心理学のお勉強(社会心理学)No18 :態度No1
心理学のお勉強(社会心理学)No18 :態度No1
今回は態度:Attitudesの第1回目です。物事に対して好き・嫌いなどの比較的持続する態度を形成し、その態度がその後の社会行動(消費行動など)に影響を及ぼします。今回以降、どのようにして態度が形成され、態度が変化するのかについて取り上げていきます。消費者行動を考える上では態度(Attitudes)は欠くことのできない重要な概念です。
1.態度(Attitudes)
(1)概念
対象物に対する好き・嫌いの程度である心理的な評価(Bohner, 2001)。
(2)態度の3成分モデル(A three-component model)
Rosenberg と Havland (1960, sited in Bohner, 2001) によると、態度は(A)認知(cognition)、(B)感情(affection)、(C)行動(behaviour)の3要素で構成されます。
(A)認知(cognition)
対象物に対する信条(beliefs)によって構成されています。
(B)感情(affection)
対象物による感情(emotion)と気持ち(feeling)によって構成されています。
(C)行動(behaviour)
対象物に対する行動意図によって構成されています。
例えば、トヨタのプリウスに対して、Aさんはプリウスに乗るという事は地球環境の保護に役立つという信条を持ち、プリウスに対してプジティブな感情を抱いています。そして次回の車の購入ではプリウスを買おうという購買意図を持っています。
(3)明示的態度(explicit attitudes)と非明示的態度(implicit attitudes)
態度は対象物を見た時や対象物を考えた時に記憶の中から取り出されるものですが、意識的に取り出されるケース(明示的態度)と無意識に取り出されるケース(非明示的態度)があります(Bohner, 2001)。
《応用》 いくつか質問をしますので皆さんも考えて下さい!!
(1)なぜマーケティングで態度という概念が重要なのですか?
消費行動に関連すると思われているからです。100%の頻度ではないですが、皆さんも好きだと日頃感じているブランドを店頭で買う傾向があると思います。よって、どのような態度を消費者が自社やブランドに抱いているかを知ることや、その態度をポジティブな方向に変える事が重要となります。
(2)広告宣伝の目的は?
一番の目的は消費者の宣伝する商品・サービスに対する態度(attitudes)を変える事です。
(3)ユニクロの服と競合のA社の服が同じ品質で同じ価格帯だとします。しかし、Bさんは常にユニクロの服を買います。なぜですか?
今回の枠組みだけで考えると、Bさんのユニクロと競合のA社の認知的な側面は同等だと仮定されます。よって感情的な側面からBさんはユニクロが好きだと思います。皆さんも価格・品質などが同じでもなぜかある商品が好きだということは良くあると思います。
(4)女性を食事に誘ったら断られました。なぜですか?
3成分モデルの枠組みで考えて見ます。まず、(A)認知的影響を考えます。もしかしたら年齢・年収・ナショナリティなどの点で彼女の基準に合わない点があってあなたに興味がないのかもしれません。次に(B)感情的影響を考えます。もしかしたら(A)の認知的影響には問題がなくても、フィーリング的に彼女は貴方にポジティブな気持ちがないのかもしれません。最後に(C)行動意図を考えます。(A)、(B)に問題がないけど単に都合が悪いので誘いを断ったかもしれません。
(5)非明示的態度(implicit attitudes)の調査はなぜ重要なのですか?
第一に質問表など明示的態度(explicit attitudes)を測定することが目的の手法では消費者が明示したくない態度(人種問題、タバコなど)を測定できないことが上げられます。頻繁に引用される例がアメリカにおける人種問題です。ネガティブな印象を他の人種に持っている人でも質問表に回答する際、自分の本当の態度を開示することに躊躇することもよくあります。よって質問表で調査をするとアメリカの人種主義の程度は和らいでおり、白人向けの商品の広告に黒人のスポーツマンを使用しても問題がないと出ることがあります。しかし、実際に非明示的態度を表層化させる調査を行うと未だに(地域・個人等によっては)人種問題が残っていることが判明することもあります。
第二に無意識な非明示的な(本人も認識していない)態度もその後の社会的な行動に影響を与えることが上げられます。自分は愛国主義などには関係のないリベラルな人間と自分では思っている人が、韓国製品(液晶テレビなど)と日本製品を比べた際に、無意識のレベルの愛国主義が表層化して日本製品を(価格・品質とは別の基準で)選択することもあると思います。アメリカでハーレーダビットソンに乗る人にはアメリカに対する愛国主義が意識的・無意識的に存在するということも言われます。
なお、現在、社会心理学を中心に、非明示的な態度の測定法として潜在的連想法テスト(IAT: The implicit association test)(Greenwald, McGhee & Schwarts, 1998)という方法が脚光を浴びています。日本語でパソコンを使ったデモを体験できるホームページがありますので興味がある方は試してください(こちらをクリック
)。マーケティングへの応用は私の知る限り一部の学者が行っているのみのようです。
なお、今回の内容は抽象的だったと思います。次回以降はより具体的な内容に入っていきますので期待してください。
更新は、心理学のお勉強(態度:Attitude No2)を明日の午前中に行う予定、本編(情報の探索No2)を明日の夕方に行う予定
情報の探索(Information search)No2紹介
消費者の購買前の情報探索について取り上げます。No2では知覚されるリスクが情報検索の程度に与える程度について取り上げます。例えば薬は使用によるリスクが高いので事前によく情報を調べるなどです。
心理学のお勉強(態度:Attitude No2)の紹介
No2として態度の変化について取り上げます。マーケターにとって消費者の態度を変化させることは重要な概念です。
《お願い》
皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。
参考文献
Bohner,G. (2001). Attitudes, in Introduction to social psychology: A European Perspective Third edition, (ed) Hewstone,M. & Stroebe,W.
Greenwald,A.G., McGhee,D.E., & Schwarts,J.L.K. (1998). Measuring individual differences in implicit cognition: The implicit association test, Journal of Personality and Social Psychology, 74, 1464-1480.