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 サブプライム問題が勃発(2007年8月17日)した翌年に著された本。2008年9月初版。その後、リーマンショックが起こって恐慌前夜の様相だったけれど、まだ本番は起こっていない。本番の恐慌が起きるなら、今年から来年の1月あたりまでの期間だろうと思っているから、改めて読んでみた。

 

 

【第三の嘘】
 この本の表紙に打ち込んだ英文の “Lies, Big Lies and Statistics” は、有名なイギリスの格言(マキシム)である。ユダヤ人の大宰相ディズレリーが言った名言だ。「世の中には三つの嘘がある。それはただの嘘と大嘘。そして統計学のふりをした、高等数学で表わされる嘘八百の金融・経済のあれこれの数値のことだ」 という意味である。
 私たちが毎日、テレビや新聞で読まされている金融・経済の数値は嘘で満ち溢れている。(p.24)
 統計学を駆使した第三の嘘は、ちょっとまともな人々であっても、容易に信じてしまう。しかし、副島さん読者は、そんな嘘を信じない。
 金融工学を駆使して阿漕な商売をする連中と、そんな連中とグルになっている格付け会社の連中と、それを知っていながら売りまくる破廉恥な証券会社の連中の言うことを、アホ同然のお人好しで信じてきた人々は、既に十分痛い目にあっているはずだけれど、まだこれから更に痛い目にあう可能性がある。

 

 

【金融庁】
 私は、金融庁という名の恐ろしいゲシュタポリツァイ(金融に関する国民監視警察)の悪を公然と指摘し、「資産家と経営者と投資家たちよ。気をつけなさい」 と叫ばずにはいられない。
 金融(監督)庁はちょうど10年前の1998年に、アメリカが日本に作れと押しつけた恐ろしい国民監視用の金融秘密警察である。戦前の特高(特別高等警察。内務省の外局だった)と同じような恐ろしい役所である。(p.27)

 金融庁の定員は10年前の発足当時の3倍になっている。アメリカのSEC(証券取引委員会)が真の親分であり育ての親だ。他の官庁は行政改革の方針に従い定員が減らされているのに、金融庁と国税庁と警察庁だけは “危険な時代” を先取りするように増員が続いている。(p.196)
 やがてくる預金封鎖の時に備えて、国民の資産を管理する目的で作られたのが金融庁である。金融庁発足以降、個人が銀行口座を作るのでさえ自由にならなくなっている。
   《参照》   『やがてアメリカ発の大恐慌が襲いくる』 副島隆彦 (ビジネス社)
             【赤字財政の原因と解消方法】

 チャンちゃんにはペイオフに関わるほどの預金などサラサラ無いのだから、大恐慌が起ころうが起こるまいが、預金封鎖が起ころうが起こるまいが、本当はどうでもいい。
 しかし、法律で国民を縛り上げるという国家権力による暴挙は、歴史上何度も繰り返されているのを知っているし、そもそも、強いもの(国家)が弱いもの(国民)を恣に料理するという社会正義に逆らう暴挙が、そのまま放置されて良いとは断じて思えないから、義憤を感じもするし、無性に腹が立つのである。

 

 

【ドルの暴落を定める、ユーロとの関係】
 ドル大暴落は、主にユーロ(ヨーロッパ統一通貨)との関係で決まる。 ・・・(中略)・・・ ドルーユーロでは、1ユーロ=1.55ドルあたりで一進一退している。ドルの信用力が回復してユーロ安の逆の動き(アゲインスト)になりつつある。そのようにみせかけられている。が、やがてどうせふたたびドル安が起きる。そして1ユーロ=2.0ドルどころか2.5ドルへとユーロが2倍に値段に高騰してゆくだろう。ドルは大暴落していく。(p.73-74)
 現在のEU諸国は、大層な財政不安を抱えた国が多く、ドルに対して高騰する様子はない。だから、ドルの大暴落が起きなくて済んでいる。

 

 

【バークレイズ銀行の筆頭株主】
 前述したとおり、イギリスはすでに恐慌状態である。アメリカのサブプライム関連商品を、国家の規模に比して大量に買い込んでいる分だけでも大きな痛手を受けている。加えてロンドンの住宅バブルがあまりにも激しかった。(p.89)
 だから、イギリス最大の民間銀行であるバークレイズ・バンクが、ついに三井住友による緊急支援を受けた。新聞記事では1000億円の出資となっているが、本当はその10倍の一兆円を出して、三井住友がバークレイズ銀行の筆頭株主になったはずである。(p.90) (p.165)
 この例だけではない。日本の金融機関は、アメリカにおいても数行の筆頭株主になっている。やがて世界の金融秩序が回復した時、邦銀が世界中の優良顧客の資産を預かり運用するようになるのである。

