ソウルメイト・ドラゴン⑩運命という龍に選ばれここに来た | 立ち止まったハートが前進する!未来が視える奇跡リーディング

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【未来が視える!奇跡リーディング】で、立ち止まったあなたのハートを開きます。女性の健やかな幸せのためにポラリスは輝きます。人響三九楽ヒビキサクラ

 

ソウルメイト・ドラゴン ① 天命を載せた龍

ソウルメイト・ドラゴン② 私は龍の背中に乗る

ソウルメイト・ドラゴン③ 運命は「もし・・・」を超えた積み重ね

ソウルメイト・ドラゴン④未来は過去を手放した「今」から開かれる

ソウルメイト・ドラゴン⑤ 星が私を導く

ソウルメイト・ドラゴン⑥ 一見ネガティブな出来事にでさえ、最善の未来がある

ソウルメイト・ドラゴン⑦ 私は皆に応援されている

ソウルメイト・ドラゴン⑧ この結婚生活は、仮面夫婦でセックスレス

ソウルメイト・ドラゴン⑨ あきらめが明らかに改まった時、光が見える

 

 

その夜、私は寝所でふかふかの絹の布団に正座し、家定様を待った。
緊張し、胸がドキドキ鳴る音が聞こえそうだった。

部屋に入ってきた家定様は、いつものように無表情だった。

家定様も私と同じように布団に座ったが、私と目を合わせない。

私は思い切って口を開いた。
「今日、お母さまの本寿院様にご挨拶してまいりました」
「ふん」

家定様は、あごを上げ見下ろすような目で私を見た。

「御台はあの母をどう思った?」
「正直に申しても、よろしいですか?」
「構わぬ、申してみよ」
「上様には大変失礼ですが、冷たい方のようにお見受けしました。
上様に愛情はあるかと思いますが、今日のお話ではそれを感じられませんでした。

どちらかというと・・・・・・」

私はいったん、口をつぐみ言いよどんだ。
「どちらかというと、何じゃ?」

その先を促すよう、家定様はまっすぐな視線で私を射た。
「どちらかと言うと、乳母の歌橋殿の方が上様のことをよくご存じの気がいたしました。
上様がとても内気だったけど、利発だったこと。鳥がすきなこと。
すべて歌橋殿から聞きました。
歌橋殿は、よく上様のことを見ておられますね」

家定様は石のように黙りこみ、下を向いた。

 

地雷踏んだと思った私も、口をつぐむ。
カーテンのように垂れ下がる重い沈黙が、その場を支配した。
何か気に障ることがあれば、はっきり言ってくれればよいのに、と思い自分から口を開かないことを決めた。
それは後に振り返ると、ほんのわずかな時間だっただろう。
しかし緊張感は辺り一面たちこめ、沈黙は底なし沼のように私達をとらえていた。

どこにも逃れられない気持になった時、家定様は大きなため息をついた。

そして何かを覚悟したように顔を上げて口を開いた。
「御台・・・・・・」
「はい」
「本寿院様は、私の母上ではない」
「えっ?!まさか、そのような!
上様の本当の母上は、他の側室様だったのですか?」

私は木づちで頭を打たれたように、クルクルしてきた。
ドラマのようなこの展開はなんだ!と思わず叫びそうになったので、袂を握り締めた。
ところがさらに衝撃的な言葉が、家定様から出た。

「御台、一度しか言わぬ。

 私は家定様ではない」

今度こそ、頭がスパークし真っ白になった。
あまりのショックに座ったまま、後ろに倒れそうになる自分を必死に抑えたが無理だった。

スローモーションのように布団に崩れ落ちていく・・・

が、その時、家定様が細い腕で私を受け止めた。

私は家定様の腕の中で、力なく笑った。

「上様、たちの悪い冗談でございます。

そのような冗談、ビックリするではありませんか・・・」

言葉に出しながら、無理に笑おうとした。

しかし家定様の目は真剣だった。

救いを求めるかのようにじっと私を見つめていた。

「冗談などではない。

いや、冗談であればよい、と私はどれだけ望んだことか。

私が家定様でないことを知っているのは、本寿院様と歌橋だけじゃ」

弾かれるように家定様の腕から上半身を起こし、家定様をじっと見つめた。

 

「上様、それは一体どういうことでございますか?」

「本寿院様はたしかに家定様をお生みになった。

 が、その赤子は生まれてすぐに亡くなった。
 焦った本寿院様は、そのことを内密にしたまま歌橋に赤子を用意するように命じた。
 それで連れてこられたのが、私だ」
「でしたら、上様の本当の母上は・・・・・・」
言いかけて口をつぐんだ。
乳母とは、乳の出るもの。
同じような時期に子を産み、乳のでるものを乳母にする。
「まさか、上様の本当の母上は・・・・・・」

「そうだ。

 歌橋こそ私を産んだ、本当の母親だ」

今度こそ想定外のショックに身体中から力が抜け、卒倒しそうだった。
だが先を読んだ家定様が私の体をしっかり支えていた。

「本寿院様の陰謀で、赤子の私と亡くなった家定様は入れ替えられた。
このことは、あの二人以外誰も知らぬ」

「上様は、いつそれを知ったのですか?」

「何者かに毒殺され、あと少しで命を奪われそうになりながら助かった時じゃ。

あまりにも本寿院様が冷たく、母親としての愛を感じられなかったから問うたところ、この事実を言われた。
私のおかげで、お前は将軍になれた、恩に着ろ、と。
それですべてがわかった。
どうして歌橋があのように親身に私の面倒を見て、愛してくれたのか。
どうして自分が、歌橋だけになついたのか。
実の母親だったからだ。
だが私は母を憎む。
私をこのような場所に連れてきて、自由に生きることを葬り去った母が憎い。

