やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No26:同調No1
やさしい心理学とその実践的応用(マーケティング・一般)No26:同調No1
今回は同調:Conformityの第1回目です。人間には多数派に同調しやすい傾向があります。有名な実験結果を基にその心理的な背景とマーケティング・一般への応用を考えます。
1.Aschの実験(Asch, 1951, 1952, 1956, sited in Avermaet, 2001)
実験の内容を簡単に述べると、標準とされる線を実験参加者に見せて3本の中から標準とされる線と同じ長さの線を選ぶと言うものです。通常のケースでは0.7%の誤答率しかない非常に簡単な問題です。Aschの実験のポイントは7人一組のグループの中に6人のサクラを混ぜたことです。つまり本当に考えて答えるのは7人中1人という状況です。サクラは仕掛けのある12回の問題(critical trial)の中で異口同音に誤った回答を答えました。すると他人の答えに引きずられた結果として通常は0.7%の誤答率しかない非常に簡単な問題に対して37%の誤答率となってしまいました。実験から分かることは、明らかに回答が分かっている問題さえ人間の判断は他人の判断の影響を受けるということです。
2.同調しやすい理由(Deutsch & Gerard, 1955, sited in Avermaet, 2001)
(1)情報的影響(Informational influence)
多数派の意見を正解の証拠として尊重した影響
(2)規範的影響(Normative influence)
多数派に嫌われるのを避けることを尊重した影響
3.文化的影響(Bond & Smith, 1996, sited in Avermaet, 2001)
個人と集団の強調を重視する文化(アジアなど)の方が同調しやすい傾向にあります。日本人は同調しやすい傾向にあると思います。
4.同調性を高める要因
(1)(多数派の他人との比較による)自信を持っていない(Mausner, 1954, sited in Avermaet, 2001)
(2)問題が難しい(Baron, Vandello & Brunsman, 1996, sited in Avermaet, 2001)
(3)多数派の人数が多い(Asch, 1951, sited in Avermaet, 2001)
(4)多数派の意見がそれぞれの自立した意見を思われる(Avermaet, 2001)
(5)後の方の回答の際は、それ以前の多数派の回答率が高い(Di Vesta, 1959 sited in Avermaet, 2001)
《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!
(1)トップシェアのブランドの強さについて考えて下さい?
トップシェアのブランドの強みは同調性からも説明できます。つまり皆が持っているものを人間は欲しくなる傾向があります。例えばiPodを考えて下さい。町中でiPodを使っているのを見ると同種の競合製品よりもiPodが良く見えてしまうものです(一種の宣伝効果)。
(2)テレビCM効果や口コミ効果について考えて下さい?
同調性の高い人はブランド選択等においてもテレビCMや口コミを参考にしやすいと思われます。私の調査では日本人の方がイギリス人よりもテレビCMや口コミを参考にした店舗選択をしているという結果がでています。
(3)衝動買いとの関連は?
友人等を同伴しての買い物は計画外購買の傾向が高まると言われています。友人に薦められたブランドは情報的影響・規範的影響を考慮すると断れない傾向があります(Solomon, Bamossy & Askegaard, 1999)。
《お願い》
皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。
参考文献
Avermaet,E.V. (2001). Social influence in small groups, in Introduction to social psychology: A European Perspective Third edition, (ed) Hewstone,M. & Stroebe,W.
Solomon,M., Bamossy,G., & Askegaard,S. (1999). Consumer behaviour a European perspective.