《前編》 より

 

 

【中国が腐敗しているというなら、日本は清らかなのか?】
 日本の場合は今の国家腐敗は、やはり天下りだ。ものすごい数の役人たちが特殊法人(民間企業のフリをする)をつくって天下っている。日本の民主党の計算で、毎年、12.5兆円をこの天下り官僚たちが使う。4000社の政府系法人がある。そこに、毎年2.7万人の高級公務員たちが天下っている。一人頭2億円かかる。この官僚(清朝の宦官たちの日本版)を根だやしにしなければならない。(p.126)
 中国社会のことを非難している人は、向ける矛先が違うだろう。
 日本の国富をせっせとアメリカに送金しているのもアメリカの犬と化した官僚である。
 官僚の腐敗が、日本経済と日本人庶民の首を絞めているのである。
 小沢一郎が言うごとく、「官僚(による)政治」 を絶対にやめさせなければならない。 ・・・(中略)・・・。官僚どもには経営や金儲けの才能はない。彼らは国家の寄生虫である。だから官僚に政治(国家の経営)をやらせたら駄目なのだ。(p.131)

 

 

【世の中の汚い現実に対して正しい決断で臨むことはできない】
 ロシア革命を成し遂げたレーニンに対して、マックス・ウェーバーが言った言葉だという。
 「 ・・・(中略)・・・ 。世の中の汚い現実に対して正しい決断で臨むことはできない。故にレーニン氏たちは正しくないのである」 (p.207)
 日本人は、中国社会を、法治の達成されていない遅れた社会、賄賂の横行する汚れた社会、と思いがちである。先に日本の官僚の様子を書きだしたように、実際のところは、日本人が中国人社会の腐敗を指弾できるような状況にはないけれど、それは一応棚上げにして考えてみる必要がある。
 どの国の社会であれ、その社会がひどく汚れているとしても、それを知性万能主義によるイデオロギーや理想主義的な視点で規制し裁こうとようとするのは正しくない、とマックス・ウェーバーは言っている。
 知性万能主義や理想主義によらず経験主義に則した方が良いと判断した例は、イングランドの歴史に見られる。
     《参照》   『日本史の法則』 渡部昇一 (詳伝社)
             【西欧における、 知性万能主義 VS 経験主義 】

 しかし経験則といえども、民族や社会や国が異なれば、それらもまた異なる。日本人の多くは、日本人社会の経験側や欧米メディアによって方向づけされている “べき論的意識” で中国を見ているから、中国はひどい国だと思い込んでいるし、中国政府の苛烈な対応を実際にひどいと思っている。日本人がそう思ってしまうのは、一面において仕方がないこと。しかし、中国指導部は、マックス・ウェーバーが指摘するような、レーニンと同じ誤りを犯してはいないだろう。
 これから先、何年か経過した上で、中国が諸外国と戦争を起こさずに成長するという結果を得ているのならば、その時、中国は 「衣食足りて礼節を知る」 国家になっているのであろうし、中国指導部は正しかったといえるのである。副島さんの本には、中国指導部が、そのような方針で進んでゆくであろうことが、将来の指導者と目される人々の思想的傾向を添えて記述されている。
 少なくとも日本は、中国が高貴なる国家へと成長するのを手伝う役割がある。アメリカの戦略に則して戦争を仕掛けるような愚かさが継続されている状況は、手伝うどころか邪魔をしているのである。そのことをこそ憂えるべきなのである。恥ずべきなのである。

 

 

【福建人と山口組】
 鉱山ビジネスである程度成功した人が、私に教えてくれた。
「福建人は日本に大変な迷惑をかけた。ヤマグチ(山口組)と組んで、日本で悪いことをたくさんした。日本にたくさん密入国して、悪いことをした」 と彼は笑いながら、かつギラッと輝く目つきで私に言った。(p134)
 日中国交回復をなしとげた田中角栄さんに連なる経世会系列の人々、つまり小沢一郎や野中広務といった人々が、中国系人脈の要人としてこの本の中に登場するけれど、山口組も中国と深く関与していたということは、小泉改革に乗じたアメリカの大目的を別の角度でいえば、「中国関連人脈潰し」といえるだろう。
   《参照》   『この国を支配/管理する者たち』 中丸薫・菅沼光弘 (徳間書店) 《前編》
            【郵政民営化は、「経世会つぶし」の手段】
               ~【稲川系のブッシュ大統領】

 

 

【中国への覇権移動】
 王岐山副首相に代表されるアメリカの手先が中国にもたくさんいるということだ。この人たちがアメリカの国債をまだまださらに買い続ける(買い支える)という動きに出ている。
 だから、中国への世界覇権の移動は、まだあと5年はかかる。じわじわと3年、5年、そして完成するのに10年かかる。ただし、決定的な覇権の移動は2012年に起きるであろう。そして2015年くらいに、アメリカ帝国は没落する。(p.145)
 「決定的な覇権の移動は2012年に起きるであろう」 とする根拠(具体的イベント)は、副島さんの読書記録のどこかに書き出している。
 副島さんは、こういうことをはっきり表現するような人だから、内容も論旨も明確である。文章も歯切れがよくて読みやすいし、副島さんの本を読めば、誰だって経済や国際関係に興味が持てるようになるだろう。

 

 

【中国とイスラエル】
 中国は世界帝国の建設のためにイスラエルと手を切った。そして、膨大な石油天然ガスの資源を持つ合計18億人といわれるアラブ・イスラム世界と手を組むとはっきり決めた。それが2006年11月のことであった。
 ・・・(中略)・・・ 。
 それ以来、イスラエルの中国嫌がらせ攻撃が続いている。2009年7月のウイグル暴動などの背後にはイスラエルの情報組織の動きがあると言われている。日本にも評論家の宮崎正弘氏のようなイスラエルの秘密情報機関モサドによって育てられたすぐれた人材たちがいる。日本人の視点から中国研究を綿密に行い、中国を敵視する言論を日本国内に巻き起こさせている。(p.191-192)
 日本で出版されている書籍の中には、反中や中国経済は瓦解するといった著作の方が圧倒的に多い。そんな中でも、宮崎さんの著作には、やけに広範な世界情勢が記述されていると思ったら、やはり背後にそういう情報提供者がいたわけだ。
   《参照》   『崩壊する中国 逃げ遅れる日本』 宮崎正弘 (KKベストセラーズ)

 

 

【洛陽遷都】
 中国共産党の最高幹部たちの秘密会議で、洛陽のはずれに政治都市としての首都をやがて移転する計画が密かに進んでいるはずだ。(p.246)
 漢王朝の首都だった洛陽。地理的にも中原の中心にある。
 環境的にも北京は好ましくないので、「遷都セントあかんのやぁ」 というところらしい。

 

 

<了>