『スサノオと菊理媛を巡る旅』。
1話目. 新たなる旅の始まり
2話目. 謎多き女神ククリヒメ？
3話目. たった二行の女神
4話目. 伝説の神の別れ
5話目. 閲覧注意！
6話目. 黄泉の国の魔物
7話目. 黄泉守人の出現
8話目. 荒川祐二、穢れる
9話目. 瀬織津姫の登場
10話目. 菊理媛の風
11話目. 生と死を司る女神とは
12話目. 白き山の女神
13話目. 伝説の男、再び
14話目. 八百万の神々と共に
15話目. ニギハヤヒが語る闇
16話目. 天武天皇に会う
17話目. ミッチーの登場
18話目. 伝説を作った男
19話目. 天武伝説
20話目. 血の穢れの始まり
21話目. 血の穢れの答えを求めて…
22話目. 勇者 泰澄の誕生
23話目. 次、生まれ変わるなら…
24話目. 白山に来たれ
泰澄「…いつかあの、
白く美しき山の頂に…登り…、
神々に会い、
神々と語らいたい…」
憧れを抱いた、
『神々が棲む山』、
白山。
その全貌が視界いっぱいに、
広がった光景と同時に、
僕は役行者の呪術から、
目を覚ました。
様々に移り変わる鮮烈な光景の数々に、
まだ頭がボーっとする中、
しかし白く美しく、
輝く白山の光景だけは、
ハッキリと脳裏に焼き付いていた。
あ「…ありがとう…ございます…。
よく…わかりました…。
『血の穢れ』、
その言葉の意味も…。
それをせざるを得なかった、
天武天皇の気持ちも…。
しかしそれによって、
逃れることの出来ない、
世の不条理も…。
そしてそれに必死に立ち向かおうとした、
勇者 泰澄の願いと思いも…」
それをどう考え、
どう選択し、判断していくかは、
お主に委ねられておる…。
ただお主がどんな選択をし、
どこに向かおうとも、
我々神や仏は、
その行動をしっかりと、
見守っておる…。
いつまでも八百万の神々、
いや…すべての神仏たちの愛を、
忘れないでいてほしい…」
…そう言うと役行者は、
ゆっくりと、
姿を消していった。
『期待しておるぞ』の、
言葉だった。
…。
……。
………。
…………。
…そうして、
様々な思いを胸に、
家路についた僕を、
待っていたのは…。
ス「おい！おい！！
ハゲ頭っ！！おいっ！！」
あ「…はぁ、
何ですか…？」
ス「ばぁっ！！」
ス「幽霊の物まね～！！」
ス「ばぁっ！！」
ス「ばっ…」
あ「ドアホ！」
ス「ビクゥッ！？」
あ「一体何をしてんねん、
あんたは。
こっちがセンチな気持ちに、
なってる時に…」
ス「やかましいっ！！
何がセンチじゃっ！！
お前の顔がセンチじゃ！！
ええか、そもそもやな！
このスサノオシリーズの、
主神公は誰、誰、誰や！？
言うてみぃっ！？」
あ「………。
…オオクニヌ…」
ス「俺、俺、俺じゃ！
ドアホッ！！」
もう…なんですの…」
ス「あー！お前！！
そういうこと言っていいんやな！？
ええこと教えてやろうと思ったのにー！！
にー！！」
あ「（本当にやかましい…）
…何ですか、良いことって？」
ス「『これ』や」
さっきおふざけで使ってた、
幽霊とかがよく頭につけている布？
これがどうしたんですか？」
ス「おふざけちゃうわ。
お前これが何か知ってんのか？
そもそもこれの名前を言うてみぃ」
あ「…え…。
全然知らない…」
ス「せやろがぃっ！！
この布の名前は、
『天冠（てんかん）』と、
言うてやな。
これは元々は幽霊の頭に、
付いていたものではなく、
亡くなった方の額に、
付けていたものや」
あ「そ、そうなんですか…。
豆知識ありがとうございます…」
ス「豆知識どころの話ちゃうわ。
もっと大切なこと、
教えたろ思てんのにやな」
あ「もっと大切なこと…？
なんですか…？」
ス「『天冠』。
この言葉に何か、
聞き覚えはないか？」
あ「？」
しばくぞ」
あ「（笑）」
ス「『天冠』＝『転換』や。
要は、命の転換、
『生まれ変わり』や」
あ「うぉっ！？マジかっ！？！？
まだ生きている人が、
亡くなった方の生まれ変わりを願って、
額につけて、
送り出したってこと？」
ス「そうや。
もっと言うなら、
この白い三角の形に、
何か見覚えないか？」
………？
あ…。
まさか…！！」
ス「そうや。
白き山、
『白山』や」
何を意味しているか、
今のお前なら、
もうわかるやろう」
あ「………」
ス「古来山は、
魂の終着点と言われていて、
亡くなった魂は、
天上界へと続く山を昇り、
頂から天へと、
昇っていったとされている」
最も白く、美しき山、
『白山』。
次生まれ変わるなら、
魂としてでも、
あの白山を昇り、
白く、美しく、
清らかに生まれ変わりたい。
そう願った人々の願いの行き先、
『白山』を開山したのが…」
あ「…泰澄…」
泰澄はその山頂で、
ある女神に出会った…。
その女神の名が…」
あ「…菊理媛」
ス「そういうことや。
そうして泰澄が開いた、
その美しき白き、
『生まれ変わりの山』、
白山を神聖視し、
白山に登らずとも、
ご利益に授かるために、
また時に白山に願いを届けるために、
全国各地に作られた神社、
それが『白山神社』」
『菊理媛』。
もうここまで言ったら、
俺が何を言いたいかわかるよな？」
あ「………。
…僕らも泰澄と菊理媛の待つ、
白山の頂へ…」
ス「そういうことや。
いつも言ってることやけど、
その神に対する正しき理解がなければ、
神が姿を現すことはない。
けど、
『菊理媛』という神へと繋がる、
歴史の因果を学び、
神々の嘆きも、
人の苦しみも、
すべてを見てきた、
今のお前なら、
もう大丈夫やろう」
…。
……。
………。
…………。
かつてあの白く美しき山の頂に、
多くの人々が、
願いと祈りを込めた。
祝福よりも、
嘆きと悲しみを伴う。
それが不条理であればあるほどに、
血の涙を流すほどの思いを持って、
死にゆく者、
そして遺された者もまた、
来世へと願いと祈りを捧げる。
『次、生まれ変わるなら…』と。
そのすべての人々の願いと祈りを
受け入れてきた、
『女神』がその頂にいる。
深すぎるほどの歴史の闇を、
白日の下に曝け出し、
しかし同時に、
新たなる光を、
今この現代に照らし出そうとしている。
『生まれ変わりの聖地 白山』。
僕は一体どんな光景を、
目にすることになるのだろうか。
いよいよ、
この時がやってきた。
いざ、白山へ。
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