またまた更新に間があいてしまいました・・・。
その間何をしていたのかというと、風邪を治すようにゆっくりしながらこの話を書いてました。
結局まだ風邪は治ってませんし、明日はキョーコちゃんの誕生日なのにこんな話をUPすることになってしまいすみません~。
でも何も更新しないよりはマシかと思ったので・・・。
2人はお付き合い中の設定になってます。
それではどうぞ。



Je te veux



他には誰もいない静まり返ったラブミー部の部屋で、キョーコは呆然とどこか遠くを見ているような瞳をして座っていた。
その顔色は少し青白い。
一体どのくらいそうしていたのか・・・ようやく身動きした彼女は途方に暮れた感じで一言呟いた。

「・・・どうしよう・・・。」

そして片手に握り締めている携帯を開いてある番号を表示させると泣き出しそうな表情になり閉じる。
先程からずっとそんな事の繰り返しで時間ばかりが過ぎ去っていく。
でも答えが出ないようでまた固まっているとドアをノックする音が響き彼女はビクリと身を震わせたが・・・。
入ってきた人物を見た瞬間いつものような笑顔で出迎えた。

「敦賀さんお疲れ様です。
今の時間はまだお仕事中のはずなのにココに来られてるということは、もしかして予定が変わったんですか?」

通常ならば見破るのが困難であろうその自然体の演技を見て、蓮は一瞬眉を寄せると顔に紳士笑顔を貼り付ける。

「やあお疲れ様。
確かに本来なら仕事だったんだが急遽予定変更してこの後はオフにしてもらったんだ。
どうしても君を連れて行かないといけない場所が出来たからね・・・。」

「えっ・・・私を・・・?」

「ああ・・・これから一緒に社長が懇意にしてる病院に行ってもらうよ・・・。」

仕事に対しては厳しい彼が予定を変えてまで自分を連れて行かなければいけない場所について考えていると、さらりとその答えを教えられ彼女は目を見開き固まってしまう。
だがどうにか持ち直すとまた笑顔になり口を開いた。

「敦賀さん、何を仰ってるんですか?
私は別にどこも悪くなんかないですから病院に行く必要はないんですけど。」

「・・・惚ける演技も上手くなったようだが、でもまだまだだね。
本当にゴマかしたいなら間を空けたり固まったりしてはダメだよ。」

「ゴマかすって・・・ですから私は何も・・・。」

「俺が君の体調の変化や演技を見抜けない奴だと本気で思ってる?
もしそうなら心外だな・・・そんなのは演技に携わる者としても恋人としても失格ということじゃないか・・・。」

こう言われ否定することも出来なくなり口を噤んでしまったキョーコに、蓮はため息をつきながら歩み寄りそっとその体を抱き寄せて囁く。

「・・・君から相談してほしくて待ってたんだが、もう待てそうもないから時間切れ・・・一緒に産婦人科に行こう・・・。」

「・・・いえ・・・お気持ちは嬉しいのですが私1人で行ってきます。
検査薬で調べたのが本当なら・・・敦賀さんに迷惑がかかってしまいますから・・・。」

強張った表情のまま答えた彼女を見て彼はますます眉根を寄せる。

「この期に及んでまだそんなことを言うの?
・・・ねえキョーコ・・・そんなことをされると君との距離を感じて俺は寂しくて仕方がないんだよ。
君以上に大切なモノなんて俺にはないのに・・・。
俺のことを想ってくれるのなら1人で何もかも抱え込もうとしないで頼ってくれないか・・・これからは君の不安も悩みも全部2人で一緒に抱えさせてほしいんだ・・・。」

「そんな・・・プロポーズみたいな言葉を言うのはやめてください。
私だって貴方のことが何よりも大事ですけど重石にはなりたくないんです・・・。」

言われた言葉に彼女が目を潤ませながらそう返し見上げると、和やかに表情を緩めた蓮の視線とぶつかった。
彼は少しだけ腕の力を強めて続ける。

「みたいじゃなくてそのつもりなんだけどな。
・・・一応誤解のないように言っておくが今回の“せい”で言い出したんじゃないよ。
ずっといつ言おうかとタイミングを計ってたから、今回のことがいい“きっかけ”になったのは事実だけど・・・。
そういうワケで・・・最上キョーコさん、俺と結婚してください。
君もお腹の子も重石なんかじゃないし絶対に幸せにすると誓うから・・・だからそろそろ観念して俺に捕まってくれないか?」

それを聞きキョーコは決壊寸前まで目を潤ませつつ、つっかえながらも挑むように答えた。

「なっ、何なんですか・・・人を逃亡犯みたいな言い方して・・・言っときますけど私はしつこいですから誓いを破ったら地の果てまでも追いかけて復讐しますよ?
それでもいいんですか?!」

「それは願ったり叶ったりだな・・・もっとも一生そんなことにはならない自信があるけどね・・・。」

蓮は承諾の返事にそう呟き嬉しげに本格的に泣き出してしまったキョーコをあやし始める。
落ち着くようにと抱きしめたまま背中を撫でていた彼はこれからの未来を思い描いて破顔すると、まずはその幸せへの第一歩である病院へと彼女を連れて行くのだった・・・。



おわり



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