将軍になど、なりたくなかった。
私は本物の将軍ではない。
だが誰にそのようなことを言えようか。
ずっとこの秘密を抱え、生き続けて来た。
苦しくてたまらない。
早く死んでしまいたい。
それだけを祈り願い、これまで生きてきたのだ」

家定様は私を抱きしめ、涙を流した。

 

ガラスの牢獄、という言葉が天から降ってきた。

家定様は誰にも言えない思いを自分の胸の内に押しとどめ、長い間苦しんでいた。

生まれた時から一番愛し信じられる母親に裏切られた家定様には、絶望しかなかった。

助けを求め手を伸ばしても、その手はガラスからすべり落ちていく。

真実を伝えられない声は、首を絞める。

まるで地獄だ・・・


この江戸城で自分が身代わりだと知った家定様は、この地獄で一人どれだけもがき苦しんできたことだろう。
気づくと私は家定様の背中を手を伸ばし、しっかり抱きしめていた。

そして家定様の薄い背中を撫でて言った。

「よくぞ、ここまで耐えてこられましたね。
 とても、おつらかったでしょう。
 よく、生きておられました。
 ありがとうございます」

なぜだかわからないが、ふと口から「ありがとうございます」という言葉が漏れた。

目に涙を浮かべた家定様が、顔を上げた。

「私は・・・私は生きてきて、よかったのか?」

「はい、私の為に生きていていただけて、よかったのです」

「なぜじゃ」

「私は江戸に来る前、一瞬ですが未来を見ました」

「未来だと?」

「はい。

 私は誰か男の人の背中を抱きしめておりました。
 それが誰かはわかりませんでした。
 ですが今はっきり、わかりました。

 それは、上様でした」

「偽物だけどな」

家定様は私から目線をそらせ、薄く笑う。

「いえ、上様」

私は上様の顔をしっかりと見つめた。

 

「上様こそが、家定様です。
血筋はちがいますが、徳川の綿々と続く流れは上様に託されたのです。
そうでなければ、家慶様の二十七名おられたお子がどなたか生き延び、徳川を継いだことでしょう。
ですが上様だけが生き残ったのです。
上様だけが、将軍になれよ、という天命を受けたのです。
私も同じです。
島津の分家の娘が上様の御台になるなど、あり得ない事です。
それも天命だと受け取りました。
上様、このように考えてみませんか?
私達は生まれた場所ではできない何か大きなお役目があり、ここに運ばれてきたのだ、と。
きっと、そうです。
そうでなければ、私も自分がここにいる意味がわかりません。
私達は、運命という龍に選ばれてここに来たのです。
そしてようやく会えたのです」

「私が・・・

この私が、選らばれたというのか・・・?」

私は力を込めて頷いた。

「そうです。

 上様は龍に選ばれたのです。
 龍は強いものを好みます。
 ですからきっと本当は、上様はお強い方なのです」

「私が強いなどと・・・

 よく言ったものじゃ。

 身代わりと知ってからずっと怖くてたまらなかった。
 もしばれたら殺されると思い、わざと愚鈍のフリをしていた。
 阿呆のフリをして、政の一切は老中の阿部正弘にまかせておった。
 逃げたかったのだ。

 偽物の自分がいるこの現実から」

「そうですよね。

 そう思って当然です。
 でも上様は生き延びられたのです。
 龍に選ばれた方は、運が強いのです。
 ですからあなた様こそが、本当の家定様です。
 龍はあなた様を選んだのです。
 どうぞ、自信を持って下さいませ。」

家定様の目にかすかな光が宿った。

「御台、私はお前の義父が勧める一橋慶喜に後を引き継がぬ。
それでも、私を家定と認めてくれるか?」

「もちろんでございます。
上様がこのように長い間一人で抱えていた秘密を私に話して下さって、とてもうれしいです。
どうして私にお話して下さるお気持ちになったのですか?」

「それは昨日、御台が言ったからだ。

自分に何かできることはないか、と。
私はこの秘密を自分一人で抱え続けるのに、もう疲れた。
とっととあの世に行ってしまいたい、と思っていた。
先の二人の御台たちとも、心を通わすこともなかった。
お志賀にも、このような話しはしておらぬ。
誰にも言えず、本当に苦しかったのだ」

「上様、私も今日から同じ重みを一緒に抱えます。
私も決して誰にも申しませぬ。
重い荷物も二人で分かち合えば、半分になります。
それが夫婦というものではありませんか」

「そうか。

 そうだな」

家定様は、私の手を取った。

「私は身体があまり強くない。

男として睦むこともできない。

それでも良いか?」

「はい。

私は今日、上様と心が通じ合えた気がします。

それだけで、とてもうれしいのです」

 

私と家定様はその夜、手をつないで寝た。
家定様はしっかり私の手を握り締めていた。

まるで長い間母親を探し求めていた子供が母を見つけ、その手を握りしめているようだった。

その夜、私は夢を見た。
青い服を着た幼い男子と赤い服を着た幼い女子を背に乗せて、龍が空を飛んでいる。
二人は龍に振り落とされないように、しっかりと手を握り合っていた。

ソウルメイト・ドラゴン

どこかでそんな声が聞こえた。

それはきっと私と家定様だ。

龍の背に揺られながら、私も穏やかな眠りに引き込まれた。

 

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あなたは、どんな龍に乗っていると思いますか?

 

人にいろんな性格があるように、龍にもいろんな気質があります。

 

あなたが乗る龍は、どんな流れを選ぶのでしょう?

 

あなたも龍に乗っていますよ。

 

 

 

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