イメージ 1

 恋愛もののスカスカな本ばかり読んでいて国際政治には全く興味がない若者ならば、一目見ただけではこのタイトルが意味することすら分からないのだろう。副島国家戦略研究所の研究員である著者の中田さんは、まだ20代の青年だという。2005年5月初版。

 

 

【フルブライト奨学金制度】
 フルブライトは、この制度を作るにあたり、「ローズ奨学金」 をモデルにしている。ローズ奨学金は、イギリスの政治家セシル・ローズの遺言によって創設された奨学金制度であり、フルブライト自身、ローズ奨学生として、オーックスフォード大学に留学した経験を持っている。(p.31)
 ジャパン・ハンドラーズの序盤に書かれているフルブライト奨学金を得てアメリカへ留学した日本人たちに関しては、下記の書籍の中に、より詳細に書かれている。
   《参照》   『タイゾー化する子供たち』  原田武夫  光文社
            【フルブライト留学生】

 

 

【シンクタンク人脈】
 マスコミの表舞台に登場することはほとんどないが、決定的な影響力を持つのがアメリカのシンクタンク研究員や、日本研究家(ジャパノロジスト)のネットワークである。(p.41)
 日本人は ”知日派” とか “親日派” という言葉を耳にするだけで、心理的武装解除状態になってしまいそうだけど、そう言われている当のアメリカ人自身は、決してそのようなものではない。
 ヴォーゲルは、「知日派」 という言葉について、「知日派という人々は、日本がアメリカの国益にとって知る値打ちがある国であるからこそ存在しうるのだ」 と述べ・・・ (p.77)
 どこまでも 「国益・企業益あってこそ」 である。ビジネスライクなのである。
 アメリカのシンクタンクというのは、日本の 「○○総研」 のような、当たりもしない経済予測を毎月のように発表している銀行・生保系の能なし集団ではない。目標を立てたら必ずそれを遂行し、場合によっては現実すら無理やり作り変えてしまう集団なのである。(p.42-43)

 

 

【ジャパノロジスト人脈と司馬遼太郎】
 近代化論を提唱するジャパノロジストたちが一堂に会したのが1960年の 「箱根会議」 である。これは反共文化会議としても知られ、ジャンセンも参加していた。 ・・・(中略)・・・ 。
 このジャンセンが、1961年に書いた本が、 『坂本龍馬と明治維新』 である。ジャンセンは、土佐出身の坂本龍馬と中岡慎太郎という維新なかばで暗殺された二人の生涯を追いながら、激動の明治維新の時代を描いた。
 そしてジャンセンのこの著作をヒントにして描かれた新聞小説が、元産経新聞記者の司馬遼太郎(福田定一)の小説 『龍馬がゆく』(1966年) である。このことは 『龍馬がゆく』 の最終巻で司馬自身がほのめかしている。
 司馬といえば、日本を代表する歴史作家だ。彼の著作にはライシャワー系のアメリカ人ジャパノロジストの対談も多い。
 そもそも、日本の近代化は明治維新を持って嚆矢とする 「司馬史観」 は、ライシャワー史観とも非常に近い。極端な言い方をすれば、司馬史観というのは、アメリカからの 「輸入品」 ではなかったろうか。(p.92-93)
 下記の著作を辿れば、「司馬史観」 に疑問を呈する人々4人の著作にリンクする。
   《参照》   『没落からの逆転』  榊原英資  中央公論新社
            【ポスト近代産業資本主義は日本の時代】

 

 

【日米蜜月政権時のフィクサー】
 ケント・カルダーは、研究者と言うよりは、「隠れCIA」 というべき存在である。ヴォーゲルなどと同様に、政治マフィアというか、一種の裏で動くタイプの人間であると言ってよい。
 カルダーは、浜田宏一イエール大学教授、ヒュー・パトリック(コロンビア大学教授)と一緒に竹中平蔵郵政大臣の 「民営化カンファレンス」 に出席し、民営化積極賛成の発言をしている。彼はいわばアメリカ政府の 「フィクサー」 として、日本の政治家に圧力をかける仕事をしてきたのだ。(p.98)
 『ジャパン・アズ・ナンバー・ワン』 で日本を褒め殺したエズラ・ヴォーゲルは、その後、正反対の内容である 『ジャパン・アズ・ナンバー・ワン ――― それからどうなった』 を著している。(p.75)
 小泉政権時代のフィクサーがケント・カルダーで、中曽根政権時代のフィクサーがナサニエル・セイヤーだったらしい。
 共産党の議員が 「ナサニエル・セイヤー教授は中曽根さんと親しいそうだが、セイヤーというのはCIAに近い人物ではないか」 と追求したら、中曽根さんは 「CIAに近いのではない。CIAそのものである」 と答えられたから、その共産党の議員はそれ以上質問できなくなった。(p.101)
 中曽根元首相こそは、真の国民政治家であった田中角栄を裏切って、アメリカべったりの属国路線を開始した人物である。(p.102)
   《参照》   『ヤクザ・リセッション』 ベンジャミン・フルフォード (光文社) 《前編》
             【日本の支配者】

