またまたじゃじゃ馬の続きじゃなく別の話をUPしました。
続きも一応取り掛かってはいるんですが、何か思いつくとそっちについかかりっきりになってしまいまして・・・。
2つのことを同時進行出来るほど器用じゃなくてすみません。
そして・・・またおバカな話で本当にすみません~。



○○の達人



「世の中には色々な達人がいるものなのね~。」

誰にいうともなくそんなことを呟きながら歩いているキョーコ。
担当俳優と離れて用事を済ませていた社がその姿を見つけ笑顔で声をかけた。

「やあキョーコちゃん久しぶり~。」

「あっ、社さんお久しぶりです。
今日は敦賀さんとご一緒ではなくお1人なんですね。」

「うん、呼ばれたから俺だけ先に事務所に来て話を聞いてたんだ。
もう少ししたら蓮も仕事を済ませてここに来るよ。
ところで達人って何のこと?」

「独り言が聞こえちゃいましたか・・・それがついさっきまで見てたテレビの特番に何枚も積み重ねた瓦を拳で割ったり、抜刀して竹をバッサリ切ったりする凄い達人が出てたんですよ。
だから感心してたんです・・・私にはそんな凄い特技なんてないなと思いながら。」

「ええっ、そんなことないよ!
だってキョーコちゃんの料理はプロ顔負けだし、人形作りもすごいじゃないか!
それに怖い役を演じたらピカ一だしね。」

「お料理とかはまあ、ある程度は作れますけどそれだけですよ?
とてもじゃありませんがプロの域には達しません。
人形にしてもあんな出来じゃまだまだ納得いきませんしね。
あと演技を褒められること自体は嬉しいのですが、それが怖い役だと手放しで喜べそうにないんですけど・・・。」

困ったように微笑みながら言われ、社は唸りながら尚も言う。

「俺は十分すごいと思うんだけどな~。
まあ達人なんて滅多にいないものだからこそ貴重なんだろうけどね。」

「そういうことですね・・・あっ、でも社さんは“機械クラッシャーの達人”になるんじゃないですか?!」

「うーん・・・そう言われてみると確かにそうかも。
俺と同じような体質のヤツってあまりというかほとんどいないみたいだから必然的にそうなるかな・・・。」

「そんな風に考えてみると・・・敦賀さんに至っては“タラシの達人”がピッタリですねっ!
あの夜の帝王のような雰囲気で迫ったら堕ちない女性はいないことからしても・・・。」

「いやあのねキョーコちゃん・・・言ってることは的を射ていると思うけど、それはアイツが気の毒というか何というか・・・。」

「堕ちない女性がいないと言うならその中にはもちろん君も含まれているんだよね?」

彼女のあまりの台詞に社がフォローしかけた時に別の声が割り込む。
それは先程までこの場にいなかった蓮のもので、彼から微妙に怒りの波動を感じたキョーコは顔面を蒼白にし涙目になってしまう。
一方の蓮はというと表面上はにこやかなままだ。

「つ、敦賀さんいつからそこに・・・じゃなくて今のは言葉の綾と言いますかその・・・決して他意はなくてですね・・・。」

「それにしても嬉しいな・・・君が恋人になってくれたら一生放さないで大事にするよ。
じゃあ早速迫らせてもらうとするか・・・。」

言い訳には耳を貸さず宣言した通り瞬時に妖艶な雰囲気を醸し出し追い詰めていく男と、後退りながらも米搗きバッタさながらに頭を下げて必死に許しを請う少女。
何とも言いようのないその光景に、少し離れた所で見ている社は思わず呟く。

「俺が“機械クラッシャーの達人”で蓮が“タラシの達人”なら、キョーコちゃんは“蓮の素顔を暴く達人”だな。
あそこまで見事にアイツが被ってる敦賀蓮の仮面を剥ぎ取れるのってあの子くらいしかいないよ・・・。」

そんな言葉とともにため息を吐き出した彼は、この後確実に凹むであろう担当俳優をどうやって浮上させたらいいかと頭を悩ますのであった。



おわり



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