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 この書籍は、このブログに既掲載の副島さんの著作より、早い時期に書かれたもの。今になって読んでみても、副島さんの予測は殆ど当たっているから大そう感心する。
 2008年3月初版時は、サブプライムローン破たん直後だった。その後、リーマン・ショックなど、タイトルのとおり暴落が連鎖している

 

 

【副島さん唯一の予測外れ】
 私が唯一外したのは、「日本の株価は今後も1万6000円から1万7000円ぐらいで安定して動いて、あまり下げない」 と書いた点だ。私は日本の株価は強いとみていたのだが、これだけははずした。(p.17)
 副島さんは詳細に国際経済を読み解いているから大筋において予測を外すことはない。予測外れがあっても、このように堂々と記述している。大方の評論家は、大筋を外して頬かぶりして黙りこむだけである。
 日本株もアメリカ株大暴落に引きずられて下落してゆく。日本市場の7割を占める外資が利益を出すために、日本の優良株を売り払うからだ。(p.19)
 ブレーキやアクセルの不具合といったことが生じる前でも、世界の一流企業であるトヨタ株が値下がりしていた理由がこれである。
 日本円や日本株が強いのは基本的に間違いなくとも、国際経済の入れ子構造の中では、この日本株の事例のように、他国の経済慣行に影響されて引き下げられてしまう。
 同じように日本円は強いと言ってもあまり意味はない。国際経済は、市場に委ねられているというのは名ばかりの嘘っぱちで、作為的支配による投機的売買に左右されているからである。
 終局的には、アメリカ暴落に引きずり込まれる分を補うだけの外資導入チャネルの有無が鍵なのだろう。

 

 

【CMEの先物取引】
 シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で先物で暴落させると決まったら、その日のその国の株価は暴落するのである。
 為替(ドル円)にしても同じだ。シカゴの通貨先物で2円とか円安・ドル高にすると決まったら、その日は円安になるのである。これを詐欺、八百長と呼ばずして一体何を八百長と呼ぶべきか。株も為替も債権(国債)も大きくはこのようにして操られ、操作され、統制されて、管理されているのである。(p.55)
 この先物取引を行っているCMEの中心的人物がレオ・メラメッド。
 シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)を作って各種の金融の先物市場を複雑にして、かつ不明朗にした現名誉会長のレオ・メラメッドが、この間の諸悪の根源である。彼らが、モーゲージ(担保付債権)を先物取引できるようにした。(p.65)

 

 

【マネタリスト】
 ミルトン・フリードマンは 『選択の自由』(1980年) という本で一世を風靡して、「自由競争と市場原理の素晴らしさ」 を説き、「規制撤廃」 と 「小さな政府」 を唱導した世界的経済学者ということになっていた。しかし、彼が陰でコソコソやっていたことは、その信条とは全く逆の、恐るべき統制経済であり、「私たち一番上の権力者たちがすべてのモノの値段を決める」 という行為だったのである。私たちはミルトン・フリードマンに大きく騙されたのである。その日本における今の代理人の一人が 「サプライサイダー」 で 「合理的期待形成理論」 の信奉者ということになっている竹中平蔵元金融大臣である。おかしな裏のある人たちだ。(p.58-59)
 フリードマンは、社会主義の研究母体であるフェビアン協会でマネタリズムの思想を作り上げたということを、かなり前に、渡部昇一先生の著作の中で読んだのを覚えている。そもそも、米ロの冷戦時代は、欧州ロスチャイルドから世界覇権を奪ったロックフェラー帝国の世界支配構造として創られてきたものだから、ミルトン・フリードマンの本質が、副島さんの記述にあるとおりだとして不思議はないし、むしろそのはずである。
 この “天下無敵” に見えるレオ・メラメッド(本当はやはりミルトン・フリードマンと同じく、 “世界総帥” デヴィッド・ロックフェラーの腹心である)だが、彼の唯一の巨大な敵は、やはりヨーロッパの先物市場である。(p.63)

 

 

【ロックフェラー vs ロスチャイルド】
 ICDフューチャーズ(ロンドン)は、明らかに欧州ロスチャイルド財閥が、アメリカに対抗するためにじっくりと育てて築き上げた先物の取引市場である。ロスチャイルド家は1990年代に金の現物の先物市場(「ロスチャイルド家の黄金の間」)をアメリカのNYMEXに先物でボロボロに打ち破られた。 ・・・(中略)・・・。あのときの痛手から立ち直り、多くの教訓を得て、今、ヨーロッパ人たちが 「アメリカを売り崩し」 に入っている。だからアメリカは暴落するし、「ドル覇権は崩壊」 するのである。(p.63-64)
 副島さんは 『「実物経済」の復活』 という著作を2003年に出しているけれど、
 彼ら欧州ヘッジファンドは米ドルをすでに2005年ぐらいから売り崩していたのである。商品先物すなわちコモディティの市場に大きな資金をもちこんで、銅や銀に史上最高値をつけたりしたのも彼ら欧州勢であろう。米ドルを叩きのめす 「実物経済の復活」 路線を演出しているのは彼らである。(p.101)

