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 1年前に出版されていたのを知らなかった! このお二人の共著に気付いていたら、その時点で必ず読んでいたはずなのに・・・・と思う。2009年7月初版である。

 

 

【「植草追い落とし」】
副島 : 私は植草さんのインターネット上の ブログ(植草一秀の『知られざる真実』) を拝読しています。これはすごい文章だと思います。
 かつて 「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京系)をはじめ、多くのメディアで言論を発していた植草一秀というエコノミストを、私は見上げるようにして暮らしていました。植草さんは飛ぶ鳥を落とす勢いでした。それが今から5年前、突如、事件に巻き込まれ、輝かしい地位を失いました。
 あの事件は政治権力による恐ろしい攻撃、弾圧です。しかも植草さんへの弾圧は立て続けに2回も行われました。社会的に立派な立場にあった人が、痴漢冤罪という、今の日本でおよそ考えられるかぎりの最低の辱めを受けたわけです。地獄の業火に身を焼かれるほどの苦難を味わったことと拝察します。
 しかし植草さんは、その苦しみを耐え抜き、孤立無援の中から這い上がられた。きわめて優れた文章を、毎日、淡々と書きつづけておられる。驚くべき胆力だと思います。(p.14-15)
 政治経済にちょっと詳しいビジネスマンの多くは、植草さんがメディアでハチの巣状態にされていた時、このような裏があることを薄々感じていたはずである。
 時の最高権力者であった日本国首相・田中角栄であってすら有罪にしてしまえるほどの影響力を行使するアメリカのパワーは、 “隠然たる” などという形容はまったく相応しくはない。メディアを用いた “公然たる” パワーを行使して、アメリカの利益に反する人物達を次々と失墜させてきているのである。

 

 

【会計士の不審な死 : 「植草追い落とし」の準備】
副島 : りそな国有化が決定する直前の、2003年4月24日に重要な事件が起きたことを私は指摘したいと思います。りそな銀行を担当していた朝日監査法人の公認会計士、平田聡さんが不審な死を遂げている。38歳という若さです。自宅マンションの高層階の、おそらく通路から下に投げ落とされるようなかたちで亡くなりました。
 ・・・(中略)・・・ 。
 このとき、りそなの株価が操作されたことを、文章で明確に指摘した植草さんに、竹中平蔵および彼の周囲にいる 「お庭番」 たち、はっきり申し上げればアメリカ研修帰りの日本の警察、検察の連中が、襲いかかった。あのとき 「植草追い落とし」 への準備が始まっていたのだろうと思います。(p.75)


副島 : 私が第三者の目で全体を観察しますと、これは明らかに謀略でしょう。政治警察が動いた。小泉純一郎や竹中平蔵が直接、指揮をするわけではないけれども、竹中平蔵の政策実現を守るために特別に組織された部隊が植草さんを狙ったと私は考えています。竹中一派にとって、植草さんは、まさに宿敵、仇敵だった。
植草 : そのことに関連するかどうかわかりませんが、私は 「ワールドビジネスサテライト」 というテレビ東京の番組に、1992年から11年半ほど出演していました。いうまでもなくテレビ東京は、日本経済新聞の系列です。
 その日本経済新聞は2003年に、当時の鶴田卓彦社長のスキャンダルが表面化して、杉田亮毅氏に社長が交代しています。 ・・・(中略)・・・ 杉田さんは現在、日経の会長ですが、この方はもともと小泉さんと長い付き合いで、ポン友と言ってもいいほどの関係になります。
  ・・・(中略)・・・ 。完全に杉田体制に変わった2003年ごろから、この番組でコメンテーターをしていた私に、いろいろなかたちの圧力がかかってきたのです。(p.143-144)
 なるほど、やはり・・・・と、今頃納得しても遅いけれど、今だからこそ良く分かる。

 

 

【「小泉・竹中政治の闇」】
植草 : 私が追及する 「小泉・竹中政治の闇」 は、すなわち日本の金融行政の黒い闇なのです。りそな処理問題があり、UFJ・ミサワ問題があり、その後に郵政民営化問題がある。闇はあまりにも大きい。しかし私たちはこの闇を解明しなければいけないと思います。
副島 : 時間の経過とともに、真実ははがれ落ちてくるでしょう。(p.111)
 郵政民営化問題についても、ことの経緯が事細かに書かれているけれど、長くなるから書き出すのはシンドイ。過去の副島さんの読書記録や、下記のリンクで根本は分かるだろう。
   《参照》   『タイゾー化する子供たち』 原田武夫 光文社
            【日本を叩き売る輩】

 

 

【警察や検察庁の実態】
 普通の国民は、警察や検察庁は正義を実現する人たちだと信じ込んでいます。しかし今の彼らは、いわば “公設暴力団” です。私も50歳を過ぎて、ようやくそう思えるようになりました。世の中の真実が見えてきた。人生を深く味わって、注意深く生きてきた堅実な経営者たちは、警察とか国税庁というのは国家暴力団なのだという考えに昔から到達しています。私もこのことの恐ろしさを、身をもって知りました。
 だから一刻も早く、このことを賢い国民層に知らせなければならない。そして、こんなにもひどい目に遭わされた植草さんを皆で応援して、警察、検察、裁判所の魔の手から救い出さなければならないと、一段と強く思います。(p.147)
 対談者のお二人のように、言論で不正を暴くような活動をしている方々は、いつなんどきあらぬ端緒を見つけて冤罪へ持ちこまれるかわかったものではない。
 脱税容疑を掛けられて酷い目に遭っている経営者も非常に多い。メディアはそれをすぐ報道するけれど、それが事実無根であり、検察側や国税庁側のデタラメであったと、後のち裁判で結審しても、メディアはめったにこれを修正報道しないのが常である。

