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 この本は2009年1月初版だけれど、出版当時にこの本を読んでいたら、その後の国際関係に関するブログの書き方の傾向が、やや異なっていたかもしれない。金融危機に関する具体的な内容は、すでにいくつかの読書記録に書き出しているので、それ以外で、国際的な大きな動きに関与する個所を書き出しておいた。

 

 

【オプションARM】
 国際的な金融破綻の核弾頭となったサブプライム・ローンであるけれど、そのサブプライム・ローンが実際に毒となるのは、オプションARMというローンの返済方法によっている。どういう仕組みかと言うと、
 優遇期間の5年が経過すると、月々の最低支払額はなんと5倍 ・・・(中略)・・・に急増する。(p.91)
 返済額が突然5倍になれば、ローンを延滞する人は当然のように激増するだろう。
 実際、07年12月の時点で、オプションARMのローン延滞率は20%にまで達してしまった。 ・・・(中略)・・・。だが、オプションARMが最も多く利用されたのは05年、06年のこと。ということは、本格的な延滞率の上昇はこれから始まるのだ。(p.92)
 05年06年の5年後は、10年11年である。昨年から今年にかけて、現実的にアメリカ経済の足を引っ張り続けてゆくのである。

 

 

【世界の大きな動き】
 私は軍産複合体と金融資本家の間での方針の違いが、今回の混乱を呼び込んだと見ている。簡単に言えば、軍産複合体が描いていた新世界秩序と、金融資本家が目指していたそれとの間に埋めがたい溝が生まれ、主導権争いが起こったのだ。
 ブッシュ政権下で強い力を握ってきた軍産複合体は、イラク戦争の先にさらに大きな戦争を起こして、戦争景気によって双子の赤字をうやむやにする戦略を取ろうとした。私が独自に入手した情報によると、軍産複合体の目指していた戦争のタイムシケジュールは2012年に設定されていた。まずはイスラエル軍によるイランへの空爆を行い、中東に新たな火種を作り出したうえで、EU,ロシア、中国を巻き込んだ第三次世界大戦になだれ込もうとするシナリオまで用意されていたようだ。一方、戦争によるリセットを望まない金融資本家たちは、軍産複合体の影響力を弱めるため、ドルの基軸通貨としての力を失わせてアメリカを覇権国家から普通の国にする道を選んだ。
 ところが、後述する中国やロシア、南米などの新興国の力の増大という不確定要素がそこに加わって予想よりも早く混乱が生じ、ニュー・ワールド・オーダーそのものの実現が難しくなってきている。(p.105-106)
 こういう世界の大きな図式が分かっていれば日本の国民も安心できたはずなのに、アメリカの軍産複合体勢力にベッタリ貼りついて支配されていた小泉政権と日本のメディアは、相変わらず戦争の危機を煽り続けている。

 

 

【中国の賢明な選択】
 少なくとも、中国・ロシア・南米諸国がアメリカ離れの方向にあるのは間違いないけれど、金融資本家と鋭く対立していたロシアのプーチンさんと違って、中国は金融資本家と対決しない方向で話をつけていたらしい。
 信頼できる情報筋によれば、当初は彼ら金融資本家と対決姿勢にあった中国だが、方向性を変え、話し合いの場を設けたという。その理由は 「敵は外に置かず、内に置く」 という、中国の伝統的な思想にもとづいてのことのようだ。
 この判断は、危機後の世界経済の仕組みを作っていく上では賢いと言える。ロスチャイルドやロックフェラーらを完全に蚊帳の外に置いて敵に回すより、話し合いのよって世界中の人々が満足できる新体制を築くべきだからだ。(p.188)
 こんな重大な情報が、日本では全く伝えられていない。だから中国はいつ崩壊するのか、あるいは何故崩壊しないのか、というような疑問が長らく残っていたのである。これこそ、日本のメディアが、アメリカのネオコン派の勢力に完璧に支配されているという証拠である。

 

 

【ビルダーバーグ会議】
 その影響力はG8や世界経済フォーラムを凌ぐといわれており、毎年ビルダーバーグ会議で決定した事柄はサミットでの重要議題となり、政策決定の背景となる。(p.123)
 そのビルダーバーグ会議の常連で中核にいるのが、婚姻関係で結ばれ、相互に自社の取締役を務めているロックフェラー、ロスチャイルド、ブッシュ、ハリマン、ウォーカーらの一族だ。
  ・・・(中略)・・・ 。頂点には5人のメンバーで構成される政治局が存在する。
 現在、秘密結社の中で強い力を持っているのはロスチャイルドとロックフェラー、そしてイギリス王室だ。5人委員会のトップはおそらくエリザベス女王とエヴリン・ロスチャイルド、父ブッシュ、デイヴィッド・ロックフェラー、ローマ法王。(p.124)
 ビルダーバーグ会議については、読書記録の中で何度も書き出しているけれど、より具体的な人名が記述されていたので書き出しておいた。
   《参照》   『この国を支配/管理する者たち』 中丸薫・菅沼光弘 (徳間書店) 《後編》
               【ビルダーバーグ・グループ】
   《参照》   『泥棒国家日本と闇の権力構造』 中丸薫・ベンジャミン・フルフォード (徳間書店)
               【闇の権力の中枢】

