☆「感染拡大防止策」の書き方 結論編
五月の晴れだが,五月晴れとは言わない。(豆知識)
今回は,「コロナの感染拡大防止」の本論の書き方,結論編です。
以下に,本番で出題されそうな出題例を挙げています。「本番ではどう書こうかな」と,考察しながら読んでくださると幸いです。なお,模範解答は,本記事の後半に掲載しています。
〇 コロナに関する小論文の出題例
テーマ 「コロナの感染拡大防止について」 ☆☆☆☆(全5段階)
新型コロナウイルスによる感染が拡大する中,自粛要請に伴う経済への打撃や医療機関の崩壊などが懸念されています。しかし,新型コロナウイルス感染症対策専門家会議によると,2022年まで強固な社会的距離政策(※)を実行した場合に,2022 年中旬までに集団免疫を獲得すると予想さており,未だ予断を許さない状況が続いています。
こうした状況において,○○行政として,感染拡大の防止に向けてどのように取り組んでいくべきか,あなたの考えを述べなさい。
※強固な社会的距離政策:緊急医療用病床数を2倍にした下で実施する社会的距離政策のこと。2020年4月14日公表のハーバード大学の資料に基づく。
⑴ ここまでのおさらい
〇 序論
コロナウイルスに関しては,国民の身体への影響とともに経済への打撃が懸念されている。本年の4-6月のGDPは,対前年度比でマイナス20%前後と見込まれている他,多くの業種において売上高の減少や資金繰りの問題が発生している。
〇 本論・要因
今回,感染が拡大した要因は,2つ考えられる。
1つ目は,早期において,人と人との接触を抑え込めなかったことだ。新型コロナウイルスは,密閉・密集・密接という三密空間において感染率が高いとされている。身近な例でいえば,電車やバスなどの公共交通機関,パチンコ店や遊園地などの娯楽施設などが該当する。これらについて迅速に自粛要請ができていれば,感染拡大は防げたのではないだろうか。
2つ目は,感染者の移動経路を正確に把握できなかったことだ。感染症対策専門会議の資料によると,感染経路不明率は概ね30から40%を記録している。「誰が,いつ,どこで感染したのか」が判明しない限り,クラスターの発見が遅れたり,特定の店舗や施設への自粛要請ができなかったりと,ウイルス蔓延に歯止めをかけることはできない。(340字)
〇 本論・施策
上記を踏まえ,今後の感染拡大防止策を2つ提案する。
1つ目は,地域ごとのリスク評価の実施だ。具体的には,都道府県について,人口密度や人の流動性といった指標を基に,感染拡大リスクを評価する。その上で,地域を3つ程度に分類し,区分に応じた行動指針を要請していくべきである。例えば,今年4月に指定を受けた13の特定警戒都道府県については,今後も引き続き徹底した行動変容の要請を行い,その他の地域については,新しい生活様式を要請するに留めるなどとするとよいだろう。
2つ目は,国民の移動経路の把握に努めることだ。例えば,韓国では,感染が確認された場合,感染者のスマートフォンやクレジットカードの使用履歴などを用いて,感染に至るまでの移動経路を調査・公開している。この取り組みによって,韓国はウイルス蔓延を食い止めたとの見方がある。日本においても,決して私権制限に至らぬように留意しつつ,政府が主導となって積極的な情報調査に取り組むべきである。(414字)
⑵ 結論の考え方
結論は,今までの話をまとめるだけです。とはいえ,多少の注意点があるので,気になる方は以下のリンクからポイントを押さえておきましょう。
参考リンク:『 結論 新しい情報を書くな!本論との矛盾を避けろ 』
⑶ 『コロナの感染拡大防止』の理想的な結論はこれだ!
〇 模範解答
厳しい状況が続く中,行政としては,情報を正確に分析した上で適切な要請を出し続けることが求められている。今後のたゆまぬ働きかけによって,国民は行動変容を促され,ひいては感染拡大の防止に繋がるものと確信している。(104字)
〇 解説・書き方
多くのテーマでは,理想的な結論は,「課題を解決しつつ,前向きな方向性を示すもの」であると高評価になります。採点官は,すんなり読める=論理的と捉えることが多々あります。すんなりと読ませるために,ネガティブよりもポジティブな結論をおすすめします。
なお,今回の「コロナの感染拡大防止」は,単発的な取組によって課題を一気に解消できるというものでありません。この長期性を加味した結論になっているとよいでしょう。
⑷ まとめ
お疲れさまでした。この記事で「コロナの感染拡大防止」に関する論文の解説は終了です。今回の模範解答は,序論Aバージョンから始まる一般的な論文を意識して作成しました。
一方,序論Bバージョンのような医療機関に特化した論文に仕上げたい受験生は,感染拡大の要因に,「PCR検査体制の未整備」を挙げ,施策に「マイナンバーカードを活用した患者情報の共有」などを提案すると良いでしょう。
次回は,「アフターコロナの経済発展・文化振興」について書きます。お楽しみに。