何だか最初の出だしが手紙で始まる話を書いてみたくて作りました。

手紙を書くことがないのでおかしい所が山ほどあるとは思いますが、そのへんは突っ込まないでやってください。

一応ほのぼの路線を目指したので、そう感じていただければ嬉しいです。

それではどうぞ。




告白




拝啓


誰にも見せることのない手紙をずっと持ち歩いているなんて、きっと貴方は笑われることでしょう。

しかもそれがラブミー部に所属している私なのですから、尚更のことです。


貴方と最初に出会った頃は最悪の印象しかなかったのに、いつしかそれも変わっていきました。

嫌いから尊敬に・・・そして、別のものへと。


その気持ちに気付いた時は、戸惑い・・・絶望しました。

もう二度と持つまいと誓い箱の中に入れて厳重に鍵をかけていたはずなのに、いつの間にか蓋が開き戻ってきていたのですから。


今でもその思いに変わりはありません。


ですが思いとはうらはらに、気持ちはどんどん膨らんでいくばかりです。

貴方の姿を見れば嬉しくて、会えない日には無性に声が聞きたくなって・・・。

食事の支度を頼まれるたびに、私の心は舞い上がっていました。


以前経験したことがあるはずのこの気持ち。

なのにそれよりも遥かにつらく苦しい気持ちになっているのは、決して届くはずの無い高嶺の花に恋をした罰なのでしょうか。

それなら甘んじて受けるしかありません。

貴方はこの業界の頂点に君臨していて、私はその足元にも及ばない所にいるのですから・・・。


・・・ここまで長々と書いてしまいましたが、そろそろこの気持ちに終止符を打とうと思います。

貴方を想い始めてから伸ばした、今は背中までになった髪を切ることによって。

普通は失恋してから切るものですが、私は気持ちを断つために切ります。

そして今後は後輩として接していこうと思っています。


ただその前に一度だけ、気持ちを言葉にしてみてもいいですか。


貴方のことが好きでした・・・これが私の最後の恋です。


                                                敬具



「こんな手紙いつまでも持ってるなんて、本当に未練たらしいわよね・・・早く髪を切って処分してしまおう。」


そんなことを言いながらバッグにしまおうとしていると、いきなりの突風がキョーコの手元から封筒に入れられていないむき出しの手紙を奪い去る。

一瞬の出来事に反応できないでいるキョーコ。

風はそんなことはお構い無しに運んでいき、その手紙を受け取るべき人の足元へと落としていった。

ようやく我に返ったキョーコだが、時すでに遅し。

手紙はしっかりと読まれていて、彼女に気付いた彼は蕩けるような笑顔を浮かべた。

そしてオロオロと真っ青な顔をした彼女が逃げないように、目線を合わせたまま足早に歩み寄っていく。


風がやったこと・・・それはイタズラではなくて恋のキューピッド役だったようだ。

それをキョーコが知るのは、もう少し後のことだった・・・。




おわり




web拍手 by FC2