ソウルメイト・ドラゴン⑧ この結婚生活は、仮面夫婦でセックスレス | 立ち止まったハートが前進する!未来が視える奇跡リーディング

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ソウルメイト・ドラゴン ① 天命を載せた龍

ソウルメイト・ドラゴン② 私は龍の背中に乗る

ソウルメイト・ドラゴン③ 運命は「もし・・・」を超えた積み重ね

ソウルメイト・ドラゴン④未来は過去を手放した「今」から開かれる

ソウルメイト・ドラゴン⑤ 星が私を導く

ソウルメイト・ドラゴン⑥ 一見ネガティブな出来事にでさえ、最善の未来がある

ソウルメイト・ドラゴン⑦ 私は皆に応援されている

 

待ちに待った式だったのに、緊張のあまり頭が真っ白になった。

夫となる家定様は式の時、一度も私と顔を合せなかった。

ずっと前を向き、視線をそらせていた。

私もずっと前を向き、時おり家定様をチラ見した。

家定様はお顔にあざがあったが、端正なお顔立ちをしていた。

だが無表情でずっと前を向いておられた。
家定様は生まれつき病弱で、幼少の時、天然痘や脳性麻痺を患われたそうだ。

その影響でお身体は弱く、とても内向的だった、と聞いている。

家定様の肌は、存外白かった。

江戸に来てましになったが、自分の浅黒い肌が恥ずかしくなった私はそっと袖の端をひっぱり、手を引き込んだ。
家定様は、御台所の席が空いていることを家臣や生母の本寿院様達にせっつかれ、仕方なく私を迎えたように見えた。

私という女に何の興味もない様子は、わかっていたことだが紙で手を切られたように切なかった。

嫌われていると思ったが、それはあとで違うことがわかった。
だがいっそ嫌われている方がましだったのかもしれない、と後で思い知った。


生母の本寿院様は、生まれたばかりの家定様の面倒をすべて乳母の歌橋殿に丸投げされていたそうだ。

そのせいか、家定様は歌橋様に大層なついていたらしい。
家定様の初めの結婚は鷹司任子様だったが、任子様は病死され六年で結婚生活は終わった。
二度目の一条秀子様とのご結婚は半年。

秀子様も病気で急死されていた。
その後の家定様は大奥にはあまり通われず、お志賀の方という年上の側室がおられるだけ・・・
というのが、幾島から聞いた話だった。

私はこれまで実家の兄上や兄上の友人たち以外の男性と接したことなど、ほとんどない。
兄上の友人に軽い好意を持っていたことはある。
初恋もあった。
だが、それと結婚は別物だと思っていた。
両親から、結婚は家と家との結びつきのためにするもの、と言い聞かされていた。
だから正直、結婚とは何か本当のところはわからない。
この結婚も、お役目あってのもの。
つまり結婚とは家と家との結びつきやお役目を果たすもので、そのために女は嫁ぐ、というのがこの時代の定石だった。
ただその嫁ぎ先が、まさかこの国を動かすトップのところだとは夢には思わなかった。

こちらの要求を通すため、家定様と仲良くなることを期待されている。

それが私のお役目だ。

 

確かにそうだか、家定様との床入りを待つ真っ白い布団の上で正座した私は喉に小骨が刺さったような違和感を持ち、自分の喉をそっと押さえた。

答えを知っているようで、見たくない。気づきたくない。
モソモソするような居心地の悪さ。
その正体に心を巡らせていた時、家定様が来られた。

急いで手と頭を布団につけ、家定様をお迎えした。
顔を上げると、家定様は初めて私の顔をまっすぐ見た。

「何を考えておる?」
「どうして家定様と結婚したのか、考えておりました」
「はっ!私が結婚したのは幕閣どもに言われ、空いている御台の場所を埋めるためだ。

しかも、そなたは薩摩から来た。
どうせ島津斉彬から、次の将軍を一橋慶喜にするよう私に勧めるためであろう。

そなたの魂胆はわかっておるわ」

吐き捨てるように言った家定様は顔を歪めた。

私は心の中で、驚きの声を上げた。

愚鈍な方だと聞いていたが、実は聡明な方だと気づいた。
「まぁ!そんなことまで、ご存知なのですね。

だったら、私はどうしたらいいのでしょう?」
「そなたがここでするべきことなど、何もない。
ただ大奥にいて、すきなように過ごしておればよい。
そなたはお飾りの御台じゃ。
私はそなたを受け入れるつもりはない。

私は誰も受け入れない」

「側室のお志賀の方は、受け入れているのですか?」

「ふん、側室の一人くらいは持たねば、形がつかぬ。
 誰でもよかったが、お志賀が楽だった。それだけじゃ。
だがお志賀にも心は許しておらぬ。

信じているものなど、誰一人おらぬわ」

「誰も信じないなど、寂しいではありませんか!」

そう言った私を哀れむような目で見て、家定様は薄笑いを浮かべて言った。

 

「私はこれまで何度も毒を飲まされ、殺されかけた。

誰も信じられなくて、当然であろう」

ハッ、と背中が凍りつき声が出ない。

強いショックを受けた私をほったまま、家定様は布団に入りくるりと背を向けた。

「私はもう寝る。

そなたももう寝るがよい」

しばらくすると、すうすうという寝息が聞こえた。
一瞬あっけに取られた後、じわじわ迫りくる黒い波のような不吉な予感に包まれた。
結婚は家と家の結びつきを深めるもの。
家と家が結びつく、というのはお互いの血筋をひいた子を産み出す、ということだ。

だがお義父上は私に、家定様の子を産めよ、とは一言も言われなかった。
次の将軍に、一橋慶喜様を推すだけのお役目を渡された。
子は、家定様と睦まなければできない。
どうやって睦むかも、幾島は教えてくれた。
が、もしかしたらお義父上は、家定様が私と睦めない、とわかった上で私を家定様の御台所にさせたのかもしれない。

そう考えると、急に息苦しくなった。

この上なくふかふかの布団に体を沈めたが、真綿で首を絞められるようだった。

意識は醒め、まったく眠れず天井だけを見つめる。

私の内側で静かな疑惑が目を覚まし、夜が更けると共に孤独感だけ増していく。
眠れない初夜。
この結婚生活は仮面夫婦でセックスレスなのか、と布団の中でため息をついた。

ため息は失望と悲しみの涙をまとい、夜の闇にとけていった。

 

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あなたは心を許し、信じている人が周りにいますか?

 

家族だったり、友人だったり、パートナーだったり。

 

いるなら、それは誰でしょう?


その人もあなたのことを同じように思っていてくれると思いますか?

 

まずは、あなたから先に心を許し、信じることが大切です。

 

 

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