対となる話、何とか書き上げることが出来たのでUPしました。
ただこれってどう考えても、昨日のより重くてダラダラ長くなっちゃってるんですよね・・・まあ纏める文才がないので仕方ないのですけど。
そんなものではありますが、こちらを読まれたら「R」で疑問に思われたことが解決すると思いますので、よろしければどうぞ。



水中花 ~K~



白が基調の病室に響くノックの音。
その音の発生源である人物を見て、上半身を起こしていたキョーコは微笑んで頭を下げる。

「来てくださってありがとうございます、社さん。
本来であれば用事がある方が出向くのが筋だというのに、こちらの事情で呼び付けてしまい本当にすみませんでした。」

「や、やだな~そんな改まったりして・・・俺としては呼ばれたおかげでキョーコちゃんの顔が見れて、喜んでるんだから気にしないで。
うん、本当に・・・元気そうで安心したよ・・・。」

礼を受け慌ててそう返した社は、安堵したように少しだけ目を細めた。
そんな彼に彼女は笑みを浮かべたまま、用件を告げていく。

「忙しくされてる社さんのお時間をあまり頂戴しては悪いですから、早速ですが本題に入らせていただきますね。
こんなことお願いするのは大変申し訳ないのですが、社さんには明日敦賀さんと約束されてる時間よりも前に、あの人をマンションまで迎えに行っていただきたいのです。」

「・・・へ?俺が蓮を迎えにって、何で?」

「それは、万が一にも敦賀さんが仕事を放り出したりしないよう見張っていただくために・・・。」

予想外の頼みをされ唖然と問いかけた社だったが、返ってきた言葉に反応し即座に否定する。

「えっ、いや、そりゃないって。わざわざ見張らなくても、あの蓮はそんなことしやしない・・・それはキョーコちゃんもよく知ってるだろ?
ましてや明日はアイツにとって大事な・・・。」

「ハリウッド進出がかかってる日・・・でしたよね。」

まるで彼の言葉尻に被せるように発せられたのは、知られてないはずの極秘情報。
当然のように上層部の人間しか知らないことをさらりと告げられ、驚きのあまり黙った彼を更なる衝撃が襲う。

「でも、用心された方がいいと思うんですよ。
だって敦賀さんは仕事の鬼ですけど、責任感も強い人なんですから・・・なので私に・・・責任をとらなきゃいけないと思ってる相手に明日傍にいるよう頼まれて、迷わないはずがありませんもの。」

先程までと同じく穏やかな口調で続けられた話なのだが、その内容はとんでもないものである。
この少女は一体何がしたいのかと困惑していた社は、ふと頭に過ぎった考えをそのまま声にして投げかけた。

「キョーコちゃん、君は・・・蓮を恨んでいるの?
足が不自由になったのはアイツのせいだと思って・・・だから、仕事を奪う気はないがアイツを追いつめたくてこんなことを・・・。」

するとキョーコはやはり笑顔を顔に貼り付けたまま首を振り、秘めておくよう約束させてから自身の真意を明かした。

「いいえ。この怪我は誰のせいでもありませんので、私は敦賀さんを恨んでも、責任を感じてほしいとも思ってませんよ。
なのに・・・どんなにそう言ってもあの人には伝わらないから・・・それどころか、言えば言うほど囚われてるようだから行動を起こすんです。
・・・たかが後輩に感じるべきではない、責任という呪縛から解放してあげるために・・・。
私は明日社長さんが紹介してくださった病院に移りますので、原因さえいなくなれば敦賀さんも目が覚めることでしょう。
後はお任せする形になってしまいますが、どうかよろしくお願いします・・・。」

「ちょっと待って、キョーコちゃん。呪縛とか目が覚めるって、何?
蓮は相手が君だからこそあんなに苦しんでるのに・・・キョーコちゃんが特別で・・・君のことが本当に好・・・。」

あまりの言い草に思わず代わりに気持ちを吐露しかけた社だったが、視線の先にある強い瞳に制止され口を噤む。
その様を見て再びふわりと微笑んだ少女は、穏やかに、でも揺るぎない意思を感じさせながら言う。

「ダメですよ、それ以上口にされては・・・それは敦賀さんご本人に直接お聞きしたいのですから。
いつかこの足が再び動くようになって復帰した際、あの人がまだ心変わりされてなければその時に・・・。」

この言葉を最後にキョーコは何を言われても笑顔で躱すだけとなり、説得を諦めた社が頼み事を了承し去ってからようやく笑みを消した彼女は、ここに残していくつもりの蓮から贈られた水中花を見つめ1人静かに涙を流すのだった。

コップの中という狭い場所にいながら、美しく咲いた水中花。
アナタはあの人を見守り続けていて・・・。



おわり



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