ソウルメイト・ドラゴン㉖ この国の女達の未来が、もっともっと輝き愛に満ちていきますように | 立ち止まったハートが前進する!未来が視える奇跡リーディング

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【未来が視える!奇跡リーディング】で、立ち止まったあなたのハートを開きます。女性の健やかな幸せのためにポラリスは輝きます。人響三九楽ヒビキサクラ

 

ソウルメイト・ドラゴン ① 天命を載せた龍

ソウルメイト・ドラゴン② 私は龍の背中に乗る

ソウルメイト・ドラゴン③ 運命は「もし・・・」を超えた積み重ね

ソウルメイト・ドラゴン④未来は過去を手放した「今」から開かれる

ソウルメイト・ドラゴン⑤ 星が私を導く

ソウルメイト・ドラゴン⑥ 一見ネガティブな出来事にでさえ、最善の未来がある

ソウルメイト・ドラゴン⑦ 私は皆に応援されている

ソウルメイト・ドラゴン⑧ この結婚生活は、仮面夫婦でセックスレス

ソウルメイト・ドラゴン⑨ あきらめが明らかに改まった時、光が見える

ソウルメイト・ドラゴン⑩ 運命という龍に選ばれここに来た

ソウルメイト・ドラゴン⑪ 神様が用意した束の間のドルチェヴィータ

ソウルメイト・ドラゴン⑫ 愛を言葉で伝えたい

ソウルメイト・ドラゴン⑬ 幸せは与えられるものではなく、自らが作り出すもの

ソウルメイト・ドラゴン⑭ あなたは本物のソウルメイト

ソウルメイト・ドラゴン⑮ 女のプライド

ソウルメイト・ドラゴン⑯ 人は誰かにコントロールされるのを、本能的に嫌う

ソウルメイト・ドラゴン⑰ 小我を手放した時、大我は姿を現す

ソウルメイト・ドラゴン⑱ 私がここにいる意味は、きっときっとある

ソウルメイト・ドラゴン⑲ 今いる場所で、私ができることは

ソウルメイト・ドラゴン⑳ 愛されていることに、自信がありますか?

ソウルメイト・ドラゴン㉑ 大きく変わる未来のために

ソウルメイト・ドラゴン㉒ 自分を最後まで信じ切れますか?

ソウルメイト・ドラゴン㉓ 信じることは、愛につながる

ソウルメイト・ドラゴン㉔ 人はいつからでも変わることができる

ソウルメイト・ドラゴン㉕ 子を持つことだけが女でなく、新しく何かを育てられるのが女

 

江戸城を開け渡す四日前、ようやく私の新しい家が決まった。

静寛院宮様とは別々の屋敷で暮らすことになった。

大奥で働いていたたくさんの女達は、実家に戻るか、あるいは新しい居場所を見つけ出て行った。

滝川を始め、ほんの数名だけが最後まで私と共に大奥に残った。

大奥の終焉はすぐそこまで近づいていた。
 

江戸城明け渡しの前に、静寛院宮様は引っ越すことになった。
荷造りが終わり、お迎えを待つばかりの静寛院宮様を部屋に招いた。

話し声も気配もない大奥は、これまで感じたことのない静けさに包まれていた。

そこで、私達は向かい合って座った。
お雛様のような彼女の小さなお顔は、疲れと大奥から解放される喜びが滲んでいた。

それをどこか寂しく思いながらも、彼女の細い手首をそっと握った。
「これまで、いろんなことがありましたね」
精一杯の愛情を込め、微笑んだ。
私の言葉を時間をかけ咀嚼した静寛院宮様が口を開いた。
「私は・・・」
そう言うと、開きかけた口を閉じ沈黙のカーテンに包まれる。

言葉を探すように庭に目を向ける彼女の視線を追い、同じ方を見た。

明るい光に溢れた緑の庭は、枝葉を払われ整えられた木や、色とりどりに咲き誇る花達が春を謳歌していた。

最後に美しく庭を整えたお庭番の仕事が、そこここに生きていた。

家定様と手を繋いでこの庭を散歩したことを思い出し、胸がしめつけられる。

涙をこらえ、心にその光景を焼きつけた時だった。


「私はご存知の通り、京から江戸に来るのがとても怖かったのです」
声を絞り出すように静寛院宮様が言葉を続けた。
「幼い頃に決められたフィアンセの有栖川宮熾仁親王様に嫁ぐことだけを、夢見てまいりました」
私は黙って頷いた。
「その婚約を破棄し、家茂様との結婚を申し伝えられた時、目の前が真っ暗になりました。

いっそ死んでしまおうとまで思い詰めました。
ですが兄の孝明天皇に頭を下げられ、この国の未来のため、自分を殺してここにまいりました。
この大奥には私の居場所などない、アウェイだと思い込んでいたのです。
けれど家茂様がおりました。
あの方が私を守り愛し、尽くしてくれたのです。