 

 

【アイン・ランド女史】
 グリーンスパンに影響を与えていた政治思想(リバータリアニズム)とは、 「反国家・反統制・反過剰福祉・堅実な商業利益」 を骨子としている。ソビエト革命からの亡命者であったロシア女の アイン・ランド女史が築きあげた思想である。女史の著作3冊が記述されている。
 この 『水源』 と 『肩をすくめるアトラス』、 そして 『Anthem』(1943) を読まずして、世界知識人の基準(World values 世界普遍価値)においては、高校生以下である。(p.123)
   《参照》   『ドル亡き後の世界』 副島隆彦 (祥伝社) 《前編》
            【グリーンスパン】

 

 

【カツアゲされて、つくられた日本の不況】
 財務省官僚たちは、それまではアメリカに抵抗していた。ところが1998年2月、アジア危機のさなかに 「新宿ノーパンジャブシャブ事件」 をアメリカの国家情報部であるCIAに仕掛けられて、多くの財務官僚、日銀官僚が失脚させられた。あの時以来、日本財務官僚たちのニューヨーク金融財界(国際金融資本)への屈服が始まったのである。あの時以来10年、日本の苦境が続いている。今の日本の大不況は、だからつくられた不況である。アメリカに累計で500兆円(やがて600兆円=6兆ドル)も国民の資金を奪い取られた結果として起きている不況(慢性の恐慌状態)である。(p.180-181)
 国家財政不足だからといって消費税を上げるというけれど、カツアゲされなきゃ、そもそもそんな必要はないのである。
 貸しているお金の600兆円のうちの2割の、つまり120兆円でも返ってくれば、そんな消費税の値上げなどする必要はない。このことが国民に知らされていないだけのことである。(p.202)

 

 

【アメリカに逆らうと、どうなるか】
 カツアゲするアメリカに楯つくと、良くて失脚、悪けりゃ死亡である。
「うちの台所が大変なので少しは返して下さい」 と公然と言える日本の指導者(政治家)がいない。言えば失脚させられる。それが橋本龍太郎元首相の急死や、加藤紘一の 「米国債を売りたい」 発言である。(p.181)
 安倍晋三 “親米” 政権が “究極の放り投げ” で倒れた。 ・・・(中略)・・・ 。5兆円を税金で増収したのに、中川秀直自民党幹事長(当時)が、「この5兆円は、財政赤字を減らす方向に回す」、だからアメリカからミサイル防衛網を買うための資金には回さない。即ちアメリカには回さない、と決断したからなのである。(p.182)
 ちょっと古いところでは田中角栄さんであるし、直近の例が、先ごろ亡くなった中川昭一前財務・金融大臣なのだろう。
   《参照》   『ドル亡き後の世界』 副島隆彦 (祥伝社) 《後編》
             【中川昭一財務・金融大臣】

 

 

【アメリカの家なき人々】
 アメリカの住宅は、日本の固定資産の10倍の固定資産税(ハビタント・タックス)がかかる。(p.45)
 アメリカでは、土地や家の資産価値上昇時には、それを原資にして生活費までローンで借りて(リバース・モーゲッジという)、仕事をせずに生活することができたので、そういった人々が多量に存在していた。
 しかし、現在のように住宅の資産価値が値崩れすれば、住宅ローンが払えないどころか、毎月約8万円もする固定資産税などとうてい払えない。つまり多くの人々がテントやトレーラーハウスで生活するようになっているのである。
 アメリカ中を車で放浪している人たちの群れが現にある。それを日本国内ではなかなか報道しようとしない。NHKが一生懸命やったけれども、NHKもいまはアメリカの命令で報道統制を泣く泣くさせられているわけである。(p.244)
 ブッシュ大統領がMBLの始球式に出た時の様子をNHKが放映していたのを見たことがある。アメリカ国内ではインターネット情報で、「911テロが、アメリカの自作自演」だったことを知らない人々などいない。観客はブッシュに大ブーイングを浴びせていたのである。ところが、NHKの女性アナウンサーのナレーションは、「大統領の人気は今も盛大です」 とやったからチャンちゃんはひっくり返りそうになった。
 
<了>