【作品#0335】ドラえもんのび太のドラビアンナイト（1991）

【タイトル】

ドラえもんのび太のドラビアンナイト

【概要】

1991年の日本映画
上映時間は99分

【あらすじ】

ドラえもんの道具「絵本入りこみぐつ」で絵本の中に入ったしずかちゃんは、のび太を置いて絵本から出ようとするが、何かにぶつかって地面に落下して気絶してしまう。それに気付かないままのび太は絵本から出ると、ドラえもんから靴の数が足りないことを指摘され…。

【スタッフ】

監督は芝山努

【キャスト】

大山のぶ代（ドラえもん）
小原乃梨子（のび太）

【感想】

劇場版「ドラえもん」の第12作。

本作は導入がなかなか素晴らしい。絵本の世界に入れる道具を手に入れたは良いが、ジャイアンとスネ夫が色んな絵本をごちゃ混ぜにしてしまう。のび太がもっと小さい頃に買ってもらった古いボロボロの絵本である設定も細かいながら気が利いている。そしてそれが原因でしずかちゃんだけ絵本の世界に取り残されてしまう。いつもならそのまま絵本の世界に飛び込んでしずかちゃんを助けに行く話になるところだが、現実世界側からアプローチをかけて行く。これは「ドラえもんのび太と竜の騎士（1987）」と似た展開であるが、あくまで現実世界の歴史から辿っていくという筋立ては丁寧であると感じる。途中から現実世界と絵本の世界がごっちゃになっていくところはご愛敬。

そしてしずかちゃんを探して猶予がない中、人相の悪い男たちに協力を仰がなければならなくなる。ただ悪党に捕まるという話ではなく、猶予がない状況で悪党らしき男たちへ仕方なく協力を仰ぐ展開も悪くない。

そして本作は劇場版では初めてドラえもんの秘密道具が使えない状況がある。ドラえもん映画で秘密道具が使えないことへ一部不満の声もあるようだが、何でもありとも言えるチート技が使えるドラえもんの道具が使えないという制限された状況は物語を面白くするポイントだと思うし、それゆえドラマも生まれる。イライラして衝突したり、困っている相手がいれば助けたり。そういえば「ジャイアンが劇場版で良い奴になる」って本作が始まりのような気もする。そして、その秘密道具が登場しない間、シンドバッドが様々な魔法を見せてくれる。そのうちの1つである「ランプの精」が程よくポンコツであることも、後に「兵士のタネ」を取り返す展開のうまい伏線になっていた。

また、スネ夫がオアシスを見つけたら蜃気楼だったと分かり、自分のことが信じられなくなっていく。そんなスネ夫の前に大魔神が画面いっぱいに登場するのはなかなか面白いし、砂漠ばかりのシーンが続いた中で突然大魔神が登場するところはインパクトもある。

それから、シンドバッド側にもドラマや見せ場が用意されている。弱気になったシンドバッドが、彼の物語を読んだのび太たちから励まされる展開である。なかなかいい場面なのだが、シンドバッドが落ち込んでから立ち上がるまでがあまりにも早く、何もなかったに等しいくらいの尺で描かれるのはややもったいない。

最後は結局、ガイドのミクジンが助けてくれることになる。溺れていたドラえもんたちを救ったのもミクジンだった訳だが、その設定は必要だったか。後にスネ夫が信じてもらえなくなる過程でもあるのは理解できるが、そこでミクジンが海からドラえもんたちを助けるならなぜその後何も言わずに立ち去ったのか。ここは皆が岸に漂着するってだけで良かった。また、ドラえもんの失くしたポケットを拾うのもミクジンだが、これも他の展開を考えるべきだったと思う。都合の悪いところだけミクジンが助けてくれるというのはどうも具合が悪い。ここも知恵を絞って悪党たちから取り返す展開の方が燃えたはずである。このところの劇場版では、自分たちではない他の何かが助けてくれたり解決してくれたりという展開が多いのは気にかかる。

また、連れ去られるという役目を紅一点のしずかちゃんがいつも担わされるというのは古びているし、少女であるしずかちゃんのほぼ全裸のシーンがあるというのも理解に苦しむところではある。

