ソウルメイト・ドラゴン⑪ 神様が用意した束の間のドルチェヴィータ | 立ち止まったハートが前進する!未来が視える奇跡リーディング

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【未来が視える!奇跡リーディング】で、立ち止まったあなたのハートを開きます。女性の健やかな幸せのためにポラリスは輝きます。人響三九楽ヒビキサクラ

 

ソウルメイト・ドラゴン ① 天命を載せた龍

ソウルメイト・ドラゴン② 私は龍の背中に乗る

ソウルメイト・ドラゴン③ 運命は「もし・・・」を超えた積み重ね

ソウルメイト・ドラゴン④未来は過去を手放した「今」から開かれる

ソウルメイト・ドラゴン⑤ 星が私を導く

ソウルメイト・ドラゴン⑥ 一見ネガティブな出来事にでさえ、最善の未来がある

ソウルメイト・ドラゴン⑦ 私は皆に応援されている

ソウルメイト・ドラゴン⑧ この結婚生活は、仮面夫婦でセックスレス

ソウルメイト・ドラゴン⑨ あきらめが明らかに改まった時、光が見える

ソウルメイト・ドラゴン⑩ 運命という龍に選ばれここに来た

 

 

それから家定様は少しずつ、私に笑顔を見せてくれるようになった。
阿呆を装った家定様は実はスィーツ男子だった。

趣味はお菓子作りだと照れながら告白された時、意外過ぎて驚いた。
それから、自分専用のキッチンに私を連れて行ってくれた。

隠れ家とも言うべき家定様の懐に入った私は、うれしくてドキドキした。

甘くていい匂いがキッチンに漂っていた

殺伐とした大奥とは別世界だ。

すると目の前にホカホカ湯気の立つ、黄色くて四角いものが出された。

生まれて初めて見たお菓子に、目も鼻も奪われた。

「さぁ御台、食べてごらん」

そのお菓子に掌を向けた家定様は、得意げに胸を張っている。

早く口に入れたくてたまらないのに、嬉しくて胸がいっぱいでなかなか手が出せなかった。

「これはな、かすていら、という南蛮渡来のお菓子だ」

家定様が教えてくれ、ようやく生まれて初めて目にしたお菓子に黒文字を入れた。

今まで感じたことのない弾力ある生地に驚き、切り取ったかけらを口に含んだ。

甘くて、ふわふわした夢のようなお菓子に思わず本音で叫んだ。
「何これ?

すっごく美味しんですけど!!」
出来立てホカホカのあたたかいかすていら。
高価な卵や砂糖が惜しげもなく使われていたのは、さすがだった。

「そうか、私の作ったかすていらは美味しいか」
家定様は顔をゆるませ笑顔になった。

どこか誇らしそうにも見える。
「はい、これまで食べたどのお菓子よりも美味しいです。
しかも、このように上様の手作りで出来立てを食べられるなんて、最高です!!」
あとは夢中で食べた。

あまりの美味しさに手を止められなかった。


家定様はうれしそうだった。

「政治をすべて阿部に任せてやることがないので、お菓子作りをしてみた。
自分が作りたいと思った菓子は方法さえわかれば、ちゃんとしたものができる。

政治はそのようにはいかない。
いろんな陰謀や策略が交わり、例え将軍であっても思った通りのことができない。

しかし、菓子はちがう。
自分がこれを作りたい、と思いそのように動ければ、望んだ通りのものが出来上がる。

だから、楽しい。
御台は、薩摩から来たから芋もすきであろう?」

「はい!

それはもう!!

女子で芋のきらいなものはいないと思います。
芋でもお菓子はできるのですか?」

「もちろんだとも。

なら、今度は御台に芋を使った菓子も作ってやろう。
私の芋菓子は、かすていらと同じくらい美味いぞ」

私はうれしくてうれしくて、家定様を見つめると顔が蜜のようにトロトロにとけ、ニコニコしっぱなしだ。

「どうした?」

「いえ、・・・・・・

私、今幸せだなぁ、と思いました。
嫁ぐまではどのような生活が待っているのか、まったく予想もつきませんでした。
もともと結婚とは、家と家との結びつきの為、義父から命じられたお役目を果たすもの、と思っていたのです。
まさかこのような心温まる幸せな時間が待っているとは、思いもしませんでした」

「そうか・・・
私はもしあのまま歌橋の元で育っていたなら、菓子を作る役目をしたかった。
江戸城では毎年旧暦の六月十六日に十六個の菓子か餅を食べ、厄払いするという嘉祥という習わしがある。
その時いつも、菓子を食べる方ではなく作る方になりたい、と望んでいた。
時には私が作った方が美味しいのではないか、と思った時さえあった。
私は菓子を作って、人に食べてもらうのがすきだ。
自分が作ったものを食べ、喜んでもらうのがすきだ」

