さて、車山高原の山歩きも最終局面に差し掛かりまして、往路は恩恵に預かった中腹部でのリフトを後目にそそくさと下りにかかります。まあ、ここからですとバス停のあるリフト乗り口まで30分ほどということですのでね、楽勝感が漂い出しました(笑)。
下りは登りにまして前方の展望が開けておりまして、往路に振り返り振り返り、「蓼科山のきりっとした姿が見えないのは残念であるな…」と思っていたところが、下りになってようやっと全容を見せてくれたのは少々のご褒美でもありましょうかね。
八ヶ岳連峰の最北端にあって、すっくと立ちあがる独立峰の山容は立派な印象を残しますけれど、また登ろうとは思わないですなあ。また、というのは高校の自分、学校の山荘が裾野の森の中にあって、そこを使う人以外に利用されていないようなクマザサ繁る山道を登った(というより登らされた)ものでして。頂上は開けているものの、ごつごつした巨岩が折り重なっているばかり、そんな記憶ですのでね。
ともあれ、下り道の途上、開けた草原に電気柵が張り巡らされているのに目を止めたのですな。往路から気付いてはおりましたが、何分ひいこらで余裕もなく…。改めて看板を眺めてみますと、どうやらシカによる食害避けのようでありますよ。
シカがニッコウキスゲを食べてしまうのでしたか。霧ヶ峰にニッコウキスゲは付き物ですので、これは守らないといけんですなあ。と、そんなシカ対策を目の当たりにしたところで、ふいと思いついてしまったのが、昨今あちこちで話題になっているクマの出没のことでありましたよ。
8月下旬に出かけた入笠山では、ほとんどの登山者がクマ鈴をぶら下げていて、これはもはや山登りの必須アイテムになっておるのだなと思ったのでした。が、今回の車山高原歩きは(何十年も前の記憶頼りながら)木立の無い草原の中を歩くような恰好で、元よりクマの好物である木の実、どんぐりの類は極めて乏しい。そんなところに出てくるものであるか、とまた高を括ってしまい、クマ鈴購入は先送りに。
ですが、下っていくにつれて気持ちの良い草原状態からだんだんと木立が続くようになってきたのですな。そうなりますと、もしかして森のくまさんとも遭遇したりする可能性ありか?!とふいに。
そんな不安が生じますと、草原地域に森のくまさん好物のどんぐりは至って少ないものの、一面がクマザサだらけだったではないか。もしかして、クマザサってくまさんの好物だからこのネーミング?などという妄想が。後付けながら、クマザサは漢字で「隈笹」と書くようでして、クマとは関係ないようですな(笑)。
とまあ、クマとの遭遇はおよそ無い(だろう)と思いつつも些か足早になりながら、そもそものリフト乗り場のところまで無事に下りてくることができました。正面に車山が見えているということは、冬場はスキー場となるエリアを大きくトラバースしてきたということですな。ですが、やっぱり次の山歩きまでにはクマ鈴を用意しておくといたしましょうね。
で、リフト券売り場のあるスカイプラザという建物にあったテイクアウトカフェでもって、帰りのバス待ちの時間にちょいと、本日頑張って歩いた自分ご褒美をひとつ。
「長野県産シャインマスカットソフト」という触れ込みから、濃厚ミルクにシャインマスカットフレーバーがほんのりてなふうにイメージしたですが、およそシャインマスカットシャーベットだったような。ちと思惑違いでしたなあ…。
それにしても、この高原リゾートのテイクアウトカフェでさえ(というか、だからというか)、どうやら南アジア方面とお見受けする従業員のワンオペで運営されている。こうした人たちの手を借りないと立ちいかない状況というのが日本のあちこちにある、そんな一端を見たものと思いましたですよ。
そんなこんなを振り返りつつもうつらうつらとしながら、茅野駅までおよそ1時間のバスに揺られて帰途に着くのでありました。