 

 

【竹中平蔵を育てた外国勢力】
 最初の親分はコロンビア大学のグレン・ハバードです。ジョージ・ブッシュ政権の経済政策をまとめていた財政学者(税法学者)で、大統領経済諮問会議(CEA)の議長でした。
 しかしその手前にフレッド・バーグステンという恐ろしい人物がいて、これはデイヴィッド・ロックフェラー直系の男です。彼がずっと目をつけていて、竹中平蔵を育てた。まさしくアメリカに資金を貢がせる係りとして竹中を抜擢したのです。
 それ以外では、日本にいつもいるロバート・フェルドマン(モルガンスタンレー証券日本担当チーフアナリスト)です。フェルドマンが直接に竹中平蔵に指示を与え、今も 「ああしろ、こうしろ」 と言っていると思うのです。
 それからもう一人、重要な日本管理対策班(ジャパン・ハンドラーズ)の親玉として、ジェラルド・カーティス・コロンビア大学教授がいます。 ・・・(中略)・・・ しかし最近は、小沢一郎攻撃で自ら刀を抜いて表面に出てきました。相当に焦ったのでしょう。それでも小沢を潰せなかった。 ・・・(中略)・・・ 。
 そして彼らよりもちょっと高いところにロバート・ゼーリックがいる。 ・・・(中略)・・・ 今は世界銀行の総裁になっています。ですから、すべて “実質の世界皇帝”デイヴィッド・ロックフェラーの子飼い(直系)の人たちです。  (p.164-165)
 ロバート・フェルドマンとは、テレビ東京のWBSに出てくるあのおっさんである。
 ここまでが、金融経済の分野での ジャパン・ハンドラーズ
 政治外交軍事の場面でのジャパン・ハンドラーズは、マイケル・グリーンとジョセフ・ナイ(ハーバード大学政治学教授)です。(p.220)
 副島さんは佐藤優さんと共著で今年6月に 『小沢革命政権で日本を救え』 という著作を出している。小沢一郎は、“実質の世界皇帝”デイヴィッド・ロックフェラーと対立するジェイ・ロックフェラーの傘下にある人物であり、戦争遂行派でないことは、副島さんの他著で分かっている。日中関係も深まりはするだろう。しかし、小沢一郎は、田中角栄失脚の原因を知って露骨にアメリカに擦り寄っていた人物である。 現在は “自らの命に代えてでも日本を守る” という揺るぎない決意を本当に持っているのだろうか?

 

 

【アメリカに隷属する日本のメディア】
副島 : 2002年1月に、田中角栄の娘である田中真紀子外務大臣を追い落とす動きがありました。リチャード・アーミテージ国務副長官が、自分と会わないと言った田中真紀子に怒り狂ったのです。真紀子大臣は、アメリカが日本に押しつけようとした、合計で4.5兆円もするMD( missile defense ミサイル防衛網)を買うことに反対し 「日本は中国と敵対する必要はない」 という考えからです。それで 「田中真紀子を潰せ」 となって、アーミテージは後藤田正晴事務所で岡崎久彦さん、佐々木淳行さんと話し込んだそうです。
 そしてこのあと、日本のテレビ局5社、新聞5社の政治部長たちを集めて、裏の政治部長会議が開かれた。次の日から一斉に田中真紀子叩きが始まりました。このようなかたちでアメリカは、今も日本のメディアを自分たちの手足として操って使います。
植草 : マスメディアの堕落、腐敗状況は非常に深刻になっていると、私も思います。これは民主主義の危機と言い換えてもいい。(p.201)
 小泉政権成立の立役者であっても、アメリカの利益に則さない者は、即座にメディアを使って排除されるということ。
 上記の書き出しに続いて、副島さんがテレビ5社、新聞5社について御自身の理解を短く記述している。長年ビジネスの現場で生きてきた人々には良く分かるだろう。日経=テレビ東京だけ書き出しておく。
 日経新聞=テレビ東京は、アメリカの資本が入っているわけではないのに経済新聞という性質から経営者の団体寄りであり、相当アメリカの意向で動く新聞です。かつてのマグロウヒル社、ビジネスウィーク誌(ロックフェラー財閥系)との提携関係が今も残っているのでしょう。(p.203)
   《参照》   『美しき日本の残像』 アレックス・カー 新潮社 《前編》
             【日経新聞の実状】
   《参照》   『にんげん』 船井幸雄 (ビジネス社)
             【アメリカに制圧されている広告業界=テレビ界】

 

 

【植草さんへのエール】
副島 : 小泉・竹中の売国政策時代に、この国でいちばんひどい目に遭った植草さんだからこそ、冷徹に見通せる近未来でしょう。日本国民は今こそ植草一秀を表舞台に復帰させて、彼ら売国者たちから守らねばいけないと思います。植草さんの健闘をお祈りして、皆で力を合わせて応援したいと思います。(p.248)
 これが、この対談のクロージングである。
 
<了>