本日はメロキュン企画第2弾がUPされてますね。
私も末席に在籍させていただいてるので参加出来ないかと考えてたんですが、間に合わなかった上に趣旨から大きく外れた話が出来上がってしまいました。
まあせっかく作ったのでUPしちゃいますけど・・・。
これは本誌のネタバレを含んでますので、そんなの知りたくないという方はご注意くださいね。





天然記念物的乙女の葛藤



「今日も出てこない・・・。」

キョーコはそう呟くと浴室の方に視線を向けたまま深いため息をついていた。

彼女がヒール兄妹として蓮と暮らし始めてまだ一月にも満たない。
なのにその生活のおかげで並大抵のことでは動じなくなっていた。
そうなった理由としては何事にも慌てることのない雪花を演じているせいもあるが、兄であるカインを演じる蓮の奇行に慣らされてしまったというのが大半を占めている。
ホテルの中、移動時、撮影所内・・・。
至る所での彼の言動はさることながら、入浴時にもそれは遺憾なく発揮されていた。

以前あまりにも入浴時間が長すぎるため心配したキョーコが浴室を開けてみると、なんとそこには全身を泡だらけにして尚且つ泡と戯れている彼がいて驚いたものだ。
ある種異様なその光景に目を点にしながらも根性で雪花を憑かせその場をやり過ごした彼女は、以来時間が長い時は声をかけることなく浴室を覗くようになって今に至る。

そんな訳で今日も予告なく扉を開いたら、いつもとは違い脱衣所で蓮と遭遇してしまう。
出てきたばかりのため全裸という姿の彼と。
上半身だけとはいえバッチリ見てしまったキョーコは、表面上は何事もないかのように装いながら内心では叫んでいた。

(いやぁぁぁぁぁ~~~っっ!!私ったら何てことを・・・これじゃあ敦賀さんの体見たさに故意に覗いたみたいじゃない!!
そりゃ見たいか見たくないかって聞かれたら見たいに決まってるわよ?!
いつもは泡に隠れてよく見えないから想像するしかなかったんだもの。あの胸板とか現物の方が逞しいし・・・ってそんなこと思ってる場合じゃないんだってば!
このままジロジロ見てたら不審に思われちゃうから視線を逸らさなくちゃ。
かといって水も滴り色気全開の彼の顔を見る勇気はないし・・・ということは下を向くしかないわね。)

そう結論付けた彼女は焦りのせいか重要なことに気付いていない。
蓮と向かい合ったまま俯くというのは・・・彼の下半身をモロに見てしまう行為だということに・・・。
そのことにようやく思い至った頃にはある一点で視線が止まっていた。

(な、何あれ?敦賀さんの体に変なものがついてる・・・もしやあれが以前聞いた、男の人には必ずついてるっていう物体なの?
うわ・・・初めて見たけどグロテスクすぎて敦賀さんに不似合いかも・・・って観察してどうするのよ私!
そうじゃなくて・・・今の状況ってヤバイわよね。もしかしなくても本当に覗きと思われても無理ないような・・・。
だってこれだけ見ておいてワザとじゃないんですなんて言い訳通用する?
・・・あぁ~~~、私ったら右でも左でも後ろでも色々選択肢はあったのにどうしてよりにもよって下を向いちゃったのよ!
よく考えたらこうなることが分かったはずなのに~~!!!)

などと視線を固定したまま内心葛藤を繰り広げているキョーコの向かいでは、今さら凝視されてる部位を隠すことも出来ず無表情で立ち尽くす蓮の姿がある。
そんな両者揃って固まっている中、真っ先に重苦しい沈黙を破り言葉を発したのは蓮だった。

「どうかしたのか?そんなにじっと見て・・・。
お前はいつも乱入してくるから俺の裸なんて見慣れてるだろうに・・・。」

動揺を微塵も見せないカインとしての表情と口ぶりに、彼女も我に返りどうにか雪花を貼り付かせ答える。

「まあそうなんだけど、いつ見ても兄さんの体は綺麗だからつい見入っちゃうのよ。
別に構わないでしょ?
・・・そういえばご飯作りかけだったから戻るわ。」

そう言い普段とほとんど変わらぬ様子で立ち去る彼女を見送った彼は、ドアが閉まった途端詰めていた息を全部吐き出すかのように深いため息をつきその場にしゃがみ込む。

「・・・裸を見て恥らうどころか凝視するなんてあり得ないだろ・・・。
つまりこれは全く意識されていない・・・範疇外ってことだよな・・・。」

壁1枚隔てた向こうではキョーコが全身真っ赤にして悶え転がっていることも知らず、項垂れた蓮は自分が呟いた言葉にさらに凹んでしまうのであった。
そんな2人が落ち着きを取り戻し顔を合わせることが出来るようになったのは1時間は経過した後だったという・・・。



おわり



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