やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No22:態度No5
やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No22:態度No5
今回は態度:Attitudesの第5回目です。精緻化見込みモデル(Elaboration likelihood model: ELM)を取り上げます。私見では、このモデルを理解しない限り消費者行動の理解はできないと思えるほど重要なモデルです。
1.精緻化見込みモデル(Elaboration likelihood model: ELM)
(1)概念
説得(広告など)による態度の変化には2通りの情報処理(内容はこちら
)が行われることを提示したモデル(Petty, Cacioppo & Schumann, 1983)であり、1980年代以降の研究の流れを方向付けたモデル(Bohner, 2001)。
(2)ポイント
中心ルート(central route)と周辺ルート(peripheral route) に分けて、消費者の情報処理を仮定したこと。
(2-1)中心ルート
メッセージのより詳細な検討が行われるルート。つまり情報処理モデルの仮定通り、広告などのメッセージ関連情報に注意を払い、記憶内の既存知識と関連付けて自分の態度を形成するルートです。一度形成された態度はより持続的。
(2-2)周辺ルート
中心ルートが使用されない場合、人間は詳細な検討を行わずに、簡略的な検討((古典的、オペラント)条件付け、ヒューリスティックなどの利用)によって態度が形成されます。具体的には好きなパッケージ、メッセージの響きが良い、以前使った、有名人が宣伝しているなどの手がかりを基にして態度が形成されます。
2.中心ルート・周辺ルートの使用される条件
(1)中心ルート
下記の一定の条件を満たした場合。
(1) 消費者がしっかりと考えるというモチベーション (motivation) がある場合。
(2) 消費者が情報処理する能力的余裕(例、情報量が多すぎない、忙しすぎない、理解可能など)がある場合。
(2)周辺ルート
中心ルートが使用されない場合
3.論拠の強いメッセージの必要性
(1)中心ルート
詳細な検討が行われるため論拠の強いメッセージによって如何に説得するかが重要となる。そのため論拠の強いメッセージの方が弱いメッセージよりも効果的。
(2)周辺ルート
メッセージに関して詳細な検討が行われないため、論拠の強弱による説得効果の差はない。
《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!
(1)家を買う際は中心ルートと周辺ルートのどちらが一般的に使われると思いますか?
消費者のモチベーションは値段によっても左右されます(関連する消費者行動の記事はこちら)。よって一般的には中心ルートを使って、入手できる限りの情報(雑誌、インターネット、友人の口コミなど)と自分の記憶にある知識(エリア、相場など)を基に判断すると思われます。
(2)資生堂のTUBAKIのCMを見てTUBAKIを買いました。中心ルートと周辺ルートのどちらが使われていると思いますか?
微妙な判断です。有名人が出ているので普段よりもしっかりとCMを見て詳細な商品の効用などの検討を行って購入した消費者は中心ルートを使っていると思います。一方、CMに出ている女優に憧れてこのようになりたいと思ってTUBAKIを購入した消費者は周辺ルートを使用していると思います。
(3)このモデル(ELM)はどのような観点でマーケティングの発展に貢献したのですか?
これ以前の消費者モデル(AIDA、AIDMAなど)は中心ルートのみを前提としていました。周辺ルートの存在・重要性を提案した点がこのモデルの功績だと思います。その為、1980年以降は周辺ルートの消費行動の影響の研究が非常に盛んに行われ、理論的な発展が見られました。皆さんも中心ルートを使って(詳細に情報を集めて)購買の意思決定をするケースはどれほどありますか?人間はそれほど詳細に情報の検討を多くのケースではしません。それよりもパッケージが気に入ったから、友人が持っているから、CMでしていたからなどの非合理的な判断の占める割合の方が多いと思います。(関連記事はこちら
)自社の商品特性や顧客層によっては中心ルートを前提とするモデルで考えると顧客が見えなくなります。
《お願い》
皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。
参考文献
Bohner,G. (2001). Attitudes, in Introduction to social psychology: A European Perspective Third edition, (ed) Hewstone,M. & Stroebe,W.
Petty,R.E., Cacioppo,J.T., & Schumann,D. (1983). Central and peripheral routes to advertising effectiveness: The moderating role of involvement. Journal of consumer research, 10, 135-146.