そんな本作は、おそらく私が小さい頃初めて見た劇場版ドラえもんだと記憶している。その意味でも思い入れがある作品。海に砂漠、そして宮殿に魔法とアラビアの世界観も表現されていたし、しずかちゃんを助けるための冒険ものとしても素晴らしい。ドラえもんが道具を使えないという制限された状況が功を奏している。個人的には本作時点で一番の作品。

【関連作品】

「ドラえもんのび太の恐竜（1980）」…劇場版1作目
「ドラえもんのび太の宇宙開拓史（1981）」…劇場版2作目
「ドラえもんのび太の大魔境（1982）」…劇場版3作目
「ドラえもんのび太の海底鬼岩城（1983）」…劇場版4作目
「ドラえもんのび太の魔界大冒険（1984）」…劇場版5作目
「ドラえもんのび太の小宇宙戦争（1985）」…劇場版6作目
「ドラえもんのび太と鉄人兵団（1986）」…劇場版7作目
「ドラえもんのび太と竜の騎士（1987）」…劇場版8作目
「ドラえもんのび太のパラレル西遊記（1988）」…劇場版9作目
「ドラえもんのび太の日本誕生（1989）」…劇場版10作目
「ドラえもんのび太のアニマル惑星（1990）」…劇場版11作目
「ドラえもんのび太のドラビアンナイト（1991）」…劇場版12作目
「ドラえもんのび太と雲の王国（1992）」…劇場版13作目
「ドラえもんのび太とブリキの迷宮（1993）」…劇場版14作目
「ドラえもんのび太と夢幻三剣士（1994）」…劇場版15作目
「ドラえもんのび太の創世日記（1995）」…劇場版16作目
「ドラえもんのび太の銀河超特急（1996）」…劇場版17作目
「ドラえもんのび太のねじ巻き都市冒険記（1997）」…劇場版18作目
「ドラえもんのび太の南海大冒険（1998）」…劇場版19作目
「ドラえもんのび太の宇宙漂流記（1999）」…劇場版20作目
「ドラえもんのび太の太陽王伝説（2000）」…劇場版21作目
「ドラえもんのび太と翼の勇者たち（2001）」…劇場版22作目
「ドラえもんのび太とロボット王国（2002）」…劇場版23作目
「ドラえもんのび太とふしぎ風使い（2003）」…劇場版24作目
「ドラえもんのび太のワンニャン時空伝（2004）」…劇場版25作目
「ドラえもんのび太の恐竜2006（2006）」…2期劇場版1作目
「ドラえもんのび太の新魔界大冒険〜7人の魔法使い〜（2007）」…2期劇場版2作目
「ドラえもんのび太と緑の巨人伝（2008）」…2期劇場版3作目
「ドラえもん新・のび太の宇宙開拓史（2009）」…2期劇場版4作目
「ドラえもんのび太の人魚大海戦（2010）」…2期劇場版5作目
「ドラえもん新・のび太と鉄人兵団〜はばたけ天使たち〜（2011）」…2期劇場版6作目
「ドラえもんのび太と奇跡の島〜アニマルアドベンチャー〜（2012）」…2期劇場版7作目
「ドラえもんのび太のひみつ道具博物館（2013）」…2期劇場版8作目
「ドラえもん新・のび太の大魔境〜ペコと5人の探検隊〜（2014）」…2期劇場版9作目
「ドラえもんのび太の宇宙英雄記（2015）」…2期劇場版10作目
「ドラえもん新・のび太の日本誕生（2016）」…2期劇場版11作目
「ドラえもんのび太の南極カチコチ大冒険（2017）」…2期劇場版12作目
「ドラえもんのび太の宝島（2018）」…2期劇場版13作目
「ドラえもんのび太の月面探査記（2019）」…2期劇場版14作目
「ドラえもんのび太の新恐竜（2020）」…2期劇場版15作目
「ドラえもんのび太の宇宙小戦争2021（2021）」…2期劇場版16作目
「STAND BY ME ドラえもん（2014）」…3DCG劇場版1作目
「STAND BY ME ドラえもん2（2020）」…3DCG劇場版2作目

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