松岡美術館で「巴里をいのちを謳歌しよう―中国陶磁いきもの讃歌」を観た! | とんとん・にっき

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松岡美術館で「巴里をいのちを謳歌しよう―中国陶磁いきもの讃歌」を観てきました。 前回は中国陶磁のうち、僕の好きな「唐三彩」のみを挙げておきましたが、今回は残りの中国陶磁を挙げておきます。台北国立故宮博物院の「翠玉白菜」に勝るとも劣らない「翡翠 白菜形 花瓶」も出ていました。


「中国陶磁 いきもの讃歌」
中国で陶製の動物像や、器表の一部に動物を象った作例は、すでに新石器時代の遺跡から発見されている。造形の対象として日々の暮らしに親しく接するいきものに、人びとが早くから関心を持っていたことがうかがわれる。人をとりまく自然界に棲息するたくさんの動物たち。それらは神聖な意味を持ち、また生活の糧となり、労力を提供する家畜として人びとの暮らしと密接に関わりあってきた。


殷・周時代には、実際の人や馬・鶏などを殉葬する風習が盛んに行われていた。やがて陶製などの人や動物の模型(陶俑という)が副葬されるようになり、時代の嗜好を反映させながら唐時代に全盛期を迎える。金・元時代以降、陶磁器の絵付け技法が飛躍的に向上すると、世俗的な願いを込めた吉祥図像が器を埋め尽くすようになるが、そこにも鳥や鹿など様々な動物が登場している。


今回の展示では、犬や牛馬・駱駝の特徴を捉え、生き生きとした情景を彷彿とさせる造形の面白さに加え、彩り鮮やかに描かれた縁起の良い動物をご紹介します。当時の人たちとの関わりを今に伝える陶俑の動物たち、より良い人生を謳歌せんとする人びとが願いを託した動物たちのさまざまな表現をお楽しみください。






「鳥」

貴人の墓には、日用品や従者、家畜などを象った数々の副葬品が納められた。家禽もその一つで、後漢時代のNo24は羽毛や翼の表現に工夫が凝らされ、顔に模様がある。わずかに残った赤・青・白の顔料に、彩色豊かな当初の面影が偲ばれる。金時代のNo26を彩る鳥たちは、曲線を多用した素朴な線彫りが柔らかな羽毛を彷彿とさせ、周囲を囲む文様も優雅で装飾性が高い。


明清時代の磁器には縁起の良いモチーフが駆使された。蓮は「憐」、「恋」との音通、水鳥は豊かさを象徴し、番いを描くことで夫婦和合や子孫繁栄を意味した。盤や壺を飾る鳥たちは、愛玩され、日々の暮らしをなごませる自然観からというよりも、吉祥のイメージ先行で扱われている。



「十二支」

十二支は、太陽の軌道を十二等分し各々に動物を組み合わせた暦法で、時刻や方角を示す。十二支のモチーフは隋・唐代に盛んになり、銅鏡の文様にもみられる。唐時代の俑は頭部を動物に作った、人の姿で表された。

十二支俑は、墳墓内に北から子、寅、卯(東)と並べ、南に午がくるよう、方角に従って配置された。



「鹿」

鹿は長寿の仙獣ともいい、しばしば仙人とともに描かれる。千年生きた鹿を蒼鹿、千五百年生きたものを白鹿、二千年生きたものは玄鹿と称された。また、「禄」と同音のため、官位を得て封禄が多くなることを願う吉祥文でもあった。No30には、鹿とともに千年の長寿を保つといわれる鶴、万年の齢を持つ亀、さらに樹幹で「寿」
の文字が表されて、幾重にも吉祥を重ねている。


No31には至るところ霊芝がみられる。霊芝はキノコの一種で神仙の住むところに生じ、長寿をもたらす仙薬といい、鹿とともに描かれることが多い。No32は清明な深山が聳える仙界に松が茂り、桃(長寿の象徴)がなっている。カラフルに彩られた鹿は思い思いの軽やかな動きを見せ、霊芝をくわえる鹿も描かれている。




「魚」

魚は古くから特別な意味づけがなされていたようで、すでに新石器時代の彩陶から文様として表されている。自由気ままに体をくねらせながら、水注を自在に遊泳するさまは恰好のモチーフであっただろう。魚の発音は「余」と同じため、冨と幸福を象徴するとともに、おびただしい数の卵から無数の稚魚が孵るため、子孫繁栄を意味する。


蓮と魚が描かれると「蓮」と「連」、さらに「魚」と「余」の発音が同じで「連年有余」、つまり、豊かさが毎年続くことを寓意している。そのほか、古い歌謡では恋愛の象徴で、魚を女に、水鳥を男にたとえたという。甲羅を持つ蟹は「一甲一名」を連想させ、最上位で科挙(官吏登用の国家試験)に合格し、出世と富貴な生活を願うモティーフである。




「昆虫」

昆虫は主文様とされることは少ないが、「静」の草花に添えて、「動」的イメージが付加される。蝶は70歳~80歳を意味する「耋」と同音で、長寿を表している。


翡翠白菜形花瓶は、翡翠の天然の色合いを利用して、葉先の変色した白菜にバッタや甲虫が止まる様子が彫刻されている。白菜の新鮮な白さは「潔白」の象徴とされ、「白」と似た発音の「百」を喚起させ長寿を寓意するという。


多くの昆虫は、一年で生を終える儚い命だが、その短い期間に成長し、伴侶を求め、多くの子孫を残す。充実した生涯といえよう。その生命力や毎年必ずたくさんの姿を見せる繁殖力の強さが、吉祥性に結び付いたとされる。




中国陶磁 いきもの賛歌 

生活の営みに欠かせない家畜や、吉祥の意味をかけて好まれた動物など、人の暮らしと共にあって親しまれてきたいきものたちに着目しました。往時の人々が姿をかたどり、また器表に描いた動物たちは躍動感豊かに、また象徴的にあらわされ、現代の私たちに何かを語りかけてくるかのようです。2014年の干支は午。この機会に、午年生まれの松岡が気に入って求めた、躍動感あふれる「三彩馬」も出品します。


「松岡美術館」ホームページ


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