恋愛迷子の小夜曲 後編

テーマ:

お待たせしました、後編ですよ。

前編の方でも書いてたようにこちらの話はフリーですので、よろしければお持ち帰りくださいね。

では、どうぞ。

 

 

 

恋愛迷子の小夜曲 後編

 

 

 

何も行動を起こせないまま、ただ走り去ってく背中を見送った蓮。

片手を前に出して固まるその男の金縛り状態を解いたのは、マネージャー社がかけてきたタイムリミットを告げる電話で。

通話を終えた彼は右掌の渡そうとした物を見ながらため息をついた後、それを握りしめゆっくり歩き出したのだった・・・。

 

「で、どうだったんだ?逢瀬は。」

 

まだ逃げられたショックが尾を引いてるというのに、助手席に乗り込むなりこんな質問を投げかけられた蓮は、ハンドルを握る社から顔を背け押し黙ってしまう。

まあそれがなくとも同様のことをしてたのではなかろうか。

何故ならば聞いてきた男はからかう気満々の、ニマニマ笑顔を浮かべているのだから。

出来るなら無視したいが、抵抗などするだけ無駄。

経験上嫌というほどそのことを理解してる彼は、渋々といった態度を隠しもせず口を開いた。

 

「逢瀬じゃないって言ってるでしょう。

あの子はあくまでもファンの1人なんですから。」

 

「ほぉ、ファンの1人か。見つける度、ていうか毎回必ず探し出してはわざわざ自分から会いに行くくせにね・・・ふ~ん。」

 

「それは・・・何度も言うようにあの子が面白い反応を返すからで・・・。」

 

「たったそれだけの相手に対して蓮君は、あ~んな蕩けそうな顔をするんだ。」

 

「何ですか、蕩けそうな顔って。変な思い込みから、そう見えてるだけじゃないんですか。」

 

「へー、周囲5m以内の人間が根こそぎ骨抜きにされそうな笑みを浮かべておいて、なのに俺の思い込みだとお前は言い張るわけね。」

 

「いや、言い張るも何も事実ですし・・・。」

 

ふと気付けば週末必ず行われるようになってた、男2人のやりとり。

いつもならこの辺で始めた社が引き会話は終了するのだが、本日はどんなに指摘しようと決して認めない相手にいい加減焦れたのか、更に突っ込んでくる。

 

「なあ、あの子・・・キョーコちゃんだったか、結構可愛いよな。

お前にとってはファンの1人でしかないんだったらさ、俺頑張ってみようかなぁ・・・・・・なんて嘘だよ、嘘。

ったく、人を射殺しそうな目で見やがって。」

 

身を竦め、口ではそう悪態つきながらも口角を上げ助手席をちら見した社は、視線を前に戻すと表情を改め言う。

 

「どうだ蓮、今ので少しは自覚出来たんじゃないか?

もし出来てないならよく考えてみるんだな。何故自分があの子を構い倒してきたかとか、さっき俺を刺すような目で見た理由を。」

 

公私共に頼りになる有能なマネージャーはこの言葉を最後に、後は話しかけたりせず運転に集中したのだった。

そんな日の翌日の日曜日。

どこか吹っ切れた面持ちの蓮は仕事が終わっての移動中、何かを見つけたらしく隣の社に耳打ちしそちらへ向かって歩き出す。

 

「昨日ぶり、キョーコちゃん。」

 

辿り着いた人気のない場所で足を止めるや否や、こう声を発した蓮。

その途端背を向けたまま昨日同様逃げだそうとした先客の少女を難なく捕まえた彼は、自身の拘束のせいで相手が身動きしづらいのをいいことに顔を寄せていく。

チュッ。

そして彼女の頬でリップ音をさせた後唇を離し、悪びれもせずこう囁いたのだった。

 

「これは昨日の石の代わり、君が元気になるようにってお呪いだよ。

あと絶対逃がさないという宣戦布告も込めてるから覚悟しといて・・・。」

 

現在幽体離脱直前状態のキョーコ曰く、乙女ゲーム世界のここ。

それが実はよく似てはいても全く異なる世界なのだと、そう少女が理解するのは今より大分先・・・宣言通り捕獲され左手薬指に光るモノを贈られた後のこと。

シナリオのない未来は希望に満ち溢れてる・・・。

 

 

 

おわり

 

 

 

web拍手 by FC2

AD