ソウルメイト・ドラゴン③ 運命は「もし・・・」を超えた積み重ね
ソウルメイト・ドラゴン④未来は過去を手放した「今」から開かれる
ソウルメイト・ドラゴン⑥ 一見ネガティブな出来事にでさえ、最善の未来がある
ソウルメイト・ドラゴン⑧ この結婚生活は、仮面夫婦でセックスレス
ソウルメイト・ドラゴン⑨ あきらめが明らかに改まった時、光が見える
ソウルメイト・ドラゴン⑪ 神様が用意した束の間のドルチェヴィータ
ソウルメイト・ドラゴン⑬ 幸せは与えられるものではなく、自らが作り出すもの
ソウルメイト・ドラゴン⑯ 人は誰かにコントロールされるのを、本能的に嫌う
宮様の兄上に当たる孝明天皇は、攘夷派で外国からの進出を阻止しこの国を守る意思がお強い方だった。
その思いから、ご自身がお決めになった妹の和宮様の婚約を破棄してまで、家茂様に嫁がせた。
それは徳川幕府を倒すためではなく幕府と力を合わせ、外国から日本を守るためだった。
「兄上はご自分の意見をしっかり持った方ですが、とても穏やかでやさしい方です」
和宮様は、私にそう告げた。
孝明天皇は、徳川に嫁ぐのを嫌がる妹に、何度も繰り返し
「この国の未来を守るために、徳川に嫁いでほしい」
と頭を下げたそうだ。
「公武合体」は、徳川幕府も天皇も望んだ形だった。
ところが時代の大きなうねりは、その流れを許さなかった。
和宮様が嫁いできた二年後の1864年
外国の脅威をわかっていない尊王攘夷派は、武力で譲位しようとしていた。
その筆頭が、長州藩だ。
過激な尊王攘夷派である長州は、自分達こそが天皇の味方、とばかりに天皇の意思をまちがった形で都合よく受け取った。
そのため起こったのが、長州軍と京都を守る会津・薩摩藩を中心とする公武合体派軍との争いだ。
後に禁門の変の呼ばれたこの戦により、京都の町は火に包まれ、罪のない人々がたくさん家や命を失った。
暴走した長州藩を食い止め打ち取ったのは、あの西郷が率いた薩摩藩、そして会津藩だった。
その知らせを聞いた私は、長州藩への怒りで身体が震え、思わず叫んだ。
「和宮様が命を賭け、徳川に嫁いできた意味がわかっていないのか!!
孝明天皇のご意思を都合よく取って、何をしているのか!!」
私の怒鳴り声に侍女たちは目を見開き驚いたが、みな無言で深く頷いた。
やがて家茂様は、長州征伐のために出陣することが決まった。
和宮様は涙を流し、家茂様を見送った。
「私が・・・
私が徳川に嫁いだことなど、長州にとっては何の意味もなかったのでしょうか?
どうして私達の正しい思いは、伝わらないのでしょうか?」
目に涙をためた和宮様は、私に訴えた。
和宮様の気持ちは痛いほどよくわかる。
私は唇を噛み、泣き崩れた和宮様の背中にそっと触れた。
「和宮様、私も悔しいです。
腹立たしくてなりません。
が、私達がそうであったように、自分の常識は人の非常識。
長州の者たちも、そう思っているのでしょう。
己がすることだけが、正しい、と信じているからこそ、命をかけて争うのでしょう。
なんと愚かなことでしょう。
この国の未来を思う気持ちは同じでも、そこに伴う気持ちは私達と大きな隔たりがあります」
そこまで言うと、深く息を吸い込んだ。
そして和宮様の背中に置いた手に力を込め、続けた。
「和宮様、祈りましょう。
この国の良き未来のために。
家茂様のご無事を。
今、成すべきことをやりましょう」
私達はその場に正座し、両手を合わせ祈った。
強く強く願った。
それが、今の私達にできる精いっぱいのことだった。
長州を鎮圧したものの京都の町は三日間も燃え続けた。
さらにたくさんの家屋敷が失われ、路頭に迷う人々が町にあふれた。
長州藩は、朝敵として息の根を止められて当然だった。
いや、この時に息の根を止めておくべきだった。
だがそれをさせなかったのが、時代に背を押されたあの男だった。
西郷だ。
日本の未来はあの男によって、私達の思惑を外れ他の道へと流れた。
今振り返ると、それが天のおぼしめしだったのだろう。
それでよかったのだろう。
けれど、運命、という名の龍が日本の未来をどこに運ぶのか
この時の私達は何も理解できなかった。
見えていなかった。
何を祈ればいいのか?
何ができるのか?
わからないが、ただただ信じることしかできなかった。
祈ることしかできなかった。
願うことしかできなかった。
この国の明るい未来と平和を。
民の笑顔と幸せを。
私がここにいる意味は、きっときっとある。
そう信じたい。いや、そう信じる。
何度もそう言い聞かせ、自分で自分の背中を押した。
やがて時代の転換期、という大きく口を開いた龍に私達は飲み込まれていった。
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あなたは今自分がそこにいる意味が、わかりますか?
あなたは必要だから、そこにいます。
もし今わからなくても、きっといつかわかります。
そこで何かなすべきことがあるから、あなたはそこにいるのです。
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