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 この本は、2010年6月初版で、総選挙前に書かれていた本である。その後、民主党は大敗北し、郵政見直し法案、国家公務員改革法案、派遣法改正など様々な重要な法案は葬り去られたことは、以下の読書記録に書いた。
   《参照》   『新たなる金融危機に向かう世界』 副島隆彦 (徳間書店)
 また党首選挙も不正選挙によって小沢一郎が菅直人に敗れるという事実も、以下の読書記録に書いた。
   《参照》   『中国バブル経済はアメリカに勝つ』 副島隆彦 (ビジネス社) 《前編》
              【民主党代表選】

 結果がどうであれ、日本がどういう対立図式の中で、誰が日本の国政を支配したがり、メディアはどう報道しているのかくらいは、今後のために知っておいた方がいい。

 

 

【アウトライン】
 前書きに佐藤さんが書いていること。
 私と副島方彦氏は、「日本国家を誰が支配すべきか」 をめぐって、鳩山・小沢政権と霞ヶ関官僚の間で、深刻な、生死を賭した権力闘争が展開されているという見方で一致した。
 副島氏が、共謀理論に基づき、官僚・政治家・財界人・アメリカの特定有力者の自覚的な連携によってこの権力闘争が展開されていると考えるのに対して、私はそれぞれの利害関係者の集合無意識を重視する。
 特にアメリカに関しては、実際のアメリカ政府の動きよりも、日本の外務官僚や、日米安保利権家が、実際には存在しない 「アメリカの意向」 を扇動し、情報操作を行っているという点を重視する。(p.5)

 

 

【小沢・検察戦争】
佐藤 : 政治資金と献金疑惑をめぐる 「小沢・検察戦争」 は、われわれの希望的観測もありますが、小沢一郎の側が勝利することはないとしても、完全に敗北することはないと思ってよいでしょう。
副島 : その辺は私にもまだわかりませんが、日本の官僚のトップは財務省(旧大蔵省)だと、私も倣って思いこんできましたが、どうやら法務省・検察庁だったようです。このことが明るみに出ました。このことがスゴイことでした。
 他の官庁であれば政権の大臣たちが人事を握り、省予算を握れば政治家が勝つことができます。それが 「官僚主導から政治主導へ」 という小沢革命の根幹です。ところが、検察庁だけは、お金と人事では動かせない仕組みになっていました。(p.25)
 学校では三権分立などと立派な政治用語を習うのだけれど、治安維持や法的秩序維持を担うはずの検察庁や法務省官僚というのは、上からの指示や自らの利権維持のためには、いくらでも悪魔的様相を呈するものなのである。若者は、以下のリンクを3つ辿って検察や警察に正義があるかどうか、現実を知ったうえでキチンと理解しておくべきである。
   《参照》   『同和利権の真相』 寺園敦史・一ノ宮美成 (宝島社) 《前編》
              【ウンコ警察】
副島 : 検察官僚と霞ヶ関官僚(各省官庁)は一体でつながっています。また霞ヶ関官僚の大多数は、かつてないほど検察側についています。(p.31)
 官僚の権限を大幅に削減する、「国家公務員改革法案」を押し進める小沢一郎を葬り去るためである。官僚たちは国民に分からないように自分達で勝手に使えるよう作っておいた 「埋蔵金」 を取られたくないのである。
   《参照》   『僕らはそう考えない』 竹村健一・日下公人・渡部昇一 (太陽企画出版)
              【大蔵省の収入】

   《参照》   『中国バブル経済はアメリカに勝つ』 副島隆彦 (ビジネス社) 《後編》
              【中国が腐敗しているというなら、日本は清らかなのか?】

 

 

【小沢一郎を守った勢力】
副島 : 小沢を逮捕するのを阻止するために動いたのは、私の考えではジェイ・ロックフェラーから頼まれたマイケル・アマコスト元大使と、かつて副大統領まで務めたウオルター・モンデール元大使だったでしょう。もう一人、トム・フォーレー下院議員だと思います。この3人の民主党の大物で、日本大使を経験した人たちが小沢を守ったのです。というのが私の説です。
 アメリカに民主党政権が出来たので、日本にも民主党を作らせろという大きな流れが全体にあります。そして、汚いことをしない、アメリカのリベラル派の政策スタッフたちの期待と良導で出来上がった政権が鳩山政権です。
佐藤 : 検察は、小沢一郎に関するそのあたりの事情に気づいていない。ブッシュ時代のアメリカとの繋がりで、自分たちの知らないアメリカの盾が、自分達にまだあると勘違いして突き進んでいるということですね。(p.136-137)
 この対談が行われていたちょうど一年ほど前は、このように語り得たけれど、その後の選挙で、日本では民主党が大敗北し、アメリカでも中間選挙で民主党が大敗北し、ネオコン派が議席を大幅に戻している。
 逆転しつつ日本も世界も綱渡り状態が続いているのである。

 

 

【ネオコン派に与する 「三宝会」 】
副島 : 反政府クーデター計画のもう一つの勢力が、アメリカの手先となっているNHKを含むテレビ6社と、大手新聞5社の計11大メディアです。これらの大メディアは、「三宝会」 という政治部長会議を密かに開いています。マイケル・グリーン前東アジア上級部長と長島昭久、渡部恒夫らも出席して、「小沢一郎を逮捕し、有罪として葬り去るための謀議」 を企てていました。(p.83)
   《参照》   『ジャパン・ハンドラーズ』 中田安彦・副島隆彦監修 (日本文芸社)
              【マイケル・グリーンと民主党新世代の防衛族】

