とそれぞれします。結論として、プロ野球(特にメジャーリーグ)に進みたい本人の気持ちの大きさと、周囲の人物の大学進学という希望及びプロでの失敗のリスクの大きさを天秤にかけて決定すると思います。(本人の希望も甲子園で活躍するまでは大学進学であったこともあり)本人のプロに進みたいと言う気持ちは周囲の意見や失敗リスクを打ち消す程の大きさではないと思います。よって私の予想は大学進学です。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

参考文献

Bohner,G. (2001). Attitudes, in Introduction to social psychology: A European Perspective Third edition, (ed) Hewstone,M. & Stroebe,W. Oxford, Blackwell Publishing.