 

 

【アメリカの卑怯】
 なんとアメリカ政府とSECは奇策を弄することに決めた。 ・・・(中略)・・・ 時価会計は実質的に放棄してもよいことになってしまった。 ・・・(中略)・・・ 。日本人よ、怒れ!
 アメリカが世界中に押しつけて回った時価会計(プレゼント・ヴァリュー・アカウンティング)ではなく、旧来の取得原価主義(含み利益や含み損失温存主義)に戻ることを恣意的に選択できることを許したのだ。こんな卑怯なことをした。(p.123)
 小泉政権下では、破産宣告にも等しい時価会計を押しつけて、ミサワホームなど多くの会社を強制的に潰していたのに、いざ自国のこととなればこうである。これが法治国家・アメリカの正体である。
 事後においてこのザマであるけれど、事前の状態も以下の様なものだった。
 アメリカではシティーグループを中核とする巨大金融機関と、格付け機関と、モノラインが、財務省を介して裏側で長年提携していた。多くの奇怪な証券化商品を金融工学の名で次々と生産し、お手盛りで高格付けにした。新しい種類の債権取引市場(金融先物市場)も作り出し、ここで相対取引で互いに示し合せて、どんどん価格を意図的に吊り上げていたのである。このため、米国の絶頂の好景気を誇った住宅バブルといのは “ヤミ・カルテル” による “談合価格” とでも言うべきものだった。(p.126)

 

 

【 B I S 】
 「時価会計」 も都合次第でどうにでもするんだから、露骨に日本の銀行を狙い撃ちした 「BIS規制」 だって、そのうち勝手にどうにでもするんじゃないだろうか?
 BIS(国際決済銀行)は、第一次世界大戦の時に、ドイツが払った賠償金でできた銀行である。スイスの都市バーセルにあるので 「バーゼル・クラブ」 とも呼ばれるが、最初から米ロックフェラー財閥が関係していて、ヨーロッパに勢力進出侵略したアメリカ・ロックフェラー家の国際金融機関だと言われている。(p.135-136)
 なら、ロスチャイルドの機関はというと、
 パリに本拠があるOECD(経済協力開発機構)は、ヨーロッパのもう一つの国際機関である。OECDはヨーロッパ勢のロスチャイルド家の力が強い。(p.136)
 なら、ロックフェラーとロスチャイルドが共謀する機関はというと、オランダ国王が仲介したビルダーバーグである。
   《参照》   『次の超大国は中国だとロックフェラーが決めた (上)』 ヴィクター・ソーン (徳間書店)
              【ビルダーバーグ設立資金】

 

 

【ベンジャミン・バーナンキ】
 ベンジャミン・バーナンキFRB議長こそは、「日本の昭和恐慌と高橋是清の経済政策」 の研究家なのである。彼にはその論文がある。これからいよいよアメリカだけでなく世界が大不況に突入し、世界恐慌にまで至ろうとする事態に備えて、計画的に育成されて投入されてきた人材が、まさしくベン・バーナンキなのである。(p.186)
 高橋是清は、昭和5年(1930年)からの昭和恐慌を乗り切った当時の日本の蔵相。
 終わりの時を迎えるだけで、「誰もやりたがらないFRB議長役を引き受けさせられた」 のではない。最初から計画通りなのである。

 

 

【中東で勃発するもの】
 もっと恐ろしいことをここで予言しておこう。それでも10年以内の近い将来、おそらく中東で核兵器が1発か2発、破裂するだろう。この事態はある意味では避けられないものだ。人類というのはそれぐらい愚かな生き物である。そしてサウジアラビアで、今のサウド王家の打倒を目的とするイスラム原理主義革命が勃発するだろう。その時には原油は1バレル250ドルを突破するだろう。それがこれからの世界の冷酷な動きである。(p.210)
 これは、アメリカの軍産複合体が描くシナリオに則したものだろう。サウジアラビアは立国当初からアメリカの言いなりであるし、イランも、そこに核兵器製造技術を送るパキスタンも北朝鮮も、すべてアメリカの地下茎によって密接につながっている国々である。
 中東での核戦争を発火点とするアメリカの借金踏み倒し計画を、これに加担したくない国際金融資本家と世界各国の指導者が、許容するか否かのカウンター・バランス次第だろう。
   《参照》   『アメリカが隠し続ける金融危機の真実』 ベンジャミン・フルフォード (青春出版社)
                【世界の大きな動き】

 

<了>