これまでも家定様は、ひそかにいろんな人に菓子を作って食べさせていたようだった。

「が、御台のように大口開け、美味しそうに食べたものは、誰もいなかったぞ」

おもしろそうに家定様が言った。

「まぁ!そんなに大口開けていましたか?」

私達は一緒に声をあげて、笑った。
その時だった。

家定様は手を伸ばし、私の唇の端についていたかすていらのカケラを指でそっとぬぐっだ。

かすかな触れ合いだった。

ただそれだけのことだったのに、触れられた唇の先はいつまでも熱く火照っていた。
小鳥のキスにも負けるような、ささやか過ぎるほどささやかな触れ合い・・・

大奥に戻っても頬に手を当て、唇に残ったかすかな足跡を思い出し一人頬を染めた。

家定様から触れてもらったことが、ただただうれしかったのだ。

そうやって私と家定様の距離は近づいていたが、幾島はジレジレしていた。
「御台様、家定様と仲良くなられておられるので、ぜひ斉彬様の命を全うして下さいませ。

一橋慶喜様を次の将軍にご指名してもらえるよう、お願いして下さいませ!」
うるさいほど蜂のように何度もせっつく。
幾島は役目に忠実だ。
その役目を叶える事こそ、自分の存在意義だと思っている。
だが私は夫である家定様の意志を尊重したい。

それが夫婦というものだ、と最近気づいた。
だからある日家定様に問うてみた。

「上様、一つだけご質問をよろしいですか?」

「何じゃ」

「上様が、時期将軍に選ばれる紀州の徳川慶福様と、島津の義父が推す一橋慶喜様と何が違うのでしょうか?
私も嫁ぐ前に一橋慶喜様のことを聞きましたが、も一つ慶喜様の人となりがわかりませんでした。
上様が慶喜様を選ばず、慶福様を選ぶ理由をお聞きしたく存じます」

眉間に皺を寄せ、家定様は言った。

「うむ私はな、徳川などつぶれても構わない、と思った。

そうであろう?
徳川を継承する道具として、私は使われたわけだから。
今、日本は開国を迫られている。
二百五十年もの長い間、外国との交流を閉ざしてきたこの国は、大きな決断を迫られている。
御台とこうやって心を交わす前までは、徳川などどうなっても知るもんか、と思っていた。
が、御台は言った。
生まれた場所でできない何か大きなお役目があり、ここに運ばれてきたのだ、と。
だったら、私が家定様になった意味は何であろう、と考えてみた。
これからこの国は変わっていくだろう。
だが急に変わるのはむつかしい。
まだそこまで準備は整っておらぬ。

もし慶喜が将軍になれば、奴はこれまでの成り立ちを一気に変えるため躍起になって動くだろう。
しかしその反動は大きいはずだ。
摩擦が起こり、国内で戦が起こるは必須。
そうやって国内で内輪もめをしている間、外国から攻められてきたらどうする?

ひとたまりもなくこの国は負ける。
だから今はまだ、慶喜の出番ではない。
若いが、慶福じゃ。
彼は若輩だが思慮深く、人柄もいい。

将軍としての器もある。

だから私は彼を推す」

 

私は本当に恐れ入った。

心の中で舌を巻き、頭を下げた。

家定様は愚鈍でもなんでもなく、歌橋が言った通り利発だった。
だがその利発さを表に出すと命を狙われるので、わざと愚鈍なフリをしていた。

それが今よくわかった。
「上様、上様のお考え、よくわかりました。

私は妻として、上様の考えに従うのみです。

上様こそまさに家定様。
この国の長たる立場をよくよくご存じです。
どうしてあなた様が龍に選ばれたのか、よくわかりました。
あなた様しかできないことです。
私はすべて上様のご意思に従います」

私は布団の上で手をつき、深々と頭を下げた。

そして確信した。

私達はまちがいなくソウルメイトだ。

同じ時代に生まれた同じ魂の片割れ。

龍が運んだソウルメイト。

それが私と家定様だ。

 

「御台」

「なんでございましょう」

「約束してくれぬか」

「?」

「もし私がこの世を去り、今度菓子職人として生まれ変わっても、私の妻でいることを。
私の作った菓子を食べ、笑っていることを。

いつまでもずっと私のそばにいることを」

顔を上げた私と家定様の目が合った。

家定様は真剣だった。

だから私も心を込め、愛と誠意を言葉に載せた。

「約束いたします。

私は上様の妻です。

ですが、上様だから妻になったのではありません。
私達は龍に選ばれ、ここに来たもの同志だからです。
今度生まれ変わっても、美味しいお菓子を作り食べさせて下さい。
いつでも大口を開け、上様の作ったお菓子を食べます。
でも今はまだ、上様とこうやって一緒にいたいです。
このままずっと上様のおそばにいたいです。

まだ来世のことは考えたくありません。

私のそばにいて下さい。

同じ時を過ごして下さい」

これ以上、自分の気持ちを抑えるのは無理だった。

一瞬の躊躇もなく、家定様にすがりついた。

その旨に飛び込んだ。

そうでもしなければ家定様はどこかに行ってしまいそうだったから。


家定様はゆっくり私を抱きしめ、やさしく布団に倒した。

「ありがとう。

その言葉だけで、私はこれまで生きていてよかった、と思えた」

そう言って私の唇を塞いだ。
この日、私達は初めて結ばれた。
最初で最後。

神様が用意した束の間のドルチェヴィータだった。

 

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あなたは大すきな人と心を交わしたことはありますか。

 

それを憶えていますか。

 

あなたのドルチェヴィータ(甘い生活)

れはいつだったのでしょう。


その時、あなたはどんな気持ちでしたか。

 

 

 

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