ソウルメイト・ドラゴン⑥ 一見ネガティブな出来事にでさえ、最善の未来がある | 立ち止まったハートが前進する!未来が視える奇跡リーディング

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ソウルメイト・ドラゴン ① 天命を載せた龍

ソウルメイト・ドラゴン② 私は龍の背中に乗る

ソウルメイト・ドラゴン③ 運命は「もし・・・」を超えた積み重ね

ソウルメイト・ドラゴン④未来は過去を手放した「今」から開かれる

ソウルメイト・ドラゴン⑤ 星が私を導く

 

男は部屋に上がらず、庭にひざまづき頭を下げていた。
がっしりとした体躯と濃い眉毛とどんぐり眼の顔立ちを見れば、薩摩男だとわかる。

じりじりした真夏の光が彼の大きな背中を焼いていた。

傍らにいる幾島が彼を紹介した。
「薩摩から来た、西郷と申すものです。
斉彬様の江戸参勤に伴い、薩摩から一緒に参ったのでございます。
これ西郷、篤姫様に顔を上げい」

顔を上げた西郷の額から汗が流れていた。

彼は薩摩男にありがちな、えばっている顔つきではないところに好感を持った。
「篤姫様、初めてお目にかかります。

西郷吉之助と申します。
こちらでは、御庭方役をいたしております」
目を細め笑みを浮かべた西郷は、なぜか故郷に置いてきた柴犬の太郎を思い出させた。
小さい頃から一緒に走り回った太郎。
いつも私の言うことに忠実だった太郎。
お義父上の養女になって家を出る頃は、すっかり年老い毛並みもしょんぼりしていた。
最後に太郎の背中を撫で抱きしめると、吠えもせず寂しそうな目で私を見つめていた。

太郎は今どうしているだろう、私をまだ覚えているだろうか。

そう思いながら、太郎はもうこの世を去ったと知った。

何の確信もなかったが、そうにちがいない、とわかった。
切ない思いに浸ってしまったため、一瞬西郷に言葉をかけるのを忘れた。

 

無言で立ちすくむ私に西郷は彼は恐る恐る尋ねた。

「あ・・・篤姫様、わしは何かご無礼をしてしまったでしょうか?」
我に返った私は、首を振って西郷に答えた。
「そうではない、

そなたのせいではない。

ただ、少し薩摩のことを思い出しほんの少しホームシックになっただけじゃ。

気にせずとも、大丈夫じゃ」

角ばっていた西郷の肩が、ため息とともに降りて丸くなった。

「それでしたら、よろしゅうございました。
これからわしは、御庭方役として毎日この庭を掃除しておりまする。
姫様さえよろしければ、お手すきの時にいつでもお声かけ下さい。
わしにできることがあれば、何でもいたしますので」
大きな身体を縮めるように、西郷は頭を下げた。

御庭方役は、一見すると普通の庭の手入れをする植木職人のような仕事だ。
だがそれは仮の姿だった。
お義父上は大切な話しや人に言えないことを紙にしたため、庭に捨てる。
庭方役は毎日、庭をそうじしているのでそのような紙をすぐに見つけられる。
その紙には、いろいろな情報が記されてる。
それを元に、庭方役はお義父上の代わりとなって動く。
そのような大事な役目を任せたのだから、お義父上は西郷をかなり気に入っていると、見受けた。
実際、お義父上は西郷を高く買っていた。
人と人としての相性もよかったのだろう。
西郷はお義父上を崇拝、と言える位置に上げるほど尊敬しながら、自分の意見をはっきり述べるらしい。
対してお義父上も、目下のものだから、と軽んじず膝を突き合わせ論じることもたびたびだったという。
幾島は西郷から家定様のことや、江戸城内部のことを調べてもらい、策を講じた。

 

すぐにも輿入れがやってくる、と思われた私の結婚話が進まないのには、わけがあった。
江戸に上がってきた年の六月、アメリカからペリーがやってきた。

その後すぐ、家定様のお父上であった徳川家慶様が亡くなった。
幕府は家定様の結婚どころではなかった。
そしてそれが落ち着いたかのように見えた翌年の秋、ようやく幕府は十二月に私を迎い入れたい、との話を持って来た。
ところがだ。

そのすぐ後、安政の大地震が江戸の町を襲った。
マグニチュード七の大きな地震が、江戸の町を直撃した。
私の住んでいた屋敷も、大揺れに揺れ、床が割れ天井が落ちた。
幸いお義父上や私や幾島など、江戸屋敷のものは無事だった。
が、江戸の町の犠牲はおびただしく、死者は二万人とも言われた。
そしてこの地震で、結婚はまた延期されてしまったのだ。

