以前更新してから大分間があいていた続きを急いで書き上げたのでUPしますね。
とりあえずこの話はこれで終わりです。
考えていたものとは違う展開になってますが、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
それではどうぞ。



ブサ猫の王子様【後編】



「さてと・・・じゃあ私たちも移動しましょうか、黒猫ちゃん。
早くアナタの傷を手当しなきゃ。」

子供たちが逃げていく様をじっと見送っていた少女は振り返るなりそう言うと、自分を凝視しているクオンに向かって微笑みました。
ところがその可憐な笑顔がさらに彼を固まらせてしまいます。
そんなこととは露知らず、黒猫が見てるのは不審がっているからだと勘違いした彼女は、いきなりしゃがみ込むと自己紹介を始めたのでした。

「見ず知らずの人間に行こうと促されても、そう簡単に動くわけないわよね。
えっと、はじめまして・・・私はキョーコよ。
さっき石を投げてた悪ガキ3人組の一番偉そげにしてた子の姉で、怪我をさせたお詫びを兼ねてアナタの手当てをしたいんだけどダメかな?」

首を傾げながら覗き込まれたことによりまた固まりそうになった彼は、内心慌てながらもゆっくりと体を目の前の少女に擦り寄らせ一声鳴くと歩きだそうとしました。
しかしそれは止められてしまいます。
じゃあどうすればいいのかと思っていると“よいしょ”という掛け声と共にいきなり抱え上げられ、初めての体験に目を瞠っているうちに彼はそのまま彼女の家に連れて行かれたのでした。

それから後は驚きの連続です。
医者を呼んでくると言ったキョーコが連れてきたのが何とクオンの友人のヤシロだったり、本来人間の医者であるはずの彼が実は無類の動物好きでそちらの怪我や病気にも詳しいことが分かったのですから。
でもそんなことよりも、彼が一番気になったのは2人の親しげな雰囲気で・・・。
何だか釈然としないもやもや感を感じつつ、黒猫は自分の診察をしている男を睨むように見続けたのでした。

「・・・よし、どうやら打撲と擦り傷だけで骨に異常はなさそうだから安心していいよ。
それにしても・・・見れば見るほどふてぶてしい面構えの猫だね。」

治療が終わるなり笑顔でそう口にしたヤシロに、強い口調でキョーコは反論します。

「ヤシロさんたら、何てこと言うんですか!
こんなに可愛いコに向かって・・・ねえ、黒猫ちゃん?」

途中から慈愛に満ちた表情になり猫に向き直った彼女は、言い終わるや否や彼の鼻の頭に口づけました。
するとどうしたことでしょう。
ボワンという奇妙な音が鳴り響くと同時に、猫が人間に変わったではありませんか。

「ク、クオン王子?!お前どうしてここに・・・っていうか、あのブサイクな猫は何だったんだ?!」

わけが分からず動揺している友人のそんな問いかけには答えることなく、クオンは目を見開いたまま固まっているキョーコに微笑みながら言いました。

「ありがとう、お嬢さん。貴女がブサイクな黒猫姿の俺を心底可愛いと思ってキスしてくれたおかげで、呪いが解けて人間に戻ることが出来たよ。
ついては一生かけてこの恩に報いたいと思うので、俺の妃になってもらえないかな。」

この言葉に驚きさらに目を瞠った彼女は、思わず我を忘れ叫んでしまいます。

「き、妃?!それって、結婚しないとなれないものですよね?!
無理無理無理、絶対無理です!私は一生誰とも結婚する気はないですし大したことはしてませんので、お礼など気になさらないでください!」

「まあまあ、そんなことを言わずに。
別に結婚がダメなら俺の傍にいてくれるだけでもいいから。」

拒否されても受け付けずそう締め括った彼は嫌がる彼女を連れて城に戻っていき、後に1人残されたヤシロは思わず呟いてしまうのでした。

「クオンのやつ・・・何だかんだ言って、要はキョーコちゃんに惚れただけじゃないか。
・・・あの子、もう帰ってこれないな・・・可哀想に・・・。」


こうして意図せず王子の呪いを解いた心優しい少女は、不本意ながらも彼と結婚してまあまあ幸せに暮らしたといいます。



めでたしめでたし?



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