 この謀議のとおりに報道されていたのは、国民全員が知っていることである。
 渡部恒三の息子である上述の渡部恒夫も、小泉純一郎の息子である小泉進次郎もマイケル・グリーンの教え子である。尖閣諸島問題で中国の漁船を囲い込み衝突させ、その映像を意図的に流したのも、ネオコン派、マイケル・グリーンに組みする連中の計画通りだったのである。
   《参照》   『中国バブル経済はアメリカに勝つ』 副島隆彦 (ビジネス社) 《前編》
              【尖閣諸島沖事件】
 マイケル・グリーンがアメリカ側の現場指揮官であるなら、日本側の中心的な受け皿は、山本正という人物である。なんたってデイヴィッド・ロックフェラー派(ネオコン派)は戦争が大好きである。
   《参照》   『暴走する国家 恐慌化する世界』 副島隆彦・佐藤優  日本文芸社  《下》
              【 “皇帝デイヴィッド” の総代理人】

 経済関連の人脈は下記
   《参照》   『売国者たちの末路』 副島隆彦・植草一秀 (祥伝社)
              【竹中平蔵を育てた外国勢力】

 

 

【鳩山由紀夫・前首相の行動哲学】
佐藤 :自分があるタイミングを決める、その直近のどこかで自分で決めて起きたことを基準点して、そこと比較して、「よりましなシナリオ」 を選択することが最適解だという発想なのです。
副島 : 「意志決定の最適化」 ということですね。
佐藤 :そうです。 ・・・(中略)・・・ ですから 「普天間基地の代替候補地の決定」 を5月までとしたということは、副島さんがおっしゃったように、5月というタイミングを決定したことが重要なわけです。(p.124-125)
 基地移設問題に関する結果的な善し悪しは別として、この付近の会話を読んでいて、「なるほどねぇ~」 と思ってしまった。鳩山元首相は、スタンフォード大学の博士号(オペレーションズ・リサーチ)を持っていたのである。
 鳩山首相は、世界的に大変優れた頭脳の持ち主であると評価されています。日本人は彼のことを良家のボンボンが外国で下駄を履かしてもらって、博士号を得たというくらいに思っています。が、そうではありません。ほんとうに素晴らしい論文を書き、頭のよい人らしいのです。(p.127)
 現職当時、話の中に 「ある意味・・・」 という曖昧な表現が頻繁に出ていたので、この記述を読んで正直なところ、「へぇ~~~」 って思ってしまった。多変量解析などの手法を用いてスタンフォード大学で博士論文を書いていた人だったなんて、想像もつかなかった。思うに、数学的に切れる人って、たいてい数式で考えているから言語表現は必ずしも得意ではないのである。数式的発想による選択行動を、専門用語なしで一般大衆に向けて語ろうとしたから何でもかんでも 「ある意味・・・」 になってしまっていたのだろう。

 

 

【亀井静香】
 亀井静香という政治家は、私の分析では、日本国の王権の簒奪者である竹下登と中曽根康弘という2人の愚劣な最高指導者の力が伯仲した1990年に、双方が譲歩して1年間だけ日本の国王代理、すなわち実質的な日本の最高指導者を勤めました。
 今は、立派な国民政治家になった亀井大臣ですが、当時は、汚いことも平気でやる人でした。 ・・・(中略)・・・
 だから、亀井大臣は、財務官僚のトップたちが握りしめている 「隠し金」 のありかを大きく見抜いている人です。小沢一郎と亀井静香は、今回、上手に、2010年の国家予算92兆円の原資として、いわゆる 「埋蔵金」 の中から15兆円を、奪い取ってきました。これが一番大事なことなのです。(p.141)
 いまさら、こんなことを書き出してもちょっと空しい。その後がないのだから。
 昨年の選挙で民主党が敗北し、官僚サイドの民主党内クーデターが勝利したことで、亀井大臣は辞任してしまい、小沢党首はならず、国家公務員改革法も、郵政見直し法案も、もう完全にポシャッチャッタのである。
 しかし諦めることはない。再びがきっといつかあるだろう。
 以下は、副島さんがあとがきに書いていること。
 佐藤優氏が書いたとおり、まさしく 「小沢一郎氏が、官僚との戦いに立ち上がる」 時期がやがて到来する。その時が来たら、小沢一郎が育てた優れた若い政治家たちを支えて、私たち国民も、穏やかで健全で清新な国民運動を決意して始めるべきであると私は考えます。(p.253)
 私も公的機関に数年間ほど出向していたことがあるけれど、公務員というのは、民間に比べてあまりにも仕事量が少なく、そのわりに平気で給料を貪り、かつ平然と利権を当然視し、さらに隠然たる傲慢さを秘めた人間達の世界なのである。民間人と公務員が数ヶ月間でも職業入れ替え体験をしたら、民間人は100%納税拒否論者になるだろう。
 現状のまま官僚を放置しておいたら、社会はもっともっと荒んでゆくことだけはハッキリしている。

 

 

<了>