蓮様は女性を魅了するから悪魔でも十分いけると思い作ってみました。

ですがただのセクハラ悪魔で終わってしまったと思うのは私だけでしょうか・・・。

魅惑的な悪魔を書くはずだったのにおかしいな・・・。

背景の細かいことなど丸ムシの毎度お馴染みおバカな話ですがよろしければどうぞ。




契約の行方




夜も更けてきた頃、街外れの暗い夜道を一人の少女が歩いていた。

黙々と歩いていると誰もいないはずなのに声がかかる。


「お前旨そうな匂いをさせてるな・・・堪らねえ、俺に食わせろ!」


そう言いながら何処からともなく飛び出してきた異形のモノを、彼女は逃げることも驚くこともなくじっと見つめた。

その手が彼女に伸ばされあと少しで届くという時、異形のモノはその身を細々と切り裂かれ消えていく。

また元の静寂に戻ると彼女は一つため息をついた。


「・・・こういうことは私の目の届かない所でやってといつも言ってるのに・・・。」


「言葉を返すようだが、キョーコが夜出歩くからこんなことになってるとそろそろ自覚してもらいたいものだね。」


独り言のようにそう呟いていると何も無い所から現れた黒い塊がそれに答える。

それにちらっと視線をやってキョーコと呼ばれた少女は口を開いた。


「だってお料理の香辛料が足りないことに途中で気付いたんだもの・・・。

どうせ食べるなら美味しいモノを食べたいじゃない?」


「俺は食事することはないからよく分からない・・・。」


同意を求めるような問いかけに塊はそっけなく答え人型になっていく。

それは長身で艶やかな漆黒の髪に切れ長の瞳の、女性ならば一目で恋に落ち虜になるだろう魅惑的な姿だった。

だがそのことを意に介することなく彼女は続ける。


「もうこんなことがないよう気を付けるわ。」


「そう願いたいものだ・・・もっとも俺が護っている限りは指一本触れさせはしないが。」


「それもあと少しの間だけどね・・・。」


そこで言葉を切り彼女は物思いに耽った。



キョーコに流れる血が魔物にとっては極上のものらしいということに気付いたのは彼女の母親だった。

このままでは娘は殺されてしまう・・・そう思った母親は我が身と引き換えに悪魔を呼び出し護ってもらおうとしたのだが。

たまたま呼び出したモノが上位だったため代償が足りず、一生どころか僅か18年間の契約しか出来なかったのだ。

そしてその契約もあと少し・・・キョーコの18歳の誕生日を過ぎて幾日か後に終わってしまう。

後はどうやって自分の身を守るべきか・・・ここ最近の悩みにまで思い至り、彼女は思わず脱力しそうになる。

そんな彼女の思考などお見通しの悪魔 ― 蓮はにっこりと微笑んだ。


「思い悩まなくても契約の延長は出来るって話したはずだ・・・それも今回は一生で・・・。」


彼の言葉にキョーコは頬を朱に染め呻くように言う。


「・・・あんな代償払えるわけないじゃない。」


「そう?お互いにとって悪い話じゃないと思うが・・・君は一生安心して暮らせるし、俺は欲しいモノを手に入れることが出来るし・・・ね。」


にこやかに返され彼女は頬だけではなく顔全体を真っ赤に染め上げた。

涙目で睨みつけると彼はさらに言い募る。


「俺の望む時に体を差し出すだけなんだから・・・魔物に食われることを思えば簡単だろう?」


事も無げに言い放つのを最後まで聞くことなく早歩きになった少女の後姿を見つめ、蓮は彼女には見せたことのない企むような笑みを浮かべた。

(まずは体から・・・それから徐々に心も手に入れて俺なしではいられないようにしてあげるよ・・・。)

などと物騒なことを思いながら彼は初めて出来た愛しい存在を縛り付ける算段を黙々と練っていたのであった。


そんなとんでもない悪魔に見初められたキョーコの未来や契約がどうなったかについては、当事者が口を閉ざしているためお話出来ないのだが・・・。

ただ彼女が誕生日を半年過ぎても元気で過ごしていることは特記しておこう。




おわり




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