いつも楽しませていただいてた「メロキュン企画」がもうすぐ終わるということで、ラストくらいは参加せねばと急いで話を作りUPしました。
ですが作り終えて思ったのは・・・これのどこにメロキュンがあるのかでした。
自分的にはメロキュンしそうなシチュエーションを選んだつもりなのに何故・・・?
でも他に作ってたらとてもじゃないけど間に合わないし今は思い付かないので、一応これを卒論にさせていただきますね。
メロキュンがなくて、本当にすみません。



崖っぷち乙女と必死な紳士の幻想曲



「・・・好きです、敦賀さん。私と付き合ってください・・・。」

ラブミー部の用事で人気のない廊下を歩いていたキョーコは、突如聞こえてきた告白にピタリと足を止めてしまう。
そして壁に張り付くようにして、息を潜めそっとその声がした方を覗き見る。
するとそこには先程名前を呼ばれた先輩俳優と、よくTVで目にする可愛らしいアイドルの少女が向き合ってる姿があり・・・。
思い詰めた顔をしたその子が蓮に抱きつくまでを見たところで、彼女はその場を離れていったのだった。

それからキョーコは何事もなかったかのように用事を済ますと、屋上にやってきて階下の景色を眺めていた。
後はもう帰るだけだというのに支度もせず、大きな声で独り言を呟きながら・・・。

「それにしても、まさかあんな場面に遭遇するとは思いもしなかったというか何というか・・・。
いえ、そりゃあ敦賀さんはモテるからああいうのは日常茶飯事に決まってるわよ?!
“抱かれたい男”ランキングで毎年1位を取り続けてるんだもの。
おまけにそれだけじゃなくて、惚れさせる役なら演技で共演女優を虜にするような人だし・・・。
だから告白されてるのを見てショックを受ける方がおかしい・・・って、そうじゃないでしょ?!
どうして私がショックを受けなきゃならないわけ?!
違う違う、これはそんなのじゃなくて・・・そう、この気持ちは多分、親しくしていただいてる先輩が急に離れていったような気がして寂しく感じただけなのよ!」

後半を一気に叫んだことで息を切らした彼女は、呼吸が落ち着きだすとそれまでと違う小さな声でポツリと囁きを落とす。
何かを堪えているような表情で。

「あの子、可愛かったな・・・。
敦賀さんは何て返事するんだろう・・・。」

別にそれは返答を期待したものではなく、思わず零れ出ただけの独り言。
なのに・・・。

「それなら好きな人がいるので無理だと、きちんと断ったから安心していいよ。」

背後からそんな言葉が聞こえてきたため、キョーコは驚きで目を瞠り固まってしまう。
だがずっとそうしているわけにもいかないのでロボットのようにぎこちなく振り返ると、女性が蕩けそうな笑みを湛え間近に佇んでいる蓮が目に入り・・・。
再び固まった彼女は目を逸らすことも出来ず、今にも泣き出しそうな表情になった。
そんな様子から彼女の心情を正確に読み取った彼だったが、さらに追い込むような言葉を口にしていく。
すべては捕獲距離内に入ってきた、目の前の愛しい相手を捕まえるためだけに・・・。

「あの時君の姿が見えた気がして、弁明しようと探したのは正解だったな。
だってそのおかげで、本音が混ざった貴重な君の独り言を聞けたんだからね。
ねえ、最上さん・・・答えて?
さっきの場面で君がショックを受けたのって、俺を好きだからじゃないかと思ったんだけど違う?
予め先に言っておくけど、“親しい先輩が離れていくのが寂しい”という無理やりこじつけたような言い訳は信じないよ。」

自分の独り言をちゃんと聞かれていたことと彼の逃げ場を失くす言葉に、ますます狼狽えた彼女は否定しようと口を開きかける。
だが結局は声にならないまま時間ばかりが過ぎていき、焦っているうちに笑みを深くした蓮に抱きしめられた。

「はい、時間切れ。前にも言ったように否定しないのは肯定と同じこと、というわけで俺が感じた通りなんだと解釈させてもらうね。
おっと、今更否定なんてさせてあげないよ・・・その時間は十分あったのに何も言わなかったのは君なんだから。
よって、この事態は君自身が招いたことだ。
・・・まあ何にせよ、これでやっと散々恋焦がれてきた君を手に入れられる・・・。」

「そ、そんな、違うんです!
私はそんな気持ちじゃなく・・・・・・って、あの~、今何か仰いましたか?」

「うん、言ったよ。俺がずっと好きだった女性は最上さんだって。
というか過去形ではなく今も、俺は君に恋し続けてるし。」

突如抱きしめられた上予想外のことを立て続けに聞き混乱を極めたキョーコだったが、ふと目の前の彼の顔が何時ぞやみたいなうっすらと頬を染めた乙女顔であることに気付いて。
天下の敦賀蓮にそんな表情をさせているのはどうやら自分らしいと分かった彼女は、面映げな微笑を浮かべると隠そうとしていた自分の気持ちを自然に受け入れそっと彼の背中に手を回したのだった。
心中でもう一度バカ女になる決意を固めつつ・・・。

その後想いが実ったことで頭に花を咲かせ浮かれている2人を、周囲の人たちは時折うんざりしたような顔をしながらも概ね笑顔で見守ったという・・・。



おわり



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