 

 

【日本側財界人のキーパーソン】
 言わずと知れたオリックスの宮内義彦とソフトバンクの孫正義のことが10ページに渡って書かれている。
 この二人の具体的事実関係については、下記の読書記録で書き出している。
   《参照》   『NTTを殺したのは誰だ!』   藤井耕一郎  光文社
 ジャーナリストの大下栄治によれば、孫は、1989年当時に坂村健東京大学教授が開発していた日本独特のOS 「トロン」 を、ソニーの盛田昭夫、通産官僚棚橋祐二の二人と組んで潰した経歴もある (『孫正義・若き起業の獅子』講談社)。 (p.171)

 

 

【マイケル・グリーンと民主党新世代の防衛族】
 グリーンは、軍事ビジネス分野にもにらみを利かせ、首相の懇談会にまで圧力をかけてくるジャパン・ハンドラーズの中では最大の出世頭だ。当然のことながら、多くの日本政治家とのネットワーク(命令系統)を持っている。
 その彼が、外交問題評議会の研究員時代に同僚として交友したのが民主党の長島昭久衆議院議員である。
 長島議員は、民主党の1,2を争う外交族であり、菅直人前代表の安全保障アドバイザー、ネクスト防衛副長官(長官は松下政経塾出身の前原誠司)のポジションにある。
 彼は、自身のホームページで、その対米人脈の厚さを 「公開」 しており、テレビ番組でも誇らしげに披露していたくらいである。(p.189-190)

 

 

【インナー・サークル】
 高度に発達した資本主義社会において、世界を動かすのは、イデオロギーや宗教などではなく、多国籍企業やそれぞれの国内の大企業の利害である。企業の利害が政治家を動かし、世界を動かしている。そして日本も、その大きな動きの中にある。
 この秘密クラブを介したエスタブリッシュメントたちのネットワークを 「インナー・サークル」 と呼ぶ。これはアメリカの経済学者、マイケル・ユヒームの造語だ。(p.193)
 そのインナー・サークルこそが、ジャパン・ハンドラーズたちの奥の院である。
 すなわち、裏の国際会議であるビルダーバーグ会議である。
 例えば、1992年のビルダーバーグには、大統領になる前のビル・クリントンがバーノン・ジョーダンやジェイムズ・ジョンソンといった銀行家たちの招きで出席しており、その場で 「お前を大統領にしてやる」 という約束が得られたという。(p.195)
   《参照》   『泥棒国家日本と闇の権力構造』 中丸薫・ベンジャミン・フルフォード (徳間書店)
              【闇の権力の中枢】
   《参照》   『天と地と』  中丸薫  あ・うん
             【 「闇の権力」 と地底世界 】

 

 

【アメリカはコネ社会】
 アメリカの大学には、それぞれこのような 「学生クラブ」 が必ずあって、「フラタニティ」(女性の場合はソロリティ)と呼ばれている。そしてこれらのOB会が現役学生が就職する際の窓口(コネ)にもなっている。(p.198)
 フラタニティ や ソロリティ については、映画の 『キューティ・ブロンド』 を見ればその本質が良く分かるだろう、と書かれている。
 スカル・アンド・ボーンズなども、こういった 「学生クラブ」 の一つである。そのクラブの人脈が、より奥深いところに繋がっていれば、出世は良好である。
   《参照》   『次の超大国は中国だとロックフェラーが決めた (下)』 ヴィクター・ソーン  徳間書店
             【ミーナ空港】
 アメリカは、実は日本以上に 「コネ社会」 であることがわかる。アメリカでの 「実力主義」 というのは、どのようなクラブに所属しているかということも、実力の裡に含まれるのだ。
 だからアメリカというのは、本当は実力社会ではなく、いまだに貴族社会の国なのであり、いわゆる 「アメリカン・ドリーム」 など幻想にすぎない。(p.199)
 真っ黒けの欲心があればあるほどヨロシイ。簡単に言えば、メフィストフェレスに魂を売り渡した者たちが出世する国ということである。
 
<了>