私は家茂様に出逢い、初めて人を愛する事を知りました。
それまで、愛してもらうのが当たり前でした。
ですが初めて自分から人を好きになったのです。

家茂様がおられたから、慣れない大奥での生活も乗り越えられました」


せき止められていた水が溢れだすように、彼女の口から言葉がほとばしる。
一瞬目を閉じると、全身氷の鎧で固めたように冷たかった昔の彼女を思い出した。
「本当に、静寛院宮様はよくがんばってこらえました。
何といっても、私のような鬼姑と渡り合ってこられたのですから」
そう言って私は笑った。
あの時はお互い意地を張り、自分のやり方やしきたりを通そうとしていた。

相手にコントロールされまいとし、自分が相手をコントロールしようとしていた。

愚かな日々だった。
が今振り返ると、涙が出そうなくらい幸せな時間だった。
どんな思い出も、過ぎてしまえばただただ抱きしめたいほど愛おしい。
感傷にふけっていると
「天璋院様」
突然、背筋を伸ばした静寛院宮様がじっと私を見つめた。

覚悟を決めた一途な瞳に、心臓がバクバク音を立てる。
「天璋院様、私はあなたにお会いでき、本当によかったと思っています。
あのまま京にいたら、私は生きているのか死んでいるのかわからない時間を過ごし、一生を終えていたでしょう。
この大奥に来て、くやしかったり辛かったり、嬉しかったり、悲しかったり、これまで味わったことのない気持ちをたくさん感じました。
自分の人生を生きるとはこういう事だ、と初めて知ったのです。
それは悔しいけど、あなたにお会いできたからこそ、です。
お義母上様、本当にありがとうございました」
彼女は目を閉じ、静かに頭を下げた。

初めて義母、と呼ばれた。
たまらず、両手で静寛院宮様を抱き寄せる。

彼女の細い身体はすっぽり私の手の内に収まった。

血のつながりなどなくても、私達はまごうことなく一つの家族だった。

徳川の家族だ。

 

家定様、お聞きになりましたか?

彼女の細い肩を抱きしめたまま、心の中で天国の家定様に告げた。
「私、息子のお嫁さんにお礼を言われましたよ。
徳川の最後のお嫁様です。
日本一のお嫁様です。
そして、私は日本一の姑です。
徳川の最後の女は、日本一のお嫁様と姑ですよ!

私がそちらに行ったら、うんとうんと褒めて下さいね!」

さらさらと木の葉を揺らす春風が、最後の抱擁を見届けた。

 

静寛院宮様が去って行き、やがて私もここを立つ日がやってきた。
荷造りも終え、がらんとした大奥に後ろ髪をひかれるように、首をひねり振り返える。

大奥は徳川三代目の将軍家光様の乳母の春日局様が家光様のために作った。
ここでたくさんの女性達が愛と憎しみに囚われ、涙した。
この大奥は女の自由を奪い、たくさんの愛憎劇が繰り広げられた場所だった。
けれど新しく生まれ変わるこの国に、この場所は必要ない。
私は最後の役目を果たすため、大奥と外の世界を隔離する扉の前まで歩く。
黒く大きな鍵がつけられた扉が、一切を拒否し行く手を遮る。

冷たい鍵に手を乗せた。

そして、この国の女達がもっと自由に羽ばたけるよう、祈りを込め叫ぶ。
「扉を開け!」

控えていた滝川と二人の侍女は重い閂を外し、扉を開く。
ギギギッ、と扉は音を立て、翼を広げたごとく二手に大きく開いた。

放たれた扉の向こうから、まぶしい光が大奥に流れ込んだ。
光に照らされた扉は、役目を終え喜んでいるように見えた。
扉も開かれたかったのだ。


明るい光に溢れた大奥で、残った者達と庭に咲いていた花を集める。
それらを花瓶に入れ、あちらこちらに飾った。
白粉に変わる、ふんわりとした甘い香りがあちらこちらから漂ってきた。

「女達がいなくなった大奥に、女の代わりに花を残していこう。 

西郷もきっと喜ぶであろう」
女達が閉じられていた大奥は、解放された喜びに満ち溢れ、色とりどりの花々に彩られた美しい花園に変わった。

「まるで、この国の未来のようじゃ」

夢見るように私はうっとり微笑んだ。

そして両手を合わせ、天に祈る。
この国の女達の未来が、もっともっと輝き愛に満ちていきますように。

女は花のような存在だ。
牡丹のように華やかな女もいれば、桔梗のようにしっとりした女もいる。
どの花もみな美しい。
どの花も自分を誇って、胸を張って堂々と生きていけばいいのだ。
これからこの国の女達は、花のように美しく自由に生きるのだ。

 

翌日、私は江戸城を去った。
それは二百五十年史を持つ大奥の終わりだった。

 

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あなたは自分を花に例えたら、どんな花だと思いますか?

 

その花はどこで咲くのが、ふさわしいでしょう?

 

あなたはどう咲きたいですか?

 

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