 

「のう、幾島・・・・・・。

私は家定様とご縁がないのであろうか?
こうやって御台所教育をしてもらい、どうにか形になってきたと思う。
だが、何かが私に足りないのであろう。
まだ運命が私にOKを出さないのはなぜだろう。
私に何か足りないものがあるからだろうか」

ようやく地震も落ち着いた頃だ。

さすがの私も不安に襲われ、うつむいて大きなため息をついた。

幾島は、ふん、と鼻で笑った。

「何を柄にもなくしおらしく、言ってらっしゃるんですか?
この私が教育をして、なにか足りないものがある?
とんでもございません。
そんなものは、まったくございません!
いえ、ございました。

篤姫様に一つございます。
その弱気です。
篤姫様、どうぞ思い出して下さいませ。
篤姫様は「強運」だけを持って来た、と言われました。
「強運」は強気だからこそ、ついてまいります。
弱気な方に「強運」はついてまいりません。
よろしいですか?篤姫様。
すべての出来事には、意味があります。
一見ネガティブな出来事にでさえ、最善の未来があるのです。
二百五十年続いた徳川幕府は、これまでの溜まりに溜まった膿みを出しているのです。
その膿みをすべて出し切ったところに、あなた様が入るのです。
歴代の徳川の御台所様の中で、あなた様は異色の存在です。
いえ、前代未聞の御台所様でしょう。
そのような御台所様をお迎えするのに、これまでの古色蒼然とした江戸城では合いません。
あなた様は徳川二百五十年の膿み出しを終えたまっさらな新しい場所に入り、何かを新しく産み出すのです。
そのために必要なお時間です。
落ち込んだり、弱気になっている時間なぞありませんぞ!!」

幾島の喝は、くじけてひからびた大地に激しいスコールを降らせた。

息を吹き返した私は、顔を上げた。

「膿み出しを終えた新しい場所で、何かを産み出す・・・・・・」

「そうでございます。
それこそが、何にも染まらず悠然と龍に乗って江戸にやってこられたあなた様にふさわしい場所です。
ですから、どうぞお気を強くお持ち下さいませ!」

幾島の言葉で、目の前の見えない壁が霧のように消え去った。

目の前は三百六十度ワイドに広がり、どこまでも見渡せた。
今、目覚めたように目に映る景色が生き生きと、これまでと違うものに見えた。
庭に目を移すと、冬だと言うのに庭の緑は力強く春に向けて力を蓄えているのがわかった目目からウロコがぽとり、と落ちた。
私はこれまで片目で世界を見ていたのかもしれない。

 

「幾島、わかった。
そうだ、私は薩摩から強運を持ってきたのだった。
忘れかけていた。

強運は弱気を嫌うのだ。

思い出させてくれて、礼を言う」

「思い出していただけて、よろしゅうございました。

ご安心下さい、篤姫様。

ちゃんと次の手は打っております。
どうぞ、この幾島にお任せ下さいませ。
そして篤姫様は、弱気を捨て強運をお持ちのことだけ思い出して下さいませ。

龍は強きものがお好きです。
篤姫様が強運を思い出した暁に、流れは変わってまいります」

幾島はキッパリと言い切った。

今や私と幾島はれ運命共同体だった。
私は幾島に全権をゆだねることを決意した。
彼女に任せておけば大丈夫だ、と確信した。

「幾島、そなたに任せる。
一見ネガティブな出来事も、きっと最善の未来につながっているに違いない。

なぜなら、私は強運だからだ」
「はい、その通りでございます」

幾島が笑った。
私は驚いて心の中で叫んだ。

おい!笑ったぞ、あの幾島が!!

いや、笑わせた?!

やった!

一人拍手喝さいした。

幾島はいつものように背筋を伸ばし、平然とお茶を飲んでいた。

その横顔を見て、心の中でガッツポーズをした。

やっぱり、私は強運だ。

 

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あなたは自分のことを、強運だと思っていますか?

 

強運になるのは、簡単です。

 

自分は強運だ、と決めればいいだけです。

 

強運は弱気な人がきらいです。

 

暗い人がきらいです。

 

ケチな人がきらいです。

 

その反対の人が大すきなので、あなたもそうなればいいんですよ。

 

 

 

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