売掛債権ファイナンスの現状
企業与信による銀行融資が中小企業にとって難しい状況になってから長い時間が経ちます。
企業与信による融資を言い換えれば無担保融資のことで、数年前まで機能していたビジネスローンと称する銀行のプロパー融資もこの中の一つです。
信用保証協会付き融資や政府系金融機関の融資のような無担保の長期間の融資も、あるいは1年以内の短期資金もこの範疇に入ります。
要は企業の信用で、無担保で行われる融資のことです。
以前なら、入金予定が販売先の都合で延びて、その仕入資金の支払期日よりも先になったようなケースでは、既存取引の銀行は、その企業の信用に特に問題がなければ、普通に融資を無担保で行っていました。
あるいは、すでに担保として抵当権を付けている物件に追加で抵当権を付ける場合もあるでしょうが、特に評価がいっぱいでも、企業に信用力があれば、問題なく融資を行っていました。
ところが、90年代のバブル崩壊以降、経済政策の大変な誤りによって、デフレが続き国内景気が低迷し続ける状況が続くとともに、銀行は融資の不良債権化を恐れて、信用保証協会の保証のない融資は、優良な一部企業を除いて、行なわないような姿勢へと変わりました。
その結果、先ほど書いたような、返済原資が明確な短期融資でさえ、信用保証協会の枠がいっぱいであることを理由に謝絶するようになったのです。
これはリーマンショックまでの一時的な第二次不動産バブルの時でも、不動産融資は別にして、無担保融資については同じように難しかった経験をされた中小企業の経営者は多いのではないでしょうか。
このようような状況があったため、中小企業の資金調達の有力な方策として出てきたのが、売掛債権を利用した資金調達です。
そして、現時点において、この売掛債権を利用した資金調達には二つの方法があります。
まず一つ目はファクタリング。
資金調達を希望する企業が所有する売掛債権を金融機関に譲渡して、その対価を得ることで資金調達をする方法です。
ただ、勝手に売掛債権を金融機関に売却することはできず、売掛先、つまり販売先に売掛金を金融機関に譲渡することを承諾してもらう必要があるのです。
つまり、販売先に売掛債権譲渡承諾書に記名捺印してもらわねばなりません。
しかも、捺印は実印であることが条件で、印鑑証明書添付も条件になります。
このような手続きが問題なくできれば、販売先の信用力に問題がなければ、非常にシンプルに資金調達が可能になります。
調達コストはそれほど高くなく、高いコストの貸金業者でも、手数料は売掛債権買取額の1~2%台後半になります。
ところが、まだ日本ではこのような習慣がないことから、現実的には、利用されにくい状況になっています。
特に販売先が大手企業の場合は、このようなことを通知した瞬間、経営不安を与え取引自体できなくなる懸念を中小企業の経営者は感じることから利用しにくいのです。
さらに言えば、大手との売買契約書には譲渡禁止条項がたいていの場合入っていて、後で説明します、売掛債権担保融資もできない状況が現実的に存在しています。
この問題は、大企業の優先的地位の乱用で、中小企業の資金調達を阻害しているのではないかと言う議論が、法制審議会民法(債権関係)部会において出ており、民法(債権関係)の改正に関する検討がなされています。
とは言え、いくらこの改正ができたとしても、果たして現実的に円滑な資金調達につながるのかどうかは、企業間の別問題である可能性も高く、今後の展開が注目されるところです。
確かに大手企業にとって、債権が反社会勢力に譲渡されるような懸念は理解できますが、譲渡先がまともな金融機関やファナンス会社であれば、普通に問題なくできるような時代が来ることが望ましいと思います。
ただ、建設業界だけは、元請けの建設会社は孫請けまでの人件費支払い義務が存在することで、ファクタリングを容認すると、二重払いの懸念が存在し、建設業法の改正も同時に行われなければ、民法改正で、譲渡禁止条項(特約)の問題が解決しても、実質的な効果はないと思います。
そして、もう一つの方法として、販売先に通知しなくても資金調達ができる方法があります。
それが、譲渡登記、それも商業登記簿謄本ではなく、登記事項概要ファイルに登記するのみで、販売先に通知しなくても資金調達が可能になる売掛債権担保融資(ABL)です。
ただ、保全上の問題でこの融資が可能になるためにいくつかの条件が存在します。
それはおおむね次のような内容をクリアしなければなりません。
売買契約書上、譲渡禁止条項が存在しない継続的取引先が最低でも10社以上あること。
そして、年商が概ね5億円以上の会社であることが必要です。
継続的取引とは、だいたい1年以上の取引があって、直近3か月の中の2か月において、入金ベースの取引実態が銀行口座上で認められる取引を指します。
要は、毎月入金がある、契約書の中に譲渡禁止条項があるような大手企業以外で、継続的な取引先が数多くある企業で、年商が5億円程度以上ある企業なら利用できる可能性があるのです。
ただ気を付けなければいけないのは具体的な名称は書けないので書きませんが、この融資を行う金融会社は2社あります。
もっと細かく言えば、1社の中にも2つのセクションがあり、この中の一つのセクションは非常にアグレッシブかつ柔軟な対応をしていますが、同じ会社の中のもう一つのセクションは非常に使いづらい状況になっています。
また、別の会社1社はやらないわけではありませんが、非常に積極的かと言えばそうではなく、かつ柔軟性があるとは言えません。
いずれにしても、大手数社に対して大きな額の売掛金があっても、その売掛金を根拠として資金調達するのはけっこう難しいのです。
そしてこのような状況下、画期的 仕入資金立替サービススタート でもお伝えしたサービスができたのです。
これも、スキーム自体は売掛債権担保融資の考え方の延長線上にあります。
要は、一定以上の与信のある継続取引先が数多く存在する場合は、確定した売掛債権でなくても、発注書を受けた段階で、仕入資金を融資しようと言うスキームです。
残念ながら一度完成したのですが、この商品を取り扱うノンバンクの保全上の問題が新たに発生して、現在は一旦中止されています。
サービスが開始したらまたお伝えいたします。
そして、このスキームのオプションになりますが、上記のファクタリングや売掛債権担保融資ではできなかった、譲渡禁止条項が売買契約書上にない与信が高い販売先が10社もない、1社とか2社で、販売先にも通知不要でできる方法を、画期的 仕入資金立替サービススタート のノンバンクが開発中なのです。
この方法もできれば、このブログ上で案内いたします。
以上のように、現時点では、売掛金を根拠としてファイナンスは現実的には上述の2つの方法しかありません。
①ファクタリング
②売掛債権担保融資
実際、売掛金を根拠として資金調達ができないかという相談を数多く受けています。
でも、現時点ではこの二つしか資金調達が可能になる方法がありません。
ですから、先ほども書いた売掛債権譲渡承諾も不要で、10社以上の継続取引先がなくても信用力がある販売先なら融資が可能になる売掛債権担保融資の開発が待たれます。
そう遠くない時期にご案内できると思いますので、今しばらくお待ち願いたいと思います。
売掛金をめぐる調達のご相談は bhycom@gmail.com まで。
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