 

 

【通貨戦争に真っ正面から対抗し勝利した中国】
 90年代半ばに起きたアジア通貨危機。タイのバーツが標的となったこのとき、アメリカのヘッジファンドは返還直前の香港ドルにも手を伸ばそうとしていた、返還を前に不安定な香港経済は、香港ドルの投機売りで簡単に混乱する。だが、ヘッジファンドの読みは外れた。
 中国政府はアメリカに対してキッパリとこう通告したのだ。
「米国資本が香港ドルを売り浴びせるなら傍観しない。中国は保有する米国債を売り払って、その資金で香港ドルを買い支えるだろう」
 もしこれが実行されればドルは暴落し、アメリカ経済は混乱に陥る、 ・・・(中略)・・・ 。
 10年ほど前に起きたこの隠れた通貨戦争における中国の態度が、その後の米中関係の将来を示していた。(p.166-167)
 中国は毅然として正攻法で対抗していた。それに較べ日本って・・・かえすがえすも情けない。
 下記のリンク内容は、つい数年前のことであるけれど、この時も中国は毅然とした正攻法で筋を通している。
   《参照》   『ドル亡き後の世界』 副島隆彦 (祥伝社) 《前編》
           【中国と日本のアメリカに対する対応の違い】

 アジアのプライドを世界に対して明示していたのは、日本ではなく間違いなく中国である。
 ドル離れを目指す中露は石油ガスの決済に、ルーブルと人民元を平均したバスケット通貨建てで価格を決めて取引している。ベネズエラもスペインと同様な方法で取引している。
 日本は今でもドルべったりだろう。日本には、戦略というものがトコトンない。呆れるほどにない。

 

 

【ドル】
 アメリカが今まで刷った多くのドルが彼らの手にあるため、新しい通貨とドルを交換する日まで、彼らはドルの暴落を許さない。そういう意味では、日本政府がドルを買い支えていくのも間違った戦略ではない。(p.185)
 日本のように、徹底的に戦略を持たないのも一つの戦略と言うことか。
 現在ドルが暴落せずにいるのは、EU諸国や新興のBRICs諸国が多くのドルを未だに保有しているからである。そして、世界の基調は戦争経済からの脱却方向にある。この2点によって、アメリカは活かさず殺さず徐々に衰退して普通の国家になってゆく定めなのである。

 

 

【ユーロ】
 ユーロは下がり続ける。 ・・・(中略)・・・ 世界中の債権国が持っているユーロも少ないため、買い支える理由もないからだ。(p.185)
 ユーロの中でも、金融国家路線を走ってきたイギリス、フランスなどは、アメリカと似たような経路を辿る可能性が高いと書かれている。通貨を過剰に印刷して市場に出してこなかったドイツだけは、生き残るだろうとも。

 

 

【円】
 日本円が高い理由は簡単だ。日本は世界最大の債権国であり、国民の貯蓄率は高く、製造業において強い分野を持っている。当の日本人の関心が低いことは問題だが、新しい世界の仕組みになった時、日本が大きな力を手に入れるであろうことを世界の人々は知っているのだ。(p.185)
 東北・関東大震災から1週間後の昨日、急激な円高が進んだけれど、世界各国が協調介入して円を支えてくれることになったというニュースが3月19日に流れた。私利私欲で世界中を駆け巡るファンド資金が円高にした原因だったのだろうけれど、世界が協調して日本円を守ろうとしてくれたという事実は大きい。被災者の方々や、原発事故の心配は残っているけれど、このニュースは、世界の各地で義捐金が集められているというニュースと同じくらい喜ばしいものだった。
 新しい世界の仕組みになった時、日本の円が重要な役割を果たすことを期待されている証拠だと理解しておこう。
 しかしその時まで、日本は、アメリカのマイナス経済に引きずられつつ、ネオコン派が画策する戦争やパンデミックなどの大いなる危機と試練を乗り越えて行かねばならないのだろう。

 

<了>

 

ベンジャミン・フルフォード著の読書記録